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2016年1月

日本サッカーの伝統的なよさで五輪出場を決める

2016/01/28(木)

AFC U-23選手権 カタール 2016(リオデジャネイロオリンピック・アジア最終予選)

U-23日本代表 2-1(1-0、1-1) U-23イラク代表

――勝ちました。2−1です。U-23代表のリオデジャネイロ・オリンピック出場が決まりました


賀川:手倉森誠監督とチーム全員の纏まりですね。この大会の1次リーグで北朝鮮(1-0)、タイ(4-0)、サウジアラビア(2-10と3勝した日本は、準々決勝でイラン(2-1)を破り、この日の準決勝でイラクを倒し、決勝に進出しました。決勝の相手は準決勝でカタールを破った韓国です。オリンピックには上位3チームが出場するので、日本はアジアの五輪代表となったのです。

――これまでこの世代の選手はU-17、U-20 などの年齢別の試合でアジアの壁を破れずに世界大会の出場経験はなかった。それが年齢別の最後といえる23歳以下でアジアのトップに近づきました。

賀川:U-23代表は守りが強く、イラクの攻勢を耐え忍び、前半28分と後半の終了直前に得点しました。前半のゴールは鈴木武蔵が左サイドを突破して左からのクロスを送り、久保裕也が走り込んで決めた。43分にイラクの右CKから同点とされ、後半の終了直前に決勝ゴールを決めた。右サイドからのクロスをGKがフィスティングで防いだボールを原川力がエリア外から左足のビューティフルゴールを決めたものだが、残り10分ごろからイラクの運動量が目に見えて落ちていた。この2点目の攻撃は日本のCDFからのロングボールを相手のCDFがヘディングに失敗し、それを浅野拓磨が拾ってペナルティエリアの右外(ゴールラインから8メートル)からバックパスした。エリア内で受けた南野拓実が縦にドリブルして、高いクロスを送り、それをGKファハド・ラヒームがフィスティングした。そのボールがペナルティエリア正面の外へ落ち、そこに原川がいてシュートした。落下するボールのトラッピングにも余裕があり、相手の一人が妨害してくる前に左足を強く振ってシュートした。

こういう時のトラッピングからシュートへ入る動作をテレビの録画で見直してみると、この世代の代表たちは勝てないことで評価されていないが、ひとつひとつの個人技術がしっかりしていることを改めて見ることができるでしょう。

――手倉森監督の采配、選手起用のうまさもよかった

賀川:メディアでもそのことは話題にしています。大会でのこれまでの試合を見れば、当然、監督さんの指導力を評価するでしょう。私は監督さんたち、このU-23を指導した人たちが、自分たちが選んだ「上手だがひ弱い」と言われた、ある時期のこの世代を長い目で見守って、今の強さに持ってきたところに、いまの日本のサッカーの厚さを感じています。

――もちろん、賀川さんには不満もあるでしょうが

賀川:ひとつひとつのプレーや、個々の局面については、改良の余地はあるでしょうが、なによりもサッカーはチームゲーム、それも11人だけでなく、選ばれた代表全員のゲームという感じが出た。いわば、日本サッカーの伝統的なよさがこの世代に見られたことが、とてもいいと思います。

もちろん、彼らの一人一人が相手との1対1の奪い合いでも負けまいとする姿勢も買っています。そのためファウルの多いのは育成期からのボールの奪い合いの訓練で考えなければなりませんが…

――決勝の相手は韓国です

賀川:韓国は日本と戦う時は120%の力を出すと言っています。そういう韓国に勝ってこそ、アジアナンバーワンといえるのですから、リオへゆけることで満足しないで、このステップの上にもうひとつ優勝という実績を積んでほしい。

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強敵イランを倒して準決勝へ、リオ五輪も目前に

2016/01/25(月)

日本 3(0-0、0-0、1-0、2-0)0 イラン

――難関の対イラン戦に勝って準々決勝を突破しました。次の準決勝に勝って大会のトップ2に入れば、リオのオリンピック行き、もし負けても3位決定戦で勝てばやはりオリンピックに行けます

賀川:ともかくイランに勝ったことをまず喜びましょう。1次リーグの初戦で体格・体力も上の北朝鮮に勝ちましたが、今度のイランは体格・体力だけでなくその粘り強いプレーに定評がある。手や腕を使ってのファウル、遅れたタックルなども多い、戦いにくい相手に勝ったのです。

