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2013年6月

FIFAコンフェデレーションズカップブラジル2013 イタリア-日本

2013/06/24(月)

先制しながら勝ちきれず

――強豪イタリアとのシーソーゲームはとても迫力がありました

賀川:2-0とリードした時はひょっとすると勝てるかも、、、と思った人も多かったでしょう。その後イタリアの底力を見せつけられた。彼らの圧迫から日本側にミスが出て、結局勝ちきれなかった。

――もったいないことをした

賀川:もちろん両チームの実力を比べれば、負けても不思議はないのだが、こういう時に勝ってほしいものですよ。

――まあ、考えようによっては対ブラジル戦であれだけ不出来の日本代表が気持ちを入れ替えてこういう試合をやれることを見せたとも言えますが…

賀川:どんどん前からプレッシングをかけてゆこうという日本としばらく様子を見ようというイタリアだったから、前半初めは日本にはやりやすい展開となった。

――暑さと湿度がイタリア側の動きを慎重にしたのかも

賀川:中盤で相手がプレスに来ない時の日本チームは攻撃は上手です。それに、ともかく動こう、前からつぶしてゆこうという気迫があった。先制ゴールは相手バックパスを追う岡崎のがんばりがあり、そのためにブッフォンのファウルから生まれたPKを本田が冷静に決めたもので、好運でもあったがチームの活力を増す源になったでしょう。

――2点目もピルロのボールを奪った岡崎からの攻撃展開でした

賀川:ハーフウェイラインでピルロのボールを奪った。相手の攻撃の起点となる選手だから、カウンターも効果的になる。前田や長谷部のランが加わって右CKとなり、このCKから香川のエリア内での反転左足シュートというビューティフルゴールが生まれた。

――右CKを本田がショートコーナーにして、一気にクロスを出すのではなく工夫があった

賀川:右サイドでのパス交換から前田がエリア内で左ボレーシュートに入り、そのボールが相手側とのからみで高く上がった。それがエリア外へ落ちてきた時に今野がタッチして小さく浮かしたのには感服した。

――フワリと上がったボールの下に、岡崎と香川がいて、イタリア側も2人いた。もうひとり加わってきたが、誰も触らずにボールは落下し、バウンドしたボールを香川が反転してシュートした。

賀川:狭いスペースでの香川らしいプレーだった。右も左もシュートできるようになっている香川だが、この左ボレーは見事だった。インステップで押さえるように叩いて、右ポストいっぱいにライナーを決めた。

――香川がマン・オブ・ザ・マッチに選ばれました。ひとつにこのボレーシュートがあったのでしょう

賀川:この後も、日本はいくつかのチャンスを造った。点目を先に取っておけばと…

――イタリアには前半のうちに得点しておこうという意欲が見えていた。身体能力のずば抜けたバロテッリだけでなく、多士済々、誰もが試合巧者で、ここという時に力を発揮する

賀川:右CKをピルロが蹴り、デロッシがヘディングでピシャリと合わせた。長谷部がマークしたが、防げなかった。


「ひたむきさ」だけでなく、イタリア的老獪さも

――後半に入っても、イタリアの攻めは続いた

賀川:後半5分にゴールライン際でジャッケリーニが吉田との競り合いから抜け出してゴールエリアの左から中へクロスを送ると、これを防ごうとする内田の足に当たってオウンゴールとなった。中央にボロテッリがノーマークでいたから、そこへボールが行くのをスライディングして防ごうとしたのだが…

――スローで見ると、高くバウンドしたボールを吉田が処理しようとする時に、ジャッケリーニが体をこじ入れるようにして奪い取ったが、吉田はシンプルに外へ出す(たとえCKになっても)ことができたはず

賀川:それにしても7~8メートル離れている位置から、吉田のバウンドボール処理を奪うために突進したジャッケリーニの判断と動きの速さと、球際の粘りに、さすがイタリア代表、彼らの老獪さを改めて見た。

――こうなると、運は急速にイタリア側へ移っていく

賀川:7分にイタリアの右サイドから中央へ送られたクロスをペナルティエリアいっぱいでバロテッリがジョビンコにパスし、ジョビンコがシュートした。この時タックルに入った長谷部の右足に当たったボールが地面に落ちてバウンドし、彼の右手に当たってしまった。

