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2015年8月

【お知らせ】第6回スポーツ学会大賞

2015/08/27(木)

このたび、第6回スポーツ学会大賞を受賞することになりました。
学会からの案内を以下に転載いたします。

第6回スポーツ学会大賞のご案内

スポーツ学会事務局よりお知らせです。
9月7日(月)に第6回スポーツ学会大賞記念講演会(第100回スポーツを語る会)を開催いたします。
本年の大賞受賞者は現役最年長サッカーライターの賀川浩氏。90歳を迎えた今もなお、現役サッカーライターとして活躍。戦後70年、特攻隊だった賀川氏が歩むサッカー人生を語っていただきます。

講師:賀川 浩 氏(サッカーライター)

演題:「サッカーの興隆」

日時:2015年 9月7日(月) 19:00〜(開場18:30)

会場:筑波大学 東京キャンパス文京校舎 1階 134講義室
東京都文京区大塚3-29-1
東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅「出口1」より徒歩約2分

参加費:資料代として1,000円(会員と学生は無料)

※事前申込は不要です。当日受付にて記名お願い致します。

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仙台での第2回全日本ユース(U-18)フットサル大会を見て

2015/08/26(水)

――U-18のフットサルの取材に仙台まで出かけたのですね。JFA(日本サッカー協会)が主催するフットサルではユース世代の最高の大会です

賀川:私たちのグループの本多さんが早くからフットサルに取り組んできた。そして高体連の中塚先生たちとU-18世代の大会を開催することで、高校生年齢にも普及し、レベルアップをはかってきた。JFAがその考えを取り入れて、この世代の大会を主催し、ゆくゆくは全国選手権に持って行こうとしてくれたのでしょう。第1回は東京で、第2回は仙台を会場にしました。

U-18世代のフットサルは、いつ見ても面白い試合が多いのだが、今回は個人レベルもチームのレベルも高くなっていて、素晴らしい試合が多かった。大会を見終わった第1の感想はその驚きとともに、もっと多くの人にナマでこの面白いフットサルを観戦してもらいたかったということでした。

――今回はスカパーでの放送もありましたね。そういえば決勝の岡山県作陽高等学校 対 北海道釧路北陽高等学校は20分ハーフ合計40分の間に両チーム合わせてシュートが47本、7ゴールの生まれるシーソーゲームでした

賀川:私は22日に仙台市体育館で準々決勝2試合と準決勝、23日にゼビオアリーナ仙台での3位決定戦と決勝戦を見ました。

――近頃は地方都市に立派な体育館がありますが

賀川:仙台市体育館は各種のスポーツ教室も充実しているようでした。その催し物の表を見るだけでも感嘆してしまいます。もうひとつのゼビオアリーナも驚きの一つでした。第3回以降も仙台になると聞いています。

――優勝は岡山の作陽高校でしたね

賀川:第2回大会の観戦に出かけて驚きはたくさんありました。第1は仙台という町の賑わいぶりです。実は東北の大震災の後、何度か福島県のある町を訪れ、その町の復興計画とスポーツについて相談を受けたことがありました。そのときに比べると、仙台が震災復興の基地としてとても活気があるのに驚きました。タクシーの運転手さんも「仙台の一人勝ちだと周囲から言われるのですよ」と言っていましたが…

――もともと、伊達政宗のころの仙台は、豊臣、徳川に対抗する大きな気概を持っていましたからね。そうゼビオアリーナについても語ってください

賀川:スポーツ用品販売大手のゼビオがゼビオアリーナ仙台というすばらしい体育館を作っています。バスケットボールのプロのリーグの会場ともなっていたところで、まさにアメリカのバスケットボール会場という感じで、電光掲示の設備が充実しています。ゼビオグループが日本フットサル連盟のエグゼクティブパートナーになっていて、JFA主催のこの大会にもナイキジャパンやフロムワンなどとともに協賛企業となっています。

