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2012年10月

続 ブラジル戦~ひとりの個人力の重要さ

2012/10/30(火)

――ブラジルに完敗してから1週間たちました。サッカーマガジンをはじめ、専門誌で両チームの分析や、海外の反響など後追い記事が出ていました。このブログでも賀川さんの「ブラジル戦続」を聞きたいですね。

賀川:そういえば、少し間が空きましたね。ごめんなさい。あの試合は力が上のブラジルが先制して優位に立ったからと、とりあえず先制ゴールを詳述したのですが…そう、続をはじめましょうか。

――両チームの違いやプレーの内容などに入る前に1点目にこだわったのはなぜですか

賀川:格下のチームが格上のチームと互角に戦って勝つためには、まずゴールキーパーの超人的な働きが必要です。10月12日のフランス戦でも川島の働きがありました。

――フランスのテレビの司会者の福島原発にひっかけたような発言もあった

賀川:話が横にそれますが、フランスには日本文化への造詣の深い人もたくさんいる。ゴールキーパーの絵に描き加えるなら、原発の影響を想像するより、千手観音を思い出してもらった方がフランスらしい…余計なことかな。

――その川島が1点目を防げなかった

賀川:あのトーキックのシュートは予想するより半呼吸ぐらい早く蹴ることになる。それとゴールからの距離もあったから、おそらく川島は相手の動作がすべて見えているにもかかわらず、シュートのタイミングをつかめなかったのだろう。ゴールキーパーは一般論で言えばその試合の最初のシュートが自分の読みに合っていれば自身が生まれる。ましてジャンプしてセービングが成功すれば、調子があがるものでしょう。ぼくたちは旧制中学のころから、ゴールキーパーの予測を狂わせるのもFWの大事な仕事と思っていた。

――川島は、この先制ゴールの読み違いが後に響いたと?

賀川:アトランタオリンピックでブラジルを1-0で破った時は、川口能活がものすごい働きをした。72年前のベルリンでスウェーデンを破った時も、GK佐野理平さんが何度も防いだ。佐野さんは外国人の評論家から大会最高のゴールキーパーとまで言われた。

――そういうゴールキーパーの活躍が大敵に勝つ大きな要素のひとつですね。

賀川:その川島の神通力はこの試合では発揮できなかった。2点目がPKだったが、これを止めればまた彼も勢いづいただろうが、ネイマールがそうはさせなかった。

――そうでしたね

賀川:26分のこのPKの後に日本が攻めて、中村がエリア内で裏へ流して、香川がオフサイドになったのを見たでしょう。

――短いパスの攻めは成功しそうに見えた

賀川:ペナルティエリアのラインに並ぶブラジル守備線を短いパスで突破しようとする日本の攻めはバルサにも似ていた。しかしこの次にブラジルが日本のテンポとは全く違う攻めを見せた。
(1)左DFレアンドロのパスを中央で受けたラミレスがキープ。彼の右にパウリーニョがいて、日本は3人でこの2人を囲みに行く。
(2)ラミレスは背後から来る中村を右手で押さえつつ、長谷部と遠藤の間へパスを送る
(3)そこへ前方からオスカルが戻って受けて、左へドリブルしさらに左前方のネイマールへパス
(4)ネイマールは内にドリブルする。日本は吉田、今野、長友の3人がその前方に守備線を引く
(5)ネイマールはドリブルしつつ、DFラインの裏へ吉田の左側を通るパスを送り、内から外に駆け抜けたパウリーニョがペナルティエリアすぐ外で取る
(6)パウリーニョは前進守備の川島の前を左へ抜け、左足シュート。ボールは右ポストの外へわずかに外れた

――見ていてヒヤリとしましたね

賀川:機会あるたびに言っていますが、日本の攻撃はパスを多用するので、人数が多くなる。この日のように積極的に攻めてゆけば、後方に人数を残しておけない。もともと1対1の守りはアジア勢相手にでも1~2点は取られやすいものだ。今度はそれがブラジルですよ。スピードで突破されるのを恐れて間を開ける。すると相手は自在のパスを出すことになる。

オスカルから受ける前のネイマールの動作や、ドリブルのコース、同じスルーパスを出すにも、小さなフェイクが入っているのをスロービデオの画面でご覧になればとても面白いですよ。