――レフェリーはハンドをとりました

賀川:故意に手を使ったのではないから、ハンドではないと言えるのだが、こういう時にはハンドにしてしまうレフェリーも多い。ましてこの試合で日本は前半にブッフォンの反則でPKをもらっている。

――レフェリーはPKを出しやすい状態でもある

賀川:まあそこまでは言わないが、ともかくバロテッリがPKを蹴り、3点目がイタリアに加わった。後半が始まって7分のうちに、2失点。前半の41分の1点目とあわせると、10分ほどのうちに3ゴールを立て続けに奪われた。

――ブラジルが日本に対して前半と後半のそれぞれ5分にならないうちに1点づつ奪ったのと似ている

賀川:まあ、計算したかどうかはともかく、点を取ろうと意欲を高めれば、取る力があるのか、この試合でのイタリアのシュート12本のうち、7本がこの10分間に記録されていますよ。

――2-3とリードされても、この日の日本代表はくじけなかった

賀川:イタリアの攻勢でいささか受け身になっていた日本は、1点の挽回を目指す。リードしたイタリアが後退して守りに入ったこともあって、ボールをポゼッションする時間が多くなる。

――確かに相手守備網の外でボールをまわしている時間が多かったこともあります

賀川:後半24分にペナルティエリア右外でのFKのチャンスが来た。遠藤のキックを岡崎がゴール正面で見事にヘディングシュートした。35分にも岡崎のシュートがポストに当たった惜しいチャンスがあった。攻めて防がれて疲れがたまる。イタリアは守備の時間から攻撃の時間に転じた。

――日本側の動きが鈍ってきたのがはっきりしてきました

賀川:40分に小柄なジョビンコとの左サイドでの奪い合いの後、吉田が今野にバックパス、これを今野がダイレクトに前方へ送ったのが相手MFのデロッシに渡り、そこからのスルーパスを走って受けたマルキージオが中へパスを出し、正面に入っていたジョビンコが決めた。

――タフなことでは随一と言われている今野のクリアにミスが出たのは、それだけ疲れていた、体がいっぱいだったといも言えますね

賀川:労の多い日本サッカーがなかなか得点できないのに、イタリア側は守り時間は守り、点を取られるとそれまで残していた力を使ってゴールを奪いに来て成功した。

――試合の流れをつかむうまさですね

賀川:あるいは試合の流れをつくるうまさというべきかもね。日本にも個人的には見事なパスを出し、攻撃展開の妙味をつくりだすプレーヤーが出てきたが、試合全体の流れや緩急をチーム全体でつくっているイタリアからみれば、まだまだということになる。また、これができないとワールドカップで多くの試合を重ねて上位に進むことは体力的にも難しい。

――この日はPKを含めて17本のシュート、相手イタリアはPKを含めて12本のシュートです。そのシュートの力の差については

賀川:別の機会にお話ししたいが、35分に岡崎のシュートが右ポストにあたった場面があった。十分に余裕があり、助走してしっかり踏み込んだ左足シュートだったが、横殴りのキックだった。ボールのどこを蹴るのか、足のどの部分で蹴るのか、シュートの精度を上げるためのキックと、その反復練習が大切でしょう。

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ブラジル-日本(続)

2013/06/19(水)

チーム全体のボール運びと攻めの緩急

――後半も開始3分に2点目を奪われました。やはりサイドから中央へ送ってきた速いクロスをパウリーニョが決めました。右サイドからのボールという点が、先制ゴールの左サイドからのパスと違っているが、まず同じ系列のチャンスづくりでした。

賀川:早い先制ゴールでブラジルは前半を余裕たっぷりという感じでプレーをした。日本にもチャンスらしきものがあったが、このクラスを相手にして、ゴールを奪えるものではなかった。

――6分の本田のFK(バウンドしてジュリオ・セザールが前へはじいた)、8分に清武のクロスをファーポスト側で本田がジャンプボレーシュート(オーバー)。17分ペナルティエリアいっぱい中央右寄りで本田が右足シュート(GKが防ぐ)とあったが…

賀川:なぜゴールを奪えなかったという話は、あとまわしにして、まず2点目を見てみましょう。日本とブラジルの違いも知ることになるはずです。

前半のゴールは、左サイドのマルセロのクロスだったことは先述の通りです。そしてそのすぐ前には、ボールは右サイドから左へ大きく動き、そこでネイマールのシュートがあり、長谷部が止めたリバウンドがマルセロに渡った形になったのを覚えているでしょう。

