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レシフェの悔しい敗戦の後

2014/06/17(火)

6月16日の朝をブラジルのナタールのホテルで迎えました。14日22時のレシフェのペルナンブコ・スタジアムで行われたC組第1戦で日本代表がコートジボワールに1−2で敗れたのを取材しました。次の日、11時にバスでレシフェのホテルを出て、4時間走った後、ナタールのセルス・ナタールグランドホテルに到着。旅の疲れが今頃に出始めたのか、自分でも驚くほどバスの中で眠っていました。実は例によって車中で原稿用紙を取り出したのが、ガタン、ガタンと時折のバウンドを交えての小刻みのガタガタ振動で、結局は書くのを諦めました。せっかくのブラジルの旅の中断が1日以上になってすみません。

日本代表の残念な結果については、すでにテレビや活字、インターネットなどで、大量のレポートが皆さんのお手元に届いていることでしょう。2日遅れての話ですから、経過よりも(実はその経過の一つ一つのプレーやひとつの局面でのプレーが一番大切ですが)全般の感じをお話すると、力の上である相手のコートジボワール側がとても慎重な戦いぶりをしたこと。

ご存知のように、ヨーロッパのトップリーグに14人もの代表がいるこのチームは、個人レベルの高いことで知られています。36歳のドログバは現在はトルコのチームにいますが、アフリカでもヨーロッパでも有名なストライカーです。彼にとっては3度目のワールドカップで、今度はこれまでの1次リーグ敗退から、セカンドステージへ進むことが強い願いなのですが、その大スターをスターティングラインナップには入れずに彼らはメンバーを組みました。

彼らのキックオフで始まった前半は、ボールをキープすれば3DFに、日本ボールになるとすぐに4DFにする様子がとてもはっきりしていました。そうした慎重な戦いぶりで前半を0−1とリードされても、後半に挽回し、ドログバを投入して逆転しました。ヤヤ・トゥーレの長いドリブル突進をはじめ、それぞれの攻撃姿勢が目立つようになり、日本は前半よりも受け身に回る時間が増えました。危うく見えても、シュートのミスや、DFの粘りで何とか防いでいた日本でしたが、後半17分にドログバがディエに代わって入ってくると空気が変わりました。

ポジションの取り方がうまく、日本側は対応も困難になり、一方日本側には中盤での小さなミスからピンチになる場面も増えました。64分にボニー、66分にジェルビーニョがゴールを決めました。同点ゴールしたボニーはプレミアのスウォンジー・シティにいる選手。昨年はオランダリーグの得点王(36試合、36ゴール)となった選手です。

2点目を決めたジェルビーニョはアーセナルで名を上げ、セリエAのローマの攻撃で評価を高めているプレーヤーです。オーリエが右足サイドキックで丁寧に送った後方からの速いクロスに内田のニアサイドでとらえた見事なヘディングでした。

いささかコートジボワール側から見た書き方になりましたが、彼らの多くはすでに欧州で高い評価を受けている選手が多く、ドログバやヤヤ・トゥーレはワールドクラスと言われているのですが、その相手側が日本代表のプレーを研究し、自分たちの戦略を進めた。ザック監督が「相手がよかった」と言いましたが、そういう形になったということを申し上げたかったわけです。

この大会の日本代表はこれまでも再三、お話しているように日本のサッカー史上でも最も(ボールテクニックの)上手な選手の多いチームで、だからこそこういう個人力のある、あるいは攻撃力のあるチームが多いこの大会に「攻撃志向」を掲げて乗り込んできたのですが、彼らが日本以上にうまい試合運びだったということです。