――町も賑やか、会場もよし、そして試合も見どころいっぱい…

賀川:フットサルという競技は今どんどん普及している最中だから、レベルも年々上がるのは当然ですが、私にうれしいのはU-18といういわゆる高校生のフットサルに、この世代特有の「ひたむきさ」が試合にあらわれていることです。試合時間が20分ハーフだから、広いスペースのサッカーに比べると狭いピッチで、味方のゴール前でボールを奪って一つパスをつなげれば、シュートレンジに入る、そのシュートを意識しつつ、さらに相手の守りを崩しにかかる場合もある、ということで互いに4人同士のフィールドプレーヤーの攻防は、スペースの広いサッカーとはまた別のスリルがあります。

――優勝した作陽はサッカーで全国区レベルの強豪校ですね

賀川:同校サッカー部の総監督の野村雅之さんは指導者としても有名ですね。フットサルに力を入れ、今回出場したチームは春からサッカーボールを触っていない。

――つまりフットサルに集中した?

賀川:という話でした。もともとサッカーの素質のあるプレーヤーが集まっている作陽の部活の中でフットサルをするグループを作り、指導の先生もつくわけですからレベルアップも進むのでしょうね。

――その作陽と北海道の釧路北陽高校の決勝も1点差の接戦でしたね

賀川:釧路北陽高校は決勝で初めて見ましたが、プレーヤーのひとりひとりがしっかりしていて、開始1分に左サイドからの松野史靖選手のシュートで先制しました。作陽がすぐに北陽のゴール近くでの今川朋睦選手の相手を背にしながらのプレーで同点にし、1分後に北陽がまた伊藤圭汰選手のゴールで2-1、4分に作陽の敦賀大河選手が同点とした。この衝撃的な4分間のゴール奪取から5分後に作陽が今川選手の得点で3-2とした。ここから作陽のキープ力がまさり作陽の攻勢となったが、シュートが決まらず前半は3-2で終わった。

――試合の流れから見て、作陽が勝つと思われたでしょう

賀川:そういう感じになったが、後半になると北陽が巻き返して互いに惜しい場面が増え、36分に北陽に同点でゴールが生まれて3-3となった。延長になるかなと思い始めたとき、作陽の決勝ゴールが決まって4-3となった。得点者は眞中佑斗選手。残り時間を示す掲示は36秒となっていた。

――苦戦はしたが、結局は作陽という感じでした

賀川:うーむ、攻めながら点を取れないとき、あるいは勢いが北陽に傾いたときには作陽のプレーヤーは守備の面でも相手に体を寄せ、こぼれ球のシュートチャンスにも2人が潰しに行くなど守りも堅かったからね。自分たちのダイレクトパスの攻めのコースを予知され、パスが回らなくなると、サイドでの縦の突破を図るなど、手詰まりになったときの展開の変化もできた。

――準決勝の対PSTCロンドリーナU-18も接戦でした

賀川:PSTCロンドリーナはフットサルのクラブで、31番をつけた植松晃都選手は日本代表に入ろうかという優れた技巧派。身体は大きくはないが(171センチ)、ドリブルシュートもうまい。右利きだが、相手の意表をついてシュートを決めていた。

――作陽対ロンドリーナの準決勝は前半15分間で作陽が4-1とリード。後半にロンドリーナが追い上げて最後のスコアは6-5でした

賀川:前半に作陽のダイレクトパスが見事な展開となり、シュートも決まった。ロンドリーナも攻めたが、作陽の守りがしっかりしていた。

――前半の終わりにロンドリーナが4-2にしましたね。それを後半のはじめに作陽が力万雅哉選手の右サイドの突破から5-2としたのが大きかった

賀川:そのあとロンドリーナがGKに16番の吉森慎斗選手を起用して5人攻撃、いわゆるパワープレーに入った。ボールを奪われて無人のゴールへの作陽のシュートが入って6-2となってもロンドリーナは諦めずに繰り返して後半あと24秒という時に6-5まで迫った。

――すごい追撃戦でしたね

賀川:まさにフットサル、まさにU-18のフットサルという感じでした。

――3位決定戦はこのロンドリーナとエスパッソU-18(東海地域代表/静岡県)と対戦して10-4で勝ちました。エスパッソはブラジル人が監督ですね

賀川:クラブ内ではポルトガル語の会話が多いとか。静岡にブラジルからの日系人が多く働きに来ていて、その人たちの間に生まれたフットサルのクラブです。選手たちは個人的に上手だが、チームプレーという点で同じフットサルクラブのロンドリーナの方が少し上でした。この日は植松選手が冴えて一人で14本シュートし、6ゴール奪いました。