――そうです、右から左へ送り、そこでシュートがあり、そのこぼれを拾ってのクロスでした

賀川:今度は右のアウベスのクロスですが、そのスタートは日本の攻めを防いだ後、ブラジルが右サイドでキープし、一度左へ送ってネイマールを中心にキープし、そしてネイマールが中へドリブルしてシュートの気配を見せ、右にいたルイス・グスタボに渡し、グスタボがさらに右後方のアウベスにパスしたのです。

――1点目と似た形(左右は逆であっても)だが、時間がかかっている

賀川:そう、右から左へ送り、また右へ戻してきた。その間に縦の突破の気配を見せながら短いパスをつないで、ゆっくりした動きを多くしていった。

――ゴール前を固めた日本の前のグラウンドを横切る動きを見せつつ、チャンスをうかがっていた

賀川:その圧迫感で日本の最終守備ラインはペナルティエリア内にまで後退していた。

――ビデオを残しておられる方は、もう一度見ていただければ面白いところですね


パウリーニョのトラッピングとシュート

賀川:アウベスが右足で強い、低いクロスを蹴った時には、ペナルティエリア内に黄色ユニフォームが5人いた。ファーポスト側、一番遠くにいたネイマールでなく、その内側のパウリーニョにボールが届いた。日本側もエリア内に5人いた。遠藤がこのクロスをカットしようと足を出したが一瞬遅れた。パウリーニョはノーマークでボールを右足で止め、前方から吉田がタックルに来るよりも早く、右足のインステップでボールを叩いた。

――GK川島は左へ(川島から見れば右へ)飛んで両手に当てたが、地面に落ちたボールはバウンドしてゴールへ飛び込んだ。

賀川:この場面で私が一番強い印象を受けたのはパウリーニョが右足でバウンドボールをトラップし、立ち足の方向をゴールに向けて(それまで体はゴールに対して後ろ向きになっていた)しっかりと蹴ったことだ。スローで見てみると蹴り足のバックスイングからインパクト、そしてフォロースルーの一連の動作を見事なフォームで演じている。パウリーニョという選手は昨年のポーランドでの対日本戦の先制ゴールをトーキックで決めた時から注目しているが、守備的ミッドフィールダーである彼がペナルティエリア内でのこのような落ち着いたシュートを決めるところにブラジルのセレソン(代表チーム)のレベルの高さがあるのでしょう。

――ブラジルがいわゆる左右のゆさぶりで攻めてくるのに、日本側がジリジリと後退してシュートチャンスをつぶすには間合いが広くなっていたという見方もあります

賀川:そうですね。50センチ、1メートルつめておけばよかったということになるのでしょう。この件に関しては、ブラジル側が左右にボールを散らすことで日本の守備選手の目が外に向けられ、マーク相手との間合いがズレを生じたのかもしれません。

――攻撃を組み立てても、シュートが決まらない日本に比べると、ブラジルのこの2得点は左右からのクロスを中央で受けてシュートという形としてはごくシンプルなものでした。

賀川:それぞれのクロスが日本側に防がれることなく、目標に届く、そのボールを受けた者は、そこできちんと仕事をする。つまりシュートをするということですね。

――シンプル攻撃もこうなるとすごいです

賀川:日本だから成功したという見方もあります。ただし、そのクロスに至る全体の流れ、緩急自在のキープや突進で相手を押し込んでいくチーム全体の感覚を共有しているところがブラジルでしょう。この大会でB組のスペインとともにサッカー好きにはその1試合、1試合が見逃せないチームですね。

――日本については

賀川:奪われた3点目の話も大切ですが、まずはコンディションを整えて、イタリアにぶつかることです。アジア予選が終わったところで本田をはじめ多くの選手が口にしたのは、個の強化・向上でしたね。

――記者にも同意見が多かった

賀川:1968年のメキシコ・オリンピック銅メダルの時のレポートに同時の岡野俊一郎コーチが今後の課題は個人技アップが第一と言っています。その32年前のベルリン・オリンピックでスウェーデンに逆転勝ちした日本代表の感想にも、個人力アップをしなければ世界との差は縮まらない、とありました。私のような古いフットボーラ―は75年前から聞き続けている言葉です。

