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大儀見優季の進化とU-18フットサル

2015/04/10(金)

――4月10日になりました。FIFA会長賞という思いがけない名誉のおかげで賀川さんの身辺がにわかに忙しくなっていました

賀川:2月いっぱいくらいと見ていたメディアの取材は結局、3月いっぱいまでは続きました。関心を持っていただくのは有難いことですが、これまで取材する側だったわが身が、取材される側となり、こちら側もなかなか大変だということを知りました。

――新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、いろいろな人に会い、催しに出席するというのは、時間の制約だけでなく、体の疲れが重なるということもよく分かりました

賀川:ほとんどが好きなサッカーですから疲れるなんて…と思っていたが、これが年齢ということでしょうか。おしゃべりのあとが、鉛筆も、万年筆も、ボールペンも手に取る気力を失っていました。昔からの仲間からお祝いのモンブランのボールペンを頂いたり、某テレビ番組のスタッフの皆さんから立派な万年筆を贈られたりして、原稿用紙に向かう楽しみが増えたはずなのに…

――片言隻句を休んでいる間に代表チームの監督がハリルホジッチさんに代わり、Jリーグ2015がスタートし、なでしこリーグもはじまりました。書きたいこと、話したいことはいっぱいあるはずです。どの話題からでも、また、賀川さん自身の身辺雑談でも、とにかくスタートしてゆきましょう


■CF大儀見優季の進化
――3月上旬のアルガルベカップはデンマークに負け、ポルトガルに勝ち、フランスに敗れ、順位決定戦でアイスランドに勝ちました。1位リーグ1勝2敗でアイスランドに勝って9位という下位でした

賀川:6月にFIFA女子ワールドカップカナダ大会を控えているのだから、監督も代表選手も大変でしょう。2011年ドイツ大会優勝のメンバーに続く若い代表の成長が遅れていること、また2011年代表も進化が止まっていること、気がかりな点が多かったのです。

――フランスやイングランド、ブラジルなどの代表も力を上げています。アメリカ代表、ドイツ代表の2強は依然として日本より上の力ですね

賀川:本番が6月ですから、日数はありませんが、私は多少希望的に見ています。

――ふーむ

賀川:第一は3月初旬のアルガルベカップで大儀見優季がセンターフォワード(CF)として水準を抜くプレーヤーであることを示してくれたことです。彼女はいまや、日本代表のストライカーとして男女を通じて最も信頼できるひとりでしょう。男子の代表ストライカーの系譜からゆけば、釜本邦茂と比べるのは難しいとしても、1940~50年代の男子の二宮洋一さん(慶應大学、第1回アジア競技大会監督兼FW、第2回日本サッカー殿堂入り)に近いレベルと言えるでしょう。もちろん男子のなかでもずば抜けて速いドリブラーであった二宮さんとは体の強さが違うという点はありますが、仲間からのパスを受けてのポストプレーや、キープあるいは反転してのシュートへの移行、ヘディングのうまいこと、シュートチャンスでの落ち着き、またボールを持って相手DFと相対(あいたい)したときの自信満々の態度…いわば昔ながらのセンターフォワードとしての大切な能力をしっかり備えています。もともと優れた素材だったのが、ヨーロッパで体の強い相手との競り合いの経験を積んで、いまや国際水準のストライカーとなっています。「パス攻撃は上手いが、良いストライカーがいない」という声は日本サッカーでの男女共通のものでしたが、なでしこジャパンに関しては、彼女の存在は大きな武器となっています。

――アルガルベカップで勝てなかったのは

賀川:ひとつにはチーム全体が彼女の能力を意識して、単純に彼女にボールを集めようとしたことです。「ヨコヨコのパスが多く、タテに出さない」のはある時期のなでしこジャパンの傾向で、3月の大会では、タテへのパスを強調したはずです。そのためタテへのパスというよりタテへのロングパス、それもパスというよりキックアンドラッシュ時代に近いものでした。

――良いCFがいるのにそれを生かせなかったと?

賀川:宮間あやというとびきりのパスの名手の調子が良くなかったこともあるでしょう。最終戦の対アイスランドでは宮間が後方でなく、トップの近くでプレーするようになって大儀見も生きたことを思い出してください。

――それだけ

賀川:彼女のような優れたストライカーはサイドからの攻めでいっそう生きるでしょう。点取り屋には厳しいマークがつくものですが、サイドからの攻め込みによって相手DFの視線はサイドに向けられるようになり、大儀見選手にとって、マーク相手の視野から消える動きでシュートチャンスを掴みやすくなります。これは大儀見だけでなく、CFの一般論でもあります。現にアルガルベカップで日本のゴールはサイドの攻めからだったのです。

――大儀見さんの話がCF論やサイド攻撃にも及びました

賀川:Jリーグでもなでしこリーグでもなぜ監督さんがサイド攻撃を強調するか選手たちは理解していないことも多いでしょう。4月5日のINAC神戸対湯郷の2点目も右からのパスに飛び込んだ増矢のヘディングでした。3点目も川澄のクロスがファーポスト側に流れ、誰もいないところでこのボールを受けた仲田がシュートを決めた。大儀見クラスのストライカーはボールが外側にあるとき、マーク相手の視野の外に動いて相手から“消える”ワザを身につけている。