そういう相手に対して、日本代表は確かに自分たちの力を見せはしたが、十分に発揮したとは言いがたい試合でした。個人的な強さに劣るということは、サッカーではある意味で決定的なものですが、それを日本特有の組織的な戦いで互角以上に持ち込むためには局面での粘りとパス攻撃を活かすためのラン(走ること)が大切なのです。これだけボール扱いが上手になっている選手が揃っているのですが、活動量が足りなければ日本流サッカーのよさは十分には出せません。選手たちの気持ちの持ち方が、はたしてどうだったでしょう。日本は上手になったと言っても、「動き」が伴わないと、私たちの特性である「敏捷性」が生きないのは1930年に初めて日本代表が結成されてから、何十年変わることのないことです。

イトゥの合宿にいる木ノ原旬望記者の話によると、選手たちも当夜は眠れなくて、やはり全力を発揮できなかったことを話し合っていた者もいたとのことです。せっかく予選を突破した日本代表ですから選手ひとりひとりがここでワンステップ上のレベルに上がるためにはこの次の対ギリシャ戦で「十分戦った」というプレーをしてほしいものです。

チーム全体として、日本では守備は否応なく力を尽くすことになり、立派な戦いだったと思います。攻撃陣に注文をつけることができるのは、ある意味では日本全体の実力アップの証(あかし)でもあります。前半のゴールも左の長友のスローインを香川、長友とつないで、長友からの速い横パスを受けて、本田が決めたものですが、一瞬相手側はなぜ空白地帯ができたのか、と意外そうでした。

日本代表の攻撃には独特のバリエーションもあり、その時々の局面で普段の力を発揮すれば、相手をガクンとさせる力をもっているはずです。

もう一度、挑戦し、いい結果を出してほしいものです。

王国ブラジルの大会だけあって、テレビも新聞も大量のニュースを報道しています。

89歳の私は選手には「活動量」を要求しても自分の動く範囲の狭いのにはこれまでの9回の大会からはひどい落ち込みようで、その点はいささか残念ですが、セルジオ越後さんや、本多克己さんはじめグループの仲間の助けで大会を引き続き取材し、旅を楽しむことができそうです。

そうそう、FIFAドットコムが私をこの大会に集まった取材記者のなかでは最年長ということで取材に来ました。すぐにではなく、そのうちに掲載されるということです。そちらの方もお楽しみください。

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コメント

賀川さん、お疲れ様です。FIFAの記事、Twitterで知りました。と同時に賀川さんがブラジルでまさに今、W杯の取材をされていることに驚き、また敬愛の念を強くしております。
私は36年来のサッカー好きで、W杯の放映を生で観たのが78年アルゼンチン大会でした。その時の感動は今でも忘れられません。当時は海外サッカー情報と言えばサッカーマガジン、イレブン両誌と三菱ダイヤモンドサッカーくらいでした。毎月2誌を隅々まで読んでいた私にとって、賀川さんの書く記事は本当にワクワクしたものです。私がサッカーにのめり込むことになったのは、クライフやパオロ・ロッシ、ボンホフのせいばかりではありません。

あ、自分の事ばかり書いてしまいました。申し訳ありません^_^;
コートジボワール戦のことですが、まさにコートジボワールは戦略的に日本対策を徹底してきましたね。本来であれば格下である日本がやらなければならないことです。日本は緻密さに欠いていました。それは気になっていたことです。このことをメディアが『日本も研究される立場になったんだ』というようであれば、それは大きな間違いだと言わなくてはなりません。
後半から変化させてきたコートジボワールに対し、日本は何をしたのか?何をやろうとして、何故上手くいかなかったのか?純粋に知りたいと思うのです。
メディアに期待したいのは、そんな分析や指摘です。それが昔のサッカー専門誌にはあった。上質な記事や解説を私たち読み手、視聴者も求めているのだと思います。

長文になりましたが、賀川さん、どうかお身体にお気を付けて、まだまだ現役を続けていただくようお願いします。

投稿: ちゃい | 2014年6月24日 (火) 18時40分

コートジボアールは、攻撃の中心だが防御の弱い日本の左サイドをうまく攻めて来ましたね。コンパクトなサッカーは全体が後ろに引いてしまったことにより、機能しませんでした。

投稿: 烏球亭 | 2014年6月17日 (火) 08時00分

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