――パウリーニョに2点目を決められたら、さすがにガクンときたでしょうね

賀川:PKそのものは、エリア内で右サイドのアドリアーノからのパスを受けたカカに今野がスライディングタックルにいき、その時、地面についた手でボールを止めた…つまりハンドを取られたわけです。意識的でないのだからハンドの判定はおかしいという声もあるが、ポーランドのレフェリーはハンドにした。この時のカカとアドリアーノのプレーも見事だった。

――アドリアーノはあのバルサの右DFですね

賀川:ゴールライン近くへ侵入し、大きく長友をかわして後方へのパスを送ったところは「さすが」という感じ。この時のカカの受け方も見事で、この日の彼はいよいよいい状態になっていることを示した。ここで言っておきたいのは、右利きの右サイドDFの彼も必要なときは左足を使ってプレーしていることです。日本の右サイドのDFで左足をほとんど使えない(使わない)選手が多く、私の嘆きのひとつですが、アドリアーノクラスはちゃんとできるのですよ。

――追々、個人能力の比較が出てくるのはありがたいが…

賀川:自分たちのFWが相手のDFに対して優位に立っているということを知れば、チーム全体がとても楽になるでしょう。日本でも本田がひとりいて、そこはすぐにはボール取られないとなると戦術の上でも気持ちの上でも手がかりができる。

――第1戦は前田がいなくて、ハーフナーという経験の浅いトップで、しかも本田を欠きましたからね。

賀川:第1戦の後で、選手もメディアも勝ちはしたがこれほど一方的に攻められるとは…と不満足のようでしたが、本田も前田もいなかったのだから不思議ではないのです。

――ボールをキープできて、またシュートチャンスを自ら作りシュートできる選手ですからね

賀川:話が本田選手のところへきたから書いておきますが、この彼不在のフランス戦と彼のいたブラジル戦で改めて日本チームでの本田の存在の大きさを多くの人に知らせただけでなく、チームのなかでひとりの個人力の重要さも多くの指導者に見てもらえたと思います。いま私がサッカーマガジンで連載している日本とサッカー90年でも、ちょうど69年に釜本邦茂が病のために代表を離れ、日本代表は70年ワールドカップのアジア予選で敗れたところを最近の号で書きましたが、40年前がレベルが低かったばかりではなく、サッカーのチームワークというのは、そういうところがあるのです。

――前田もいて、どこまでやれるかを見たいブラジル戦でもあった

賀川:中央でボールを受けられる日本人CF(センターフォワード)が本当に前田一人しかいないのかも問題ですが、2001年にセレッソの西澤がスペインに渡った時、森島はじめいい選手がいるのに中央でボールを止める西澤ひとりいなくなっただけで攻撃がダメになったこともありましたよ。前田だけでなく、守備力のある右のMF岡崎もブラジル戦でその効用を見たい選手でした。まあこういうことを言うのは、ブラジルのような相手と試合するためには攻撃と同時に守備力がどれくらい大切かを言いたいのです。

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個人の決定力 パウリーニョのトーキック

2012/10/23(火)

――10月の日本のヨーロッパ強化試合はフランス代表に相手のホーム、パリで1−0の初勝利(10月12日)、ブラジル代表と中立地ポーランドで0−4の完敗(10月16日)でした。

賀川:相手のシュートが21本(日本は5本)というほとんど守勢だったフランス戦とは違って、ブラジル戦はこちらの攻撃場面も多く、シュートは10、相手は14、CKは日本が10、ブラジルが2だった。互角とまではゆかないが、ボールをキープして攻め込んだ時間もあったのに1点も取れず、終わってみたら4−0だった。

――現地からの選手の声は、フランス戦は「勝ったけれご、納得できない(もう少しボールポゼッションできるはずだったのに…)」、ブラジル戦は「負けたけれど、ある程度自分たちの力を出せた(自分たちのやり方で攻撃、シュート場面をつくれた)」でした。

賀川:どちらの試合も私にはとても面白かった。ネイマールやオスカルといった、若く上手な攻撃プレーヤーのいるブラジル代表が徐々にチームワークがよくなっているのも見えてとてもうれしかった。

――ブラジル代表と日本代表の一番の差はやはり個人技ですか

賀川:Jリーグでのブラジル選手の働きをみれば、ブラジルプレーヤーのレベルの高いことは理解できるでしょう。日本でも放映される欧州チャンピオンズリーグの32チームの約640人の選手のうち、ブラジル人プレーヤーが67人いるのですよ。日本は香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)と内田篤人の2人だけです。