――いいCFがいるからこそサイド攻撃も効果ありと

賀川:サッカーの常識でもある。もちろん大儀見は2011年のワールドカップで相手DFラインの裏へ走り、澤穂希のFKのタテパスを受けてゴールしていて、裏へ出るのも上手だが、いくら大儀見でも裏へのタテばかりでも難しいということです。

――澤穂希の名が出ました。彼女のいるINACについての話は

賀川:なでしこリーグが開幕し、3月29日の第1戦、アウェーで浦和に3-2で勝ち、第2戦(4月5日)のホームで岡山湯郷に3-0で勝ちました。

――澤さんがヘディングで対浦和の3点目を入れました

賀川:監督さんが代わって、全員が走るようになり運動量が増えた。昨シーズンは浦和にも湯郷にも動きの量で劣っていた。自分たちの技術を発揮するために、まず走ることという考えが見えている、これは大切なことです。もちろんこのチームはここ2年個人技術の進歩も遅く、若い選手の上達にも不満だった。開幕の2試合を見る限り良い変化だったので、これから期待できるでしょう。

――そのINACでも澤さんが目立っている

賀川:1月のバロンドールの表彰式に彼女はプレゼンターとして出席していました。アメリカのワンバックやブラジルのマルタなどとも顔を合わせ、またドイツの女子最優秀選手ケスラーの表彰に立ち会って、またプレーへの意欲が出てきたのかもしれません。彼女の力が戻ればINACにもなでしこジャパンにも大きいですね。

――良い選手の集まったこのチームでベテランも若い選手も生き生きとプレーするのを見るのはうれしいことです。5日のホームの試合には3800人の観衆が集まったそうです

賀川:女子サッカーは日本サッカーの特色、あるいは日本人のスポーツ特性を世界に示す大きな舞台です。何とか皆さんの力で押し上げたいですね。

――なでしこリーグの日テレをはじめ各チームにもいい素材が増えています。今年はワールドカップとともになでしこリーグもステップアップですね


■ユースフットサル選抜トーナメント2015

――3月にはフットサルのU-18大会も見に行かれたそうですね

賀川:「ユースフットサル選抜トーナメント2015」という大会で、3月24~25日に東京の墨田区総合体育館で行われました。日本フットサル連盟主催でこれまで名古屋で行っていたU-18大会がJFA主催のU-18選手権となって夏期の大会となり、春は選抜大会として北海道、東北、関東、北信越、関東、関西、中国、四国、九州の各地域フットサル連盟から代表が集まり、優勝を争いました。私は日程の都合で決勝だけを見ました。日本フットサル連盟の小倉純二会長(JFA名誉会長)も出席されていました。東京都ユースリーグ選抜U-18と愛知県選抜U-18の顔合わせとなって愛知が勝ちました。

――名古屋オーシャンズの関係  

賀川:愛知で選考会をした結果、名古屋オーシャンズのユースがほとんどのチームになったようです。

――東京都の選抜となれば個人技術のレベルは高いでしょう

賀川:これまで私の見てきた大会では高校サッカー部でフットサルにも出てきたチームが決勝で勝ったのを見ましたが、今度は東京都もフットサルリーグの選抜やチームでした

――U-18のフットサルは見ても面白いといいますが

賀川:若い勢いが感じられること、ゴールを狙う姿勢が強いこと、なんといっても狭いコートですから常にシュートレンジに近く、緊迫感があります。優勝した愛知は水野拓海という大柄の選手がいて、その反転シュートが左も右も威力があったので、そこへボールが行くと観客の期待も高まりました。

――愛知が勝ちましたが、

賀川:シーソーゲームで見ていて力が入りました。愛知の水野くんはインステップでも叩いていましたが、私は芝生の(広い場所での)サッカー好きにも狭いコートでのフットサルもおすすめします。強いパスをピタリと止める、あるいはトー(つま先)キックでのシュートといった技が上達するでしょう。そうそう、日本代表が新監督の下で戦った試合で乾選手が右サイドの突破プレーを見せましたが、その時彼が直線的なドリブルのあと右足アウトを使って切り返しをしてボールを奪われたのを見ました。彼のような直線的なドリブルをするプレーヤーがトーキックのシュートが上手になればまた違った攻撃になるだろうと思ったものです。2002年のワールドカップでブラジルのFWロナウドが直線ドリブルからトーキックで決めたこともあります。

――フットサル人口はどんどん増えています

賀川:少人数のチームを組めるフットサルはインドアということで天候の心配もなく、手軽なチームスポーツでしょう。上手な人も初心者もボールを足で扱う楽しみを十分味わって頂きたいと思っています。それにしても墨田区総合体育館の環境の素晴らしさに改めて目を見張りました。関西にもこれくらいの体育館が欲しいものです。

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キリンチャレンジカップ 対チュニジア代表
ユースフットサル選抜トーナメント2015

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