――90分間よく負けなかったという感じでした

賀川:90分間に日本にもチャンスはあった。イランにも、彼らには「惜しい」というチャンスもあった。しかし、90分のうち、後半30分を過ぎてからイランの選手の運動量は落ち始めていた。90分終わって延長戦に入ってからは、その兆候が目立ちましたね。

――倒れてすぐ立ち上がれない選手も増えた

賀川:日本の選手も疲れはあったはずだが、動きの質も落ちなかった。日本の交代も効きましたね。

――後半37分に久保に代えて浅野を投入し、43分に矢島の交代として豊川を送り込んだ

賀川:1次リーグの3試合で23人のメンバーのうち、22人を試合に起用した。バランスよく休養が取れて、選手のコンディションも良かったのでしょう。

――監督は、持久力はイランよりこちらが上だと言っていたようです

賀川:延長はまさにその通りになった。イランは中盤で人数をかけて日本をつぶしたのに、それができなくなった。延長に入って、まず2分に右サイドの室屋側から攻めた。3分には相手ボールを右サイドで奪って、左へ展開し、オナイウ阿道がノーマークだったが、タイミングが合わずボールは右へ流れるという場面もあった。相手のロングパスでオフサイドがあり、そのFKから左に回し、ここからボールが中へ、右へと移って、4分47秒に右タッチライン際、ゴールラインから17メートルで室屋がキープした。

――右から左、左から右と攻撃展開の幅が広く、動きの鈍ったイラン側はボールへの寄せが遅くなっていました

賀川:室屋は余裕を持ってキープし、タテにフェイントをかけ、後方へ切り替えして左足でクロスを送った。

――ボールはペナルティエリアの中央へ飛び、赤いユニフォームのイランの2人のDFを越え、ゴール正面、ゴールエリアのすぐ前へ落ちてきた。そこに豊川がいた

賀川:相手CDF 4番のチェシュミの上を越えたボールをノーマークでヘディングした。室屋のクロスもスピード・高さともに申し分なく、豊川が一旦ニアに寄ってマーク相手を牽制しておいて落下点へ入る動きも良かった。ビューティフルゴールでしたね。

――そういえば初戦の対北朝鮮の1点は山中の右からのCK、左足で蹴ったカーブボールでした

賀川:CDFの植田がボレーで蹴りました。同じ質のカーブキックでしたね。

――日本がこの1点で元気づくのは当然ですが、イランはこのあともがんばりましたね

賀川:元気を奮い起こすようにがんばりましたね。

――日本のGK櫛引の素早い飛び出しやすぐ近くからのシュートのキャッチなど大事な働きがありました。その前半の動きが終わって延長の後半に入りました

賀川:イランのキックオフから始まった後半の4分に日本が2点目を取りました。

――相手の2人がオフサイドになった日本のFKからの攻撃がその始まりです

賀川:FKからのロングボールが相手ペナルティエリアの左角近くに落ちて、高くバウンドしたのを浅野が取りました。ゴールライン近くまで動き、そこからバックパス。ペナルティエリア左角近くで受けた中島が後ろへドリブルして相手のマークを外し、ペナルティエリア左角からシュートしました。

――GKアハバーリの意表をついた?

賀川:後方へドリブルする感じだった。シューターの方はそのつもりでも、ゴールキーパーからは予想外だったでしょう。相手DFを前にして右足、左足のタッチでボールを動かすフェイントのあと少し大きく右へボールを動かしておいてシュートしました。ペナルティエリア内に日本側が2人入っていたから、クロスがくるかも…とは予想したかもしれないが。

――ゴールラインから少し前に出ていたゴールキーパーは、戻ってジャンプしたが、その右手の20センチ上を通ってボールはゴールに飛び込みました

賀川:蹴った方は会心のシュート。日本中がテレビの前で安心したでしょう。サッカーの醍醐味の一つと言えるロングシュートでしたね。

――さすがのイランも2ゴールにはガクッと来たはずですが

賀川:次のキックオフからイランはボールを左サイドへ送り、ハーフウェイライン手前からロングボールを送ったが、日本はこれを奪ってハーフウェイラインに戻し、中島が取って、前方のスペースへパスを送り込む。浅野が走ったが、相手DFがGKにバックパス、GKはダイレクトでクリアしたのを日本側が取って、再び左サイドの中島にボールが渡る。