――なかでもシュート力は

賀川:日本にもストライカーが育った時もありました。諦めてはいけないのですよ。その個の力も年月とともに向上しているのですが、まだまだこれからも…ということでしょう。

――そのブラジルの2得点を振り返れば、その個々の技術、ボールを止める、蹴るの技と力の差を改めて知りました

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FIFAコンフェデレーションズカップブラジル2013 ブラジル-日本

2013/06/17(月)

FIFAコンフェデレーションズカップブラジル2013
ブラジル 3-0(2-0)日本


――完敗でした。やはりブラジルは強かった

賀川:がっかりしました。午前3時過ぎからの中継を見た後、日曜日は全く暗い一日でした。もうちょっとやれるかと思ったのだが…

――力の差が大きすぎた

賀川:力の差の大きいことは試合前からわかっていることでしょう。それでも勝ちにゆくと言ったようだから、よほどの意気込みなんだろうと思っていたが、そういう気配ではなかった。動きの量も少なかった。コンディションも決して万全とはいえなかった。強気の発言はあっても、実際には力の差のあることを知っているから、逆に意気込みが、かえって体を硬くさせたのかも知れないが、自分より強い相手と戦う時に、こちらの方の体調が良くなければ話にならない。テレビの画面を見ながら、まずそのことに失望しました。ザック監督のスタッフは日本代表特有の長距離移動や時差の影響、あるいは気候の変化などへの対応がまだ不完全なのか…などとも思った。

――開始早々3分に、しかも相手の若いエースのネイマールにゴールを奪われたのだが、一番響いたという声が多いようです

賀川:私はこのブラジルの先制ゴールが、この日の試合を象徴していると思います。

――得点のコースとしては(1)左サイドのマルセロが速いライナーのクロスをゴール正面に送り込み(2)ペナルティエリアすぐ外、中央あたりでフレッジが胸で落とした(3)その胸のトラッピング的なパスを、右足で叩いてゴール右上隅に蹴りこまれた

賀川:ネイマールは右足のインステップで見事にとらえたが、少しスライス気味となってゴールキーパーには届かない右上隅に飛び込んだ。ネイマールはしばらく代表でゴールしていない。バルセロナへの高額移籍も決まったあとでもあり、注目されていたのだが、ワールドカップの1年前のホームでのコンフェデ杯初戦という大事な試合でゴールするところが、やはりスターでしょうね。

――一発のロングパス、その後ダイレクトで落とし、ダイレクトでシュートするというアッという間のゴールでした

賀川:この攻撃はまず前半2分過ぎにブラジルの右サイドにいたMFオスカルがハーフウェイライン中央右寄りから(1)左サイド前方のネイマールへライナーの長いパスを送るところから始まった

――日本が攻めこんで香川真司、清武弘嗣とわたって、清武が奪われた後、奪い返せずにファウルになった。その中央のFKから短く右へボールが動いて、そこからオスカルが長い斜め前へのパスを送りました

賀川:(2)ブラジルのFWのネイマールはペナルティエリア左角あたりで、内田と競り合ってボールを自分のものとし、後方へドリブルしながら(3)内側へ持ち込んで右足でシュートした。(4)シュートコースに入っていた長谷部が右足に当てて防ぐ(5)ボールは高く上がってペナルティエリア左角の左外へ落下し、フッキが取って後方へパスする。(6)左タッチライン際でマルセロがこのボールを取って、中央の仲間のポジションを目で確認して左足でパスを送った(7)そのボールが9番をつけたフレッジの胸めがけて飛んでゆき(8)以降は前述のネイマールが低いバウンドを蹴るボレーシュートとなった。

――マルセロのパスも見事だった

賀川:マルセロがフッキからのバックパスを止めて前を向き、長いパスを蹴るまでに4秒近くの時間があった。この間、マルセロに対してのボール奪取あるいはキックのインパクトの瞬間を押さえようとする日本側の動きは全くなかった。

