FIFAコンフェデレーションズカップブラジル2013 ブラジル-日本
FIFAコンフェデレーションズカップブラジル2013
ブラジル 3-0(2-0)日本
――完敗でした。やはりブラジルは強かった
賀川:がっかりしました。午前3時過ぎからの中継を見た後、日曜日は全く暗い一日でした。もうちょっとやれるかと思ったのだが…
――力の差が大きすぎた
賀川:力の差の大きいことは試合前からわかっていることでしょう。それでも勝ちにゆくと言ったようだから、よほどの意気込みなんだろうと思っていたが、そういう気配ではなかった。動きの量も少なかった。コンディションも決して万全とはいえなかった。強気の発言はあっても、実際には力の差のあることを知っているから、逆に意気込みが、かえって体を硬くさせたのかも知れないが、自分より強い相手と戦う時に、こちらの方の体調が良くなければ話にならない。テレビの画面を見ながら、まずそのことに失望しました。ザック監督のスタッフは日本代表特有の長距離移動や時差の影響、あるいは気候の変化などへの対応がまだ不完全なのか…などとも思った。
――開始早々3分に、しかも相手の若いエースのネイマールにゴールを奪われたのだが、一番響いたという声が多いようです
賀川:私はこのブラジルの先制ゴールが、この日の試合を象徴していると思います。
――得点のコースとしては(1)左サイドのマルセロが速いライナーのクロスをゴール正面に送り込み(2)ペナルティエリアすぐ外、中央あたりでフレッジが胸で落とした(3)その胸のトラッピング的なパスを、右足で叩いてゴール右上隅に蹴りこまれた
賀川:ネイマールは右足のインステップで見事にとらえたが、少しスライス気味となってゴールキーパーには届かない右上隅に飛び込んだ。ネイマールはしばらく代表でゴールしていない。バルセロナへの高額移籍も決まったあとでもあり、注目されていたのだが、ワールドカップの1年前のホームでのコンフェデ杯初戦という大事な試合でゴールするところが、やはりスターでしょうね。
――一発のロングパス、その後ダイレクトで落とし、ダイレクトでシュートするというアッという間のゴールでした
賀川:この攻撃はまず前半2分過ぎにブラジルの右サイドにいたMFオスカルがハーフウェイライン中央右寄りから(1)左サイド前方のネイマールへライナーの長いパスを送るところから始まった
――日本が攻めこんで香川真司、清武弘嗣とわたって、清武が奪われた後、奪い返せずにファウルになった。その中央のFKから短く右へボールが動いて、そこからオスカルが長い斜め前へのパスを送りました
賀川:(2)ブラジルのFWのネイマールはペナルティエリア左角あたりで、内田と競り合ってボールを自分のものとし、後方へドリブルしながら(3)内側へ持ち込んで右足でシュートした。(4)シュートコースに入っていた長谷部が右足に当てて防ぐ(5)ボールは高く上がってペナルティエリア左角の左外へ落下し、フッキが取って後方へパスする。(6)左タッチライン際でマルセロがこのボールを取って、中央の仲間のポジションを目で確認して左足でパスを送った(7)そのボールが9番をつけたフレッジの胸めがけて飛んでゆき(8)以降は前述のネイマールが低いバウンドを蹴るボレーシュートとなった。
――マルセロのパスも見事だった
賀川:マルセロがフッキからのバックパスを止めて前を向き、長いパスを蹴るまでに4秒近くの時間があった。この間、マルセロに対してのボール奪取あるいはキックのインパクトの瞬間を押さえようとする日本側の動きは全くなかった。
――ふーむ
賀川:日本のDFはペナルティエリアの中央部に3人がいた。内田がエリア左角(ブラジルから見て)の外、その10メートルばかり前方に第2守備線の4人がいた。
――そうです。フレッジから胸のパスをもらうネイマールはこのDFラインとMFラインの中間の空白地帯にノーマークでいた
賀川:ネイマールはまず、(4)のところでシュートをして長谷部に止められた後、中央の方へ移動していた。
――マルセロはそのネイマールに直接パスを送るのではなく、まずゴールに近いフレッジへ速いボールを送り込んだ
賀川:そう。そこが、ミソですよ。しかもフレッジのすぐ左前方には、この一連の攻めの最初のパスを送ったオスカルが右MFの位置から上がってきて、攻めの先端部にいた。
――フレッジにはオスカルというチョイスもあった
賀川:ネイマールを選ぶのは当然だろうが、彼一人だけではないところが、やはりブラジルでしょう。
――ということは、相手の攻撃陣がポジションを変えて動いているのに、日本側がきちんとマークできていなかったわけ
賀川:強い相手との試合は、まず早いうちの失点は避けるのが常識で、相手FWの動きには複数防御で対応するが、重要なのはボールを自由にさせないこと。
――マルセロをまるでFKのように余裕のあるキックをさせたこと、フレッジへの詰め、ネイマールのマークも甘かった
賀川:このゴールはフィニッシュのネイマールのシュートがあまりにもすばらしいので、多くは「出来すぎのゴール」のように見たかもしれないが、シューターは練習を重ねていれば不調のときでもビューティフルゴールが出てくるもの。そしてこのチャンスは一連の流れのなかで、明らかにブラジル側が仕掛け、その目論見通りになったのだと思う。
――「試合の入り方が悪い」というような言い方を専門家はするが、日本側はこんどもそれで…
賀川:ブラジルを相手に、アジア予選で一番手慣れたポジションでなぜスタートしなかったのか、よくわかりませんがね…前田遼一をトップに本田をトップ下に、右に岡崎、左に香川とすれば、左サイドは長友との強いペアができる。そして岡崎の守備の強さが相手の左サイドへ来るネイマールとその関連の動きに対して効果があったのじゃないか、と思っていたのだが。まあチーム内の事情はどうだったのか?
――守りを考えるより、今日はまず1点を取ることを考えたのでしょうかね
賀川:一人ひとりの技術でも、走るスピードでも、体の強さでも個人力はブラジルの方が上ですよ。日本側にも何人かは起点になり得る個人はいるが、日本側がもし優位に立てるものがあるとすれば、労力、運動量とそれを生かした組織力ですからね。
――調整不足で、その運動力が落ちていたとすればちょっと辛い話になる
賀川:いくら挑戦だと言っても、いきなり点を取られて相手の調子があがってしまうと大変ですよ。ブラジルとすれば、日本以上にこの大会は開催国として勝ちにこだわっているから、まず先制点でぐっと落ち着きができた。
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