――スペインのバルサやレアル、バレンシア、マラガ、イングランドのチェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、アーセナルなどが参加しているヨーロッパの最高のリーグのなかに

賀川:そこに一番多く選手を供給しているのがブラジルなのです。

――日本との試合でプレーしたセレソンは、GKがジエゴ・アウベス(バレンシア)、ダビド・ルイス(チェルシー)、アドリアーノ(バルセロナ)、チアゴ・シウバ(パリ・サンジェルマン)、レアンドロ(ローマ)、MFがボランチがラミレス(チェルシー)とパウリーニョ(コリンチャンス)、攻撃的MFが日本にもいたことがあり、現在はロシアのゼニトにいるフッキ、それにオスカル(チェルシー)とカカ(レアル・マドリード)、FWがネイマール(サントス)でした。

賀川:ネイマールは2014年の自国でのワールドカップまではブラジルにいるという話ですが、これも欧州のビッグクラブが欲しがっている選手です。

――国の内外にタレントが満ちあふれているとうわけ

賀川:2014年大会では開催国優勝と全国民が思っているでしょう。メネゼス監督は、2010年からチーム編成にとりかかっています。今年のロンドンオリンピックのU−23チームの監督もつとめて、優勝こそメキシコに奪われたが、ネイマールたちのチームで銀メダルを取りました。

――アジア勢を相手に中国代表に8−0、イラク代表に6−0でで勝っています。個人力のあるチームがチームワークもよくなってきているのでしょうか

賀川:個人力違いと言っても、いろいろな見方があります。それを取り上げていくと一般論になりやすいので試合の経過のなかで見てゆきましょう。

――となるとやはり前半12分の先制ゴールからでしょうか

賀川:この日の日本はザッケローニ監督の「勇気を持ってチャレンジ」を実行し、キックオフから高い位置でのプレッシングを敢行し、攻撃に出ました。

――日本はGK川島永嗣、DFに今野泰幸、長友佑都、内田篤人、吉田麻也、ボランチが遠藤保仁、長谷部誠、第2列に中村憲剛、香川真司、清武弘嗣、ワントップに本田圭佑でした。

賀川:本田の調子が良くなったのは何よりよかった。彼のところでボールの持ちこたえが期待できるからね。

――こちらの動きにブラジル側もちょっと押されたのか、左DFのレアンドロがミスキックする場面もあった

賀川:オヤッという感じだった。しかし長友が仕掛けてアドリアーノを抜けなかった時に“やっぱり”手強いとも思った。1対1での突破よりもパス攻撃の日本は、攻めに出ると攻撃に人数をかける。そのためボールを奪われた時に早いカウンターには守りの人数が少ないことも起こる。その危険を承知で攻撃した。

――前半15分までに日本は清武と本田のシュートがあった。清武のは相手の守備網の外から相手に当たり、本田のは清武ー香川ー本田とつないで、パスを受けてペナルティエリアへ入ってのシュートだった。

賀川:同じ時間帯にブラジルの攻めもあった。ヒヤリとしたのは3分だったか、日本が攻め、左サイドのエリア近くで奪われ、そこからカカのロングパスが前方のネイマールに渡った時だった。50メートルの正確で強いパスをネイマールが受けて、ドリブルして中央へパスした。オスカルとカカが上がった後方のスペースにラミレスがいて、ノーマークだったがシュートをしないで、右のフッキへスルーパスを出して不成功になった。ネイマールは吉田をひとりでかわそうとせずに仲間の上がりを待ち、その2人でなくスペースのあるラミレスに渡したのを見て、ドリブルの名手と言われる彼のパスを選ぶ眼にも感心した。

――この時はフィニッシュまでゆかなかったが、5分にオスカルのボレーシュートがあった。

賀川:右コーナー近くで長友と向き合ってボールをキープしたフッキが左足でフワリと浮かすパスを送った。それをオスカルがジャンプボレーでシュートした。うまくゆかずボールは高く上がってゴールを外れたが、意表をつくプレーでしたね。