――小柄な吉森選手も4ゴールした

賀川:彼らは作陽戦での無念をはらすような試合ぶりでした。準々決勝でもいいプレーを見せてもらい、私にはとても楽しい2日間でした。

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東アジアカップ シュート力をはじめ個人のレベルアップを

2015/08/12(水)


9日<男子>
日本代表 1(1-1、0-0)1 中国代表

――日本は前半10分失点しました。相手の右スローガンからだった。ボールがエリア内に投げ入れられて長身のCF22番ユ・ターパオが受け、そこからバックパス、横パスを続けられ、15番ウー・シーがキープして左後方へバックしてエリア正面すぐ外からフリーの7番ウー・レイが見事なシュートを決めました

賀川:相手に接近して囲んでいるが誰も奪いに行っていなかった。ペナルティエリア内だからタックルに行ってファウルになるとPKだという恐れがあるにしても…日本のDFの問題の一つではあるが…

――スローインがエリア内のFWの足元に届くというのも考えなければならないでしょう

賀川:日本のゴールは前半の41分、左サイドを走りあがった倉田に槙野からうまいスルーパスが出て倉田は早いタイミングで中央へ送り、武藤が走り込んで決めた。

――ビューティフルゴールでした

賀川:槙野がドリブルで持ち上がったとき、中国側の動きがパタっと止まった感じになった。そのとき倉田がダッシュした。その倉田のクロスに合わせた武藤のダッシュも速かった。日本サッカーらしい一瞬に気持ちが一つになる瞬間でした。こういうタイミングを自分で作り出すようになってくれればサッカーも面白いのだが…

――日本は前半始めに何度も攻め込んだチャンスもありました。その始めの10分間に点を取られて、相手に先制された

――リードした中国は守りに傾き、日本が攻め、中国がカウンターを狙う形になった

賀川:そのカウンターでヒヤリとする場面もあった。もちろんこちらにもいくつかのチャンスがあったが結局同点ゴールを生んだのは41分の速攻だった

――後半には雨も激しくなった

賀川:日本は後半も良く攻めたが、サイドへの展開が少なく、中央の狭いスペースでの速攻が多いのがもったいない感じだった。

――24分には相手DFのボールをFWがプレッシングし、右サイドで奪って武藤のシュートチャンスがあった

賀川:ノーマークシュートで、こういうチャンスは案外ゴールにならないが、そこを落ち着いて決めるようになってもらいたいシーンだった。

――28分に武藤に代えて柴崎をピッチへ送りました

賀川:パスが回るようになったが、こういうときにいつも言っているように、利き足でない足(右利きの選手なら左足)で3~5メートルの短いパスをつなげるようになれば、もっと楽な展開になるはずです。パスを出すのにそのつど右に持ち替えるのは実にもったいない。

――また、こういう五分五分の試合では利き足以外は使いにくいでしょう

賀川:だからこそ、若いうちに左足を練習しておけば楽になるのですよ。中国だってほとんど「片足サッカー」ですから余計にそう思いました。

――37分に浅野が永井に代わって入りました

賀川:永井は良く頑張ったがシュートチャンスにシュートできなかったこともあり、この試合は前の選手でなく第2列、第3列の飛び出しでゴールしました。だからFWの浅野にそのチャンスが来ればと願ったのです。

――中盤は山口蛍が動き回って目立っていました

賀川:中国はファウルの多いチームです。疲れてくると、アフタータックルが増えるのです。そういう相手に比べると山口のタフな動きは誠に素晴らしかったが…

――こういう双方に疲れが出ているときに宇佐美のドリブルなどが効果的なはずです

賀川:ドリブルだけでなく上手なプレーヤーが目いっぱい動いてみることもまた試合の打開にプラスするのだが。

――47分に柴崎がペナルティエリア右サイドでシュートチャンスがあった

賀川:中へパスを1つ奪われましたね。そのあと右サイドでFKがあり、柴崎が蹴って、遠藤が高いジャンプヘッドをとったが、ボールは右外へ飛んだ。攻めながらゴールを奪えないまま終わってしまった。

