負けない気持ちで今度もファイナルへ
FIFA女子ワールドカップ 準決勝
日本 2(1-1、1-0)1 イングランド
――前半はPKでともに1点ずつ、後半アディショナルタイムで相手のオウンゴールが決勝点。壮絶な戦いは2-1でなでしこジャパンの勝利となりました
賀川:後半の45分が過ぎてあと3分の表示が出てからのゴールだった。どちらも疲れていた時だが、右サイドからの連動が相手にはアンラッキーな、日本にはラッキーなゴールを生んだ。
――中盤で奪ったボールを奪い返され、相手の体に当たって熊谷のところへ来たボールを彼女は落ち着いて右の川澄に渡した
賀川:このときイングランドの4人のDFラインはそろっていたが、中盤の2人がハーフライン近くにいて、川澄はフリーで受けた。彼女の上前方には大儀見と岩渕がそれぞれ「右寄り」と「左より」の中央にいて宮間が遠く左サイドにいた。
――川澄がドリブルを仕掛けたとき相手は出てこなかった
賀川:だから余裕を持ってクロスを送ろうと判断したのでしょう。ライナーのボールを蹴った。
――大儀見に届くかと見た時に、DFのバセットが右足をのばしてインターセプトしようとした
賀川:クロスはその手前へ落下してバウンドし、そのバウンドボールがもう一度地面に落ちようとするところだった。それにバセットの右足が当たった。多分足の先端部かな。ボールは空中に上がり、GKバーズリーを越えてゴールの右上角に近いクロスバーに当たった。
――当たって下へ落ちた
賀川:大儀見がこのボールに飛び込み、DFも防ごうとした。ボールが蹴りだされたように見えたが、レフェリーが「GOAL」を宣告したらしい。
――スロービデオが画面で、バーに当たったボールが50センチほどゴール内に落ちたことを見せてくれた
賀川:レフェリーがすぐに判定したのはゴール判定機のおかげかな。
――この大会では「ゴールラインテクノロジー」(ゴール判定技術=通称GLT)のひとつであるHawk-Eye(ホークアイ)システムも導入していたからです
賀川:ホークアイ、つまり「タカの眼」という名前ですね。しっかり見つめるわけだ。
――Hawk-Eyeは両ゴールやゴール近くに7台のハイスピードカメラを設置し、それぞれ違う角度からボールの正確な位置を撮影して、映像をソフトウェアが瞬時に解析する。ボールがゴールラインを通過すると審判の公式腕時計に暗号化された信号が送られる。そして公式腕時計が振動すると同時に「GOAL」と表示され、審判にゴール認定を伝える。1秒以内に判定を下すことができる。Hawk-Eyeは1会場について20万ドル費用が掛かるというのです
賀川:その機械導入のおかげで、歴史的なゴールの判定が正確に伝えられたということですね。
――この試合で、例によって岩渕が投入され、彼女の突破力で日本が受け身から盛り返そうとした。それをイングランドは防いではロングボールというシンプルだが彼女らにとっては効果的な展開を続けてきた
賀川:今のなでしこにとってイングランドは、決して戦いやすい相手ではないが、そこを我慢し、堪えることで防いで、こちらの形に持って行こうとした。必ずしもうまくいったわけではないが、最後までゴールを奪おうという強い気持ちが幸運なゴールになったのでしょう。こういうところはやはりなでしこジャパンです。
――これで決勝は、またまたアメリカとなりました
賀川:アメリカとドイツの準決勝はなかなかの好試合でした。アメリカの方が個人技術の上でドイツより少し優れたプレーヤーがいたのが勝ちにつながったが、もしドイツが前半のPKで先制していたら、どうなっていたかわからないような試合でした。
―― 一番上手な選手がPKをはずしましたから
賀川:イングランドは奪い合いの時のホールディングやプッシングの反則が多いので、PKで1点になると思っていたら、前半に有吉のペナルティーエリアへの走り込みからPKをもらった。
――宮間がしっかり決めてくれた。誰もが緊張する場面でしたが…
賀川:PKを蹴るときのボールへのアプローチの角度がドイツのキッカーと比べても理にかなっていた。日本の技術の高さを示すものですよ。こちらもPKを取られたがコーナーキックの競り合いの中から生まれたものだった。空中戦を強いられると、その落下点の競り合いもある。相手はそれを望んできたから大変だった。
――追いつかれて、力攻めで押し込まれてもなんとか持ちこたえた
賀川:イングランドはシュート力もあるが、そのシュートチャンスになでしこは体を寄せていきましたからね。幸運もあったが、彼女たちの負けない気持ちで今度もファイナルへ進めることになったのでしょう。
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