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2015年6月

なでしこ 力の強さまざまざ

2015/06/30(火)

2015年6月27日(日本時間6月28日)
FIFA女子ワールドカップ 準々決勝
日本 1(0-0、1-0)0 オーストラリア

――なでしこが完勝、オーストラリアを破ってベスト4に進みました。

賀川:すばらしい試合でした。欲を言えばキリはないけど、よくここまでチームが一つになりましたね。4年前の優勝経験を持つ選手と新しい顔が、それぞれ役割を果たしてのベスト4進出。佐々木監督がめぐまれた組合せをいかして、1次リーグのひとつひとつを足場にチームをまとめ、ノックアウトステージに入ってからも、オランダ、オーストラリアと、進化してきた大型チームを連破しました。

――後半の40分まで攻めながら得点できなかったが

賀川:後半20分あたりから、オーストラリアの選手の動きが目に見えて鈍くなってきました。前半から日本のパス展開を追いかけた疲れが出たのでしょう。

――暑い日中の試合でしたからね

賀川:内陸部のエドモントンは気温も高いはずです。日本選手に比べると暑さの響きやすいオーストラリア選手には開始早々からのプレッシング作戦で体力を消耗したのでしょう。

――ハーフタイムにも、相手のプレッシングが予想ほどではないというテレビのコメントがあったようです

賀川:私たち日本のサッカー人は夏の日中の練習や試合の苦しさを知っていますが、経験の浅いオーストラリアの若い選手のはじめの勢いは次第に消えはじめました。

――なでしこには、それほど暑さが影響したようにはみえなかったが

賀川:そこが彼女たちの我慢強さ、辛抱強さですよ。パスはよく通って、いいシュートチャンスもあった。しかし得点できなかった。こういう時は、自分たちの戦いを続けることだと攻め続けたのでしょう。

――監督はハーフタイムに、このやり方を90分、いや120分続ければ必ず勝てると選手に言ったそうです

賀川:それが40分を過ぎてからの左CKからのゴールになった

――少し詳しく説明してください。

賀川:スターティングメンバーは、GK海堀、DFが右が有吉、左が鮫島、中央が岩清水と熊谷、MFが阪口と宮間がボランチ、川澄が右、宇津木が左、FWは大野と大儀見という配置でした。

――オランダ戦から固定という感じでした

賀川:ポジションのひとつひとつに理由があり、それぞれは妥当だと思います。これに岩渕が攻撃の交代、澤が守りの交代メンバーとみてよいでしょう。

――大野は攻めの先端に出て、いい仕事をした。シュートチャンスも3本あった。得点は出来なかったが…

賀川:点を取れば満点ですが、72分の攻撃プレー、守りのプレーも十分に相手の脅威になった。その彼女に代えて、岩渕を投入した。

――彼女のドリブルはヨーロッパでも知られているとか。オランダ戦の2点目は彼女のドリブルがきっかけになりました

賀川:40分に阪口が相手のパスを見事にインターセプトした後、持ちあがって岩渕にパスをした。岩渕は相手を前にして、右足でピタリとボールを止め、左でシュートした。DFが足を出し、それに当たって左CKとなった。

――この時テレビを見ながら、賀川さんはニヤリとしていましたね

賀川:止めてからシュートに入る岩渕の動作はスムースでこの人の素質を表していますが、ここでもう一つシュートのフェイクでDFのタイミングを外してほしかった。うまいけれど、まだ若いなという感じでした。

――左CKは例によって宮間が蹴りました。たしか左足でしたね

賀川:上背があり、ヘディングの強いオーストラリアに対して、日本はCKの時、4人が縦に並んで相手のマークをまごつかせ、キックの前に一斉に散開するやり方でした。この時は、これまでのようにはキチンとした列ではなかったが…宮間のキックが中央ややニア寄りへ落ちてきた。熊谷がそのボールに飛び込み、相手DFの頭に当たったボールがペナルティエリア内で高く上がって落下した。

――宇津木がすごい勢いでこのボールの落下点へ走った

賀川:相手がいたが、足を出して蹴ろうとするところに走り込んで足を伸ばした宇津木の方に勢いがあった。彼女の足に当たったボールがゴール右ポスト寄りに詰めていた岩清水のところへ来た。

――岩清水が左でシュートした

賀川:崩れそうな姿勢だったが、岩清水の左足はボールをとらえた。目の前にDFと赤いユニフォームのGKウィリアムズがいて、ボールはウィリアムズに当たった。

――互いのからみ合いのなかで、岩清水がボールを足に当てた

賀川:ボールがもう一度ニアポストに戻った時、はじめゴールエリアの外にいた岩渕がいた。バウンドしたボールを右足ボレーで叩くのに躊躇はなかった。

――2人のDFが手を上げて何かを叫んでいた

賀川:こういう時のDFは大抵「オフサイド」と叫ぶのだが、実際はどうだったか…

――いつもだったら、誰かがボールを取りにゆくことが多いが、このゴールインの瞬間、皆が抱き合っていました

賀川:43分に日本は阪口に代えて澤を送り込み、守りの体勢に入った。ロングパスの空中戦を挑んだオーストラリアだが、最後のロングシュートがGK海堀の正面に飛んで、キャッチで終了の笛が吹かれました。

