日本女子1分1敗で第3戦へ
大阪の長居で開催されているリオデジャネイロオリンピック女子のアジア代表最終予選で日本は第1戦の対オーストラリア(1-3)、第2戦の対韓国(1-1)で1分1敗。予選突破は難しい状況となった。
――オーストラリア戦は痛い敗戦でしたね。
賀川:もともとオーストラリアは体格は大きく走力も平均して日本より上というのが、女子スポーツ界では常識でしょう。サッカーにとっての大切なボールテクニックも随分レベルアップしてきていました。
――それに比べて「なでしこ」は伸びていない、とこれまで何度も言ってきましたね
賀川:神戸の中央図書館内にある神戸賀川サッカー文庫のなかでも試合が近づくと慎重な見方や悲観論もありました。神戸をホームとするINACのベテランたちの伸びしろがほとんどなかったからです。
――INACがレベルアップしないということは「なでしこジャパン」のベテラン陣が伸びていないということですからね
賀川:まぁ、そういうふうに切り捨ててしまえばその通りです。しかし、それでも彼女たちには、技術や体力とともに精神的な強さの伝統が残っているのではないかと期待していました。
――それが第1戦で、全然、気が入っていないようにみえましたね
賀川:3月1日に長居へ行く予定でしたが、午後から急激に寒くなると言うのでテレビ観戦にしました。風邪をひいたりして周囲の迷惑になるといけませんからね。
――第2戦は長居へ出かけたとか
賀川:佐々木監督さんの記者会見にも出て、選手の多くは第1戦は緊張して調子が出なかったと知りました。
――いわゆる「固くなっていた」というわけですね
賀川:澤穂希さんという、これまでのフィールド上での大黒柱がいなかったのが響いたのかどうかはわかりませんが、私にはワールドカップの本番を2度も経験した世界のトップ級の選手たちがアジア予選での第1戦で固くなっていたとは思いもよらなかった。
――女子プレーヤーの難しさかもしれませんね
賀川:実力どおりの仕事をしてもオーストラリアとは五分よりも少しきついという感じのチームだから勝点3は無理だったのでしょう。
――第2戦はどうでした
賀川:いい試合をしましたよ。第1戦とメンバーを代えたほか、宮間を前へ上げたのもよかった。パスのコースやタイミングが相手の意表を突くということがなかったが、まず、とてもいい方の試合ぶりだと思います。
――問題はシュート?
賀川:男子の代表を含めて、ここしばらくの日本代表はゴールに近づいたときにシュートの気持ちや構えに入るのが少し遅いように見ていた。U-23のオリンピックアジア予選を突破した手倉森監督のチームはそれが少し早い選手がいた感じでした。パスワークもそれほど、いいというわけではないがペナルティエリアの少し手前からシュートしようという気概を持ったのが良かったと思っています。
――なでしこはそのタイミングは遅いと?
賀川:シュート力そのものも、男子と違って弱いからシュートレンジが短いのは当然ですが、女子のシュートの強さを上げるシュートの距離を伸ばすのは当然代表一人ひとりの日頃の練習でしょう。
――日本の1点目は相手GKのフィスティング(こぶしでボールを叩く)のミスがあり、落ちたボールが岩渕の頭の上へきた
賀川:とっさのことだったが、彼女のヘディングがゴールになりましたよ。この時の右からの川澄のクロスは彼女自身でしっかり狙って大儀見の上へ落とそうとしたのでしょう。高く上げて(途中でインターセプトされないように)ゴール正面ペナルティキックマークより少しゴールに寄ったところへ落下した大儀見の入りが良かったから、長身の5番がマークしていてもゴールキーパーは飛び出してフィスティングしようとしたのでしょう。
――それがDFの体が邪魔になってボールに手が届かず、すぐその横にいた岩渕のところへ落ちたわけですね
賀川:ゴールキーパーの判断ミスでもあるけれど、ここがサッカーという競技の面白いところです。良いクロスが来て、大儀見が先に位置取りしてジャンプする、それにつられて相手DFもジャンプ、ゴールキーパーも飛び出す、宮間も触れずにボールがその裏へ落ちる、そこにもう一人いた。ゴールとはこういう入り方もあるという見本です。
――せっかく喜んだのに、そのあと1点を奪われてしまう
賀川:韓国はロングボールをエリア内へ上げて、そこで競り合わせ、こぼれ球を拾うという形を仕掛けていた。41分に右サイドでキープして日本の2人を引き付け、ゴールライン6mからバックパスをしてそれをキム・アンヨンが右タッチライン内側3mから右足でエリア内に高いボールを送った。右ポスト、ゴールエリアラインに来た高い球をGK福元がジャンプキャッチした。
――一安心と思ったら
賀川:ボールを持ったまま着地するとき前にいた熊谷の肩に福元の持つボールが当たって彼女の手からボールが落ちた。そこに韓国のチャン・ソルビンがいた。彼女のシュートも良かった。彼女はゴールを背にした形でボールを取った後、反転して右足で蹴った。スロービデオを見ると、ボールの底を蹴ってわずかに浮かせているのが素晴らしい。このため日本側はゴールカバーに入りながら腰より上にとんできたボールは体と右ポストの間を通り抜けた
――もしゴロのボールなら足で止められていた?
賀川:韓国側の執念が彼女に表れましたね。
――日本の守りがエリアに引いたときに、中盤で拾われて、何度かハイボールを上げられたのを戦術的にケアをするということをしなかったのがちょっと惜しい。
賀川:1-0としたあと上背のある相手がどんどんボールを上げてくるとき、そのキッカーをフリーで蹴らせていた。こういう時には日本のDFは男子も女子も強くないのは歴史的にわかっていることですからね。
――好運にも相手が点を取れなかった時には勝てました
賀川:後半0-0のときにエリア内で日本側にハンドがあってPKとなった。それを福元が止めた時にこれはいけるぞと思った人も多かったでしょう。彼女のファインプレーでした。キッカーのボールへのアプローチの角度が浅いので福元が止めてくれるだろうと予感しましたが…
――PKを蹴るときサイドキックなら深いサイドキックなら深い角度の方が読まれにくいという賀川説はどこかのスピーチでも話しましたね。改めてもう一度話してもらいましょう
賀川:折角良くなってきたのだから、第3戦でしっかり勝ってもらいましょう。彼女たちにとってもこの苦境の中で勝点3を取ることはこの後のサッカー人生にとっても大切ですからね。
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