――雨中で両チーム力を出し切った試合でしたが、それでも勝ってほしかった

賀川:国内組だけで編成した日本代表はいいところもあり、不満なところもあった。武藤のようにJで活躍して選ばれ、この大会でも2ゴールした者もいた。伸び盛りのプレーヤーの中からこの大会を足場にして、もっと上達していく者が現れると考えるのはうれしいですよ。

――宇佐美はどうでした

賀川:この試合の前半でもいいシュートをしたが、やはり点をとらないとね。この仲間の中で自分でチームを引っ張る気をもう少し出しても良かったと思います。

――2部セレッソでごひいきの山口蛍は?

賀川:彼は動きの量も質も高い選手で、この程度は当然ですが、精度の高いプレーをしなければならないでしょう。

――日本代表と選手たちのステップアップを期待しましょう

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東アジアカップ 最後の2ゴールで勝利と自らの成長をつかんだなでしこ

2015/08/11(火)

8日<女子>
日本代表 2(0-0、2-0)0 中国代表

――8月の第3戦でなでしこジャパンは中国代表に2-0で勝ちました。90分の終わりの所で1点を奪い、アディショナルタイムで2点目を取りました

賀川:相手の中国が後半に疲れて動きが鈍ったことも原因だが、暑熱のなかの過酷な90分を走り抜いて、最後に点を取る形を作って2点を奪ったこと、相手の個人力の攻めを無失点で防いだこと、ピッチの選手もベンチの選手も心をひとつにした試合でしょう

――そういう経験が、何よりと言うことですか

賀川:その試合で勝ったということは、今後に大きなプラスで残るでしょう。

――なでしこらしくない試合で始まった東アジアカップだったが…

賀川:今年のなでしこジャパンは、カナダのワールドカップにしても、今度の東アジアカップにしても準備が充分だったとは思えません。いろんな理由があるのでしょうが、試合を重ね、フィールドプレーヤー全員をピッチに登場させながら、最終戦にはともかく、その総力を出すようになったのだから、監督さんも選手たちも立派だったと思います。

――危うい場面もありました。例によって中盤でのパスミスを取られて、カウンターされることも一度や二度ではなかった

賀川:INAC神戸のFWで、国内リーグでも点を取っている京川舞を右サイドバックに置くという佐々木監督の意図は理解できても、京川にとっては不慣れなポジションで、初めは難しかったと思います

――経験を積ませる時間が足りなかった

賀川:佐々木さんはおそらく京川に長い距離を走る、あるいは防ぐこと、そしてサイドでのプレーを、もちろん攻撃も含めて身につけさせようとしたのでしょう。古い時代でもたいてい優秀なストライカーは若いうちにはウィングプレーヤーで登場していることが多いのです。現在ではサイドバックがそのウィングにあたりますからね。

――第3戦の得点では京川がドリブルで持ち上がってチャンスをつくりましたね

賀川:だれしもサイドバックで初めてプレーし相手のサイドも強いとなると、守りに気がいくもの。彼女はそこから攻撃にも出て持ち味を発揮するようになった。

――つまり京川のように新しいポジションでも3試合目にはこなせるようになってきたと?

賀川:京川だけでなく、各選手それぞれが監督さんの指示なり、考えを理解するようになったのでしょう。京川を例に挙げましたがチーム全員がそういう意味で進歩したと思います。

――1点目の前に京川のドリブルからチャンスが生まれましたね

賀川:相手の動きが鈍って、中盤でボールを取れるようになると、攻めの回数が増えた。ただし中国のDFも出て来ないで守り一辺倒になるから、崩し難くなる。

――ロングシュートが多かったのは、そのため

賀川:シュート力があるといいつつも、蹴る力はそれほど高くはない。遠くからだと力むことになる。まして前方に相手4~5人のDFが見えるのだから、成功率は低い。

――増矢を投入(後半21分)していた佐々木監督は横山をピッチに送りました。後半38分です

賀川:まぁこのあたりが大会を通じてチームの力が監督の手の内に入っていた証(あかし)でしょうね。MFに川村と中島という、大きな動きをして強い球を蹴れる2人を配したのもそうです。