――何度ビデオで見ても飽きない場面ですが…

賀川:いまの日本代表でできる試合を冷静にしかもよく走って、自分たちの技術を発揮して勝った。怪我で戦列を離れた安藤を含めて、チーム全体の勝利と言えるでしょう。

――ベスト4はほぼ予想通りの顔になりました

賀川:ここまでカナダの女子ワールドカップは好試合が多く、女子のレベルアップを示すものものです。女子サッカーの美しさと彼女たちの戦闘意欲、そしてフェアプレーはFIFAの大きな組織の頂点で取り沙汰されているスキャンダルとは全く別のもの。これほどすばらしい女子サッカーを盛んにしたFIFA自体が自分たちが生み出した大会同様にフェアプレーに立ち戻ってほしいと、つくづく思います。

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ワールドカップ オランダ戦 らしさの出始めたなでしこジャパン

2015/06/27(土)

2015年6月23日(日本時間6月24日)
FIFA女子ワールドカップ ラウンド16
日本 2(1-0、1-1)1 オランダ

――なでしこジャパンがオランダに勝ちました。第2ステージのノックアウトシステムに入っての1回戦です。次の準々決勝の相手はすでに決まっていて、オーストラリアです

賀川:オランダは初出場だが、良いプレーヤーがそろっていた。当然のように背が高く、空中戦をどうするか、という心配もあったが長身相手の日本の守りもよかったし、攻撃展開もよかった。

――日本らしいパス攻撃ができたので、見て楽しいという点ではこの大会に入って一番でした

賀川:佐々木則夫という練達の監督さんは、大会の1次リーグの相手、そしてこの対オランダと、それぞれの試合ごとに、勝ちながら徐々にチームの攻撃展開まとめてきたという感じです。

――前半10分という早いうちに先制できたので、あとが楽になったでしょう。左の宮間からのクロスでしたね

賀川:日本のキックオフで始まり、初めは日本側の高い位置からのプレッシングが目立った程度で、双方にチャンスらしいものは生まれず、一度だけオランダの7番をつけたメリスが日本のDFラインの背後へ抜け出す、ピンチの場面があっただけ。

――彼女は足が速いから一瞬ヒヤリとしました

賀川:なでしこ側がハーフライン右タッチよりで相手の反則でFKをもらったが、例によって宮間あやが、相手が構えるより早く短いパスを出そうとした

――それが相手に奪われた

賀川:すぐ近くの宇津木に渡そうとしたのに宇津木は受ける気がなく、相手のFWが気付いて奪ってしまった。FKで攻めに出ようというときに奪われたのだから大変ですよ。

――このあたりまで、まだどちらも、体がほぐれていない感じもあった。いよいよノックアウト戦というので緊張もあったのかな

賀川:ボールを奪ったオランダ側もそうだったかもしれない。ペナルティエリア内にノーマークで入ったメリスが左足でシュートに入ったが、これがなんと空振り。勢い余って倒れてしまった。

――おかげでホッとしました

賀川:その2分後にチャンスがきた。

――左タッチラインのスローインが攻めの始まりでした

賀川:日本のDFラインから左の宮間へ渡そうとした長いパスを相手がヘディングしてタッチラインを割った。鮫島が後方へ投げて、もう一度リターンパスをもらい、タッチ際で前方の宮間にパスをした。

――テレビを見ながら“うまい”と言っていましたね

賀川:パスの選択肢は他にもあったが鮫島は宮間を選んだ。

――サイド攻撃の日本ですからね

賀川:接近してくる相手の足の上を小さく浮かせて宮間へボールを送った。鮫島はこういうスタンディングのままのプレーも上手だからね。

――宮間は?

賀川:内側にいた大野にパスを出した。大野はワントラップして宮間に戻す。宮間は少しスピードを上げ、中央へ速いパスを送った。

――左タッチラインから5メートル内側、ゴールラインから10mあたり

賀川:オランダは3人のDFがペナルティエリア内にいた。なでしこは中央、おそらくPKマークのあたりに大儀見が一人だけいた。ペナルティエリア左角近くに大野が走り込もうとしていた。正面のPKマークから9m15のラインいっぱいに川澄がいた。

――宮間の左足からのクロスは一番手前のDFを越え、大儀見をマークしていたCDFも触れず、大儀見が姿勢を低くしてヘディングした

賀川:ゴールキーパーのフルツは全くボールには触れず、ボールはバーを叩いて地面へ落ち、転がった。川澄は取れないなと思ったら、後方から走り込んできた有吉佐織が右足でシュートした。ボールはすごい勢いでGKの右手をかすめ、ネットに飛び込んだ。

――サイドからのクロス、大儀見のヘディング、ポストのリバウンドを有吉がシュートと、爽快でしたね

賀川:大儀見も、前へ出る気配をみせてCDFのヘディングのタイミングを狂わせ、自分のところへ来た低いライナーをヘディングでとらえるところは、さすがだった。それでもゴールにはなっていないのだが、その二つの的確なプレーのあとが、こぼれ球のクリーンシュートという、また胸のすくシュートだった。