――その中島のドリブルからの攻めが3点目を生む

賀川:中島はドリブルして相手DFと向かい合いペナルティエリア左角で中へドリブルで持ち込み、エリアライン上から右足でシュート。

――今度はGKもシュートしてくると見たハズですが

賀川:ドリブルを始めてからシュートまであっという間だった。GKのニアサイドの上を向いて飛び込んだ。

――そのあと浅野のシュートは相手GKに止められましたが、立て続けにチャンスがきました

賀川:浅野の速さに相手DFがついていけないという感じになった。彼は自分の得点はなかったがやはり「効いていた」という感じですね。

――イランがそれでも1点でも奪おうとしたこともあって120分の試合は最後まで緊張感があったが、3-0。日本の快勝となりました。

賀川:延長後半10分のイランのノーマークシュートがバーに当たりました。全員のがんばりと、ほんの少しの幸運で日本は大きな関門を突破しました。

――監督はチーム一丸の勝利と言いましたが…

賀川:日本の監督さんの選手起用の巧さと、23人全員の能力の高さがうまく合ったのでしょう。

――ただし、まだオリンピック予選を通過したわけではありません

賀川:「しびれるような試合」と誰かが言っていたが、こういう試合を勝つことでU-23代表が強くなっていく。若い彼らが、自分たちの力でこれまでの実績を越えて、一歩一歩、オリンピック本番に近づくのを見るのは本当に楽しいことです。

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リオオリンピック予選で3連勝 もっともやり難い相手を突破してベスト4へ進もう

2016/01/21(木)

――カタールでのAFC U-23選手権 カタール 2016(リオデジャネイロオリンピック・アジア最終予選)でU-23日本代表は1次リーグを3連勝。B組1位で22日の準々決勝でイランと対戦します

賀川:Bグループリーグの初戦で北朝鮮に1-0で勝って、チーム全体が自信を持ち、盛り上がったという感じでしたね。第2戦の相手のタイは北朝鮮に比べると、日本には戦いやすい相手でした。ここで攻撃展開や得点へのプレーを体感し、最終戦の強敵サウジアラビアにも2-1で勝ちました。

――メンバーがそれぞれの試合で大きく変わっていたのにも驚きました

賀川:監督さんのうまさというのか、選手の気持ちをまとめるうまさに感服しました。1ヵ月近い長い期間でのアジア選手権であり、リオの予選なのですが、多くの選手をピッチでプレーさせることで、チーム内に競争と当時に全選手の試合への意欲が湧くはずです。このことが勝利へ一丸となる気風を増しているのだと思います。若くて伸び盛りのプレーヤーが監督さんの巧みな選手起用で力を伸ばしているように見えます。

――北朝鮮戦ではどこに目を付けました?

賀川:この世代の選手たちは北朝鮮の代表には各世代の試合で勝っていません。しかし、日本は層が厚く、また個人的にはボールテクニックの基礎の力が高いので、私は年齢をかさね体力、体格で負けなければ勝てるようになるのではないかと見ています。

――右コーナーのキックからの先制ゴールの1点が唯一のゴールとなりました

賀川:プレースキックを正確に目標へ蹴ることができる技術と、そのファーサイドへ落下してきたボールに植田がいて、正確にシュートしたことで先制ゴールが生まれました。試合の早いうちで、相手側はこのCKでもニアを警戒しましたね。

――守備に追われる時間もかなりありました

賀川:北朝鮮にもチャンスはあったけれど、シュートが不正確でした。このあたりは私が旧制中学生のころの1930年から対戦してきた朝鮮半島の多くのチームとよく似ていますね。力強いシュートはできるけれど、コントロールがあやしいのです。

――タイとの試合はFWは鈴木武蔵と久保のペアだったのを、この試合は広島の浅野と鈴木を組ませました

賀川:先制ゴールは鈴木が後方からのパスのバウンドを頭で処理して相手CDFと並走しつつ右足のシュートを決めました。鈴木という大柄で体格の強いFWのいいプレーでした。いいCFがいるチームでは常識的なゴールの一つですが、ここしばらくの日本代表ではあまり見ることのできないシーンでした。久しぶりににんまりしたのを覚えています。

――トップの選手はポストプレーはよく見るが、後方からのボールを相手DFと競り合いながら決める場面は、そういえば少なかったですね

賀川:2点目は右サイドから深く切れ込んできて後方にパスをし、そこから一旦クリアされたのを左で拾って一気に縦にドリブルしてゴールライン近くからクロスを上げ、矢島がヘッドで決めました。若いのに攻めるコツ、点を取る形を作るコツを知っているなと嬉しかった。

