日独サッカー展とアジア第2次予選対シリア戦 久しぶりに香川真司の好プレーを見て
2018FIFAワールドカップロシア アジア2次予選 最終戦
日本代表 5(1-0、4-0)0 シリア戦
――神戸市立中央図書館で日独サッカー交流展が開催されていますが、4月9日には賀川さんの講演会も行われたそうですね
賀川:日本サッカー協会(JFA)が東京で昨年暮れから今年に冬にかけて日独サッカー交流展を行い、昨年12月にトークイベントを開催しました。その交流展の展示品をJFAから、そのまま借用して、神戸でも開催したいと考え、NPO神戸日独協会、NPOサロン2002、NPO神戸アスリートタウンクラブの協力をえて4月から開催しています。9日にはその日独のサッカー交流について講演しました。神戸という港町も独自のドイツとの交流がありましたから、その視点でもお話をし、また展示品の中には太平洋戦争中にドイツの商船で、のちに日本海軍の航空母艦(空母)に改装したシャルンホルストに関するものなどについての本もありました。私が神戸一中の3年生の頃には、このシャルンホルストの船員と兄・太郎たちのチームが神戸一中のグラウンドで試合をしたこともありましたからね。
――日本とドイツといえば、デットマール・クラマーさんを思い出しますね
賀川:この展示もデットマール・クラマーを記念する意味もあります。日本サッカーの大恩人ですからね。
――スピーチの会場にドルトムントの香川真司のユニホームが展示されましたが、スピーチのあとでユニホームと記念撮影をする人が多かった。賀川さんも何回も付き合ってカメラに収まっていました
賀川:神戸ですから、香川ファンはいっぱいいます。このユニホームも、前回のスピーチのときに香川選手のお母さんが、わざわざ持参して寄贈して下さったのです。
――楽しい会でした。こうしたスピーチや「このくにのサッカー」の対談などがあって、ここしばらくこのブログでの観戦記などが少なくなっていました
賀川:日本代表や香川真司がいいプレーをしたワールドカップアジア第2次予選対シリア戦(3月29日)についても、このブログではまだでしたね。申し訳ないことです。
――少し遅いけれど、2次予選の総括の意味を込めて振り返ってみたいところです
賀川:この試合についてはサンケイスポーツ新聞紙上に私の感想も掲載されましたが、先程話に出たように、香川真司がとてもいいプレーをしたのでそれについても語りたいところです。
――香川がこのシリア戦のあとドイツへ戻って、ドルトムントでとてもいいプレーだったそうです
賀川:ここしばらく調子がいいとは言えなかった香川についてはハリルホジッチ監督も気にしていたようで、シリア戦の前のアフガニスタン戦では本田圭佑は休ませたのに香川は試合後半途中に出場させました。そしてシリア戦はスタートから本田、香川、宇佐美貴史の第2列に、岡崎慎司をワントップに置きました。長谷部誠、山口蛍のMF、右が酒井高徳、左が長友佑都、CDFは吉田麻也、森重真人、GKは西川周作でしたね。
――はじめから速いテンポの攻めでした。とてもスピーディな動きでサッカー特有の爽快感のあるいい展開…と言っていましたが、これに緩急がつけばなぁと惜しんでいましたね
賀川:難しいことではあるが、緩急の落差の大きいプレーができると速さが生きるのです。この試合を見ているときにヨーロッパからヨハン・クライフ死亡のニュースが届きました。クライフは、ワールドカップのオランダ代表で、トータルフットボールを演じました。現代のサッカーのもととも言うべき、全員攻撃、全員守備なのですが、その時にもクライフによる緩急の変化が、オランダの速い攻撃を生かしていた。もちろん、緩急といったプレーのタイミングについて文字や言葉で説明するのはなかなか難しいのですが、ヨハン・クライフはそのタイミングについても語った人でした。
――前半のゴールは左CKから相手のオウンゴールでした。
賀川:ショートコーナーにして、香川がペナルティエリア近くから速いライナーを送り、GKアルメハがパンチしたのが仲間の頭に当たってオウンゴールとなりました。ショートコーナーで相手が予想していたよりも速いクロスを送ったのが活きたのでしょう。
――それまでの6本のCKとは違ってショートコーナーにしたことでまず最初にタイミングを遅くし、次いで強い速いクロスで、クロスに対する相手の反応を狂わせたとも言えますね
賀川:それが相手のオウンゴールにつながったと私は見ています。
――このあと日本側は何度もチャンスを作りながら得点できず、前半は1-0でした。後半も、相手は守りを厚くしながらも、積極的にカウンターに出てきたこともあって4点を奪われました
