2015年6月27日(日本時間6月28日)
FIFA女子ワールドカップ 準々決勝
日本 1(0-0、1-0)0 オーストラリア
――なでしこが完勝、オーストラリアを破ってベスト4に進みました。
賀川:すばらしい試合でした。欲を言えばキリはないけど、よくここまでチームが一つになりましたね。4年前の優勝経験を持つ選手と新しい顔が、それぞれ役割を果たしてのベスト4進出。佐々木監督がめぐまれた組合せをいかして、1次リーグのひとつひとつを足場にチームをまとめ、ノックアウトステージに入ってからも、オランダ、オーストラリアと、進化してきた大型チームを連破しました。
――後半の40分まで攻めながら得点できなかったが
賀川:後半20分あたりから、オーストラリアの選手の動きが目に見えて鈍くなってきました。前半から日本のパス展開を追いかけた疲れが出たのでしょう。
――暑い日中の試合でしたからね
賀川:内陸部のエドモントンは気温も高いはずです。日本選手に比べると暑さの響きやすいオーストラリア選手には開始早々からのプレッシング作戦で体力を消耗したのでしょう。
――ハーフタイムにも、相手のプレッシングが予想ほどではないというテレビのコメントがあったようです
賀川:私たち日本のサッカー人は夏の日中の練習や試合の苦しさを知っていますが、経験の浅いオーストラリアの若い選手のはじめの勢いは次第に消えはじめました。
――なでしこには、それほど暑さが影響したようにはみえなかったが
賀川:そこが彼女たちの我慢強さ、辛抱強さですよ。パスはよく通って、いいシュートチャンスもあった。しかし得点できなかった。こういう時は、自分たちの戦いを続けることだと攻め続けたのでしょう。
――監督はハーフタイムに、このやり方を90分、いや120分続ければ必ず勝てると選手に言ったそうです
賀川:それが40分を過ぎてからの左CKからのゴールになった
――少し詳しく説明してください。
賀川:スターティングメンバーは、GK海堀、DFが右が有吉、左が鮫島、中央が岩清水と熊谷、MFが阪口と宮間がボランチ、川澄が右、宇津木が左、FWは大野と大儀見という配置でした。
――オランダ戦から固定という感じでした
賀川:ポジションのひとつひとつに理由があり、それぞれは妥当だと思います。これに岩渕が攻撃の交代、澤が守りの交代メンバーとみてよいでしょう。
――大野は攻めの先端に出て、いい仕事をした。シュートチャンスも3本あった。得点は出来なかったが…
賀川:点を取れば満点ですが、72分の攻撃プレー、守りのプレーも十分に相手の脅威になった。その彼女に代えて、岩渕を投入した。
――彼女のドリブルはヨーロッパでも知られているとか。オランダ戦の2点目は彼女のドリブルがきっかけになりました
賀川:40分に阪口が相手のパスを見事にインターセプトした後、持ちあがって岩渕にパスをした。岩渕は相手を前にして、右足でピタリとボールを止め、左でシュートした。DFが足を出し、それに当たって左CKとなった。
――この時テレビを見ながら、賀川さんはニヤリとしていましたね
賀川:止めてからシュートに入る岩渕の動作はスムースでこの人の素質を表していますが、ここでもう一つシュートのフェイクでDFのタイミングを外してほしかった。うまいけれど、まだ若いなという感じでした。
――左CKは例によって宮間が蹴りました。たしか左足でしたね
賀川:上背があり、ヘディングの強いオーストラリアに対して、日本はCKの時、4人が縦に並んで相手のマークをまごつかせ、キックの前に一斉に散開するやり方でした。この時は、これまでのようにはキチンとした列ではなかったが…宮間のキックが中央ややニア寄りへ落ちてきた。熊谷がそのボールに飛び込み、相手DFの頭に当たったボールがペナルティエリア内で高く上がって落下した。
――宇津木がすごい勢いでこのボールの落下点へ走った
賀川:相手がいたが、足を出して蹴ろうとするところに走り込んで足を伸ばした宇津木の方に勢いがあった。彼女の足に当たったボールがゴール右ポスト寄りに詰めていた岩清水のところへ来た。
――岩清水が左でシュートした
賀川:崩れそうな姿勢だったが、岩清水の左足はボールをとらえた。目の前にDFと赤いユニフォームのGKウィリアムズがいて、ボールはウィリアムズに当たった。
――互いのからみ合いのなかで、岩清水がボールを足に当てた
賀川:ボールがもう一度ニアポストに戻った時、はじめゴールエリアの外にいた岩渕がいた。バウンドしたボールを右足ボレーで叩くのに躊躇はなかった。
――2人のDFが手を上げて何かを叫んでいた
賀川:こういう時のDFは大抵「オフサイド」と叫ぶのだが、実際はどうだったか…
――いつもだったら、誰かがボールを取りにゆくことが多いが、このゴールインの瞬間、皆が抱き合っていました
賀川:43分に日本は阪口に代えて澤を送り込み、守りの体勢に入った。ロングパスの空中戦を挑んだオーストラリアだが、最後のロングシュートがGK海堀の正面に飛んで、キャッチで終了の笛が吹かれました。
――何度ビデオで見ても飽きない場面ですが…
賀川:いまの日本代表でできる試合を冷静にしかもよく走って、自分たちの技術を発揮して勝った。怪我で戦列を離れた安藤を含めて、チーム全体の勝利と言えるでしょう。
――ベスト4はほぼ予想通りの顔になりました
賀川:ここまでカナダの女子ワールドカップは好試合が多く、女子のレベルアップを示すものものです。女子サッカーの美しさと彼女たちの戦闘意欲、そしてフェアプレーはFIFAの大きな組織の頂点で取り沙汰されているスキャンダルとは全く別のもの。これほどすばらしい女子サッカーを盛んにしたFIFA自体が自分たちが生み出した大会同様にフェアプレーに立ち戻ってほしいと、つくづく思います。
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