――前から転がってくるボールはキックの練習の基本なのに、大試合でよくゴールをオーバーするのを見ますが…

賀川:そのたびに、ヨーロッパのプロのクセに…などと思うのだが、有吉はしっかりと蹴ってくれた。

――速攻への妙味の一つですね

賀川:ペナルティエリア内にこちらの人数も少ないが、相手も少ない、だからこぼれ球も扱いやすい。ただし、最初はその少ない仲間にパスをあわさなければいけないのは当然ですが、宮間-大儀見という2人の攻撃のエキスパートがつくり、ほとんど完成に近かったゴールを新しいなでしこのレギュラー有吉が締めくくったと言えるでしょう。

――良いプレーが出ると賀川さんの口も滑らかですね。オランダにはかなりこの1点はこたえたでしょう

賀川:そのあと、日本のチャンスが立て続けに生まれたでしょう。ちょっと、どう対応してよいかわからなくなっていたのでしょう。

――ここでもう1点取っておけば楽になったのに…

賀川:決定的なのが4つぐらいあったが、まぁサッカーはいろいろあるからね。それより後半に相手が少し調子づいてきた時に2点目を取った力を評価してよいでしょう。

――右サイドで相手ボールを奪っての攻撃でした

賀川:オランダは後半に、前へ前へと意欲を燃やしていた。30分ごろはCKやFKが続いて、なでしこはゴール前に押し込まれ状態が続いた。

――FKがゴール前を通り抜けた時にはヒヤッとした

賀川:そのボールの後のゴールキックから、なでしこが押し戻し、オランダ側へ入って、相手GKフルツからのパスをDFの間でつないで左サイドへ来たとき(日本の右サイド)なでしこは前から奪いにいった。川澄と阪口と岩渕真奈の3人だった。

――岩渕はその前に大野忍に代わっていました

賀川:3人で奪ったボールを岩渕がペナルティエリア前12~13mあたりから中央前方へドリブルした。ドリブルして中央の大儀見にパスを出した。大儀見はマークのCDFに並走するように左側にドリブルして、ペナルティエリア内へ入った。左へ流れながら左足でシュートしていくのかと見ていたら、反転して止まった。相手DFを前にして右に持ち替えた。

――当然、相手は右足シュートを警戒します

賀川:大儀見の左を宮間が走り上がる。その宮間へ大儀見がヒールパスを出した。内へドリブルする気配、シュートする気配を見せてのヒールパスだった。

――ノーマークの宮間は

賀川:左サイドを縦に持って出るのでなく立ち止まって、後方を向き、エリア内へ走り込んできた岩渕にパスした。

――岩渕のシュートがくると相手も、テレビの前の私たちも思ったら…

賀川:岩渕はシュートしないで、ボールは後方へ。

――そこに阪口がいた

賀川:阪口は左足でペナルティエリアいっぱい(ゴール正面)からシュート。ボールは左ポスト際、ネットへ飛び込んだ。

――押されていた形から相手陣内でボールを奪っての一気の速攻、しかも縦に走り、止まってパス、止まってパス、という変幻自在の攻めでした

賀川:なでしこは、こういう攻めもできるのだという攻撃だった。走って止まる彼女たちの動きに大柄なオランダ選手は、すぐ近くにいるのに足を出してタックルすることができなかった。

――日本のシュートパスの典型の一つ、と賀川さんがよく言っている攻めですね

賀川:相手の動きを止めて走り出せば小柄なプレーヤーの方が敏捷で、大型選手にはやり難いはずです。僕が少年時代にプレーした神戸一中(現神戸高校)のシュートパスとドリブルの組み合わせの攻撃というテンポの変化の一例でしょう。

――この攻めで賀川さんは川澄をほめていた

賀川:パスとドリブルの組み立てが始まる前に、相手ボールを3人で奪いにいったとき、阪口と相手とのからみでボールがニュートラルの位置に落ちたときに、川澄がスライディングをしてこのボールを岩渕に渡して、ここから岩渕のドリブルでの前進が始まり、その後の大儀見達との見事な連携プレーになったのです。

――川澄は「ここだ」と感じたのでしょうかね。このボールをなでしこ側が取ることが、どれだけ後に響くか…

賀川:論理的にそう考える時間はもちろんないでしょうが、とっさに川澄はこのボールは相手に渡せない、と感じたのでしょう。こういうときに、無理をして、この場合はスライディングですが、ボールを味方のものにするのが、なでしこジャパンの強さでしょう。おそらくこの能力というか、経験からくる判断力を川澄だけでなく世界で勝ったなでしこジャパンの彼女たちは共有しているのかもしれませんね。

――そこになでしこの強さがあると

賀川:そうは言っても“Anything can happen in football”です。相手のヘディングシュートのバウンドが変わって海堀が取りそこなうこともあるのですからね。

――あとから考えれば、こういうこともあるから、2点目のかくれたきっかけの川澄のスライディングも大切なプレーになってくる

賀川:だからサッカーは面白いのでしょう。

――次の対オーストラリアは

賀川:ハラハラすることは間違いないでしょう。日本に対してプレッシングをすれば、どういう効果があるかは、オランダよりもよく知っているでしょう。強敵と戦って、強くなっているはずだからなでしこも大変です。良い試合が見られると思います。