そして先述の本田のシュートがあって、その2分後にブラジルの先制ゴールが生まれたのです。

――今日はなんとかいけそうだと勢い込んでいた日本側をピシャリと叩くようなゴール。ブラジルイレブンを落ち着かせる効果も大きかったでしょう。

賀川:ブラジル側がゆっくりボールをまわしたあと、
(1)左DFのレアンドロがまっすぐ前方へボールを送った(ネイマールが目標)
(2)自分に向かって飛んで来たボールを内田がヘディングした
(3)ノーマークのヘディングだが、このボールが内側にいたオスカルに渡ってしまった
(4)ドリブルしたオスカルは外から内田、内側から遠藤がつめてくるのを見ながら内側へパスを出す
(5)日本のDFはペナルティエリアの前に3人いて、相手FWの2人をマーク。ゴール正面20メートルあたりの広いスペースへゆっくりボールがころがり、そこへパウリーニョが走り込んできた
(6)パウリーニョはボールの勢いとコースを見てシュートの体勢に入り
(7)右足のトゥ(つま先)でボールを蹴った。ボールはまっすぐゴール左ポストぎわに飛び、ワンバウンドしてゴールに飛び込んだ
(8)パウリーニョのシュートに対して、川島は左(キッカーから見て)へ飛んでセーブしようとしたが、ボールは川島の右手の前に落下し、バウンドして右手の下を通り抜けた

――トーキックのシュートが一つのポイントですかね

賀川:2002年の日韓ワールドカップで優勝したブラジルのストライカー、ロナウドがトルコ戦でトーキックシュートを決めたのを見たでしょう。

――トーキックは防ぐ方には難しいとか

賀川:インステップやインサイドキックよりもインパクトのタイミングが早い。そしてボールの勢いも違う。また突き方によってはボールが途中で落下するのでGKには難しくなるはずです。

ぼくたちの少年のころ、小さなゴムボールを蹴ったから、トーキックは誰も経験がありますよ。神戸一中と神戸大学で2年上の則武謙さん(故人、第1回アジア大会日本代表)がトーキックが得意で早大WMWとの朝日招待で彼が相手の裏に走り、まっすぐ突進してトーキックで決めたのを覚えています。

――まっすぐ前方へボールを送り込むのに役立つキック

賀川:この場面でパウリーニョがトーキックを選んだのは、至極当然のことでしょう。私はそれと同時にオスカルが内田のヘディングしたボールを止めて、少し内へドリブルして右足アウトサイドでスローなパスを送った時に、彼もやはりここはトーキックだと思ったのじゃないかな。アウトサイドのパスはキックというより押し出しというタッチでパウリーニョが走り上がる前でほとんど停止球と同じ状態でした。パウリーニョは走って来た方向そのままにまっすぐ蹴ればゴールポストぎりぎりにゆくわけです。

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バルサ・レアルのクラシコから(続)

2012/10/18(木)


賀川:1-0の直後にレアルは2点目を取る大きなチャンスがあった。

――再開のキックオフの後、バルサが自陣でDFが横パスの交換をしていた時に、CDFがボールを止めそこなって、ロナウドに拾われてしまった

賀川:ハーフウェイラインから10メートル入ったところで、ボールを取ったロナウドは一気にドリブルした。ミスをしたマスチェラーノがなんとか防 いだが、レアルはこの左サイドのスローインから、ボールを後方へ戻して、シャビ・アロンソがセンターサークルのペペへパスをし、ペペから右のアルベロアへと展開
した。
(1)そのアルベロアが7メートル前方のケディラへ縦パスを送るところからレアルの仕掛けが始まる
(2)ケディラは止めてすぐ、右タッチライン際にいるディマリアへ。
(3)ディマリアは前方やや内側のエジルへ。
(4)エジルは内にトラップし、自分を追い越して前へ出たケディラへ。
(5)ケディラはペナルティエリア右外ゴールラインから7メートルの地点で、このボールをダイレクトで中へ
(6)エリア内に走りこんできたエジルが受けて、左足でゴール正面のベンゼマへパス
(7)PKマークの近くにいたベンゼマが、このボールをダイレクトシュート
(8)ボールはGKバルデスを抜いたが、右ポストに当たる
(9)そのリバウンドをディマリアが走りこんで右足に当てたが、ボールは右ポストの外へ外れた

――ノーマークシュートをポストに当てたベンゼマは頭をかかえていました

賀川:守備のしっかりしているぱずのバルサがレアルの攻めで誰もボールに触れることなく、フィニッシュまで持っていかれている。とても珍しいこと だった。

――モウリーニョ監督は、イグアインよりもベンゼマをファーストチョイスにしているというのに

賀川:こういう長身プレーヤーには、案外難しいシュートだったのかもしれない。右足インサイドで、あののけぞるような姿勢では、ボールをきちんと 叩いていなかったのだろう。彼本人にもレアルにもとても惜しいチャンスだったが、高額収入のトッププロでもこうした瞬間があるということ。まるで 無抵抗に見えたバルサ側にも、言えることですがね…
――だからサッカーは面白い

