1ゴールに終わった香川 不満はあったがとにかく勝点3
FIFAワールドカップ2018 アジア2次予選
日本代表 3(1-0、2-0)0 カンボジア
――雨の降りやまない埼玉スタジアム、それでも54,716人のサポーターが詰めかけました。
賀川:ありがたいことです。ここしばらく中国での東アジアカップで欧州組不在の代表を見ていて、香川、本田をはじめ欧州組が顔をそろえるのだから、サポーターの皆さんの期待も高まったはずです。
――プレミアリーグ2人、セリエA2人、ブンデスリーガ4人、国内組はGK西川周作(浦和)、DF森重真人(FC東京)、山口蛍(セレッソ大阪)の3人がスターティングラインナップでした。カンボジア側は23歳以下が多く、日本を相手にどこまで頑張れるかということでしょう
賀川:力の差を考えれば大量ゴールを予想した向きもあったはずだが。
――しかるに「さにあらず」でした。日本は90分を通して34本のシュートを打ち、12本のCKのチャンスがあったが、前半28分本田圭佑の左足ミドルシュート、後半5分吉田麻也のこれもペナルティエリア外からのシュートで1点ずつ、後半16分ペナルティエリア内での岡崎のシュートのリバウンドを香川真司がインサイドキックで決めて3点目を奪いました
賀川:ゴールの決まった場面以外にも、これは入るだろうと多くの人が思ったチャンスもたくさんあった。
――なかでも惜しかったのは香川の前半2度のチャンスでした。ドルトムントでの今シーズンの活躍から見て香川への期待が大きかっただけに、ちょっとショックでしたね
賀川:今年のドルトムントはゴール数も多いし、チーム全員の運動量が多くて、開幕から3連勝だが、その攻撃展開の元となっている香川のパスが実に見事です。もちろん、彼のパスを受けるチームメイトの能力も高いのですが。パスの一つ一つに香川の技が光っています。開幕試合の先制ゴールは香川が左後方からのパスを受けてダイレクトで自分の左側にいるロイスに横パスを送り、ロイスがこれを受けて小さくドリブルをしてシュートを決めました。右足インサイドでのそのパスのコースといい、タイミングといい、グラウンダーの強さといい、パーフェクトでした。今年の彼は攻撃の際のゴールに結びつく、決定的なパスも、その一つ前のキラーパスの予備的なパスというべき、チャンスへの入り口になるパスでも非常に丁寧で成功している。
――サンケイスポーツの翌日の紙面の賀川さんのコラムに、ハリルホジッチ監督の香川の起用法が見出しになっていました
賀川:監督さんにとってはまだまだ全選手の能力を試したいところでしょうが、香川の攻撃展開の巧さを活用することが、今後のチーム作りに大事なのではないかと思っています。
――彼のパスを受ける側にも、香川はここへパスを送り込んでくるという判断をさせるということですね
賀川:彼は左右にボールを散らすときはどういうボールをどのタイミングで蹴るか…などはそう難しくないはずですが、実戦で生かすためには、実戦で互いに「あ・うん」の呼吸と言うべきものを重ねることが大切でしょう。
――ハリルホジッチ監督はもう少し選手たちの特徴を見たいと思っているのでしょうか
賀川:監督は、自分の指示や言葉が日本代表には予想以上に強く影響していると思って、まだ各選手のチームでの役割の指針を出すのは止めているのかもしれません。
――それにしても香川はエリア内の多人数守備の相手であっても、いいところへ入ってきますね
賀川:決定的とも言えるチャンスがあって、そこで点を取らないと目立つことにもなりますよ。
――そのことで、本人がまた慎重になりすぎるということもあるでしょうか。パスのサイドキックのとても上手な香川がカンボジア戦で、ノーマークのサイドキックを2本失敗しました
賀川:ゴール前での成功、不成功を精神的な面からみる場合もあります。香川は真面目人間で、得点しなくてはいけないと思い込んでいて、そのため慎重になりすぎるのだという見方です。
――テレビの解説でもそういう声がありました
賀川:たしかにその通りかもしれません。しかしだからと言って、どうやって落ち着いてシュートするのか、あるいは気楽に肩の力を抜いてプレーするのかは本人の仕事でもあり、コーチ、監督の「声」あるいは「ヒント」なのか…
――デットマール・クラマーはアドバイスが上手だったと聞きました
賀川:私も、いくつかの例を知っています。言葉の魔術もあるでしょうね。もう一つは技術の問題です。
――というと
賀川:ゴール前へ走り込んできて、短いシュートを決めるとき、インサイドキックが多いはずですが、このインサイドキックが「曲者」です。前半1-0となったあと、30分を過ぎた頃に右からのグラウンダーのクロスを香川が右ポストの外1mほどのゴールエリアにいて、左足のインサイドに当てて右ポスト(ニアポスト)の右外に外しました。そしてその後で、今度は左サイドから武藤がドリブルで走り込んできて出したグラウンダーのパスを右足のインサイドで、相手ゴールキーパーの方へ流してしまいました。自分の前のゴールはガラ空きだったのに…
――彼の右足のインサイドキックのパスのうまさを見た者には信じられない光景でした。
賀川:だから心の問題だとも言えますが、私はその時の体勢ではインサイドキックが良かったのか、インステップキックの方が良かったのを考えてみては…と思っています。ゴール前に走り込んできたとき、サイドキックは案外難しく、インステップキックの方がずっとやさしい場合があります。これについては、選手が自分で考えるべきですが、サッカー好きで議論してもらってもよいと思います。
――この点は自信をお持ちのようですが、その議論はまた後に聞かせてもらいます。カンボジア戦の香川は?
賀川:香川は2度のチャンスを失敗したが、それでも1ゴールしました。後半途中から監督さんは彼を左サイドに回しました。彼はトップ下も上手ですが、この日は左サイドの武藤が早くから中へ入ってくるため、左サイドの外のスペースを使うことが少なかったのです。香川が左へ回ったことで、長友も縦に動くようになりました。攻撃の幅が広がったことでチャンスは増えました。
――3点目の香川のシュートは右足インサイドキックでした。これについては?
賀川:エリア内の正面で岡崎が反転シュートし、それが相手側に当たってリバウンドした。入り込んでいた長友と、もう一人(武藤だったか)が相手DF一人とリバウンドボールを奪い合い、そのボールが香川の前に来た。十分な余裕があって、しかも自分の前にあるボールです。彼はインサイドキックで右ポストギリギリに決めました。
――相手はいつも5人のDFがエリア内にいました。時には双方で10人以上が狭いペナルティエリア内で攻め、守るという場面もあり、スペースは極めて狭いのですが、香川のこのシュートの瞬間は僅かな時間と空間がありました
賀川:彼もそのタイミングを逃さなかったということです。カンボジアの若者が疲れても粘り強いプレーを続けたのは立派でした。
――やはりサッカーは面白いものですね。再出発の代表のテヘランでのプレーに期待しましょう
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