――フル代表がアジア勢相手にボールキープの時間帯は長くてもゴールが少ないと言われてきた。このチームは短いパスでつなぐというより、どんどん前方へボールを送って走っているという感じが強いですね

賀川:チャンスと見れば縦に突っかけることは大事ですよ。もちろん、サイドへ散らして相手側の視線を外に向けさせることも必要ですが、このチームはドリブル突破できるプレーヤーもいて、ボールを回すことより、点を取る有効なパスは何かを掴もうとしていて、とても見ていて楽しいですね。

――サウジ戦も楽ではなかったが、ペナルティエリア外からの2本のシュートが利きました

賀川:サウジは相手に攻められるとペナルティエリア内に多数が後退して守る。すると、その前のスペースが空いてくる。1点目はその広いスペース、ペナルティエリアから10メートルあたりの中央右寄りで、南野がドリブルし、後方の大島へバックパスした。大島のボールを奪いに来たのは相手の一人だけだったから、大島は右足アウトサイドで相手のタックルを右へはずし、しっかりと狙ってシュートの構えに入り、右足で叩いた。ボールは素晴らしいシュートでゴール右寄りに突き刺さった。

――まるで、ヨーロッパの試合のようでした

賀川:日本の選手でもしっかり叩けば強いシュートができるという見本でした。

――後半も南野のドリブルから

賀川:相手守備ラインの外側を右から中へドリブルした左足でシュート体勢に入ろうとしたが、シュートしないで中央同じ位置にいた井手口に横パスを送った。井手口はこれをダイレクトシュートした。ノーマークだったから、余裕を持ったシュートはゴールキーパーの守備範囲だったが、球の強さがものをいって2点目となった。

――不運なPKで1点を奪われた。これ以外のピンチもありました

賀川:シュート力不足が日本の課題と言っていたのに、このアジア予選のU-23はシュートが良かったから勝ったと言えるでしょう。もちろん入らなかったシュートへの反省は必要だし、まだまだ中盤でのボールの奪われ方の良くないところもありますが、全員がよく走ること、相手との1対1で負けないぞという気迫のある点が頼もしい。

――ちょっとファウルが多いのでは

賀川:これはJリーグでもそうだが、1対1の奪い合いで相手の肩を掴むプレーが多い。相手の動きに一瞬遅れた時にも腕で止める。共同動作で守るとともに守るとともに日頃の試合で正しいプレーを身につけることも大切でしょう。

――準々決勝の相手はイランです

イランは日本選手にとって体格や体の粘っこさなどでやり難い相手です。これまでも痛い目にあっています。ひるむことなく、激しい動きとクレバーなサッカーで倒してベスト4へ進んでほしいものです。

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【お知らせ】「このくにのサッカー」トークイベントを開催します。

2016/01/16(土)

賀川浩も所属するNPO「サロン2002」の月例会で、賀川が講演することが決定しました。
以下はサロン2002からの案内ですが、メンバー以外も気軽に参加いただけるようになっています。
多くの皆様と「このくにのサッカー」を語ることができればと思います。

【日 時】2016年2月1日(月)19:00~20:30 終了後、同じ会場で懇親会を行います。
【会 場】フットボールサロン4-4-2
  東京都墨田区江東橋4-16-5 SKビルB1
  http://4-4-2salon.jimdo.com/   TEL:03-5600-9177
  総武本線「錦糸町」南口下車徒歩数分
【テーマ】このくにのサッカー
【演 者】賀川 浩(スポーツライター)
【概 要】
現役最年長スポーツライターの賀川浩さんが、プレーヤー、監督、経営者、メディア関係者などと語りあい、サッカーのいまを知り、未来を眺める対談集の企画を進めており、ウェブサイトでの発信と書籍出版を目標に、その費用をクラウドファンディングで募集しています。このプロジェクト「このくにのサッカー」について賀川浩さんに語っていただきます。