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【お知らせ】NNNドキュメント放送の予定

2015/06/25(木)

「90歳のサッカー記者-日韓 歴史の宿命-」
7月5日にNNNドキュメントとして放送されることになりました。
しっかりと手間と時間をかけて制作された、骨太の番組になっているはずです。こうご期待。

http://www.ntv.co.jp/document/
Nnn07051


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久米さんとのラジオ

2015/06/22(月)

――久米宏さんとのラジオ番組に出演したのですね。対談が面白かったという声が届いています

賀川:前からの約束で6月20日に東京のTBSのラジオスタジオへ出かけて話しました。久米さんと言えばテレビでもラジオでも先進的な人で、サッカーもお好きだと聞いていたので…

――この日は神戸でヴィッセル神戸対浦和レッズの試合があり、浦和の優勝が決まることも予想されたのに、あえて東上したのも、そういうことでしたか

賀川:ヴィッセルの戦いぶりは別にしても、レッズの皆さんには、おめでとうと言いたかった。特にキャプテンの阿部勇樹選手には、長いサッカー人生での勲章の一つですから、ぜひお祝いを言いたかった。

――彼はジェフ市原(千葉)から浦和へ来ましたね

賀川:ジェフのオシム監督が、若い彼をキャプテンに指名したということもあって、そのころインタビューした。それ以来ずっと気になっていたプレーヤーの一人でした。

――賀川さんの阿部勇樹論を聞きたいものですが、ここでは久米さんのラジオに話を戻しましょう。

賀川:まぁ、直接声はかけられなくて悪かったけど、このブログ上でとりあえずおめでとうと阿部選手に申し上げておきましょう。岡田武史の代表チームの作戦変更でワールドカップ南アフリカ大会の1次リーグ突破、16強入りも立派な実績だが、今度の浦和の無敗優勝もすばらしいことでした。

――久米さんは74年ワールドカップのオランダ-ウルグアイ戦の話と先の日本-シンガポール戦をダブらせて話されたとか?

賀川:そう、74年のワールドカップでヨハン・クライフとその仲間のオランダチームを初めて見た時のことを、ワールドカップの旅に書き、それを昨年8月末に出版した。「90歳の昔話ではない 古今東西サッカークロニクル」という私の著書に収録してあるのです。「1人退場になったウルグアイが守りを固め、ゴールキーパーのマズルケビッチの好守もあって、オランダは攻めながらなかなかゴールを奪えなかった。その状態を打開するためにオランダはシュートのタイミングを遅らせ始めた。マズルケビッチの緊張持続の時間が長くなり(それまでシュートを待って止めていたのに)レンセンブリンクのボールに飛び出し、ボールが中央のレップに渡って、レップがゴールに蹴りこんだ」という話なのです。

――シュートのタイミングをずらせてマズルケビッチの好守を破った74年のオランダの話と、シンガポール戦のゴールキーパーの好守をダブらせたわけ

賀川:そのオランダの話をアシスタントの女性に語る久米さんを見て、本当にサッカーが好きなんだな、サッカーを語ることが好きなんだなと思いました。もちろん著者としてはまさに記者冥利に尽きるとはこのことですが…

――賀川さんの話も、これまでの放送よりテンポが速くていいという人もいました

賀川:テレビやラジオに慣れたこともあるでしょうし、生放送で30分と決まっていたこともあったのでしょう。こんなに色々語って時間通り行くのか、とこちらも心配しましたが、楽しい語り合いは、キチンと時間内に終わりました。もちろん、これ以外にいくらでも語りたいこともありましたが。こちらにもっとしゃべりたくなるように仕向けるところが、さすがに久米さん。テレビやラジオが手の内に入っているのだなぁと思いました。自分がプレーヤーだったときには、試合の最中に、今日は良い試合だぞと楽しく思いながらプレーできたこともありましたが、まさにそういう30分でしたね。

――賀川さんはタイミングを遅らせることを「ずらせる」とよく言いますが、そのずらせる話の展開はどうなりました

賀川:たしか「タイミングを遅らせるのはむずかしいものですが」と久米さんが言っていたので、日本のサッカーは速攻好きで、その土壌の中から育ってくるプレーヤーはずらせるのはなかなかむずかしいんですよと言いました。

――川本泰三さんの話まで行くとそれだけで30分になってしまいますからね

賀川:生番組ですから、知らない人の名前が出て、それが1936年ベルリン・オリンピックの…と言う説明を入れ出すといつもの賀川節になっていますから、さすがに自重しました。ついているGKをかわすシュートの話に変えたのです。

――ついているゴールキーパーとなればオリンピックでブラジル代表に1-0で勝った川口や92年EUROで優勝したデンマークのGKピーター・シュマイケルの話が出てきても不思議はない?

