――U-18のフットサルの取材に仙台まで出かけたのですね。JFA(日本サッカー協会)が主催するフットサルではユース世代の最高の大会です
賀川:私たちのグループの本多さんが早くからフットサルに取り組んできた。そして高体連の中塚先生たちとU-18世代の大会を開催することで、高校生年齢にも普及し、レベルアップをはかってきた。JFAがその考えを取り入れて、この世代の大会を主催し、ゆくゆくは全国選手権に持って行こうとしてくれたのでしょう。第1回は東京で、第2回は仙台を会場にしました。
U-18世代のフットサルは、いつ見ても面白い試合が多いのだが、今回は個人レベルもチームのレベルも高くなっていて、素晴らしい試合が多かった。大会を見終わった第1の感想はその驚きとともに、もっと多くの人にナマでこの面白いフットサルを観戦してもらいたかったということでした。
――今回はスカパーでの放送もありましたね。そういえば決勝の岡山県作陽高等学校 対 北海道釧路北陽高等学校は20分ハーフ合計40分の間に両チーム合わせてシュートが47本、7ゴールの生まれるシーソーゲームでした
賀川:私は22日に仙台市体育館で準々決勝2試合と準決勝、23日にゼビオアリーナ仙台での3位決定戦と決勝戦を見ました。
――近頃は地方都市に立派な体育館がありますが
賀川:仙台市体育館は各種のスポーツ教室も充実しているようでした。その催し物の表を見るだけでも感嘆してしまいます。もうひとつのゼビオアリーナも驚きの一つでした。第3回以降も仙台になると聞いています。
――優勝は岡山の作陽高校でしたね
賀川:第2回大会の観戦に出かけて驚きはたくさんありました。第1は仙台という町の賑わいぶりです。実は東北の大震災の後、何度か福島県のある町を訪れ、その町の復興計画とスポーツについて相談を受けたことがありました。そのときに比べると、仙台が震災復興の基地としてとても活気があるのに驚きました。タクシーの運転手さんも「仙台の一人勝ちだと周囲から言われるのですよ」と言っていましたが…
――もともと、伊達政宗のころの仙台は、豊臣、徳川に対抗する大きな気概を持っていましたからね。そうゼビオアリーナについても語ってください
賀川:スポーツ用品販売大手のゼビオがゼビオアリーナ仙台というすばらしい体育館を作っています。バスケットボールのプロのリーグの会場ともなっていたところで、まさにアメリカのバスケットボール会場という感じで、電光掲示の設備が充実しています。ゼビオグループが日本フットサル連盟のエグゼクティブパートナーになっていて、JFA主催のこの大会にもナイキジャパンやフロムワンなどとともに協賛企業となっています。
――町も賑やか、会場もよし、そして試合も見どころいっぱい…
賀川:フットサルという競技は今どんどん普及している最中だから、レベルも年々上がるのは当然ですが、私にうれしいのはU-18といういわゆる高校生のフットサルに、この世代特有の「ひたむきさ」が試合にあらわれていることです。試合時間が20分ハーフだから、広いスペースのサッカーに比べると狭いピッチで、味方のゴール前でボールを奪って一つパスをつなげれば、シュートレンジに入る、そのシュートを意識しつつ、さらに相手の守りを崩しにかかる場合もある、ということで互いに4人同士のフィールドプレーヤーの攻防は、スペースの広いサッカーとはまた別のスリルがあります。
――優勝した作陽はサッカーで全国区レベルの強豪校ですね
賀川:同校サッカー部の総監督の野村雅之さんは指導者としても有名ですね。フットサルに力を入れ、今回出場したチームは春からサッカーボールを触っていない。
――つまりフットサルに集中した?
賀川:という話でした。もともとサッカーの素質のあるプレーヤーが集まっている作陽の部活の中でフットサルをするグループを作り、指導の先生もつくわけですからレベルアップも進むのでしょうね。
――その作陽と北海道の釧路北陽高校の決勝も1点差の接戦でしたね
賀川:釧路北陽高校は決勝で初めて見ましたが、プレーヤーのひとりひとりがしっかりしていて、開始1分に左サイドからの松野史靖選手のシュートで先制しました。作陽がすぐに北陽のゴール近くでの今川朋睦選手の相手を背にしながらのプレーで同点にし、1分後に北陽がまた伊藤圭汰選手のゴールで2-1、4分に作陽の敦賀大河選手が同点とした。この衝撃的な4分間のゴール奪取から5分後に作陽が今川選手の得点で3-2とした。ここから作陽のキープ力がまさり作陽の攻勢となったが、シュートが決まらず前半は3-2で終わった。
――試合の流れから見て、作陽が勝つと思われたでしょう
賀川:そういう感じになったが、後半になると北陽が巻き返して互いに惜しい場面が増え、36分に北陽に同点でゴールが生まれて3-3となった。延長になるかなと思い始めたとき、作陽の決勝ゴールが決まって4-3となった。得点者は眞中佑斗選手。残り時間を示す掲示は36秒となっていた。
――苦戦はしたが、結局は作陽という感じでした
賀川:うーむ、攻めながら点を取れないとき、あるいは勢いが北陽に傾いたときには作陽のプレーヤーは守備の面でも相手に体を寄せ、こぼれ球のシュートチャンスにも2人が潰しに行くなど守りも堅かったからね。自分たちのダイレクトパスの攻めのコースを予知され、パスが回らなくなると、サイドでの縦の突破を図るなど、手詰まりになったときの展開の変化もできた。
――準決勝の対PSTCロンドリーナU-18も接戦でした
賀川:PSTCロンドリーナはフットサルのクラブで、31番をつけた植松晃都選手は日本代表に入ろうかという優れた技巧派。身体は大きくはないが(171センチ)、ドリブルシュートもうまい。右利きだが、相手の意表をついてシュートを決めていた。
――作陽対ロンドリーナの準決勝は前半15分間で作陽が4-1とリード。後半にロンドリーナが追い上げて最後のスコアは6-5でした
賀川:前半に作陽のダイレクトパスが見事な展開となり、シュートも決まった。ロンドリーナも攻めたが、作陽の守りがしっかりしていた。
――前半の終わりにロンドリーナが4-2にしましたね。それを後半のはじめに作陽が力万雅哉選手の右サイドの突破から5-2としたのが大きかった
賀川:そのあとロンドリーナがGKに16番の吉森慎斗選手を起用して5人攻撃、いわゆるパワープレーに入った。ボールを奪われて無人のゴールへの作陽のシュートが入って6-2となってもロンドリーナは諦めずに繰り返して後半あと24秒という時に6-5まで迫った。
――すごい追撃戦でしたね
賀川:まさにフットサル、まさにU-18のフットサルという感じでした。
――3位決定戦はこのロンドリーナとエスパッソU-18(東海地域代表/静岡県)と対戦して10-4で勝ちました。エスパッソはブラジル人が監督ですね
賀川:クラブ内ではポルトガル語の会話が多いとか。静岡にブラジルからの日系人が多く働きに来ていて、その人たちの間に生まれたフットサルのクラブです。選手たちは個人的に上手だが、チームプレーという点で同じフットサルクラブのロンドリーナの方が少し上でした。この日は植松選手が冴えて一人で14本シュートし、6ゴール奪いました。
――小柄な吉森選手も4ゴールした
賀川:彼らは作陽戦での無念をはらすような試合ぶりでした。準々決勝でもいいプレーを見せてもらい、私にはとても楽しい2日間でした。