以下は賀川浩さんの趣意書より引用。

このくにのサッカーを語りあい、つたえていきたい 賀川浩

 1873年、英国海軍のダグラス少佐によってフットボールが日本に伝わって以来、140余年を経て、日本サッカーはアジアのサッカー強国となり、FIFA加盟209か国の中でも国内試合の運営や、ワールドカップをはじめとする国際大会の成功などで高い評価を受けています。
 そうした今日の日本サッカーを築くために力を盡してきた先人たちについて、私は月刊グランで「このくにとサッカー」という連載で2000年6月号から書き続けていますが、新しく「このくにのサッカー」という日本と世界のサッカーの現在と未来を語る対談を企画しました。プレーヤー、監督、サッカークラブの経営者あるいはJFA(日本サッカー協会)の運営にかかわる人たち、メディア関係者、サッカー関連の企業の皆さんなどのさまざまな体験や見識を聞かせていただき、話し合いたい。サッカーの楽しさ、時には苦しさも語りつつ、いまを知り、未来を眺めたいと考えています。
 日本と世界が生んだすばらしいサッカー人との対談企画を成功させるために、多くの皆さんのご協力をいただきたいと心から願っています。

プロジェクト公式サイト
http://konokuni.soccer/
クラウドファンディングページ
https://readyfor.jp/projects/konokuninosoccer

【参加申込】サロン2002のHPからお申し込みください。参加費1,000円です。
終了後、そのまま懇親会を開きます。どうぞこちらにもご参加ください。(会費3,000円の予定です)
サロン2002

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ありがとう澤さん 90歳の人生の晩年にいいサッカーを見せてもらいました

2016/01/12(火)

――澤さん、澤穂希さんが引退しました。長いサッカー人生の最後の公式試合となった皇后杯全日本女子サッカー選手権大会決勝の対仙台で唯一のゴールを澤さん自身がヘディングで決めたのもすばらしいフィナーレでした

賀川:6歳の時にお兄さんの影響でサッカーを始め、男の子と一緒にプレーし、男子に負けないぞということからスタートしたと聞いています。15歳で日本代表になりましたが、その前に読売クラブという比較的自由な空気のなかでプレーを続けたのもよかったのでしょう。今の女子の環境から見れば、決して恵まれたと言えませんが、当時の少女、澤さんにはよかったのでしょうね。

――引退が決まると、まずフジが澤さんの引退特集番組を組みました。とてもよかったのですが、その後NHKが1時間半という長い引退特集を放送してくれました。後半部にカズ(三浦和良)さんとの対談形式があって、しっかり充実したものでした。この民放とNHKの二つの澤特集番組で、アメリカのアビー・ワンバックさんがインタビューで澤さんを讃えていたのがとても印象的でした

賀川:そうですね。ワンバックさんの澤さんへの尊敬と愛情がこもっていましたね。昨年のバロンドールの授賞式がチューリヒで行われ、私もFIFA会長賞の受賞のために出席したのですが、その時、澤さんは前回の女子最優秀選手としてプレゼンター役で来ていました。式の前に澤さんとワンバック、そしてブラジルのマルタの3人が一緒にいて楽しそうだったのを眺めていましたよ。ワンバックさんはアメリカというサッカーがまだメジャーになっていない土地で女子を強くすることで、女子サッカーだけでなくサッカー全体の人気を高める努力をしてきました。日本の女子サッカーの先頭に立ってきた澤さんは、ライバルであるとともに、女子サッカー興隆の「同志」であったかもしれません。

――澤さんが引退したことで、なでしこジャパンは大きなリーダーを失うことになります

賀川:実績といい、プレーヤーの格といい、別格のプレーヤーだった。もちろんどのようなすぐれた選手でもピッチを去る時は必ず来るのですが。

――賀川さんも日本でも世界でも、トップスターの引退を何度も見て来たでしょう

賀川:そうですね。ペレさんにもベッケンバウアーにもグラウンドを去る時が来ました。釜本邦茂も84年に去りました。いまFIFAの騒動の中にいるプラティニもすばらしいプレーヤーでした。彼の後継者ジダンはレアル・マドリードの監督で少し目立つことになるのかな…。まあ大選手は引退した後も、それぞれの大切な仕事があるでしょう。

――釜本の引退試合を計画し、開催にかかわったのも賀川さんでしたね

賀川:そういえば、澤さんの引退試合はどうするのですかね。

――公式試合の結末があまりにも美しかったから、引退試合はどうでしょうか

賀川:釜本選手の引退試合をした1984年は日本サッカーが停滞の時期でした。そうした空気のなかで、もう一度、釜本邦茂という選手の引退にあたって、なぜ釜本のような選手が生まれ育ったのかをサッカー界の皆さんに考えていただくきっかけになると考えてヤンマーディーゼルの山岡浩二郎部長と相談し、JFAや日本サッカーリーグの支援で開催しました。

