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2014年10月14日ブラジル戦(上)

2014/10/20(月)

――ブラジルとネイマールのうまさや強さばかりが目立つ試合でした。どんなサッカーでも面白いという賀川さんにはいかがでしたか

賀川:日本代表チームがボカボカと殴られているのを見るのは決して楽しいものではありません。試合前にスターティングラインナップを知らされた時に、まず驚きました。監督さんはどういうつもりなのかと不思議に思いました。

――相手がブラジルであっても今の代表には選手選考試合であるという話でした。もちろん試合をする以上、勝ちを目指すとも言っていました

賀川:その監督の意向に添いたいと選手たちはそれぞれ一生懸命にプレーをしたが、初めて組んだ仲間と世界的なチームを相手にする試合はとても分が悪かった。

――ブラジル側は個人力が高い上に連係プレーもしっかりしていた。それに対して個人力の低い当方が初めてチームを組んだのだから選手たちは大変だった

賀川:多くのファンはテレビの前でゴールを奪われるたびに口惜しさを味わいつつ、相手のあざやかなゴールに感嘆したことでしょう。私は日本選手たちが今の自分たちと世界のトップレベルとの差を実感したと思います。彼らがこの試合のビデオを何度も見直すことで、体験をステップにしてほしいと思っています。

――会場となったシンガポールのナショナルスタジアムは5万5千人収容の屋根付きスタジアムですが、芝生があまりよくなかったとか

賀川:テレビ画面でも全部緑というのではなく、痛んでいるところもあったようです。屋根付きでの芝生の管理はどこも苦労するはずです。2002年に竣工した神戸のノエビアスタジアムもしばらく芝の評判はよくなかったが、今はよくなっています。竣工して5年というシンガポールもこれからでしょう。

――ブラジルの先制ゴールは、前半18分でした。右サイドのキープから、その後のスルーパスをネイマールが決めました

賀川:このゴールの直前にブラジルにFKのチャンスがあった。左サイドでネイマールがドリブルで仕掛け、3人目の柴崎が体を押さえにいってファウルとなった。ペナルティエリア外左ゴールポストから約20メートル少し外よりの地点だった。日本の壁は5人、カナリアが3人立った。ネイマールは一度蹴る仕草で日本の壁がその前に飛び出すのをレフェリーにアピールしてやり直した。助走なしの右足キックは左ポストの上部を直撃して左へ流れた。GK川島は全く動くことができなかった。9月の対コロンビアでは彼の右ポスト側のFKが右ポストギリギリに決まっていた。このストレートパンチのFKの正確さは彼の名誉回復シリーズの4試合での気合い充実の証(あかし)だろう。

――この後、スルーパスからネイマールのゴールが生まれました

賀川:この攻撃はブラジルの右サイドでのゆっくりしたパス交換で始まった。第3列(DFライン)と第2列のウィリアンとのパス交換からボールはジエゴ・タルデッリに渡る。ジエゴ・タルデッリはこれをダイレクトでウィリアンに渡し、リターンを受けて森岡をかわし、短いドリブルの後に日本DFの裏へスルーパスを送った。

――ジエゴ・タルデッリが受けた時、ハーフウェイラインより日本側のフィールドには日本のDF4人とMF5人の計5人がいたが、ブラジルは右タッチ際にひとりと、パス交換のウィリアン、ジエゴ・タルデッリ、そして右トップに出ていたエリアスと左トップの位置にいたネイマールの合計5人だけだった。

賀川:ネイマールはピッチの中央、日本のDFライン4人の一番右の酒井高徳の外側にいた。しかも2歩ほど前、つまりオフサイドポジションにいた。

――このときのスルーパスとネイマールの動きにテレビの前で、うまいと声を上げていましたね

賀川:ゆっくりとしたパス交換の後、ジエゴ・タルデッリがウィリアンにパスを出してリターンをもらう時の「緩から急」への変化の見事さ、そしてボールを受ける時のネイマールの位置を見ておいて3歩ばかりドリブルして日本のDF塩谷と森重の間を通すパスでオープンスペースへ送り込んだ。点を取れるFWとしてのジエゴ・タルデッリの感覚に思わず声が出た。

――テレビ解説ではネイマールの動き方をほめていました

賀川:もちろんすばらしいものだった。オフサイドポジションからいったん後方へ戻り、酒井の背後からニアサイドに現れた。酒井はジエゴ・タルデッリのドリブルの方を注視していたからネイマールがニアサイドに現れて初めて気が付いた。

――ジエゴ・タルデッリからのパスが日本のDFラインの裏へ出たときにはボールの一番近くにネイマールが走っていた

賀川:彼はペナルティエリアの手前でボールを取り、エリア内にドリブルし、出てきた川島を右へかわして無人のゴールへしっかりシュートした。

――リピートの映像で、ネイマールが酒井の背後からうちへ入ってパスを受けにいく速さがよく出ていますね。

賀川:相手の視野の外にいて、そこからボールを受けるストライカーの動作は日本では1936年のベルリン五輪の代表CF川本泰三さん(故人・第1回日本サッカー殿堂入り)の得意なプレーで、彼はこの動作を「消える」という言い方で後輩のFWにも勧めていました。

――外国に消えるという言い方はないとか?

賀川:サイドからのクロスに対して、ファーサイドに隠れてニアサイドに現れるのが典型的なひとつで、日本では釜本もこれが上手だった。イングランドのリネカーの得点はこの消えて出てくる形が多かったと記憶しています。しかしこの動作についての技術用語とか戦術用語があるのかどうか、不勉強な私には判断できません。1966年のイングランドのマーティン・ピータースが突如としてゴール前に現れるのをゴーストと評した記者もあったが。

――マーク相手からマークを外す個人戦術の一種ですね。

賀川:私が感心するのは、ネイマールのようにドリブルもシュートもすばらしく高度で、しかもスピードを持っているストライカーが若いうちにこうした駆け引きもできるということです。この点から見ても、彼の非凡さが見えるでしょう。

――そのストライカーを生かせるチーム全体もやはりハイレベルだということ

賀川:ゆったりキープして日本のDFの足を止めておいて、スピードを上げて突破する気配を見せたジエゴ・タルデッリが唯一のタイミングでパスを出したのです。

――ドゥンガ監督はセレソンがブラジル国民の信頼を取り戻すための代表試合シリーズと言いました。格下の日本が相手と言っても、この先制ゴールでチームに余裕が出たことでしょう

賀川:彼らは10月11日の北京でのアルゼンチン戦に2-0で勝利しました。ライバルを相手に、彼らはおそらく力一杯プレーし、チームは充実したはずです。もちろん疲れはあるだろうが、チーム全体のコンビネーションや攻撃の際の流れのつかみ方などに彼らの充実ぶりが推察されました。

日本のサッカー指導にかかわる人たち、また、プレーの上達を心がける人たちは、この試合のビデオで効果ある攻撃のためのスタートのタイミング、スペースの使い方などを見ていただければ多くのヒントがあると思います。

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