香川のドルトムント移籍
香川がドルトムントへ移籍してよかったですね。と神戸の図書館、神戸賀川サッカー文庫でボランティアで目録作りに携わる仲間が言う。神戸出身というだけでなく、真司のプレーに好感を持つ人たちはワールドカップの不振と、その後のマンチェスター・ユナイテッドでの立場を心配していたのだった。そこでしばらく、香川真司の話となる。
――マンチェスター・ユナイテッドでファーガソンが去った後、次の監督になって出場機会が少なくなりました。怪我もあり、また日本代表でもブラジルでは初戦の働きが悪いことで、かつての評価を落としました。ドルトムントへ戻ったのは、彼にはプラスと見ていいのですか
賀川:マンチェスター・ユナイテッドは新しい監督になって、全く違ったチームになってしまった。それをオランダ代表監督だったファンハールが新監督として立て直すことになったのでしょう。しかしファンハール監督のもとでプレーするよりも、ドルトムントに望まれて戻ったのだから、ドイツ帰りは歓迎すべきことと思います。
――もともと、ドルトムントからユナイテッドへ移ったとき、賀川さんはちょっと早いのじゃないかと言っていましたね
賀川:私だけでなく、デットマール・クラマーは、あのとき、もう1年ドイツにいるべきで、ドルトムントから出たければバイエルン・ミュンヘンがいいという意見でした。電話での簡単なやりとりで、その後来日した時は、彼は風邪気味でサッカーの話はほとんどしないまま、お互いに年だから「体を大事に」という程度に終わってしまいました
――また、神様クラマーの見通しは怖いくらい当たりますね
賀川:彼の意見はともかく、ブンデスリーガのドイツ選手をはじめ、多くの選手は体格がよく、スピーディーです。しかしプレミアとなると、高い報酬でよりレベルの高い選手がいっぱい加わっています。東欧、アフリカからのプレーヤーも技術レベルが高く、身体能力も高い。おそらく真司も最初にプレミアでプレーし、相手と体の接触があった時に重さが違うと感じたと想像しました。
――重さ?強さではなく
賀川:単なる体重という意味ではなく、当たった時の感覚で感じると思いますよ。小柄な真司にとっては、接触プレーはやりにくい相手が多かったでしょう。ブンデスリーガでは、持ちこたえられても、プレミアでは少しやっかいだと感じたでしょう。
――彼の速いドリブルにしても、からまれると厳しい
賀川:その対策が不十分だったし、守備に回った時でも、相手への寄せの間合いが効果的でなかったのでしょう。
――日本でも今のサッカーでは攻めも、守りも重要とされています
賀川:プレミアでの苦い経験を活かして、もう一度ドルトムントで腕を上げればいいことでしょう。
――ここで失敗しないことですね。怪我など体のケアも大切です。
賀川:順調にすくすく伸びてきた香川が、どこかで苦い目にあっても不思議はありません。サッカーの世界は広くてレベルが高いのです。
――ブンデスリーガも高いレベルのリーグです
賀川:私は、彼がドイツへ戻ったこと、そしてまた多くの日本選手がブンデスリーガで今年も働くことで、日本のサッカー人がドイツのサッカーへの興味を強くしてくれるだろうと密かに喜んでいます。
――いつも言っているように、経営もしっかりしたリーグで、またドイツはブラジルでの優勝だけではなくて、ヨーロッパチャンピオンズリーグでのバイエルンの優勝をはじめ、実績はすごいですからね
賀川:そうです。ブラジル大会優勝の後、早速ドイツ関係の出版物が多く出て、ドイツがここ20年間の不振から立て直したことをいろいろ紹介しています。なかにはドイツサッカーは力づくだけだったのが、技術が上がるようになったなどという論もありますが、ドイツのサッカーは歴史的にも早くから技術指導に熱心で、その育成組織や指導法はある時期世界の頂点にあったのです。すでに何度も書いていますが、バルサの成功者グアルディオラを招いたバイエルンのクラブの姿勢が、ドイツサッカーのより高いレベルを望む姿勢と思ってほしいものです。
――今度の大会のスペインの1次リーグ敗退で、バルサのサッカーは古いという論もあります
賀川:バルサ、スペインのレギュラーたちが少し年齢が高くなっただけかもしれませんよ。スペインリーグのバルセロナの今期のスタートを見ても、相変わらず彼らは自分たちのポゼッションサッカーをしています。要所要所で奪いにゆくときの強さも戻ってきているように見えました。ドイツサッカーを勉強するのは、もちろん今回の優勝国という点もありますが、単に一時的なものであっては困ります。
なにしろ、ドイツサッカー協会(DFB)はプレーヤーの登録人口630万人で、単一競技の一国のスポーツ団体として世界最大の組織を持っているのです。じっくりと取組み、私たちの参考にしたいものです。
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