――ふーむ

賀川:日本のDFはペナルティエリアの中央部に3人がいた。内田がエリア左角(ブラジルから見て)の外、その10メートルばかり前方に第2守備線の4人がいた。

――そうです。フレッジから胸のパスをもらうネイマールはこのDFラインとMFラインの中間の空白地帯にノーマークでいた

賀川:ネイマールはまず、(4)のところでシュートをして長谷部に止められた後、中央の方へ移動していた。

――マルセロはそのネイマールに直接パスを送るのではなく、まずゴールに近いフレッジへ速いボールを送り込んだ

賀川:そう。そこが、ミソですよ。しかもフレッジのすぐ左前方には、この一連の攻めの最初のパスを送ったオスカルが右MFの位置から上がってきて、攻めの先端部にいた。

――フレッジにはオスカルというチョイスもあった

賀川:ネイマールを選ぶのは当然だろうが、彼一人だけではないところが、やはりブラジルでしょう。

――ということは、相手の攻撃陣がポジションを変えて動いているのに、日本側がきちんとマークできていなかったわけ

賀川:強い相手との試合は、まず早いうちの失点は避けるのが常識で、相手FWの動きには複数防御で対応するが、重要なのはボールを自由にさせないこと。

――マルセロをまるでFKのように余裕のあるキックをさせたこと、フレッジへの詰め、ネイマールのマークも甘かった

賀川:このゴールはフィニッシュのネイマールのシュートがあまりにもすばらしいので、多くは「出来すぎのゴール」のように見たかもしれないが、シューターは練習を重ねていれば不調のときでもビューティフルゴールが出てくるもの。そしてこのチャンスは一連の流れのなかで、明らかにブラジル側が仕掛け、その目論見通りになったのだと思う。

――「試合の入り方が悪い」というような言い方を専門家はするが、日本側はこんどもそれで…

賀川:ブラジルを相手に、アジア予選で一番手慣れたポジションでなぜスタートしなかったのか、よくわかりませんがね…前田遼一をトップに本田をトップ下に、右に岡崎、左に香川とすれば、左サイドは長友との強いペアができる。そして岡崎の守備の強さが相手の左サイドへ来るネイマールとその関連の動きに対して効果があったのじゃないか、と思っていたのだが。まあチーム内の事情はどうだったのか?

――守りを考えるより、今日はまず1点を取ることを考えたのでしょうかね

賀川:一人ひとりの技術でも、走るスピードでも、体の強さでも個人力はブラジルの方が上ですよ。日本側にも何人かは起点になり得る個人はいるが、日本側がもし優位に立てるものがあるとすれば、労力、運動量とそれを生かした組織力ですからね。

――調整不足で、その運動力が落ちていたとすればちょっと辛い話になる

賀川:いくら挑戦だと言っても、いきなり点を取られて相手の調子があがってしまうと大変ですよ。ブラジルとすれば、日本以上にこの大会は開催国として勝ちにこだわっているから、まず先制点でぐっと落ち着きができた。

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記憶に残る2013.6.4.

2013/06/11(火)

――長い間、日本代表を見てきた賀川さんのアジア予選突破の感想、あるいは感慨は

賀川:日本のサッカーは、いつも何かハンディキャップを背負って、世界へ挑戦してきた。しかし少年少女がいいサッカー選手になるための環境は、いまや世界ランクの上位にある。芝生のピッチも日本中にできた。体格の小さいことはかつて欠点のように言われたが、それは欠点ではなく「特徴」だというふうなグローバル・スタンダードの考え方に変わってきた。

――だから今のようなレベルの代表ができた

賀川:まだまだレベルアップの余地はあるが、上手になり、強くなったことは確かですよ。ここで申し上げたいのは、その歴史上高レベルにある日本代表が最終戦でどういう試合をし、どういうゴールを奪取するかということです。

――ケーヒルを中心とした相手が意図した攻めで、危ない場面もあったのをともかく防いだが、ザックの言う「偶然」のようなゴールを奪われた。

賀川:オーストラリア側から見れば、好運のゴールでしょう。

――そういえば、日本のゴールも意図した攻撃とは違った形のPKでした

賀川:試合のディテールを文字にして伝えたいという私の記述を読んでいただければわかるのですが、もう一度申し上げたいのは、最後の右CKは監督の意図もたぶんノッポのハーフナーや吉田の空中戦だったでしょう。そのために、ハイクロスをピンポイントに蹴る清武を投入していたはずです。その清武がゴール前へ直接ボールを送らずに、ショートコーナーにした。本田がボールをくれと言う話をしたそうだが…

――そして本田が短いパスをライナーで中へ送って、ハンドが生まれた。(本田自身はミスキックと言っていた)

