オーストラリア戦を振り返って~仲間の協力で本田、香川の力をもっと引き出す
――6月4日の興奮から3日たちました。代表はすでにイラクとの試合(6月11日)のため、ドーハへ向かいました。この予選最終戦が終わると、ブラジルでのコンフェデレーションズカップ出場です。ブラジル、イタリア、メキシコとの対戦も興味一杯ですが、その前に対オーストラリアの話をもう少ししましょう。日本の攻撃や本田圭佑や香川真司のぷれーについても語ってください。
賀川:日本代表の攻撃展開を見ると、ずいぶん上手くなったと誰もが思ったでしょう。前半の12分に右CKがあったのだが、コーナーキックになる前の日本の攻めは、とても面白かった。ピッチの右半分を使って、香川-長谷部のパスに始まり、のべ9人の選手がタッチして、最後に右のゴールライン近くから内田がクロスを送り、相手DFが防いで右CKとなった。
ボールにからんだのは、香川-長谷部-内田-香川-長谷部-前田-本田-岡崎-内田の6人ですが、ペナルティエリアの15メートル手前から相手9人が守る形になっている間をパスを通しドリブルし、ボールを止め、ダイレクトで渡し、というふうにボールと人が動いて、ペナルティエリアの右の「根っこ」のところで内田がクロスを蹴ったのです。キックオフ後12分4秒から12分28秒までの24秒間に8本のパスが続いたことになりました。
――ボールポゼッションから相手の守りの隙を見つけてシュートへ持って行こうというバルサ型ですね。
賀川:昔は遅攻(ちこう)という言い方で「早いプレー」の好きな日本では歓迎されなかったが、近ごろはバルセロナの影響もあって、この攻撃の面白さを好む人も増えています。
――日本人の敏捷性を生かすためにと、代表チームは古くからショートパスを使っての攻めが伝統になっていましたね
賀川:もちろん相手の守りの人数の少ない時には早く攻めて広いスペースを有効に使うのは当然です。そういう攻撃を見せてくれたから、多彩な攻撃を楽しむことができた。
――本田の落ち着いたプレーと、香川のボールを受けてからのパスコースの選び方のうまさが目立ちました
賀川:代表チームはバルサのように同じチームで毎週試合を重ねているわけではない。今回のように久しぶりにレギュラーが揃っても、本田や、岡崎、長友たちがベストコンディションとは言えないのが残念だった。
――本田と岡崎は前日に帰国。長友はけがの長期離脱からの復帰だった
賀川:そういう条件からゆけば、いい試合をしたということになるでしょう。
――別の見方から、新勢力はまだ育っていないと言う人もいますね
賀川:しばらく欠場していた本田が無理なスケジュールでも試合に加わったことで、改めてこの選手の力を知ったということになっているが、もともとサッカーはそういう個人力あるプレーヤーの影響の大きい競技ですからね。野球はホームラン王でも、打てない打者でも1試合に打席に入る回数はほぼ同じだが、サッカーは上手な選手に何度でもボールにタッチしてもらうことができるのですからね。
――本田のゆっくりした動きのキープとシュート体勢に入るかもしれないという威圧感と、香川のボールコントロールのうまさと、それに続くパスコースやドリブルのチョイスの確かさが、このチームの攻撃のための転嫁を美しく、スムースにしていました。これで得点が多ければ、言うことはないのですが
賀川:先述の通り、体調が万全でないこともゴールできない理由かもしれないが、攻撃展開がやや中央部にかたよったこと。サイドをもっと使えばペナルティエリア内でも、もう少しDF陣の間が拡がるのだが…
――監督もそういう指示も出していたとか
賀川:このところ日本のサッカーではサイドから攻める、サイドの選手がゴールするといった感覚が少なくなっているように見える。本田と香川が軸となったときも、外へ開くことをチーム全体で考えるのが必要でしょう。
――そういえば、バルサのテレビを見ていても、メッシが右から斜めにドリブルで入ってきて、シュートかなと思うと、左オープンスペースへパスを出し、サイドの選手がシュートしたり、またクロスパスを入れたりしています
賀川:まあサッカーの常識ではあるが、結構、実際の試合でも有効なのですよ
――長友が後半の34分のメンバー交代の時、左のDFからMFへと前に上がった時、いきなり突進してペナルティエリアに入ってシュートしましたね
賀川:見事な攻撃でした。長友は後方からの浮き球をヘディングで香川に渡し、香川からリターンパスを前方へ送られて突進した。ドリブルでペナルティエリア深くへ入って、シュートしたが、GFシュウォーツァーに防がれた。コンディションが良ければ、もっと強いシュートができたかもしれないし、またシュートでなくゴール前にいる本田へのパスを選択したかもしれない。
――前半に長友が、左サイドから本田へパスをした場面がありました
賀川:本田が長いドリブルでエリアまで持ちあがり、左へ駆け上がってきた長友にパスをした。長友はそれをダイレクトでリターンパスした。いいパスだったが、相手のCDFが本田へボールが入ってくるのを狙っていて、ボールに絡んで結局シュートは出来なかった。本田のコンディションがよければ、シュートまでゆけたかどうかだが…この時、長友が自分のシュートというチョイスがあったかどうか?です。この日のオーストラリアは本田や真司のシュートを警戒していたはずですからね。
――相手側の心理の逆をつくということになると
賀川:逆を突くことよりも前に、長友からみてシュートチャンスもあると見えたかどうかです。もしシュートして入ればすごいし、得点しなくても相手にオヤッ?と思わせることになるはずです。
――サッカーのプレーは常にチョイスがつきもの。選手の判断力が大切ということですね
賀川:それも選手たちが話し合い、練習することで連携のよさが高まります。クラブチームのように常に合同練習はできなくても、レベルの高い選手が集まっているからそれは可能なはずですよ。
――香川真司のドリブルでの侵入や相手に囲まれながらの巧みなボールコントロールと身のこなしでシュートにもってゆくところはすばらしかったのですが、ゴールは決められなかった
賀川:本田との2人の関係だけでなく、彼の動きを見て受けられるスペースへ動いてみる選手がいてもいいでしょう。
――オーストラリアとの試合で、いい攻めを見せたが、まだまだこれからということ
賀川:いい連携もすべて反復練習からです。
――シュートに関しては
賀川:19本のシュートでPKの1点ですからね。代表の全員がそれぞれのポジションでのシュート練習が必要です。ストライカー育成については、クラーマーとも話し合ったこともあり、機会をみてお話ししましょう。
今はイラク戦とコンフェデの間に折角の皆の技術の合作といえる攻撃力アップを願いたいものです。新しいメンバーももちろん積極的に加わってくれるでしょう。
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