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2016年3月

GAViC CUP ユースフットサル選抜トーナメント2016を見て

2016/03/29(火)

――東京へフットサルの大会を観戦しに行ったとか

賀川:「GAViC CUP ユースフットサル選抜トーナメント2016」という大会が東京の墨田区総合体育館で3月19、20日の2日間開催されました。U-18の各地域代表の大会でした。

――日本フットサル連盟主催の大会ですね

賀川:2012年に名古屋のオーシャンアリーナで全国規模の大会が開かれ、次の年から日本フットサル連盟主催の大会となっています。今回は全国9地域と開催地(東京都)の代表を含む12チームが集まりました。

――それにしても東京まで出かけるとは

賀川:大会にかかわりがあったこともありますが、なによりこの年代のフットサルの試合は見ていて面白いのです。

――もともとフットサルはサッカーと違って体育館内の狭いピッチだから、相手ボールを取れば、すぐシュートレンジに入りますからね

賀川:互いにバンバンシュートを打ち合うところ、そしてまた狭いスペースで巧みに相手をかわし、またパスをつなぐ面白さもあります。試合中見る側も緊張の連続ですよ。

――今年はU-18東京都選抜(開催地)とU-18新潟県選抜(北信越代表)の決勝となり、新潟がPK戦で優勝を手にしました

賀川:1次ラウンドでA、B、Cの3グループを勝ち上がった4チームが準決勝に進みました。準決勝を含めて、ゴールの奪い合いで、神奈川県選抜対東京都選抜の準決勝は7-5で東京が勝ち、新潟県選抜対静岡県選抜は8-2で新潟というふうに得点も多く入ったのですが、決勝は前半0-0、後半1-1という緊迫した戦いになり、PK戦(3人)の末、新潟が勝利しました。

――各府県の選抜チームということは、それぞれの個人能力も高い?

賀川:そうですね。なかには、日本代表に入るという選手もいたほどで、ボール扱いや、スピードに乗ったプレーに感嘆することも多かった。ボールの奪い合いが激しくて、この点でも見ごたえがありました。U-18という伸び盛りのプレーヤーの進歩が早く、毎年レベルが上がっている感じですね。体育館のスタンドは6分の入りで、もっと多くの人に見てもらいたいという気がしました。

――賀川浩賞の表彰があったとか

賀川:いろいろな縁のある大会で、大会の得点王に賀川浩賞を贈ることになりました。東京選抜の中村充選手にトロフィーを渡しました。とてもいいシューターですよ。

――大会全体の感じは

賀川:フットサルはフロアの上での試合で、サッカーとは少し違うところはありますが、手を使わず足が主になることは、まさにフットボールです。多くのサッカー人も、サッカーが未知の人も、小さなスペースで少人数でプレーできるフットサルを楽しんでもらえば、サッカーをするにも見るにもまた楽しみが増えるでしょう。

GAViC CUP ユースフットサル選抜トーナメント2016公式サイト

U18kagawa


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ゴールへの意欲が5得点を生む

2016/03/25(金)

2016年3月24日 埼玉
日本 5(1-0、4-0)0 アフガニスタン

――アフガニスタンに5-0で快勝しました。2018FIFAワールドカップロシア アジア2次予選の日本は7戦して6勝1引き分けとなりグループEのトップで29日に最終戦を迎えます

賀川:8戦目の相手シリアはアフガニスタンよりは手強い相手ですが、その前の格下相手のこの試合で監督は選手の組み合わせをテストできたと言えるでしょう。

――日本は珍しく2トップにしました。岡崎慎司と金崎夢生を組ませました

賀川:金崎は上背もあり(180センチ)いわゆるCF(センターフォワード)タイプ。この日も9本のシュートを放つなど得点への意欲満々のプレーを見せた。決めたのは後半33分のチーム5得点目だった。