賀川:そういう余分な話を切り捨てて久米さんの問いに答えることに気を付けていました。原稿だって800文字と決めたら、どんどん切り捨てないといけませんからね。
出演させてもらい、おしゃべりしただけでなく、とても勉強になった東京行きでした。


久米宏 ラジオなんですけど

74年西ドイツW杯 守りを引き出す理想の攻撃

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Anything can happen in football

2015/06/19(金)

FIFAワールドカップ2018ロシア
アジア第2次予選
日本 0-0 シンガポール

――引き分けでした。0-0。20本以上のシュートがゴールできず、埼玉に集まった5万7千余りのサポーターもテレビの前の全国のファンも不満のままの90分でした

賀川:シンガポール側から見れば、会心の試合。サッカーでは実力が違っても、こういう結果をも生み出せることの良い実例でしょう。

――サンスポに賀川さんの観戦記が掲載されていました。「選手同士で考える」という見出しでしたね。

賀川:こういう試合を振り返ると、その原因はいろいろあります。まず、いつも言い続けていることですが、いい監督さんが来て、その影響力が強いと、監督の指示通りの試合をやろうとする。それが、その日の相手と合わないときには自分たちで考えることが大切でしょう。そうは言っても、簡単なことではない。

――賀川さんは元々、そういう心の問題や抽象論よりも具体的にどのプレーが…との指摘が多かったと思いますが

賀川:そう、根本的なところの話も面白いが、サッカーはゴールを相手より多く奪えば勝つという単純な競技ですからね。

――となると、23発のシュートが1点にもならなかったことから、シュートの話になりますか

賀川:もちろんそのシュートを蹴る当事者が、良い条件でシュート体勢に入れるかどうかというところに攻撃の妙味はあります。しかしそれでもシューターの問題も多いでしょう。

――試合後の談話で岡崎慎司が「ゴールキーパーに調子づかせてしまった。もっとも相手がそうなっても、ゴールを決めないといけないのだが…」と言っていました

賀川:ストライカーだけあって、ゴールキーパーのこともよく分かっていますね。開始早々の本田のロングシュートがGKイズワンのいい予備運動になりました(強い球であったが、グラウンダーで正面へ来た)。次に香川真司が後方からのパスをうまいトラッピングで受けて、前を向き右足でシュートした。これをGKイズワンは右へ(シューターから見れば左へ)飛んで左手で防いだ。良いシュートだったがイズワンの読み通りの方向だったし、高さも強さもGKには防ぎやすいところへ飛んだ。

――あのシュートコースは香川の形ですね

賀川:落ち着いたストライカーなら、右のニアサイドへ蹴ることもあるが、香川は自分の一番得意な形で蹴った。

――賀川さんの頭の中には、釜本の得意の形だったという思いがあるでしょう

賀川:彼が自分の形でシュートしたら、ボールの速さが違うから同じ位置へ飛んでもGKは取れないだろうね。まぁ、こういうシュート議論がメディアの間で交わされるようになればね。

――スポーツ紙では、シュートの解明をしようとの動きも出ています

賀川:それは結構なことですよ。そう、3本目は岡崎のシュート、宇佐美のドリブルからのパスが出て、岡崎が左足でシュートした。

――イラク戦でも、同様のシュートチャンスがありました。岡崎は決めましたが

賀川:同じ経験で作ったチャンスでも、相手の守りの人数が多い分、シューターも余裕がなくなっていたはずです。この岡崎のシュートでもGKイズワンは良いセービングができた。こうなって来るとゴールキーパーは調子づくものです。

――日本でも、オリンピックの対ブラジル戦で川口が難しいのを何回も防いで、逆に1-0で勝った一大番狂わせを演じました

賀川:そう、原因を突き詰めて、基礎的な考えに到ることもありますが、ピッチの上ではまず相手GKイズワンが調子づいたことが一つ、相手の最終防御ラインの引き方、そのラインの前進後退と、その前の5人の中盤での守りがうまくと統制されていた。

――そこへスルーパスを出しても、通らないし、裏へ出てもオフサイドの場合もある。やっと届いたと思うと相手は次の選手もきているということもあった

賀川:日本選手が欧州勢と試合するときは、相手の大型プレーヤーよりも「敏捷」という特色を生かす…という。シンガポールのような東南アジアのプレーヤーは、体のばねもあり、敏捷な動きができる上に、ボールテクニックも上手だ。今度のシンガポールは体も良くなっていた。

――思っていたより、やり難い相手だった

賀川:シュートが入らなかったのはGKイズワンの好プレーと、日本の不運もあった、とシンガポールのドイツ人の監督さんは言っていた。

賀川:1992年の欧州選手権でデンマークが予想を裏切って優勝したが、このときのデンマークのGKピーター・シュマイケル(マンチェスター・ユナイテッド)の働きは素晴らしかった。見ていてこれは、ちょっと点は取れないなという感じでした。

――それにしても、これだけ攻めて入らないとね

賀川:ヨーロッパの攻撃陣なら高さを利しての空中戦でいくとか、上げて競り合っての力強さでいくとかあったでしょう。日本でもそういうやり方で点を取ったこともあります。終盤には相手選手に足の痙攣を引き起こす者が増えていたでしょう。体力で勝つのも一つの手でありますが、別の見方をすれば、ボールテクニック、ときにパスの精度、つまりキックの精度がクロスを含めてまだ高くないこともあります。