――京川のドリブルの持ち上がりと左足サイドキックの相手のDFラインの裏へのパスを横山がシュートまでいったがゴールキーパーが飛び出して防いだ

賀川:相手ゴールキーパーがスライディングしてくるときに、こういうボールを浮かせてゴールへ入れるようになればレベルの高いストライカーということになるのだが、さすがにそこまでは行かなかった。それでも次のチャンスを横山が決めた。

――中盤で横山のドリブル、パスを奪われたのを、また日本側が奪い返し、スペースの広い中盤でゆっくりボールをまわしたあと杉田-中島と渡って中島がドリブルで進み、相手DFの間にスルーパスを出し、横山が走り込んだ

賀川:右から攻めた横山が左に回って行った動きも良かった。横山のトラッピングをDFの一人がスライディングで止めようとしたが、ボールは横山の前に転がり、シュートした。走り込んだ横山の勢いがボールを自分のものにしたのでしょう。

――後半43分で1-0、これで勝ったと思ったが、中国も攻めに出る

賀川:開催国の意地でしょうね。アディショナルタイム5分の表示は見ている方には心配だったが、彼女たちはそのアディショナルタイムでもう1点取った。右からのパスを受けて菅澤が相手DF2人と競り合い、エリア内でバランスを崩しながらもボールをキープして、後方の杉田にパスした。杉田はペナルティエリアすぐ外から右足サイドキックで正確なダイレクトシュートをゴール右ポスト内に送り込んだ。

――2-0となりました

賀川:この自分たちの2ゴールは彼女たちにはイメージとして残るだろう。もちろんビデオでの再発見もあるだろうが、東アジアのこの舞台で自分たちが作り上げたチャンスはなでしこの財産となるはずです。3試合でなでしこの彼女たちはチームとして個人として成長できたのですよ。

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東アジアカップ 韓国選手のPKのかけ引き

2015/08/08(土)

――男子は第1戦で北朝鮮の「高さ」に2失点しました。韓国の代表は195センチの9番キム・シヌクをはじめ平均身長で日本より6センチも高いイレブンでやはり空中戦は苦労しました

賀川:ヘディングでのゴールはなかったが、後半には折り返しのヘディングからのヘディングシュートがバーを叩いて日本側をヒヤリとさせる場面もあった。前半は韓国が圧倒的にボールを支配して5本のきわどいシュートがあった。得点はPKの1ゴールだけだったが…

――右からのクロスを競ったときに森重の左手にボールが当たった

賀川:相手がヘディングしてそのボールが当たった形になった。故意ではないだろうが…

――日本は39分に同点にしました

賀川:全くワンサイドゲームのように見えた試合で、日本が唯一のチャンスにゴールを入れて1-1にすると、一気に気分が変わる。サッカーのゴールの重さを改めて感じましたね

――PKでチャン・ヒョンスが決めた時、何かブツブツ言っていましたね

賀川:西川周作が読んでとんだ方向(自分の左、キッカーから見て右へ)と違ったとこへキッカーが蹴った。チャン・ヒョンスのキックへのアプローチの角度が浅かったので、西川にしてはちょっと理屈にあわないヤマのかけ方だなと思ったのだが。あとでスロービデオを見ると、キックをスタートする前に、チャン・ヒョンスは一旦左へ一歩動いてからキック体勢に入った。つまり、はじめより、より深い角度でボールへ向かったのです。

――というと、彼は右利きだから右足のインサイドで右(ゴールキーパーの左)を狙うのなら、はじめ立っていた位置では蹴りにくい角度なのです。そこでキッカーはスタートを起こす間前に一歩左へ乗ってからボールに向かった。つまり浅い角度、右足インサイドで右へ蹴りやすい形にしたわけ

賀川:そこで西川は自分の右、キッカーから見て右へ蹴ると読んだ。

――しかしチャン・ヒョンスは左へ蹴った

賀川:それも左ポストギリギリで正確なシュートでした。西川に逆方向を読ませる動きをしておいて、左へ正確に蹴ったのですから、このPKのかけ引きはなかなかのレベルのものでした。