――ハーフナーのヘディングの折り返しを突っ込んで体に当ててのゴールでした。金崎のゴールを目指す強い気持ちがこの日の日本チーム全員の姿勢を表していましたね。

賀川:そのチーム全体の積極性が新しい選手を起用した監督の狙いであったでしょう。選手間の競争も含めて…

――5得点を振り返ると

賀川:前半はじめから日本が攻め、アフガニスタンが守るという体勢になり、攻め込んでも多数防御の壁にはね返されていた。

――クロスからのヘディングシュートという手はあったが、はじめのメンバーでは相手ゴール前のヘディングは必ずしも取れていなかった。CKでも相手の方がはね返していましたね。

賀川:ずっと押し込み、右から左からのクロスの攻めを続けていた日本側が40分台すぎに押し返された。1点目のゴールは日本のDFからのパス展開で始まった。ハーフラインやや内から吉田が右前の柏木にパスを送り、柏木は右タッチラインぎわの酒井宏樹にパス。酒井は内側の長谷部に渡すと長谷部はひとつ止めてすぐ前方の清武につないだ。ノーマークで受けた清武は中央のスペースをドリブルし、ペナルティエリアすぐ外側、中央にいた岡崎にパス、岡崎は2人のDFの間でボールを受け、巧みなターンでゴールに向き直り、奪いに来たDFをかわして左足サイドキックで左ポストいっぱいにシュートを決めた。

――日本に押し込まれ、それまではエリア内に6人から7人いて防いでいたアフガニスタンはこのときペナルティエリア近くの最終守備ライン、その前方の守備ラインとの間に空白ができていた。そこを長谷部-清武のパスと清武のドリブルで突破し余裕を持って清武は岡崎へパスを出した

賀川:岡崎がボールを受ける前に2トップのもう一人金崎が右へ動いたのも効果があったはず。2人のディフェンダーが背後から岡崎をマークすることになり、その2人の間に岡崎がいる形になってしまった。このあたりがまたアフガニスタンの守備の感覚の低いところでしょうね。

――別の見方をすればその2人のディフェンダーの間でボールを受けたところが岡崎の上手さとも言えるでしょう。

賀川:岡崎はボールテクニックの上手さという点で高い評価を受けていないが、ゴール前の自分の働き場ではこのところとても落ち着いて見えます。レベルが高いイングランドのプレミアリーグの優勝争いのトップにいるレスターのレギュラーとして、ゴールを決め、チームに役立つ選手となっているという自信ができているように見える。その落ち着きとともに相手の意表をつく巧みなプレーもこなしている。このゴールはまさにイングランドのトップチーム・レスターのストライカー岡崎のゴールと言えるでしょう。

――後半13分の2点目清武のゴールは長谷部-金崎のパスを金崎がダイレクトで相手DFラインの裏へ送り、清武が走り込んで左足のダイレクトシュートで決めました

賀川:パスの攻撃の妙でした。金崎がボールを浮かせてそれがDFラインの背後に落下したところに清武が走り込みました。誰もが喝采したでしょう。

――後半18分には3点目が生まれました。右サイドの酒井がドリブル突破して、ゴールラインに迫り、なお内へドリブルしてペナルティエリア内に持ち込み、中へ送ったボールがアフガニスタンの選手の足に当たってゴールへ入りました

賀川:記録はオウンゴールですが、酒井のゴールへ突進していったドリブルと意欲に対するサッカーの神様のご褒美でしょう。

――4点目は清武の左CKをニアサイドで吉田が合せたヘディングです

賀川:ハーフナーが後半27分に岡崎と交代して入っていました。このCKもやはり194センチという長身のハーフナーが加わって相手の警戒が分散されていました。もちろんニアに飛び込んだ吉田のヘッドは彼の得意の形の一つですが、ハーフナー効果のあらわれのひとつです。

――そのハーフナーは清武のクロスをヘディングで折り返し、金崎のゴール(5点目)へつなげた。ジャンプヘッドは周囲のだれよりも高くかった。日本代表に“高さ”という武器が一つ加わるかもしれない。