――国立競技場が超満員になりました

賀川:あらためて釜本の人気に感嘆しました。彼の働きや、ストライカーそのものについて、日本全体で考えてくれたかどうかは、いまもってよくわかりませんが。

――澤さんという偉大なプレーヤーをもう一度見つめなおす機会として、引退試合があってもいいでしょうね

賀川:それはともかく、私自身はこのブログ上でも折に触れて、サッカー選手としての澤さんを皆さんと語りあいたいと思っています。あれだけ、世界中から尊敬されたのは、人柄もあるでしょうが、何といってもアビー・ワンバックさんの言うように、世界最高の技術を持ったサッカー選手ですからね。ボールを止める、蹴る、パスを出す。相手のボールを奪う…そしてまた、空中戦の強さのもととなったヘディングなども解明していきたいと思います。あの2011年のワールドカップ決勝、対アメリカの左CKに飛び込んで右足に当てたゴールも、彼女の空中のボールに対する強さや感覚にサッカーの神様がくれたご褒美でしょうし、引退ゴールとなった皇后杯決勝の、蹴った川澄奈穂美さんがボールを呼び込んだヘディングと言ったプレーの原点はどこにあるのでしょう。いろいろと考えたいものです。

――そういえば、釜本さんは、引退試合でもゴールしましたね

賀川:今の澤さんと違って、釜本さんはあのころは足に故障をかかえていて、万全ではなかった。それでも引退試合という舞台でゴールしたから一緒にプレーしたペレやオベラーツ(西ドイツ)たち大スターも楽しんでいましたよ。

――澤さんの引退によって女子サッカーの歩みが止まるのでなく、前進の速度を速めるくらいになってほしいものですね

賀川:長い間ご苦労さんでしたが、これからもまだまだ女子サッカーのために、大事な人ですよ。私自身も、91歳まで長生きできたおかげで、人生の晩年に澤さんのサッカーを見せてもらうことができました。ほんとに有難うと言いたいですね。

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新年のご挨拶

2016/01/05(火)

明けましておめでとうございます。

新しい年2016年、平成28年も4日が過ぎ、今日は1月5日です。多くの皆さんはすでに新しい年の仕事を始められていることと思います。今年もよい年でありますよう、お祈りいたしますとともに、本年もよろしくお願いします。

小生も昨年12月29日で満91歳となり、今年はその91歳から92歳に向かう1年となりました。昨年1月のFIFA会長賞という望外の栄誉があり、そのために予想外の忙しい1年でした。ありがたいことに日本サッカーも少しずつ前進を続けているようで、今年はリオデジャネイロでのオリンピックもあり、2018年ロシアワールドカップのアジア予選もあって、そうした重要な舞台での代表のプレーを見る楽しみもあります。

今年の私の仕事のひとつに、サッカー界の今を形づくるのに力を注いでおられる人たちとの対談を通して、日本サッカーのいまと未来を語っていただこうという企画があります。「このくにのサッカー」と題した企画で、まずウェブサイトに掲載させていただき、次いでその対談集(人数は15人でどうかと)を秋に出版したいと考えています。そしてその経費をクラウドファンディングという形で皆さんのご支援をお願いすることにいたしました。

例によって、私の不手際から年末遅くなってのクラウドファンディングの立ち上げとなってしまいましたが、早速多くの仲間から支援の申込をいただいて、とても感激いたしております。なかには「いつまでも現役で書き続けてください」との激励のお言葉を添えてくださる方もあり、ご厚意まことに身に染みています。

サッカー好きの皆さんには年末年始はサッカーのビッグイベントもあり、テレビ観戦を含めてお忙しい日々ではありますが、クラウドファンディングの目標を果たし、ぜひ仕事に取り掛かりたいので、今後とも皆さんのご協力をお願いする次第です。

今日5日は、図書館の神戸賀川サッカー文庫へ足を運ぶ日になっていますが、休みとさせていただきました。7日にスピーチの予定が入っていて、昨年の早いうちからのお約束なので、万全な体調で、と思っているからです。

サッカーは国内、国外ともとても面白くなっています。皆さんと試合や選手やプレーのひとつひとつについておしゃべりできる機会を持てることを願っています。

クラウドファンディング
90歳の現役最年長スポーツライター賀川浩の対談集を発信したい

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