――宇佐美は

賀川:こういう大事な試合で目立ってもらわなければいけない選手ですが、まぁこの次まで待ちましょう。

――なでしこで折角盛り上がったサッカーが、この0-0でちょっとトーンダウンします

賀川:シンガポールという、小さい国だが豊かで元々サッカーも盛んなところが、本格的に強化策に乗り出してきた。日本を相手に負けないサッカーをしてやろうというところに、今のアジアのレベルアップがあると言えます。日本は今やアジアではそういう目で見られていることを改めて知ったのも今度の試合のプラスです。1980年代、当時ヨーロッパでトップにあった西ドイツ代表のデアバル監督はこう言っていました。ワールドカップの予選でアルバニアなどの小国に1-0の僅差で勝ったりする、ドイツのメディアにガンガン叩かれる、万一、引き分けでもしたらまるで「この世の終わり」みたいに書かれてしまう…。

――釜本さんを指導してくれた、80年のEURO優勝、82年ワールドカップで準優勝の監督ですね

賀川:そんなときどうするのか…と聞いたら、彼は「Anything can happen in football」とね。サッカーではどんなことでも起こり得る…ということですね。

――そのハプニングの一つ一つを今後も見ていきましょう。

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女子ワールドカップ 対カメルーン戦(続)

2015/06/17(水)

――カメルーン戦の個人力による突破を防ぐのに苦労していました

賀川:17番のエンガナムイが特に目立ちましたが、このプレーヤーは足が速く、また、体力があった。強いだけでなく足が早く出てくるところが北欧などの大型選手と違うところです。ハーフタイムで指示されたのでしょうが、後半は前半よりも日本選手のマークの距離を近くしてきただけに、日本側も少しやりにくくなりました。もちろんホールディングやトリッピング、特に遅れて入ってくるタックルになでしこの各選手はやりにくかったと思います。彼女たちは自分たちのファウルをそれほど悪質でないと思っているようで、彼女たちのためにもレフェリーはもっと強い調子の笛を吹いた方がいいと感じました。こういう相手に接触プレーはできるだけさけ、早いテンポで、早めにボールを動かせばいいのですが…

――それにはサイドキックを始め、短いパスの正確さと 、動きの量も必要ですね

賀川:そのとおりですが…縦パスを失敗して相手に奪われると一気にピンチになることが多い。今年のなでしこは第3列(DFライン)からトップの2人へ入れるパスが多くなっていますが、このパスは「出し手が見えること」「受け手は背を向けてボールをとること」で相手のCDFたちにとっては奪いやすいのです。そして宮間が左サイドのMFになると、どうしても長いパスになる。いくら良いパスでもボールの距離が長ければ、相手にはつぶしやすい。宮間に限らず、スイス戦でも、カメルーン戦でも気になりました。

――FK、CKという停止球の宮間は素晴らしいのです

賀川:彼女のことだから考えがあって自分のパスの長短、強弱を試しているのかもしれません。ノックアウトステージに入ってから、どうするか期待はしているのです。

――澤選手は

賀川:第1戦は途中まで、第2戦は途中から入りました。前回のワールドカップのときと同じと言えるかどうかわかりませんが、チャンスメイクの力、ピンチを見る目などはやはり「澤さん」というところです。この試合で長いクロスに飛び込んで行ったプレーもありました。もともとヘディングも強いのですが、カメルーンのような個人力の強い相手には澤さんであっても、単なるクロスでいいのかどうか…

――そういうクロスやパスの精度も試合で高めてゆくことになる?

賀川:それがなでしこジャパンです。世界チャンピオンの経験者に新しく代表に加わった力のあるプレーヤーもいるのです。これまでの準備の時間の足りなかった分を、大会中に磨いていくことを続けていますよ。ともかく全員で勝ち取った勝点6でここを足場にいよいよ強敵との戦いに向かって行ってほしい。

――もちろん、第3戦、相手は少し力は下ということです、どういう顔ぶれで試合をするのか、あるいはその間に休養を取ることが大切なのか

賀川:経験豊富な監督と選手たちがこの大会をどう乗り切って行くのか見るのも楽しみですね。

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見る者をハラハラさせながら、ともかくセカンドステージへ

2015/06/16(火)

――なでしこジャパンが2勝でCグループのトップに立ち、ノックアウトシステムのセカンドステージへ進むことが決まりました

賀川:初戦の対スイスが1-0、対カメルーンが2-1と1点差の際どい勝負でした。スイス戦の後半も、第2戦の後半も、相手に何度かチャンスもあって、ハラハラしました。それだけに勝った喜びも大きいのですが…

――まさに、なでしこジャパンの試合というところでしょう。カメルーン戦は前半の早いうちに見事な攻めで2点取ったから3点目を取れば楽になると誰もが思ったでしょう

賀川:バンクーバーまで駆けつけたサポーターもテレビの前の皆さんもそう思ったでしょうね。2-0の試合は次の3点目をどちらが取るかで形勢が変わることが多い。この試合の3点目はカメルーン側だったが、試合の終り頃だった。

