INAC神戸の優勝
――なでしこリーグで、INAC神戸レオネッサが4試合を残して優勝を決めました。女子サッカーの推進者のひとりでもあった賀川さんとしては
賀川:神戸のINACのようないいチームがいてくれるので、とても楽しい日々ですよ。BSフジで毎週の試合を見られるのもとてもうれしいですね。Jリーグの各クラブも力を入れるようになって、なでしこリーグ全体のレベルアップが進んでいるが、INACは澤穂希という別格の選手がいる上、川澄、近賀、海堀といったワールドカップのチャンピオンになった選手がいます。若い伸び盛りのプレーヤーも多くて、毎週の試合は見逃せないものになりました。
――テレビの前で試合を見ながら、つぶやいている内容をそのうちまとめてみたいですね
賀川:13日のテレビ観戦はとりわけ力が入りましたよ。
――というと
賀川:INACのトレーナーの山田晃広さんがブログで私のことを知り、いくつかの質問があるというのでティータイムに会いました。その時、澤穂希と近賀ゆかりの2人の選手も一緒だったので、にぎやかで楽しい時間になりました。
――ふーむ。それはよかったですね
賀川:サッカーに打ち込んでいる若い人と会話をかわせば、そのプレーヤーが気になるものです。ましてワールドカップ優勝の2人ですからね。
――で、優勝決定のテレビ観戦の感想は
賀川:サッカーの質から言って、INACの優勝は当然ですが、澤のコンディションが回復し、故障で長期離脱していた近賀が復帰しての連続優勝決定だから、とてもよかった。1-1の後の決勝ゴールは、チ・ソヨンが持ち上がり、中央やや右寄りの川澄にパス、川澄がそれを右サイドを駆け上がる近賀へ。近賀がダイレクトで早いクロスを送ったところへ、チ・ソヨンが飛び込んでヘディングを叩きこんだ。後方から走りこんできた勢いそのままのすばらしいヘディングシュートだったが、近賀のクロスはパーフェクトだったし、そこへパスを出した川澄のドリブルとボールを離すタイミングも見事だった。自陣で奪ってからチームの多くがからんだこういうゴールを決めた時に、おそらく選手たちはサッカーというチームゲームをやっていてよかったと思うだろう。この日スタジアムに集まった観客にとって、サッカーの醍醐味を感じつつ、ホームチームの優勝を見つめるという幸福な時間。女子サッカーのレベルアップをリードするINACにとっては、次のステップへ上がるための励みとなる優勝決定だろう。
――なでしこジャパン、なでしこリーグについても、これから話を聞かせてもらいたいと思いますが、INAC神戸は19日の試合でも浦和に2-1で勝ちました。
賀川:テレビで見ましたよ。DFのボール処理が遅くなってボールを奪われて、先制点を取られた後、前半の早いうちに同点ゴールと2点目をもぎ取って逆転しました。1点目は右サイドにいた高瀬がライナーのクロスを送り、相手DFに当たって高くゴール前に上がったのを澤が相手とジャンプヘッドで競り合い、こぼれた球をゴーベル・ヤネズが左足でシュートを決めたもの。右からのクロスが送られた時に、ペナルティエリア内に4人が入っていて、相手に当たったリバウンドを澤が長身DFと競り合った。その時のスロービデオを見ると、身長差のある相手に精いっぱいのジャンプをして互角以上に競り合っていたのがとても印象的で、このためボールはポトリとゴール前に落ちて、ゴーベル・ヤネズのシュートとなった。彼女の左足シュートにしても、右足でしっかり立っているために、バウンドの高さにあわせてボレーを蹴っていた。こういう落ち着きと、体のバランスの良さが彼女の得点力のひとつとなっているのだろうと、改めて感服した。
――2点目は
賀川:後方でのDF間でのパスを受けた右サイドの近賀が、ボールを右足で止めるとすぐ前方に向き、縦のパスを川澄の前へ送った。例によってさりげなく正確なボールで、川澄はペナルティエリア右いっぱい、ゴールライン近くでダイレクトでクロスを送り、ファーポスト側へ入ってきた高瀬がヘディングで叩きこんだ。シンプルで美しいゴールだった。
――浦和も進歩したということですか
賀川:体力面でも、ボール扱いの面でも、個人的に上達しているのだろうが、ボールをつなぐよりも前方へ蹴って走るというサッカーだから、攻めるときにチームワークという感覚が生まれにくい。代表チームの底上げということを考えると、個人技と同時にチームゲームのセンスを高めることが大切だろうと感じた。もちろん2-1となった後、INACに追加点が生まれなかったのは不思議でもあり、男子の日本代表と同様に、シュートの練習の不足していること、またキックについての一人ひとりの工夫が足りないようにも見えた。
――その他には
賀川:気づいたことは多いが、優勝した試合直後、テレビでクローズアップされた川澄キャプテンのホッとした表情は忘れられない。いつの試合でも、最後まで運動量を落とさない彼女の責任感と努力にはただただ感嘆です。
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