――最初の位置で賀川さんを欺き、一歩左に寄ってゴールキーパーに読みを読ませた

賀川:つまり韓国のストライカーはPKでもしっかり考えて蹴っている、練習しているということでしょう。

――足でのゴールはPKだけでした

賀川:平均して韓国選手は大きいから足も大きい。したがってシュートはインステップで蹴るより、サイドキックかあるいは横殴りが多いのが一つの原因でしょう。

――ふーむ。そういえば山口蛍のシュートはインステップでしたね

賀川:1980年代のブラジルのFWでドトール・ソクラテスという長身選手がいた。足が大きくてインステップ(足の甲)でシュートできず、サイドキックばかりだったのを私は見ています。すべてそうだとは言わないが、大きな人にはそれ相応の悩みもあるのです。

――だけど大きければヘディングは得ですね

賀川:だから日本のCDFは苦労します。この韓国にもロングボール、ハイボールの空中戦ではとても苦労した。

――槙野や森重はよく頑張りました

賀川:上背は相手が上でもいい状態でヘディングさせないことが大切です。もちろん物理的には大変で1点あるいは2点は取れることもある。

――だからこそ日本代表は技術力を高め、韓国、北朝鮮だけでなく身長の高い欧州勢や跳躍力のあるアフリカ勢と戦ってもスコアの上で勝つようにする…というのが賀川さんの持論でしたね

賀川:これは私自身が旧制の神戸一中(神戸高校)時代から身体能力の高い師範学校(小学校の先生を作る学校、旧制中学生より2歳年長)や朝鮮地方代表(当時は日本の一部だった)と戦った75年前からずっと持ち続けている考えですが。

――今度の東アジアカップで北朝鮮と韓国も日本に対する身長差の有利をはっきりと利しての試合を挑んできました

賀川:おそらくハリル監督は単純戦法の彼らのサッカーには驚いたかもしれませんが、両国がともに古くから日本の弱点をつくためのやり方を知っているのです。

――外人の監督さんには前任者からの申し送りはないのでしょうね

賀川:技術委員会のアドバイスは当然あるだろうが、監督自身が体験したことでこれからの代表チームについても工夫するでしょう。

――ワールドカップの予選が始まるというときにこの東アジアカップを経験したのは悪くはない

賀川:選手にも監督にもいいことでしょう。その経験を足場に最後の中国戦をしっかり戦ってほしいですね。

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東アジアカップ 韓国に逆転負け

2015/08/07(金)

――男子は韓国に1-1の引き分けだったが、女子が1-2と逆転負けし、北朝鮮との2試合と合わせて、女子2敗、男子1分1敗となりました

賀川:女子日本代表は4年前のワールドカップの優勝、そして今年のカナダワールドカップの中軸となっていた選手に比べると、次の世代のレベルアップが遅れています。第1戦でもパスの失敗が多く、そのために何度もピンチを招きました。ピンチを招くだけで、攻めに出ようとしてパスミスでボールを奪われると、余計な労力を使うことになります。男子も含めて、サイドキック、特にダイレクトのインサイドキックをもっと正確に蹴れなければなりません。

――日本は前半30分に中島のシュートで1-0とリードしました

賀川:韓国側がボールの奪い合いに強くて試合は韓国が攻め、日本が守る形で続いていた。中島の先制シュートはペナルティエリア外2メートル中央やや右寄りのところで、右足で蹴ったもの。押さえのきいた素晴らしいシュート。韓国のDFに当たって方向が変わったのもよかったが…

――中島はINAC神戸でもキックの上手な選手として知られていますね

賀川:面白いことに、このチャンスは29分の左CKからで、まず中島が右足でCKを蹴り、そのハイボールのこぼれ球を中島がエリア左外からダイレクトでクロスをあげた。これはミスキックで高く上がってエリア外(ゴール正面)右寄りに落ちた。日本側がエリア内へ高いボールを送り、このボールが再びエリア外へ出てきたのを中島が蹴った。左CKに始まった彼女の3度目のキックが好シュートとなった。