――それでも勢いに乗ったカメルーンは残り時間でも惜しいチャンスを作った

賀川:足をつって海堀に助けられていたエンガナムットのヘディングシュートが左ポストぎりぎりに飛びましたからね。試合前にカメルーンの選手たちが国家を歌う姿や、スタンドのカメルーンサポーターらしき人たちを見ていると、女子のワールドカップが急拡大して24チームになったのも悪くはないと思いました。大戦後の1960年に独立したこの国は、男子のサッカーではすでにアフリカの強国のひとつになっているが、女子のワールドカップでも大西洋を渡り、カナダの西端までやってきて、太平洋岸のバンクーバーで試合をする、その会場でサポーターも選手も国家を歌うのですよ。

――今年は戦後70年だから、賀川さんのような戦中派には格別な思いがあるのかも…

賀川:大戦中はヨーロッパの植民地だったアフリカ諸国が戦後に続々と独立し、国家としての経営がうまくいっているところも、そうでないところもあるようですが、サッカーのこうしたひのき舞台で、しかも女子のチームがプレーするようになったのを見ると…

――なんのかの言っても、世界は少しずつ良くなっていると?

賀川:そう思わない人もいるらしいが、私たちのようにフットボールにかかわってきた者には、少しサッカーが誇らしげに思いますよ。

――ただし試合を見ながらカメルーンのファールの多さにぶつぶつ言っていましたよ

賀川:74年から98年までのアベランジェ会長、さらに98年から今まで続いているブラッター会長のもとで、FIFAは世界中のサッカーの浸透を図りました。2010年南アフリカでのワールドカップもそのひとつですが、その拡大策にFIFAがもうひとつ掲げる「フェアプレー」の浸透が追いついていない…という感じもあります。

――FIFAの内部にフェアプレーでないものがあって事件になっています

賀川:そういう芳しくない事件と併行しての女子ワールドカップです。だからこそ、前回チャンピオンのなでしこジャパンは、フェアで気持ちのいいフットボールをすることが大切でしょう。

――前半の2点は日本の技術、戦術の高さを見せてくれました

賀川:この試合は、第1戦のメンバーとは先発を5人変えました。GK海堀、DFラインは右から近賀、岩清水、熊谷、宇津木、MFに川澄、阪口、宮間、鮫島、2トップは大儀見と菅沢でした。近賀と川澄がスタートから出場したことで、右サイドからの攻めが目立ったでしょう。宮間がトップ下にいたので、パスの距離が短くなって、有効な組み立てができた。
――1点目は右タッチ近くで宮間-近賀-川澄とわたり、少し内側でボールを取った川澄はノーマークでゴール前へ速いクロスを送り込みました

賀川:中央の大儀見が飛び込み、タッチできそうだったがボールに触れず、左へ流れたのを鮫島が走り込んで左足でゴールへ叩き込みました。

――ゆっくりしたペースパスから、川澄の速いクロスがあり、大儀見の飛び込みのところに相手DFが2人引っ張られて鮫島はフリーになっていた

賀川:左MFに鮫島を配置したのは、佐々木監督にとってはテスト済ですが、鮫島は左利きですから速いクロスのバウンドにもしっかり足を合わせることができました。監督は腹のなかで、ニコリとしたでしょう。

――2点目は左のショートコーナーからでした。キッカーの宮間がショートコーナーにして、戻ってきたパスを受けてペナルティエリア左外から蹴って、高く上がり、右ゴールポスト際へ落下するボールを蹴りました。高く上がったので、飛び出したゴールキーパーはジャンプしても届かず、その外側へ落下したボールを菅沢がヘディングでゴールネットへ叩き込みました

賀川:CKの時、コーナーからファーポストへ蹴ることのできる宮間ですが、やはり距離的に「いっぱい」の感じです。ショートコーナーにしたことで、宮間は少なくともコーナーよりは近い距離からのクロスになり、コントロールキックを蹴るときも余裕が生まれます。こうなれば、彼女のクロスは高さもスピードも意のままで、世界的なぎじゅるが発揮できるのだと思います。

――1点目は右サイド、2点目は左サイド、パス攻撃の流れの中と、CKという停止球からの攻めに違いはありますが、どちらもサイドからの攻めでした

賀川:サイド攻撃での2ゴールです。そうそう、ショートコーナーは、キッカーにとって距離が近くなるだけでなく、一つパスがサイドで入ることで、それだけ相手DFの目がサイドに向けられるので、攻撃側はマーク相手の視線から「消える」動きもできるのです。

――だから、ファーポストの選手がフリーになっていた

賀川:カメルーンのDFたちの守備についての訓練不足もありますが、このサイド攻撃のゴールで、なでしこの自分たちのゴールへの展開に新たな自信を持ったでしょう。

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【お知らせ】記事掲載のお知らせ

2015/06/16(火)

サンスポに「ロシアへの道」と題して、観戦記が連載されることになりました。
http://www.sanspo.com/smp/soccer/news/20150616/jpn15061612350011-s.html

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【お知らせ】こころの玉手箱に掲載されました

2015/06/08(月)

