東アジアカップ 単純なロングボールで2失点
――8月1日、2日は暗い土日になりました。EAFF東アジアカップ(中国・武漢)で、なでしこジャパンが2-4で北朝鮮に完敗。男子代表が1-2で、これも北朝鮮代表に逆転負けしました
賀川:なでしこはリードされて追い付き、0-1、1-1、1-2、2-2とした後、2点を奪われました。その次の日、男子代表は前半早々に1-0とリードし、後半33分に同点にされ、43分に2点目を失いました。
――どちらも暑い日で、気温33度だったとか。もちろん相手も同じ条件ですが...
賀川:北朝鮮の女子は体がしっかりしていて、個々のボールを蹴る力も日本より上だった。日本は中盤でのミスパスが多く、はじめの2点はそのミスパスから。あとの2点は攻め込んでシュートレンジにかかる局面でのパスを奪われ、カウンター攻撃で点を取られた。
――男子は前半早々に右からのクロスに武藤雄樹が決めて先制した。チャンスはその後も作ったが、シュートが決まらず後半の北朝鮮のロングボール攻撃に2点を取られた。
賀川:テレビを見ながら、代表がはじめてワールドカップ本番に出場したフランス大会のジャマイカ戦や、2006年ドイツ大会のオーストラリア戦で、やはり空中戦で敗れたのを思い出しましたよ。
――その時の当事者だった元代表GKの川口能活が2日のテレビ解説者だったのも不思議な縁ですね
賀川:男子の北朝鮮が後半21分に超長身のパク・ヒョンイルを投入してから彼の頭上へ高いボールを送ることは当然考えられたでしょう。彼らはサイドからゴール近くへ高いボールをあげるやり方が効果ありとみて繰り返した。そして右からのハイクロスをパクがヘディングで落とし、それをリ・ヒョクチョルがボレーで決めた。2点目は左サイドのパス交換から、バックパスをカン・グクチョルが高いボールを蹴り、パクがヘディングを決めた。彼をマークした槙野智章がバランスを崩して、競り合うことができなかった。この2点目については、ゴール正面、ゴールエリアすぐ外だったからGK西川周作が飛び出した方がよかったのではないかとの見方も出てくるでしょう。
――高いボールのシンプルな攻めが対日本には効果のあることを知っているアジア勢らしい戦いと言えますが...
賀川:東アジアカップは日本代表の特色をよく知っている朝鮮半島の韓国と北朝鮮、そして中国の各代表との試合で、日本代表のひとりひとりの選手にとっては、とてもよい経験になるのだが、代表チームとして長い年月の蓄積があるはずなのに、監督が代わるたびに、いつも新しい経験のようになっている。外国人の監督を雇っておれば当然ではあるが、JFAの技術委員会は長い東アジア勢との対戦の経験があるはずで、その伝承がどうも生きていない感じがします。
――歴史的に日本代表はこういうロングボール攻撃に弱いのだから...
賀川:それを防ぐことも大切なのは当然だが、こういう相手にこちらが攻めてチャンスに得点することが大切です。
――たくさんシュートチャンスがありました。
賀川:日本の得点(前半3分)は、右サイドの遠藤航からのクロスを武藤が走り込んで左足インサイドでダイレクトシュートで決めたが、これだけでなく、多くのシュートチャンスを作った。
――川又堅碁が前半に相手DFを左へかわしてシュートし、GKの正面で止められたのもありました
賀川:左利きの彼が左へ相手をかわしてのシュートだったから、もっと余裕を持ってゴール左上すみを狙ってほしかった。
――いつもテレビを見ながら、これもまたGKの正面だとつぶやいていますね
賀川:シュートのときに、ターン・シュートであれ、DFを横にかわしてのシュートであれ、普通に蹴ったのではだいたいGKの正面に飛ぶようになっています。GK側もそういう訓練をしています。だから普通に反転シュートするよりも、シュートの方向にひと工夫すべきなのです。こういうシュートの感覚はシュート練習を重ねることで身につきます。
――永井謙佑がノーマークシュートに左足でGKの正面へ蹴った。弱いボールだった
賀川:彼は長くFWをやっていて、その俊足を生かしての突破は高く評価されている。こういうところでシュートを決めてくれれば光るのだがね…
彼はことのとき、左足のサイドキックで蹴りましたね。彼にとっての利き足でない左足でのサイドキックは難しい技術のひとつです。利き足でない足はサイドキックよりインステップの方がずっと蹴りやすいはずですよ。
――少年期に練習しなかったのかな
賀川:今からでも上達できますよ。その気になればね。彼はロンドン五輪でも活躍したが、走って勢いのあるプレーはスゴイのだから、立ち止まった時にボールをしっかり蹴ることが加われば、とてもプラスになりますよ。
――個人のシュート技術に話がいったが、男子代表の対北朝鮮戦はシュートチャンスを作りながら、2点目、3点目を取れなかった。宇佐美貴史も2本シュートしましたが...
賀川:前半は守備の面でずいぶん働いたが、攻撃面でもっと活躍してほしかった。北朝鮮のプレーヤーはひとりひとりがボールの奪い合いに強くファウル気味のプレーも多い。ハンドオフも強くて、日本選手はだいぶ悩まされていたが、アジアでの戦い、世界での戦いで、この程度でたじろいでいてはやっていけない。試合終了近くに、広島の若い浅野拓磨が投入され、ドリブルで仕掛ける場面があった。
――少数で攻め込み、左前の興梠慎三にパスをしました。不成功だったが...
賀川:自分で突破に行った方がよかったのではないか?若い日本代表はもっと強気のプレーを見せてほしかった。
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