賀川:本田と香川という攻撃の二枚看板なしでスタート(後半に香川を投入)した新しい組み合わせも良い結果を出した。もちろんアフガニスタンの力が弱いということもあるが監督にとってもテレビ観戦者にも埼玉スタジアムに集まった48,967人のファンにもまずは満足のゆく試合だったでしょう。

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驚きと喝采 岡崎のオーバーヘッドシュート

2016/03/18(金)

――岡崎慎司がオーバーヘッドキックで見事なゴールを決めました。今シーズン7点目です。プレミアリーグ第30節の試合でした。この岡崎のゴールが唯一の得点で、彼のレスター・シティはニューカッスル・ユナイテッドに勝って首位をキープしています

賀川:レスター・シティはロンドンの北150キロにある
イングランド中部の中都市で1884年創設の古いクラブです。歴史は古いが、マンチェスター・ユナイテッドやアーセナル(ロンドン)といったプレミアリーグの優勝と争うトップチームでなく、長く下のリーグ(フットボール・チャンピオンシップ→プレミアリーグの下の2部にあたる)にいて、昨シーズン(2014-15シーズン)にプレミアに昇格して14位でした。

――それが今年、開幕から首位を走っていてイングランドでの驚きのひとつです

賀川:こういう試合をテレビで見ることのできるのはサッカー人にとっていい時代にいる証と言えるでしょう。

――私は、19位のニューカッスルが手強いのに驚きました

賀川:プレミアリーグはどのチームもレベルが高いのです。試合の展開を見るとスペインリーグのバルサのような高いテクニックを生かして見事なパス攻撃というのは多くはありませんが、激しく速く、局面での1対1、ボールの奪い合いなどは、まさにイングランドのサッカーというところでしょう。個人的に技術レベルの高いプレーヤーもいて、テレビ視聴者にもとても楽しい試合が多い。

――さて岡崎のビューティフルゴールは

賀川:前半はじめはニューカッスルが激しいプレッシングで勢いづいて押し込む形勢だったのが20分ごろからレスターもボールがつながりはじめ、岡崎が左サイドの裏に走ってゴールライン近くからクロスを上げるシーンもありました。24分06秒の岡崎のゴールはレスターの攻め込みから一旦戻して右サイドでFKをもらったことから始まります。

――右タッチラインすぐ近くゴールラインから30メートルあたりのFKを26番のマレスが左足で蹴りました

賀川:身長ではニューカッスルの方が高い選手が多いように見えました。もちろんレスター側のW・モーガン(ジャマイカ)、フート(ドイツ)といった長身センターバックがこの攻撃に参加しました。

――マレスの蹴ったボールはエリア内PKマーク当たりに飛び、ニューカッスル側がヘディングでクリアした

賀川:それをペナルティエリア左角でレスター側のカンテ(フランス)がワントラップして再びクロスを送り、右ポスト側ゴールエリア少し手前で9番のバーディがヘディングで折り返して、そのボールがゴール正面のゴールエリアいっぱいに落下した。そこに岡崎がいた。

――岡崎の近くに3人のニューカッスルの選手がいたが、岡崎はためらうことなくオーバーヘッドキックで落下するボールをダイレクトで叩いた

賀川:高めのクロスが相手DFの頭をかすって、そのまたバーディの上へ落ちたことがラッキーでしたが、そのバーディのヘディングの折り返しをシュートした岡崎の判断はすばらしい。また、オーバーヘッドキックできちんとインステップに当てているところも流石でした。

――まさにストライカー岡崎ですね

賀川:FKのボールが相手のクリアで一旦ペナルティエリアいっぱいに飛んだあと、左からカンテ(フランス)がクロスをあげるときに岡崎はそのボールに合わせて相手のマークを外す動きを見せています。

――そのボールが途中で相手DFの頭に当たって右外にいたバーディの上へ飛んだのですね

賀川:こうして言葉で書くと長い時間がかかりますが、この間はほんの何秒かのこと、そのバーディのパスとも言える折り返しのヘッドのボールの落下点へ誰よりも早く入るところ、そしてオーバーヘッドシュートをしたところに岡崎慎司のストライカーとしての非凡さがあるといえます。彼自身は一瞬の判断だったようでしょうね。