6月8日(月)から日経新聞夕刊の「こころの玉手箱」に賀川の記事が掲載されています。
ぜひご覧下さい。

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第1戦でスイスを破り勝点3 ケガの安藤さんに感謝し、回復を祈ろう

2015/06/05(金)

――カナダでのFIFA女子ワールドカップでなでしこジャパンはまずグループリーグで1勝しました

賀川:対スイス戦はハラハラしたから、それだけ勝点3を取って、良かった良かったという感じです。

――物足らぬという人もありましたが

賀川:2011年のワールドカップ優勝から、ロンドン五輪でのメダル、なでしこリーグなどの一連の日本女子サッカーの動きや、代表の試合を眺めてみれば、ひとつの大きなヤマを越えたなでしこジャパンのメンバーが4年後にもう一度ワールドカップに挑戦する…自分たちだけでなく新しく育った後輩たちとともに連覇にチャレンジする、そのためにカナダへ渡って行ったこと、そのことだけでもなかなかのことです。そして、初戦で勝点3を取ってグループリーグを有利に戦えるのですからね。試合を重ねることでチームの調子が上がり、適切な休養と試合の繰り返しで選手のコンディションも良くなると期待しています。

――カナダのバンクーバーで日本-スイス戦に3万人を越える観衆が集まったのだから現地も盛り上がっているのでしょう。

賀川:前回のドイツ大会での日本の優勝が世界の女子サッカーの刺激になったことは確かでしょう。いま4年前の大会と比べると今度の大会は各国ともに進化していることが見て取れます。

――第2戦以降でなでしこジャパンに期待することは

賀川:宮間キャプテンの位置が少し後ろの感じで、パスの長さが気になります。まぁ、経験ある人だから、いろんなテストなり、やり方を考えてのことかもしれません。澤穂希さんの調子がまずまずなので安心しました。こういう檜舞台の映像を見て、若い女子選手も男子選手も彼女のひとつひとつのプレー、技術の確かさ、それを効果的にするランと読みを堪能してほしいと思っています。

――安藤さんがケガで戦列を離れました

賀川:貴重なゴールのもととなるPK、相手のゴールキーパー衝突したための故障です。わたしたちは彼女に感謝し、残りの試合に出られない心情を察して、回復の早いことを祈りましょう。

――なでしこジャパンは彼女のためにもしっかり戦うでしょう。テレビの前で応援しなくてはなりませんね。

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FIFAの事件

2015/06/03(水)

――FIFAの多数の副会長や理事の収賄事件がとうとうヨーゼフ・ブラッター会長の辞任にまで至りました。事件が明るみに出た後、FIFA総会での会長選挙でアラブの王子さんをおさえて当選し、5期目をつとめるとのことだったが、その後で辞任を表明しました

賀川:4期の会長任期の間に、FIFAの財政を立て直し、世界最大で、最も豊かな競技団体にした。他のスポーツ団体からうらやましがられるほどだったが、その功労者がこういう形で辞任するとは残念な話ですね。

――メディアからの問い合わせもあったでしょう

賀川:3日の朝は、次々に各社の電話取材があって、11時半ごろまで朝食の時間もとれないほどでした。私にはことの真相がわからないから何も言えないけれど、サッカーで大切なのはフェアプレーですから、その世界のサッカーを統轄するFIFAにかかわる人たちは、やはりフェアであってほしいと答えました。もちろん、今の理事会に色々な権限が集中すると言われている機構や組織の改革も必要でしょうが。

おそらくブラッターさんは自分の手で改革をしたかったのでしょうが、大陸連盟選出の理事や副会長だけでなく、FIFAの事務局長にも疑いが持たれて、いわば自分の部下にも問題が起こったことになり、辞任を決めたのでしょう。

――もちろん、裏に何かがあったのかも

賀川:それはわかりませんが、事ここに至れば、しんどい決断ですが、当然の決断になるのでしょうね。

――昨年のブラジルワールドカップで、ネイマールが相手選手に後方から飛びかかられて負傷し戦列を離れた時、賀川さんはフェアプレーの精神に反すると厳しい罰則の適用を唱えられていましたね

賀川:現在の発達したフットボールは、プロフェッショナルで、いわば試合に出ること、試合に勝つことでお金を稼ぐ選手たちがプレーしています。それだけにフェアプレーが大切で、FIFAも常に「フェアプレー」を掲げています。若いプレーヤーたちにフェアプレーを要求するのだから、運営にかかわる大人や老人たちもフェアプレーでいてほしいものです。

――大きな組織で、たくさんの国や地域のなかには、贈賄や収賄が横行しているところもあるとか

賀川:世界は広く大きいので、そういうところもあるかもしれません。アジアではそういうことに潔癖な日本でも時々ニュースが出ますからね。しかしスポーツ団体であれば、理想を掲げるのは大切なことでしょう。フェアプレーの精神を思い起こし、努力をすること。日本から田嶋幸三さんがFIFA理事に入ることになったから、そういう面でもいい仕事をしてほしいですね。

――ブラッターさんの前のアベランジェさん、そしてその前のサー・スタンリー・ラウスさんが会長であったころからFIFAと関わりのあった賀川さんには、近いうちに別の面からFIFAの話を聞きたいと思っています。

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