賀川:監督やチーム戦略とは別に、そのプレーの瞬間に選手が判断しプレーしたことが、「偶然」あるいは「好運」のような結果を生んだのです。

――ふーむ

賀川:「サッカーではどんなことも起こる」
親しかったドイツの代表監督ユップ・デアバルさん(故人。釜本邦茂の留学の時に指導した)がよく言っていた言葉です。何が起こっても諦めずに守り、攻めれば、何かが起こるということでしょう。

――今度のオーストラリア戦で代表はそれを経験した

賀川:相手のオーストラリア側も同じことを体で感じたことでしょう。日本のサッカーの歴史の中でも先人たちが同様の経験をしてきたのですが、私たちはこのレベルで、やはりサッカーはこういうことなんだということを知ったわけです。歴史的にもいい体験として記憶されるべきでしょう。

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オーストラリア戦を振り返って~仲間の協力で本田、香川の力をもっと引き出す

2013/06/07(金)

――6月4日の興奮から3日たちました。代表はすでにイラクとの試合(6月11日)のため、ドーハへ向かいました。この予選最終戦が終わると、ブラジルでのコンフェデレーションズカップ出場です。ブラジル、イタリア、メキシコとの対戦も興味一杯ですが、その前に対オーストラリアの話をもう少ししましょう。日本の攻撃や本田圭佑や香川真司のぷれーについても語ってください。

賀川:日本代表の攻撃展開を見ると、ずいぶん上手くなったと誰もが思ったでしょう。前半の12分に右CKがあったのだが、コーナーキックになる前の日本の攻めは、とても面白かった。ピッチの右半分を使って、香川-長谷部のパスに始まり、のべ9人の選手がタッチして、最後に右のゴールライン近くから内田がクロスを送り、相手DFが防いで右CKとなった。

ボールにからんだのは、香川-長谷部-内田-香川-長谷部-前田-本田-岡崎-内田の6人ですが、ペナルティエリアの15メートル手前から相手9人が守る形になっている間をパスを通しドリブルし、ボールを止め、ダイレクトで渡し、というふうにボールと人が動いて、ペナルティエリアの右の「根っこ」のところで内田がクロスを蹴ったのです。キックオフ後12分4秒から12分28秒までの24秒間に8本のパスが続いたことになりました。

――ボールポゼッションから相手の守りの隙を見つけてシュートへ持って行こうというバルサ型ですね。

賀川:昔は遅攻(ちこう)という言い方で「早いプレー」の好きな日本では歓迎されなかったが、近ごろはバルセロナの影響もあって、この攻撃の面白さを好む人も増えています。

――日本人の敏捷性を生かすためにと、代表チームは古くからショートパスを使っての攻めが伝統になっていましたね

賀川:もちろん相手の守りの人数の少ない時には早く攻めて広いスペースを有効に使うのは当然です。そういう攻撃を見せてくれたから、多彩な攻撃を楽しむことができた。

――本田の落ち着いたプレーと、香川のボールを受けてからのパスコースの選び方のうまさが目立ちました

賀川:代表チームはバルサのように同じチームで毎週試合を重ねているわけではない。今回のように久しぶりにレギュラーが揃っても、本田や、岡崎、長友たちがベストコンディションとは言えないのが残念だった。

――本田と岡崎は前日に帰国。長友はけがの長期離脱からの復帰だった

賀川:そういう条件からゆけば、いい試合をしたということになるでしょう。

――別の見方から、新勢力はまだ育っていないと言う人もいますね

賀川:しばらく欠場していた本田が無理なスケジュールでも試合に加わったことで、改めてこの選手の力を知ったということになっているが、もともとサッカーはそういう個人力あるプレーヤーの影響の大きい競技ですからね。野球はホームラン王でも、打てない打者でも1試合に打席に入る回数はほぼ同じだが、サッカーは上手な選手に何度でもボールにタッチしてもらうことができるのですからね。

――本田のゆっくりした動きのキープとシュート体勢に入るかもしれないという威圧感と、香川のボールコントロールのうまさと、それに続くパスコースやドリブルのチョイスの確かさが、このチームの攻撃のための転嫁を美しく、スムースにしていました。これで得点が多ければ、言うことはないのですが

賀川:先述の通り、体調が万全でないこともゴールできない理由かもしれないが、攻撃展開がやや中央部にかたよったこと。サイドをもっと使えばペナルティエリア内でも、もう少しDF陣の間が拡がるのだが…

