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ギリシャ戦 0−0

2014/06/21(土)

――C組第2戦(6月19日・ナタル・エスタディオ・ダス・デュナス)で日本はギリシャと0−0で引き分けました。1分1敗、勝点1、ゴール数は得1、失1です。数字の上ではまだグループリーグ突破の可能性がありますが、第3戦の相手が強いコロンビア(2勝)ですから、実際には苦しい立場です。

賀川:いい攻めもあったし、危ないピンチを逃れた見事な守りもあった。しかし勝てなかった。威勢のいい嘉人(大久保)がイエローをもらわないことを念じていたが、その嘉人に対するカツラニスのファウルが、2枚目のイエローとなり、退場処分、10人となった。その10人を相手に、後半は攻め続けながら1点も取れなかった。もったいないことだった。

――後半の頭から遠藤保仁が入り(長谷部誠と交代)、12分に大迫勇也に代えて香川真司を送り込んだ。相手の状態を見て、いい交代でしたか?

賀川:大迫は第一戦よりずいぶんよくなっていた。長谷部もしっかりやっていた。相手が一人少なく、疲れてくることを考えても、2人のパスの名手を投入したのは妥当なことでしょう。結局はゴールは生まれなかったが…

――その賀川から右へ振って、内田篤人が深いところから中へ通して、ファーポスト際で大久保が走り込んだが…

賀川:記者席で、私も立ち上がりましたよ。だが、彼が左足に当てたボールは高く上がり、バーを越えた。

――インステップで叩けとブラジルの記者席で声を出している姿を想像しました

賀川:さあ、スロービデオで見直していないので、何とも言えませんが、バウンドが予想外に高く上がったのでしょう。彼には生涯つきまとう悔しいシュートかもしれませんね。ここで決めておけば、功績者、大久保義人のゴールとして語り継がれる場面でしたね。

――若い頃から彼を見ている賀川さんには残念な局面でしたね

賀川:数多くの得点を記録している彼にとっても、ものにしてほしいゴールでした。この選手は若いときから、ここで一点とか、この試合では皆のためにも自分のためにもゴールがほしいという時に不思議にしっかりと点を取るプレーヤーなのです。スペインのマジョルカでの最初の試合でもゴールしました。高校の時も、Jリーグでも、そういうことの出来るプレーヤーなのです。

――この日は、その運がなかったとしか言いようがないですね

賀川:まあそうだが、それで片付けてはいけません。この場面、なぜ彼のところでバウンドが少し高かったのか、彼が左足のどのスイングでボールをとらえ、ボールがゴール枠を外れたのか――などは、彼だけでなく、日本中のストライカー、コーチがこのビデオを見て分析すべきでしょう。

――もともとゴールを決めた、決めなかったの各局面の反省あるいは分析、勉強が不足していないか…が賀川さんの意見ですからね

賀川:やっていますよ、という指導者も多いことでしょうが、一つのプレー、一つのゴール、一つのミスをおろそかにしないのが、フットボールのプレーヤー、指導者には大切なことでしょう。いや、余計なことを言いました。試合の流れに戻しましょう。

――左右にゆさぶっての惜しい場面は内田にもありました

賀川:いいところへ走りこむ、彼の最もおいしいところに来たはずですが、サッカーの神様は意地悪ですかね。ただし、これも神様のせいにして終わりにしてしまってはいけないのです。その時のボールの状態、足の当て方をスロービデオで何度も振り返ってみれば、自ずから疑問が解消され、次のゴールにつながります。

――ポスト際で流れてきたボールを決め損ねた話を聞かせてもらったことがありましたね

賀川:1968年のメキシコオリンピックの銅メダルチームが67年の東京でのアジア予選で優勝した時、5カ国リーグの第3戦で韓国と当たり、3−3で引き分けました。(第4戦のベトナム戦に勝ってメキシコ行きを決めた)無敗同士の日韓の戦いは日本が前半に2−0とリードして有利になっていた。そして前半の終了近くに3点目のチャンスが来た。右からのクロスがゴール前を通り、ゴール正面左寄りで八重樫茂生が走り込んだ。3点目、これで勝ったと記者席でそう思ったら、八重樫のところでボールがイレギュラーバウンドして、彼の左足の上をボールが通りすぎてしまった。3−0となる前半が2−0で終わり、韓国が後半反撃して歴史に残る「3−3の日韓戦」となったのです。前半に3−0としておけば、ずいぶん楽になったはずでした。

――八重樫さんはメキシコ・オリンピックの日本代表のキャプテンでもあり、選手の人望も厚かった人ですね

賀川:そのすばらしいキャプテンの惜しい逸機を指導者たちは当日の雨で状態のひどかったグラウンドのせいにしたのかどうかは別として、こういう場面、つまりシュートの成功・失敗についてもっと日本サッカー全体が関心を持った方がいいでしょう。特に今はテレビが普及していますからね。

――日本はこの試合で結局16本のシュートをし、そのうち11本がゴールの枠内に飛びました。本田圭佑のFKもあり、大迫のいいフォームでのロングシュートもあった

賀川:ゴールキーパーと“ゴールを守る”人の体格が古い時代よりよくなった上、ゴールキーパーには専門のトレーナーがついて練習しています。体が大きく、バネがあり、性格がゴールキーパーに向いているかどうかも指導者は調べます。その素材を専門家が指導して練習するのです。世界のサッカー界でゴールキーパーのレベルが上がっているのは当然でしょう。ワールドカップの各国代表チームのゴールキーパーといえば、ゴールキーパーのなかの選りすぐりが来ているのですから、その人が守るゴールに向かってシュートをする攻撃側がどれほどシュート、足でも頭でも練習しているかということです。

もちろん、相手側は攻撃する側がまずシュートを出来ないように防ぐから、それを突破し、攻撃を展開してシュートのチャンスを作るための練習も必要ですが、その最終(フィニッシュ)のプレー、シュートに対しては専門家が守るのです。シュートの大切さを私が語ると、また賀川さんのシュートの話だという人も多いかもしれませんが、こんどのように一人少ない相手を攻めて、たくさんのチャンスの場面、シュートの場面をご覧になれば、改めてこの技術の重要さをみていただけたと思います。

――選手たちはがんばりましたね

賀川:皆が大好きなサッカーの日本代表になって、試合に出る人も出ない人も勝ちを目指してそれぞれの役割に徹したはずです。なにしろ選手自身が日本で一番のサッカー好きのはずです。その好きな道の最高の舞台に立っている幸福を噛みしめて、もう1試合戦ってほしい。

――コロンビアがうまい、強いといっても同じプロのサッカー人ですからね

賀川:代表チーム全体に気分が高まり、ひとりひとりの体の調子も良くなってきているはずです。2006年ドイツ大会も初戦(1−3 オーストラリア)を落とし、2戦目を引き分け(0-0 クロアチア)、第3戦がブラジル(1−4)でした。ブラジルとコロンビアでは格も選手もブラジルが上です。選手たちは絶好の腕試し、力比べのチャンスと思っているはず。第1戦、第2戦で進化し、前進もしているのだから、大一番を全員でつかみ取るとてもありがたいチャンスです。

ブラジルまで足を運んだサポーターの皆さんも、この地で新しい喜びを味わっていただきたいと祈っています。

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