賀川:シリアの国情から見ても、シリア代表チームの環境は決してサッカーにいいとは言えないはずですが、彼らにも代表のプライドがあり、また国民を喜ばせたいという願いがあるのでしょう。そのためには、守りを厚くして失点を少なくするだけでなく、チャンスには攻めに出て1ゴールでも奪いたいと思ったのでしょう。何度もいい攻撃を見せました。日本側が前がかりになって攻めに多くの人をつぎ込み、ボールを奪われたときに守りが手落ちになったこともありましたね。
――ノーマークシュートの場面もあったので点を取られても不思議はなかったほどです
賀川:日本は長友、宇佐美のいる左サイドも、また酒井の右サイドも何度も攻め込みました。前半には短いパスがつながった驚くほど見事な場面もありました。
――最後は酒井がゴールキーパーと1対1になってシュートは左に外れましたね
賀川:まぁ見ていて、とても楽しい攻めを何度も作りました。相手がゴール前に引き込んでいるだけでなかったこともありますが、私はシリアのサッカーの意欲に感心したものです。
――後半20分の日本の2点目は相手CKをGK西川がキャッチし、原口へボールを投げたところから始まりました
賀川:山口蛍がジャンプヘッドのときに、送れて飛び込んできた相手にぶつかられて担架で運び出され、原口元気が交代で入っていました。その原口がドリブルしてハーフラインを越え、左の宇佐美にパスしました。宇佐美は縦に進み25ヤードあたりから内へ持ち込んで、3人に囲まれて香川にパス。香川から長谷部へ渡し、相手がそれを奪いに来てもみあいから高く上がったボールがペナルティエリア内に落下した。本田がいて、左足でそのボールをもう一度浮かせて香川へパスした。香川はこのボールを胸で止め、左足のボレーシュートを決めたのだった。
――香川がシュートのとき「うまい」と叫んでいましたね
賀川:胸でボールを止め反転して左足のボレーに持って行くところの形が良かったこと。そして、その難しい反転シュートを、利き足の右でなく、左足で決めたところにこの日の香川の好調さというのか、あるいは香川のゴール前での実力アップというのか…いいプレーが出ました。テレビではスローでのリピートを見せてくれました。このとき香川が左ボレーを蹴る形をよく見ることができます。ボールを注視して、精神が集中している一瞬をよくとらえていました。
――絶品という言い方で、ほめていました
賀川:選手は、こうした重大な場面でいいプレーをすることで、力をつけていくものだという、一つのうれしい見本でした。
――3点目は香川のペナルティエリア左一杯からの本田へのヘッドでした
賀川:本田のヘディングは日本代表の一つの武器であることに変わりはありません。このチャンスも相手のシュートをGK西川が足で防いで、相手のCKからというチャンスでした。日本側のクリアが香川に渡り、速攻のパス交換から香川が本田の頭上へ送ったクロスを本田がノーマークでジャンプヘッドしました。後半41分でした。本田のすぐ近くに日本の2人が走り込んでいました。
――4点目は香川が決めました。
賀川:金崎がヘディングを取りにいって、相手のヘディングが香川の近くに落ち、香川が右足でシュートし、相手GKの体に当たったリバウンドを香川が左足サイドキックで押し込みました。
――5点目は長友のクロスを原口がヘディングで決めた。左から相手に押し込まれた後のカウンターでした
賀川:この日の長友の何回もの攻め上がりを締めくくる後半48分のゴールでしたね。長友のタフさと技術はこの試合でも充分に見ることができました。原口もゴールを奪う気持ちが最後に報われたという感じでしたね。
――岡崎慎司は2度いいチャンスがありましたが得点できませんでした
賀川:この日のスターティングメンバーラインアップでの4人の攻撃陣は長身がいないので、監督さんもその点の組み合わせをどうするか考えているように見えました。
――2次リーグを勝ち抜き、いよいよ秋からのアジア最終予選を戦うことになります
賀川:アジアの強豪チームが顔を揃えます。2次予選の試合を足場に代表チームの一人一人がまた成長してもう一段上の最終予選も勝ち抜いてほしいものです。
――それにはJリーガーの国内代表も海外組も、よりたくましく強くなってほしいものですが、やはり香川や本田、岡崎たちもシーズン後半のヨーロッパで活躍し、力をつけてほしいものです
賀川:ドイツ、イタリアそしてイングランドのプレミアリーグも見なければならず、サッカーファンには忙しいが楽しい日々が続きますね。
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