――監督もそういう指示も出していたとか


賀川:このところ日本のサッカーではサイドから攻める、サイドの選手がゴールするといった感覚が少なくなっているように見える。本田と香川が軸となったときも、外へ開くことをチーム全体で考えるのが必要でしょう。

――そういえば、バルサのテレビを見ていても、メッシが右から斜めにドリブルで入ってきて、シュートかなと思うと、左オープンスペースへパスを出し、サイドの選手がシュートしたり、またクロスパスを入れたりしています

賀川:まあサッカーの常識ではあるが、結構、実際の試合でも有効なのですよ

――長友が後半の34分のメンバー交代の時、左のDFからMFへと前に上がった時、いきなり突進してペナルティエリアに入ってシュートしましたね

賀川:見事な攻撃でした。長友は後方からの浮き球をヘディングで香川に渡し、香川からリターンパスを前方へ送られて突進した。ドリブルでペナルティエリア深くへ入って、シュートしたが、GFシュウォーツァーに防がれた。コンディションが良ければ、もっと強いシュートができたかもしれないし、またシュートでなくゴール前にいる本田へのパスを選択したかもしれない。

――前半に長友が、左サイドから本田へパスをした場面がありました

賀川:本田が長いドリブルでエリアまで持ちあがり、左へ駆け上がってきた長友にパスをした。長友はそれをダイレクトでリターンパスした。いいパスだったが、相手のCDFが本田へボールが入ってくるのを狙っていて、ボールに絡んで結局シュートは出来なかった。本田のコンディションがよければ、シュートまでゆけたかどうかだが…この時、長友が自分のシュートというチョイスがあったかどうか?です。この日のオーストラリアは本田や真司のシュートを警戒していたはずですからね。

――相手側の心理の逆をつくということになると

賀川:逆を突くことよりも前に、長友からみてシュートチャンスもあると見えたかどうかです。もしシュートして入ればすごいし、得点しなくても相手にオヤッ?と思わせることになるはずです。

――サッカーのプレーは常にチョイスがつきもの。選手の判断力が大切ということですね

賀川:それも選手たちが話し合い、練習することで連携のよさが高まります。クラブチームのように常に合同練習はできなくても、レベルの高い選手が集まっているからそれは可能なはずですよ。

――香川真司のドリブルでの侵入や相手に囲まれながらの巧みなボールコントロールと身のこなしでシュートにもってゆくところはすばらしかったのですが、ゴールは決められなかった

賀川:本田との2人の関係だけでなく、彼の動きを見て受けられるスペースへ動いてみる選手がいてもいいでしょう。

――オーストラリアとの試合で、いい攻めを見せたが、まだまだこれからということ

賀川:いい連携もすべて反復練習からです。

――シュートに関しては

賀川:19本のシュートでPKの1点ですからね。代表の全員がそれぞれのポジションでのシュート練習が必要です。ストライカー育成については、クラーマーとも話し合ったこともあり、機会をみてお話ししましょう。

今はイラク戦とコンフェデの間に折角の皆の技術の合作といえる攻撃力アップを願いたいものです。新しいメンバーももちろん積極的に加わってくれるでしょう。

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ワールドカップブラジル アジア最終予選 オーストラリア戦

2013/06/06(木)

――スゴイ試合でした。あと10分のところで先制されて、追いつき、同点引き分けにしました。

賀川:日本はこれでB組で4勝2分1敗で勝ち点14、残りのイラク戦を残してB組の1位が確定し、5大会連続出場となった。5日の朝に流政之(ながれまさゆき)さんから電話があって「すごい試合だったな。よかったな」と喜んでくれた。89歳の世界的な石の彫刻家もテレビの前で応援してくれていたらしい。日本中に関心が高まっていました。埼玉スタジアムの入場者が6万2172人で入場券の申し込みは60万人をこえていたそうです。

賀川:盛り上がっている時に、本番出場を決めることはサッカー発展のためにも大事なことですよ。埼玉で予選突破の瞬間を味わった人にとっては、人生のとてもいい経験になったと思います。

――選手たちは喜びのなかで、これからのレベルアップに取り組むことが大切と言っていましたね

賀川:ブラジルのワールドカップ本番で、上位へゆくにはもっとチーム力を上げなければならないし、個人技術も体力も判断力も高めなければならない。そのことは選手たちがよく知っています。