――話を聞いてもう一テレビの録画を見たくなりました

賀川:サッカーの母国、イングランドのプレミアリーグの首位を行く、レスターでのこの岡崎のゴールは日本サッカーの歴史に残るだけでなく、今シーズンのバロンドール授賞式の表彰対象のベストゴールにノミネートされるのではないかとさえ思います。

――そうですね。このあとのニューカッスルの頑張りもあってレスターは追加点を奪えず、後半の終盤にはかなり攻めこまれて危ない場面もあったから、この岡崎のゴールはプレミアリーグの優勝争いにもとても重要でしたね

賀川:レスターが首位を走るという大異変をイングランドではどのように見ているのでしょうかね。今年イタリア人のクラウディオ・ラニエリが就任したときも経験あるラニエリでも成果が上がるのを疑問視する人が多かったと聞いています。首位をキープしていても、もう落ちるだろうとみる人が多かったともいいます。

――テレビでの観戦の賀川さんは

賀川:全員の守備意識が高く、選手たちも適材適所という感じですね。その守りの強さの中に当然、岡崎の守りへの献身も入っています。2トップから相手ボールにプレスして、その攻撃を限定し、ときには高い位置で奪って守りから攻めに転じるところは見事です。このためこれまで優勝争いの常連とも言えるチェルシー、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッドやマンチェスター・シティ、あるいはトッテナムやリバプールといったチームを下に見て残り9試合でまだ首位をキープしているのですからね。

――レスターという人口30万人くらいの町は市民全体がわくわくしているでしょう

賀川:ドイツのブンデスリーガに多くの日本人が加わって私たちにも近い存在となりました。プレミアリーグの優勝を争っているチームに岡崎選手がいることでサッカーの本家への興味が大きくなりますね。

――岡崎慎司という選手という選手については?

賀川:何といっても地元の神戸・宝塚の出身ですからね。彼は滝川第二高校で黒田和生先生の教え子でした。滝二が全国優勝するようになったころの選手でした。個人的に取材したとか、話し合ったことはないがずっと気にしていました。海外に出て目立つようになり、代表のFWになりましたからね。

――神戸出身の香川真司も好きな一人ですね

賀川:真司(香川)と慎司(岡崎)の二人の「しんじ」がいます。香川はボールタッチやドリブルの上手さで少年期から目立っていて仙台のクラブを経てセレッソ大阪に加わってJリーグに出場しヨーロッパへ行きました。岡崎慎司の方は滝二で全国大会で優勝し、Jリーグの清水に入ってそこからヨーロッパへ移りました。年齢は岡崎の方が少し上です。

――岡崎を注目していたのはどの点でしょう

賀川:ひたすらゴールを目指すストライカーとしての大切な精神的な資質を持っていること、そのために相手側との接触プレーを嫌がらずに、ここと言う場面にボールめがけて飛んでいくところです。ストライカーには技術的にボールを蹴る(シュート)、ボールを止める(トラッピング)、ボールを運ぶ(ドリブル)などという基礎的な技術を狭いスペースで、あるいは、とても短い時間内に、正確に行えることが大事なのだが、相手が守ろうと予測している場所へも敢然と飛び込んでいくことも必要なのです。岡崎は滝二のころからいわば修羅場とも言うべきその場所へズカズカと入って行く強さがありました。それがダイビングヘッドの得点であったり、相手とともにつぶれたチャンスメークであったりしました。

――今でも、そういう場合を見ることができる?

