FIFAコンフェデレーションズカップブラジル2013 日本-メキシコ
――ブラジルやイタリアというワールドカップ優勝国はともかく、メキシコには勝てるかもしれないと思っていましたが、3敗目となりました
賀川:3連戦の最後、相手もそうだがチーム全体に疲れが重なっている時です。イタリアとの大接戦で力を使った日本は動きの量が落ちて当然ですが、この試合も本田圭佑と長本佑都の2人のコンディション不十分が響きましたね。
――体調の問題は、この大会はじめからでした
賀川:今の日本代表は、まず「ひたむき」に走ることが彼らの技術・戦術を生かせる前提になっています。しかし人は年がら年中ひたむきに走り続けるわけにはゆきません。こんなことはもっとレベルの低かった70~90年前から言われていることです。イタリア戦でも、あの暑さのなかで、イタリアは時に「ひと息」入れながら試合をしていた。そして、ここぞという時にはパンチ力を集中しました。
――メキシコ戦でもその傾向がありました
賀川:前半の序盤は日本の方が攻めてパスがつながり、香川、本田、遠藤たちを中心にチャンスをつくった。岡崎は守りの面、相手のボールを奪う面でも、イタリア戦と同様にとても貢献しました。
――前半10分までに惜しい場面が2度、香川真司がペナルティエリア内でのシュートを防がれたのが最初、遠藤保仁のシュートを岡崎がタッチして方向を変え、ゴールに入ったがオフサイドだったのが2つ目
賀川:25分にも、本田が左でシュート。これはペナルティエリアいっぱいからだったが、、GKに防がれましたね。そう、彼や香川の空振りもあった。
――いいチャンスを作っても、点を取らなければなんにもならない、と真司くんも言ってますが
賀川:パスをつないで見事に攻め込んでいるようだが、最後のシュートの場面でボールを受けるときに相手の守る側から見れば意外性はなくて、ボールの動きもシューターの動きも見えているはず。だから防ぎやすい。
――というと
賀川:ボールを動かすスピードやそれとともに動く日本選手の動作が同じ調子に見えました。
――一本調子という記事もあったかな
賀川:それとラストパスがサイドからでないから、相手DFもマーク相手とボールを視野に入れているのと違うかな。
――ふーむ
賀川:日本の攻撃でなく、メキシコの先制ゴールを見ると。
――後半9分、左サイドのグアルダドのクロスをニアでエルナンデスがヘディングで決めました
賀川:前半の中ごろからメキシコのボールポゼッションで、30分からの15分間に5本のシュートがあった。後半もメキシコの圧迫が続いて4分ごろから5分間、日本側はゴール前に釘づけ状態になっていた。左から右から攻め込まれ、エルナンデスのシュートを酒井宏樹が足で防ぎ、ドスサントスの右から内へ長友をかわしてのシュートは細貝萌が頭で止めるなど、ピンチを防いだ。このゴール前攻防からいったんボールがメキシコ側後方でのキープに変わり、そこからCBレイエスが高く長いパスを左サイドへ送ったのが8分0秒、ハーフウェイラインから45メートルの左タッチライン際でグアルダドはジャンプして左足タッチでボールを足元に置いた。(1)酒井が間合いを詰めてくると(2)グアルダドは左足アウトサイドでボールを前に押し、そのままクロスを蹴る体勢に入る(3)彼が左足で蹴ったボールは、止めようとした酒井の左足を越えてゴール前へ飛んだ(4)このクロスのスピードに合わせて第2列からスタートしたエルナンデスがGK川島の前でジャンプヘディングし、ボールはニアポストいっぱい、ネットに飛び込んだ。
――それまでパスをつないで、あるいはドリブルを交えて、サイドから崩してシュートに来たのが、一発のロングパスとその直後の早いタイミングのクロスとテンポをきた
賀川:そういうこと。ペナルティエリア近く、あるいはエリア内に侵入してきたのが、長距離からのクロスにした。しかし酒井を抜いてから蹴るのではなく、相手DFを前に置いてのクロスだった。
――日本側の対応は
賀川:グアルダドがボールを受けたのは、ペナルティエリアの横のラインの延長上、つまりゴールラインから16メートル50のところでした。このとき日本は右の酒井がグアルダドに、中央を今野泰幸、その右を栗原勇蔵、左に長友がいた。
――クロスを蹴った時は
賀川:グアルダドはフェイントを入れてクロスを蹴った。テレビの計時では8分8秒だった。グアルダドがボールを受けた時には、ペナルティエリアのなかにヒメネス、外の右側にサバラ、左よりにエルナンデスがいた。グアルダドがキックの動作に入るところでエルナンデスはスタートし、ボールが酒井の足を越えたときには栗原の方へ動いていた。日本のDFの目はボールに注がれていて、後方から走りこんでいるエルナンデスをとらえていなかった。
――川本泰三流に言えば、消えていた位置からあらわれた
賀川:エルナンデスは得点能力で知られているFWだから、当然マークしているはずだが、試合の流れのなかで後方にいて、それが速攻に切り替わって瞬間にそれにあわせてあらわれてきたということでしょう
――ヘディングの能力に自信があるにせよ、攻撃の変化という点で相手が上だったと
賀川:そういうことになりますね。しかも外から来るボールには、シューターは合わせやすい。シンプルな早いクロスをニアであわせた彼らの勝ちです。
――そういえば2点目もエルナンデスのヘディングでした
賀川:後半21分の右CKでした。日本は吉田麻也(前田遼一と交代)を入れた。
――3・4・3にしたのですかね
賀川:CKを蹴るのは右サイドのドスサントス。小柄でドリブルがうまく、長友も彼のためにいつもほど攻撃に出られなかった。
――彼のキックは一番近くへ走りこんできたミエルの頭にピシャリと合った。彼はバックワードへのヘディングでファーポスト側へ送り、そこにエルナンデスがいた。酒井に代わって入っていた内田篤人が、判断が遅れたのを悔やんだという記事も読みましたが
賀川:まさにセットプレーそのものですね。最初にニアでヘディングしたミエルにしても、はじめからそこにいたのではなく、右ポスト側の後方から斜めに走ってゴールエリア一杯(ゴールポストから5メートル50)で頭に当ててボールのコースを変えたのです。そのボールに対して、エルナンデスは初めはゴール正面にいたのをいったん後方に下がってボールの高さを見極め、体を寄せていた内田から離れてジャンプヘディングしています。マンチェスター・ユナイテッドのストライカーらしいプレーですね。
――セットプレーは日本代表の得意な攻撃のひとつですが、この場面はメキシコ側の息がピタリと合いましたね
賀川:飛んでくるボールの高さや速さを見極める「未来位置の予測」の確かさといえるでしょう。
――メキシコとも差がないようであったというわけですか…
賀川:嘆くことはありません。日本だって進化しているのだから…こちらが追い上げたゴールは、遠藤が右へ出て、そこへ香川からのパスがわたり、遠藤のクロスを岡崎が決めました。自分たちの個人能力をもっと高め、それを結び付ければいいわけです。もちろん今出場しているメンバーだけでなく、自分にもこれくらいはできると思っている選手もいるでしょう。そういうプレーヤーは自分が何ができるかを国内、国外の試合でアピールし、代表の舞台でも発揮できるようにすればいいのですから。
――岡崎や本田、そして香川をはじめそれぞれのここについても機会をみて話し合いましょう
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