――1-0でリードして後半は少しは良くなるかと期待した。しかし10分に同点ゴールを奪われました。

賀川:後半7分に日本の攻めでタッチ際ゴールラインから12~3メートルのところでFKがあった。キッカーは中島で、右足で蹴り、GKが防いで韓国側がDFでキープし前方へパスを送った。これがミスパスで日本のDFが取った。パスが最終ラインから中盤の上辻に送られたとき狙っていた韓国のチュ・ソヒョンが奪い一気にドリブルで持ち上がってペナルティエリアすぐ外の正面でシュートし、左ポスト側に決まった。彼女がシュートしたとき、3人の日本選手が近くにいたが、だれもタックルに行かなかった。

――佐々木監督は上辻の代わりに川村を入れて中盤の強化を図った

賀川:ボールキープの時間も多くなったが攻撃の大事なところでミスが出るのは変わらない。相手も1対1で自信を持ってしっかり守っていた。

――引き分けかと思ったら48分相手側にゴールが生まれた

賀川:FKから10番のチョン・ガウルの見事なシュートだった。暑い中で選手たちはよく頑張ったが、新しく加わった川村にパスが通ればと思う場面もあった。チャンスを何度も作ったのだから、やはり技術をもっと上げること、もちろん北朝鮮ほどの体格でなくても、もう少し体を強くすることでしょう。京川や猶本のような優れた選手でも、もう1ランク上のプレーができないと、ワールドカップのタイトル奪還などとは言えないでしょう。

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東アジアカップ 若いなでしこへの期待

2015/08/03(月)

――女子はパスミスが響いたと新聞やテレビでも報じられました。

賀川:女子の日本代表は、男子と違って佐々木則夫さんが長期間監督を務めています。今度の大会での選手選考も、その長い強化の一つのようですが、私が気になったのは、パスミスだけでなく選手ひとりひとりのボールを蹴る技術、止める技術の精度が低いということです。またディフェンダーが相手に接近するときの動作、「すり足」の使い方、スライディングタックルの自分の間合い(距離)など、DFの動作の基本的なものが心もとない感じがしました。

――暑さや不慣れなグラウンド、あるいは初の代表となっての精神的なものもプレーに影響したかもしれません。

賀川:当然そういうこともあったかもしれません。しかし、ひとつひとつのプレーにもっと「気」が入っていることが必要でしょう。これだけサッカーが盛んになっているのに、女子代表でボールを持った時に突っかけていける、ドリブルで突破するぞという姿勢のプレーヤーが増矢たちごく少数なのにもいささか失望しました。

――第一戦の半生を4日の韓国戦でどのように見せるかですね

賀川:とにかく自分の得意なプレーをチームのなかで、どのように役立てるか、せっかくいいチャンスをもらった選手たちが、強気で積極的にプレーすること。暑くて苦しいときは相手も同じなのだからと、それこそ、なでしこスピリットを発揮してほしいものです。テレビ観戦の私たちは、若いなでしこの未来を見たいと期待しているのです。

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東アジアカップ 単純なロングボールで2失点

2015/08/03(月)

――8月1日、2日は暗い土日になりました。EAFF東アジアカップ(中国・武漢)で、なでしこジャパンが2-4で北朝鮮に完敗。男子代表が1-2で、これも北朝鮮代表に逆転負けしました

賀川:なでしこはリードされて追い付き、0-1、1-1、1-2、2-2とした後、2点を奪われました。その次の日、男子代表は前半早々に1-0とリードし、後半33分に同点にされ、43分に2点目を失いました。

――どちらも暑い日で、気温33度だったとか。もちろん相手も同じ条件ですが...

賀川:北朝鮮の女子は体がしっかりしていて、個々のボールを蹴る力も日本より上だった。日本は中盤でのミスパスが多く、はじめの2点はそのミスパスから。あとの2点は攻め込んでシュートレンジにかかる局面でのパスを奪われ、カウンター攻撃で点を取られた。

――男子は前半早々に右からのクロスに武藤雄樹が決めて先制した。チャンスはその後も作ったが、シュートが決まらず後半の北朝鮮のロングボール攻撃に2点を取られた。

賀川:テレビを見ながら、代表がはじめてワールドカップ本番に出場したフランス大会のジャマイカ戦や、2006年ドイツ大会のオーストラリア戦で、やはり空中戦で敗れたのを思い出しましたよ。

