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真司のハットトリックとユナイテッドの伝統

2013/03/05(火)

マンチェスター・ユナイテッド 4-0(1-0) ノリッジ

――真司がハットトリック。オールドトラフォード、75000人の大観衆の前で、アジア人選手としてプレミアリーグでは初めてということです

賀川:NHK BSでさわりの映像を見せてもらっただけで、試合全体(90分)を見たわけではないが、彼の良さがフィニッシュにあらわれていた。(水曜日に放映があるとか)

――1点目は前半の終了近く。46分でしたか

賀川:ゴールの瞬間のユナイテッドのチームメイトの喜びようを見ると、下位のノリッジを相手に点を取れなかったそれまでの気持ちがよく表れています。

――ゴールへの過程は
(1)右サイドに開いていたバレンシアが後方からのパスを受けて
(2)相手DFを前にフェイクを仕掛け、DFを前にして左で早いクロスをゴール正面へ送った
(3)ファン・ペルシーが左足の先端に当て、右前方へ落とす(高く上がって落下)
(4)そこに香川がいて、落下してくるボールを右アウトサイドに当てて
(5)ゴールキーパーと右ポストの間を抜いた

賀川:ファン・ペルシーからのボールを見て、とっさに右足アウトサイドで蹴れる態勢を取っておいて、高く上がったボールがほとんど地面近くまで落ちてくるのを待ったところがすごい。

このフィニッシュのボールタッチは真司独特のうまさだが、その前の(1)のバレンシアにボールが渡った時にペナルティエリア外3メートルにいた真司が(2)のクロスにかかるのを見て、エリア内へ入ってファン・ペルシーの右前へ出てゆくところがこれまた香川の特徴ですよ。


――さわりのテレビを見て声を出していましたね

賀川:もうひとつ、このゴールのヤマとなるポイントは、バレンシアのライナーのクロスと、それを無理やりに止めて真司へのパスにしたファン・ペルシーのすごさですよ。

――香川の話では、ロビン(ファン・ペルシー)がいいボールをくれたとなっています

賀川:前半のこのクロスまでを見ていないから想像するしかないが、それまでノリッジの多数守備にゴールを取れなかったバレンシアが通常のクロスでなくライナーを蹴ったのでしょう。それがすこしずれてロビンは胸で止められずになんとか足を伸ばしてタッチした。左足の先端に当たったように見えたが、あの速い強いボールに左足を出せるところに彼の体の大きさと左利きの特徴が生きているのでしょう。きっちりと彼が止めたのなら、ノリッジのDFも対応したはずだが、ロビンは能力いっぱいで止めているのだから、ノリッジのDFたちにも想定外のボールの動きになった――と私は見ています。

――多数防御を破るため、賀川さんが時々口にする「つぶれ(潰れ)」ですね


賀川:そう思っていただいても結構です。パスをまわし、ドリブルで突破するという、いわば正攻法の攻撃(DFを避けてシュートへ持ってゆく)のではなく、ボールや人の動きに異変が起こったのですよ。それを起こしたのが、バレンシアのキックであり、ロビン・ファン・ペルシーのボールタッチへの執念でしょう。

――相手ディフェンダーたちの全く読めないボールが動いたところに真司がいたというわけ

賀川:パーフェクトなポジショニング(オフサイドぎりぎり)でパーフェクトなフィニッシュをしたのだから、仲間たちが喜んだのも当然でしょう。ルーニーが駆け寄り、キャリックが抱きしめたのをビデオで何度も見直しながら、つくづくマンチェスター・ユナイテッドはいいチームだな、すごいチームだな、と思いましたよ。

――2点目はそのキャリックからのルーニーの前へのロングパスが発端です

賀川:キャリックの後方からのパスがハーフウェイラインを越えて落ちて、ルーニーが快足を飛ばしてボールを取り、ペナルティエリアに入り、ゴールエリアの右外角3メートルで切り返して、相手2人を引きつけておいて、中央へ上がってきた真司に丁寧なパスをサイドキックでくれた。

――まさに“くれた”という感じでした

賀川:ウェイン・ルーニーという選手はご存じのように「やんちゃ」なストライカーとして評判だったのが、ここ2年ほどの間に周囲を使ううまさが目立っている。自身のシュート力は相変わらずすごいが、その彼のスピードとゴール前の威圧感を活かして決定的なパスを周囲に渡すようになってきている。

――この時も自分でシュートできるチャンスでした

賀川:自分の左足シュートよりも確実にゴールを取れる角度へ出てきた真司に渡した方がいいと判断したのでしょう。まあ「オレのパスを見てくれたか」というところでしょう。
――そのルーニーの期待通り香川は走りあがった勢いを止めず、右足アウトサイドでゴール右下に決めた

賀川:走る勢いはそのままに、ただしサイドキックのコントロールシュートでした。ルーニーは「やはり真司」と思ったでしょう。

――真司は「ボールを流し込むだけでよかった。ルーニーに感謝したい」と言っているようです

賀川:しかしルーニーの突進に続いて中央を走りあがった真司の動きを忘れてはならないし、こういう決定的な場面で点を取るという技術の大切さも強調しておかないといけないでしょう。同じような場面で得点できなかったロンドンオリンピックの例もありますからね。

――3点目もルーニーから、今度は自分は動かないでポストプレーのスクエアパスでしたね

賀川:(1)ダニー・ウェルベックがハーフウェイライン中央あたりで右の香川にパスを出し
(2)右前へ出てリターンを受け、そこから左内側へターンして斜行ドリブルし
(3)ペナルティエリア近くのルーニーへパスをする
(4)ペナルティエリアぎりぎりに守備線をつくったノリッジの5人のDFは
(5)ルーニーがシュートレンジでボールを受けたこと
(6)ウェルベックが左へ走ったこと
に注意が向く。

――そこでルーニーがダイレクトで真司の前のスペースへパスを出しました

賀川:エリア直前でこのボールを受けた香川はワンタッチやや大きめに出て、一気に右前へ進み、飛び出してくるGKの前で右足インフロントでボールの下を蹴った。ボールは飛び出してスライディングするGKの上を抜き、ゴール中央のネットに飛び込んだ。

――ウェルベックと香川とルーニーの3人だけで5人の守りを突破してのゴールです

賀川:1点目が前半46分、2点目が後半31分、3点目が42分、4点目がルーニーで45分ということだったが、こうしてみても1点目が大きな意味を持っていることがよくわかるでしょう。レベルの高いプレミアリーグでは首位ユナイテッドであっても下位のノリッジを相手に(守備の頑張りが続く間は)なかなかゴールできないものです。

――その中でのハットトリックは値打ちがありますね

賀川:真司が試合に出ていない時も、常に前向きに練習しチームにどうすれば貢献できるかを工夫していることをルーニーたちも見ているのでしょうね。彼がこうしてユナイテッドの一員となってゆくのを見られるのはとてもうれしいことですよ。

――どれほど個人技術があってもチームのために少し無理をしても働くという姿勢がユナイテッドの伝統なんでしょうね

賀川:誰でも口にし、実行しようとするが、ユナイテッドの伝統はそれを相当なレベルで続けているということでしょう。だからこそ、真司のハットトリックを皆で喜んでくれるチームなのだと思います。

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