賀川:先日プレミアリーグ、レスター対ニューカッスル・ユナイテッド戦でも彼の特色は出ていましたよ。

――このときのオーバーヘッドシュートでリーグの7得点目を記録しましたが、その前の6点目のゴールも相手ゴール前で高いバウンドしたボールへ彼はジャンプヘッドに行き、それが失敗となると、次にもう一度体に当てて押し込んでいます。

賀川:対ニューカッスル戦の10分までに岡崎は高いボールを相手の選手と競り合ってともに「つぶれて」攻撃のチャンスを作りました。また、相手のドリブルを追走しての防御や相手DFへのプレスでパスを抑えるなどの場面を見せてくれました。

――そういう守備プレーを重ねながらチャンスと見ると、重要な場所へ入って行くのですね

賀川:クロスが来るときには、しっかり顔を出しています。自分が裏へ走ってボールをもらい良いクロスを出したりもしています。

――ヘディングが強いと言うのも、その「飛び込み」の一つでしょう

賀川:そうでしょうね。ヘディングが強くなることは空中のボールに対して自信を持つことになるのでしょう。岡崎選手は浮いているボール(空中のボール)に対しても「競り合い」に自信を持っているのでしょう。あのオーバーヘッドキックのゴールの前にクロスに対しての彼の動きをスロービデオで見直してみるととても面白いです。

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ユース選抜フットサルトーナメントに賀川浩賞

2016/03/15(火)

ユース選抜フットサルトーナメント(主催 :一般財団法人日本フットサル連盟、共催 :特定非営利活動法人サロン2002)の得点王に「賀川浩賞」が授与されることになりました。

3月20日(日)は墨田区総合体育館で取材を行い、プレゼンターとして表彰式に参加します。

ユース選抜フットサルトーナメント2016

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なでしこの敗戦 キラリ光る進歩への意欲

2016/03/15(火)

澤さんとともに好成績を残してきた“なでしこ”たちの踏ん張りが期待されていたのですが、初戦のオーストラリアに敗れ、韓国と引き分け、中国に負け(1-2)、ベトナムに勝ち、北朝鮮(1-0)にも勝ったが、リオデジャネイロの本番への資格は失いました。

賀川:佐々木則夫監督は、ワールドカップの優勝と2位、オリンピック銀メダルという輝かしい成績を持ちながら、今度はアジア予選敗退です。色々な理由があるでしょうが…

――日本の組織サッカーが発揮されないように見えました。ロングボールの蹴り合いの場面を見ながら、どこのサッカーかと思うこともありました

賀川:なでしこリーグというトップクラブのリーグ戦がようやく世間にも関心を持たれるようになりましたが、そのリーグでの試合だけでは不十分だとしたら日本代表としての合同練習や試合の機会をもっと多くすることでしょう。もちろんJFAも“なでしこ”自身も新しい体制や練習を考えているはずです。まずはこれからのなでしこジャパンの再スタートを見つめていきたいですね。新しい選手の育成やベテランの選手の進歩などについて、それぞれのプレーヤーが自分の課題に向き合うことはこれからとても大事なことです。私は大会の後半の試合でもうれしい進歩を発見しています。

――というと

賀川:あとの2試合に右サイドバックで出場した近賀ゆかり選手(INAC)です。彼女はワールドカップ優勝メンバーで、神戸のINACの選手です。代表の右サイドは昨年のワールドカップで有吉佐織が進歩を見せ、故障があってしばらく出ていなかった近賀のポジションを務めていました。攻撃の2試合を近賀は右のDFで出場して攻守に良いプレーを見せたのですが、うれしかったのは彼女が従来のプレーよりも左足を使うプレーが多くなっていたことです。

――Jリーグでも右サイドの選手で右足のクロスはいいが、切り返したあとの左足のクロスは、相手のCDFへゆくまでにインターセプトされる、その程度の左キックが多いと言えますが…

賀川:右サイドへ出て、右足で蹴る能力は当然ですが、左足でのクロスも大切です(相手が、右足をおさえにかかるからです)。中盤でも左足を使えれば簡単な横パスはタイミングよく送ることができます。もちろん右に比べれば不得手な左足だから難しいことはできなくて当たり前、しかしいちいち右に持ち替えなくても左でシンプルなつなぎのパスを出せればそれだけ、チーム全体のパスワークがスムースに展開するのです。

