自分たちの得点の取り方 実戦的技術を持つスラブ人
――日本がはじめのうち勢いよく攻めたので、今日は楽しいぞと思ったら、90分で無得点、前半の終了間際に1ゴールを奪われて0-1。結局、東ヨーロッパの強化試合は2連敗となりました
賀川:ベラルーシはワールドカップの欧州予選I組で最下位(8戦1勝1分6敗、得点7、失点15)に終わっているが、強敵にもまれて徐々に力を上げてきたようです。11月11日の最終戦、対スペインが1-2、その前の9月10日の対フランス(ホーム)が2-4でした。
――しっかり調べていたのですね
賀川:いや、不勉強で予習していなかったのだが、テレビで彼らの厚い守りとボールを奪ってからのカウンターの手順がずいぶん上手、というより手馴れているという感じだったので、あわてて外国雑誌を読み直しました。
――日本がアジア予選でのアウェーでいつも手を焼きながら勝ってきたのですが、東欧まできて同じタイプの試合になるとは…
賀川:スラブ人のチームだから、アジアの相手よりは体格がよく、プレーも粘り強いところがあります。
――ふーむ
賀川:ソ連邦時代にオリンピック代表の監督だったカチャーリンから「他民族のソ連では選手の民族性も参考にします。その点でスラブ人は体が強く、辛抱強くて守備にいいプレーヤーが出ている」と聞いています。
――その守備の得意なスラブのサッカーにやられたということ
賀川:ファウルも含めて、執拗に体を寄せ、ぶつけに来る相手と競り合いながら、日本側のボールテクニックの正確さが落ちたこともあります。
――奪われたゴールは、前半の終わりごろでした
賀川:もう一つ言っておきたいのは、彼らのテクニックは決して超高度というわけではありませんが実戦的ですよ。たとえば、クロスを蹴るのに、しっかりとボールの底を蹴って高いボールを送り込むということです。日本代表でサイドからのクロスがいまも相手にはね返されますが、ベラルーシのゴールは、右から、左から送り込んできたクロスが狙ったところへ落ちていたからなんです。
――得点になる攻めのスタートはFKからでした
賀川:香川と長谷部の小さいパスの失敗でシトコがドリブルするのを本田がファウルで防いだのが原因だった。(1)そのFKが右へ送られ、後方から飛び出した17番のチゴレフがペナルティエリア右角からファーポスト側へクロスを送った(2)その高いボールを折り返し(3)ペナルティエリアすぐ外、中央右寄りでカラチェフが受けてすぐ右前のチゴレフに渡し、(4)リターンをもらって、中央へ送る。それを(5)長谷部がヘッドでクリアしたが(6)左サイドで拾ったベレチロが30メートル左よりの地点から左足のクロスを蹴った(7)ボールは再びペナルティエリアいっぱい中央右寄りに落下し、(8)そこにいたカラチェフが後方のチゴレフにパス。チゴレフがエリア外からビューティフル・ゴールを決めた。
――クロスが狙ったところへ落ちてくるというわけですね
賀川:必ずしも中村俊輔ほどのピンポイントとは言えないが、まず狙ったゾーンへ送り込んでいます。早いカウンター攻撃を受けて、戻ってきた日本側の守りはこれで右・左とゆさぶられてマークが甘くなって、最後はノーマークシュートでした。
――カウンターもサイドからが多く、特に右サイドが働きました
賀川:シンプルにサイドを縦へ出て、そこからのクロスというのは、昔からの攻め方ですが、横から来るボールの方が、中の者には(後方からのスルーパスよりも)合わせやすいという利点があります。
――日本のパス攻撃で相手の裏へ出すスルーパスは、ヤッタ!という感じはするが、ここのところなかなか得点になりませんね
賀川:だからこそ、新しいトップ柿谷曜一朗をこのシリーズで試したかったのでしょう。
――日本のチャンスでのシュートが入らないことについては、また別にするとして、2試合とも試合の終わりごろにハーフナーを投入していますが、彼の長身を生かせるようなボールが出ていません
賀川:それは先ほどのベラルーシのクロスと比べてみることです。特に右サイドから浮かせてくるクロスは何本かありましたが、その蹴り方は参考になるでしょう。日本にはボールを高く上げて狙ったところに落とす中村俊輔という選手がいるのに彼のレベルに達する者が少ないのも不思議なことです。
――東欧の強化2試合はいろいろな勉強をしましたね
賀川:私は今の日本代表はアジア予選突破の後、大物チームとの対戦が続いて少し調子が落ちているのではないかと思っています。その点はあまり心配はしていませんが。
――FWのトップ、あるいはストライカーがまだ決まりませんが
賀川:いろんな策があるでしょうが、8月のNHK特別番組のメキシコ五輪銅メダルの試合を見ても、いいストライカーがいれば、と誰もが思うでしょう。
――今日は代表の攻撃の分析とは別に欧州予選最下位のベラルーシの攻撃を眺めることで反省点を考えた―ということにしておきましょう
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