東アジアカップ 韓国選手のPKのかけ引き
――男子は第1戦で北朝鮮の「高さ」に2失点しました。韓国の代表は195センチの9番キム・シヌクをはじめ平均身長で日本より6センチも高いイレブンでやはり空中戦は苦労しました
賀川:ヘディングでのゴールはなかったが、後半には折り返しのヘディングからのヘディングシュートがバーを叩いて日本側をヒヤリとさせる場面もあった。前半は韓国が圧倒的にボールを支配して5本のきわどいシュートがあった。得点はPKの1ゴールだけだったが…
――右からのクロスを競ったときに森重の左手にボールが当たった
賀川:相手がヘディングしてそのボールが当たった形になった。故意ではないだろうが…
――日本は39分に同点にしました
賀川:全くワンサイドゲームのように見えた試合で、日本が唯一のチャンスにゴールを入れて1-1にすると、一気に気分が変わる。サッカーのゴールの重さを改めて感じましたね
――PKでチャン・ヒョンスが決めた時、何かブツブツ言っていましたね
賀川:西川周作が読んでとんだ方向(自分の左、キッカーから見て右へ)と違ったとこへキッカーが蹴った。チャン・ヒョンスのキックへのアプローチの角度が浅かったので、西川にしてはちょっと理屈にあわないヤマのかけ方だなと思ったのだが。あとでスロービデオを見ると、キックをスタートする前に、チャン・ヒョンスは一旦左へ一歩動いてからキック体勢に入った。つまり、はじめより、より深い角度でボールへ向かったのです。
――というと、彼は右利きだから右足のインサイドで右(ゴールキーパーの左)を狙うのなら、はじめ立っていた位置では蹴りにくい角度なのです。そこでキッカーはスタートを起こす間前に一歩左へ乗ってからボールに向かった。つまり浅い角度、右足インサイドで右へ蹴りやすい形にしたわけ
賀川:そこで西川は自分の右、キッカーから見て右へ蹴ると読んだ。
――しかしチャン・ヒョンスは左へ蹴った
賀川:それも左ポストギリギリで正確なシュートでした。西川に逆方向を読ませる動きをしておいて、左へ正確に蹴ったのですから、このPKのかけ引きはなかなかのレベルのものでした。
――最初の位置で賀川さんを欺き、一歩左に寄ってゴールキーパーに読みを読ませた
賀川:つまり韓国のストライカーはPKでもしっかり考えて蹴っている、練習しているということでしょう。
――足でのゴールはPKだけでした
賀川:平均して韓国選手は大きいから足も大きい。したがってシュートはインステップで蹴るより、サイドキックかあるいは横殴りが多いのが一つの原因でしょう。
――ふーむ。そういえば山口蛍のシュートはインステップでしたね
賀川:1980年代のブラジルのFWでドトール・ソクラテスという長身選手がいた。足が大きくてインステップ(足の甲)でシュートできず、サイドキックばかりだったのを私は見ています。すべてそうだとは言わないが、大きな人にはそれ相応の悩みもあるのです。
――だけど大きければヘディングは得ですね
賀川:だから日本のCDFは苦労します。この韓国にもロングボール、ハイボールの空中戦ではとても苦労した。
――槙野や森重はよく頑張りました
賀川:上背は相手が上でもいい状態でヘディングさせないことが大切です。もちろん物理的には大変で1点あるいは2点は取れることもある。
――だからこそ日本代表は技術力を高め、韓国、北朝鮮だけでなく身長の高い欧州勢や跳躍力のあるアフリカ勢と戦ってもスコアの上で勝つようにする…というのが賀川さんの持論でしたね
賀川:これは私自身が旧制の神戸一中(神戸高校)時代から身体能力の高い師範学校(小学校の先生を作る学校、旧制中学生より2歳年長)や朝鮮地方代表(当時は日本の一部だった)と戦った75年前からずっと持ち続けている考えですが。
――今度の東アジアカップで北朝鮮と韓国も日本に対する身長差の有利をはっきりと利しての試合を挑んできました
賀川:おそらくハリル監督は単純戦法の彼らのサッカーには驚いたかもしれませんが、両国がともに古くから日本の弱点をつくためのやり方を知っているのです。
――外人の監督さんには前任者からの申し送りはないのでしょうね
賀川:技術委員会のアドバイスは当然あるだろうが、監督自身が体験したことでこれからの代表チームについても工夫するでしょう。
――ワールドカップの予選が始まるというときにこの東アジアカップを経験したのは悪くはない
賀川:選手にも監督にもいいことでしょう。その経験を足場に最後の中国戦をしっかり戦ってほしいですね。
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