――それを近賀がしていた

賀川:そうです。地味なプレーですが、これも一つの進歩なのです。新しく役立つプレーを一人の選手がひとつ増やすことで、チーム全体のパスの組み合わせも増えるのですからね。大試合でそういう新しいプラスを見せるというところに近賀ゆかりの進歩があり、なでしこのベテランたちにも進歩があるということです。

――ただし、そうした小さな進歩の積み重ねが大きな効果にならなかった

賀川:もちろん全体の進歩の度が少なかったのかもしれないが、ここの選手が30歳になっても上達しようという気構えでいることが大切だと思います。

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【お知らせ】「デットマール・クラマーと日独サッカー交流展@神戸」を開催

2016/03/09(水)

 「神戸賀川サッカー文庫」が開設されて2周年となるのに合わせて、日本サッカーミュージアムで開催中の「デットマール・クラマーと日独サッカー交流展」から展示品の一部を借受け、中央図書館で展示を行います。
 また、故クラマー氏と親交のあった賀川浩による日本とドイツのサッカー交流に関する講演会も合わせて開催いたします。

デットマール・クラマーと日独サッカー交流展@神戸(神戸市サイト)

▽共催団体
特定非営利活動法人神戸アスリートタウンクラブ
特定非営利活動法人サロン2002

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日本女子1分1敗で第3戦へ

2016/03/04(金)

大阪の長居で開催されているリオデジャネイロオリンピック女子のアジア代表最終予選で日本は第1戦の対オーストラリア(1-3)、第2戦の対韓国(1-1)で1分1敗。予選突破は難しい状況となった。

――オーストラリア戦は痛い敗戦でしたね。

賀川:もともとオーストラリアは体格は大きく走力も平均して日本より上というのが、女子スポーツ界では常識でしょう。サッカーにとっての大切なボールテクニックも随分レベルアップしてきていました。

――それに比べて「なでしこ」は伸びていない、とこれまで何度も言ってきましたね

賀川:神戸の中央図書館内にある神戸賀川サッカー文庫のなかでも試合が近づくと慎重な見方や悲観論もありました。神戸をホームとするINACのベテランたちの伸びしろがほとんどなかったからです。

――INACがレベルアップしないということは「なでしこジャパン」のベテラン陣が伸びていないということですからね

賀川:まぁ、そういうふうに切り捨ててしまえばその通りです。しかし、それでも彼女たちには、技術や体力とともに精神的な強さの伝統が残っているのではないかと期待していました。

――それが第1戦で、全然、気が入っていないようにみえましたね

賀川:3月1日に長居へ行く予定でしたが、午後から急激に寒くなると言うのでテレビ観戦にしました。風邪をひいたりして周囲の迷惑になるといけませんからね。

――第2戦は長居へ出かけたとか

賀川:佐々木監督さんの記者会見にも出て、選手の多くは第1戦は緊張して調子が出なかったと知りました。

――いわゆる「固くなっていた」というわけですね

賀川:澤穂希さんという、これまでのフィールド上での大黒柱がいなかったのが響いたのかどうかはわかりませんが、私にはワールドカップの本番を2度も経験した世界のトップ級の選手たちがアジア予選での第1戦で固くなっていたとは思いもよらなかった。

――女子プレーヤーの難しさかもしれませんね

賀川:実力どおりの仕事をしてもオーストラリアとは五分よりも少しきついという感じのチームだから勝点3は無理だったのでしょう。

――第2戦はどうでした

賀川:いい試合をしましたよ。第1戦とメンバーを代えたほか、宮間を前へ上げたのもよかった。パスのコースやタイミングが相手の意表を突くということがなかったが、まず、とてもいい方の試合ぶりだと思います。

――問題はシュート?