――その時の当事者だった元代表GKの川口能活が2日のテレビ解説者だったのも不思議な縁ですね

賀川:男子の北朝鮮が後半21分に超長身のパク・ヒョンイルを投入してから彼の頭上へ高いボールを送ることは当然考えられたでしょう。彼らはサイドからゴール近くへ高いボールをあげるやり方が効果ありとみて繰り返した。そして右からのハイクロスをパクがヘディングで落とし、それをリ・ヒョクチョルがボレーで決めた。2点目は左サイドのパス交換から、バックパスをカン・グクチョルが高いボールを蹴り、パクがヘディングを決めた。彼をマークした槙野智章がバランスを崩して、競り合うことができなかった。この2点目については、ゴール正面、ゴールエリアすぐ外だったからGK西川周作が飛び出した方がよかったのではないかとの見方も出てくるでしょう。

――高いボールのシンプルな攻めが対日本には効果のあることを知っているアジア勢らしい戦いと言えますが...

賀川:東アジアカップは日本代表の特色をよく知っている朝鮮半島の韓国と北朝鮮、そして中国の各代表との試合で、日本代表のひとりひとりの選手にとっては、とてもよい経験になるのだが、代表チームとして長い年月の蓄積があるはずなのに、監督が代わるたびに、いつも新しい経験のようになっている。外国人の監督を雇っておれば当然ではあるが、JFAの技術委員会は長い東アジア勢との対戦の経験があるはずで、その伝承がどうも生きていない感じがします。

――歴史的に日本代表はこういうロングボール攻撃に弱いのだから...

賀川:それを防ぐことも大切なのは当然だが、こういう相手にこちらが攻めてチャンスに得点することが大切です。

――たくさんシュートチャンスがありました。

賀川:日本の得点(前半3分)は、右サイドの遠藤航からのクロスを武藤が走り込んで左足インサイドでダイレクトシュートで決めたが、これだけでなく、多くのシュートチャンスを作った。

――川又堅碁が前半に相手DFを左へかわしてシュートし、GKの正面で止められたのもありました

賀川:左利きの彼が左へ相手をかわしてのシュートだったから、もっと余裕を持ってゴール左上すみを狙ってほしかった。

――いつもテレビを見ながら、これもまたGKの正面だとつぶやいていますね

賀川:シュートのときに、ターン・シュートであれ、DFを横にかわしてのシュートであれ、普通に蹴ったのではだいたいGKの正面に飛ぶようになっています。GK側もそういう訓練をしています。だから普通に反転シュートするよりも、シュートの方向にひと工夫すべきなのです。こういうシュートの感覚はシュート練習を重ねることで身につきます。

――永井謙佑がノーマークシュートに左足でGKの正面へ蹴った。弱いボールだった

賀川:彼は長くFWをやっていて、その俊足を生かしての突破は高く評価されている。こういうところでシュートを決めてくれれば光るのだがね…
彼はことのとき、左足のサイドキックで蹴りましたね。彼にとっての利き足でない左足でのサイドキックは難しい技術のひとつです。利き足でない足はサイドキックよりインステップの方がずっと蹴りやすいはずですよ。

――少年期に練習しなかったのかな

賀川:今からでも上達できますよ。その気になればね。彼はロンドン五輪でも活躍したが、走って勢いのあるプレーはスゴイのだから、立ち止まった時にボールをしっかり蹴ることが加われば、とてもプラスになりますよ。

――個人のシュート技術に話がいったが、男子代表の対北朝鮮戦はシュートチャンスを作りながら、2点目、3点目を取れなかった。宇佐美貴史も2本シュートしましたが...

賀川:前半は守備の面でずいぶん働いたが、攻撃面でもっと活躍してほしかった。北朝鮮のプレーヤーはひとりひとりがボールの奪い合いに強くファウル気味のプレーも多い。ハンドオフも強くて、日本選手はだいぶ悩まされていたが、アジアでの戦い、世界での戦いで、この程度でたじろいでいてはやっていけない。試合終了近くに、広島の若い浅野拓磨が投入され、ドリブルで仕掛ける場面があった。

――少数で攻め込み、左前の興梠慎三にパスをしました。不成功だったが...

賀川:自分で突破に行った方がよかったのではないか?若い日本代表はもっと強気のプレーを見せてほしかった。

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