――試合を振り返ってください

賀川:本田圭佑と岡崎慎司が合流したので、久しぶりにレギュラーメンバーが揃いました。GKは川島永嗣、4DFは右が内田篤人、左が長友佑都、CDFは今野泰幸と吉田麻也、MFが長谷部誠と遠藤保仁をボランチに、トップ下に本田、右に岡崎、左に香川真司、ワントップに前田遼一をもってきました。

――いろいろ試していたようだが結局はこれまで通りのメンバーでした

賀川:監督から見れば、一番頼りになる組合せでしょう。予想通り日本は本田を軸に短いパスをつないで展開し、オーストラリアは先端のディム・ケーヒルを中心に、時にサイドを使って攻めようとしてきました。日本の攻めに対してはペナルティエリアのなかには、5~6人がもどってきました。1週間前に来日してコンディションもよいようでした。日本側では、さすがに直前に戻ってきた本田と岡崎がベストとは言えなかったが…

――後半の35分までは0-0でした。ブルガリア戦や、予選のヨルダン戦で0-2、1-2と2点取られていたから心配する人も多かった

賀川:サッカーのようなスポーツでは、まず気構えが大切。ブルガリア戦は「キリンチャレンジカップの楽しみ」のところで指摘したように、戦う姿勢が見えない選手がいた。この日はピンチにも「体を張って」とアナウンサーがよく言うプレーもありました。

――内田が相手のシュートを2度体で止めた。あとで腹を押さえていたのもあった。ケーヒルのシュートを吉田がスライディングで止めた場面はテレビの前で拍手しましたよ

賀川:178センチと大きくはないが、ジャンプ力があり、空中戦に威力を発揮するケーヒルを今野がしっかり防いでいた。バネのあるケーヒルは空中戦だけでなく、瞬間的な早さでこれまで日本戦で点を取ってきましたからね。

――前半には相手の右のオープンスペースへボールが出て、ダッシュ競争で遠藤が振り切られてロビー・クルースがノーマークでシュートした。GK川島が飛び出して、ファインセーブ(右手に当てた)して救ったが

賀川:この場面でも遠藤はスピードの点で気の毒だったが、それでもいったんコースに体を入れようとしていた。やられても粘ろうとしていました。

――ブルガリア戦で「ぶれダマ」FKで失点した川島が、このファインセーブでいいところを見せたのに、後半36分にトミー・オアーのハイ・クロスが予想外に伸びてゴールに入ってしまった。ザッケローニ監督は「偶然のような形」という表現で川島をかばっていました

賀川:ゴールキーパーは守りの最後の責任者ですからね。僅かな時間だったが、目測を誤ったことは間違いないでしょう。野球の外野フライで、目測を誤ってヒットになることもあるが、川島自身には悔いが残るでしょう。このあとPKの得点が生まれたのは川島のためにもとてもよかったと思います。

――まあ反省はしても、引き分けとなったのだから、後々にしこりみたいに残っては困りますからね

賀川:ただし、この偶発的なクロスも、両チームで一番若いオアーが左サイドで日本側3人を相手にドリブルしてペナルティエリア左外から蹴ったボールです。

――つまり、相手の若者に個人突破のクロスキックを許したということになるわけ

賀川:オーストラリアの選手は個人能力が高い。それを押さえることがこの試合のテーマのひとつだった。

――次にPKについて聞かせてください。試合中のPKでも、大会などでのPK戦でも、キッカーの気持ちの強さが出る場面が多いですね

賀川:本田が正面に蹴った時にはゴールキーパーは右へ飛んでいた。サイドネットで決めるという定石どおりではなかったけれど彼の勝負強さがあらわれた結果でしょう。

――最後まで緊張感の続いた93分はこのPKで1-1。日本はブラジル行きを決めました。この試合でまたPKが話題になるでしょう

賀川:野球というスポーツで停止球から始まるプレーについては理解しやすい人も多いですからね。特に近頃は高校選手権のようなノックアウト方式の大会でのPK戦がありますから。

――それについて旧制中学のせんしゅのころからPKのキッカーだった賀川さんの話を聞きたいが、ここは日本のあれだけ上手な攻撃で結局PKの1点だけだったことについての話を聞きたいです。


続く

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