賀川:男子の代表を含めて、ここしばらくの日本代表はゴールに近づいたときにシュートの気持ちや構えに入るのが少し遅いように見ていた。U-23のオリンピックアジア予選を突破した手倉森監督のチームはそれが少し早い選手がいた感じでした。パスワークもそれほど、いいというわけではないがペナルティエリアの少し手前からシュートしようという気概を持ったのが良かったと思っています。

――なでしこはそのタイミングは遅いと?

賀川:シュート力そのものも、男子と違って弱いからシュートレンジが短いのは当然ですが、女子のシュートの強さを上げるシュートの距離を伸ばすのは当然代表一人ひとりの日頃の練習でしょう。

――日本の1点目は相手GKのフィスティング(こぶしでボールを叩く)のミスがあり、落ちたボールが岩渕の頭の上へきた

賀川:とっさのことだったが、彼女のヘディングがゴールになりましたよ。この時の右からの川澄のクロスは彼女自身でしっかり狙って大儀見の上へ落とそうとしたのでしょう。高く上げて(途中でインターセプトされないように)ゴール正面ペナルティキックマークより少しゴールに寄ったところへ落下した大儀見の入りが良かったから、長身の5番がマークしていてもゴールキーパーは飛び出してフィスティングしようとしたのでしょう。

――それがDFの体が邪魔になってボールに手が届かず、すぐその横にいた岩渕のところへ落ちたわけですね

賀川:ゴールキーパーの判断ミスでもあるけれど、ここがサッカーという競技の面白いところです。良いクロスが来て、大儀見が先に位置取りしてジャンプする、それにつられて相手DFもジャンプ、ゴールキーパーも飛び出す、宮間も触れずにボールがその裏へ落ちる、そこにもう一人いた。ゴールとはこういう入り方もあるという見本です。

――せっかく喜んだのに、そのあと1点を奪われてしまう

賀川:韓国はロングボールをエリア内へ上げて、そこで競り合わせ、こぼれ球を拾うという形を仕掛けていた。41分に右サイドでキープして日本の2人を引き付け、ゴールライン6mからバックパスをしてそれをキム・アンヨンが右タッチライン内側3mから右足でエリア内に高いボールを送った。右ポスト、ゴールエリアラインに来た高い球をGK福元がジャンプキャッチした。

――一安心と思ったら

賀川:ボールを持ったまま着地するとき前にいた熊谷の肩に福元の持つボールが当たって彼女の手からボールが落ちた。そこに韓国のチャン・ソルビンがいた。彼女のシュートも良かった。彼女はゴールを背にした形でボールを取った後、反転して右足で蹴った。スロービデオを見ると、ボールの底を蹴ってわずかに浮かせているのが素晴らしい。このため日本側はゴールカバーに入りながら腰より上にとんできたボールは体と右ポストの間を通り抜けた

――もしゴロのボールなら足で止められていた?

賀川:韓国側の執念が彼女に表れましたね。

――日本の守りがエリアに引いたときに、中盤で拾われて、何度かハイボールを上げられたのを戦術的にケアをするということをしなかったのがちょっと惜しい。

賀川:1-0としたあと上背のある相手がどんどんボールを上げてくるとき、そのキッカーをフリーで蹴らせていた。こういう時には日本のDFは男子も女子も強くないのは歴史的にわかっていることですからね。

――好運にも相手が点を取れなかった時には勝てました

賀川:後半0-0のときにエリア内で日本側にハンドがあってPKとなった。それを福元が止めた時にこれはいけるぞと思った人も多かったでしょう。彼女のファインプレーでした。キッカーのボールへのアプローチの角度が浅いので福元が止めてくれるだろうと予感しましたが…

――PKを蹴るときサイドキックなら深いサイドキックなら深い角度の方が読まれにくいという賀川説はどこかのスピーチでも話しましたね。改めてもう一度話してもらいましょう

賀川:折角良くなってきたのだから、第3戦でしっかり勝ってもらいましょう。彼女たちにとってもこの苦境の中で勝点3を取ることはこの後のサッカー人生にとっても大切ですからね。

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