賀川:大ピンチを逃れた後、バルサがボールポゼッションを高め、攻め続けて同点ゴールをもぎ取る。

――ダニエル・アウベスがモントーヤに交代しました

賀川:足を痛めたとか。そのアウベスの表情がテレビに映った直後、右からのペドロの速いクロスからのバルサのゴールが生まれた。前半31分だっ た。

――このバルサの得点に至る攻めの始まりはハーフウェイラインでのFKからでした

賀川:そのFKのボールがブスケツを経由してメッシに渡る。
(1)メッシは相手側センターサークルから左へドリブルし、左サイドに渡して短いパス交換の後に
(2)再びボールが中央にもどり、今度はシャビが受ける
(3)シャビは短くドリブルし、右のイニエスタへ
(4)イニエスタは右外のペドロへ
(5)ペドロはこのボールをダイレクトで蹴り、強いクロスを送る
(6)ボールはセルヒオ・ラモスの足に当たり、さらにシャビ・アロンソに当たって高く上がる
(7)ペペがジャンプしてヘディングしようとしたが
(8)ペペの体制は悪く、ヘディングできないまま落下して倒れ
(9)ゴールエリアぎりぎりに落下しバウンドするボールにメッシが走り寄って左足ボレーシュート。カシージャスの左を抜いた。

――きれいなパスワークからのゴールではなく、ペドロの強いクロスが相手DFに当たったリバウンドをメッシが取ったという形

賀川:ペペのジャンプの踏切りがよくなかったのかどうか。空中でバランスを崩してヘディングできなかったのが分かれ目となった。ただし、こういう異変の起こったところへ走りこんでくるメッシの早さと、ボール処理の的確さは彼が優れたストライカーである証左と言えるでしょう。私たちはワールドクラブカップの決勝でも、彼のすばやいダッシュと「胸のシュート」に感嘆したことがある。このゴールもドリブルシュートやFKでの妙技とは別の「メッシの飛び込みゴール」ともいうべき系譜に入るのだろうか。

――同点にしてからバルサの攻勢は強まったが、ゴールは生まれず、1-1で前半を終わり、後半はじめはレアル・マドリードの攻撃が目立った。

賀川:9分にはロナウドのFKのチャンスもあったが、壁に当てた。この後からバルサが勢いを取り戻して攻め続ける。

――16分にメッシが倒されて、いい位置でのFKとなった

賀川:セルヒオ・ラモスがドリブルするメッシにタックルに行って、トリッピングになった。ペナルティエリア外約9メートル正面の中央より少し右に寄ったところにボールが置かれた。マドリード側はペナルティエリアのライン一杯に5人が壁を作り、その横にバルサ3人が並んだ。

――短い助走でした。

賀川:3歩だったかな。左足でとらえたボールは壁を越え、カーブしつつ右ポストいっぱいに飛び込んだ。

ゴール裏のカメラの映像はジャンプしたレアルの白いユニフォームの壁、中央の6番ケディラの上を越えたボールがゴールに飛び込むのをとらえている。バルサの3人が壁に並んだことで、GKカシージャスからはキックの瞬間が見えていなかったかもしれない。カシージャスがジャンプし、伸ばした手よりも早く、ボールはゴールラインを通過した。

――パーフェクトはFKですね。

賀川:彼にとって得意の距離だったのだろうね。プレースキックはメッシの大きな武器ではあるが、こういう大試合で決めるところがやはりメッシということでしょう。倒された時にセルヒオ・ラモスにイエローカードを出すべきだとレフェリーにジェスチュアをしていた。すでに1枚もらっている彼にはカードは出なかった。

イエローをアピールするメッシを見ながら、こういう気持ちの昂ぶりもまた彼のキックへの集中力になっていくのかなと思ったりしましたよ。すごいプレーヤーですね。

――リードされたのを追いつき、勝ち越したバルサがいよいよ有利になったと思ったら…5分後にレアルが2-2にしました。

賀川:1-2となったレアルは、再開キックオフの前にベンゼマをイグアインに代えた。そのイグアインがいきなりブスケスを倒した。

――前からの守備をしっかりしようということですね。

賀川:左から攻めたレアルがエジルのクロスから左CKをとった。そのCKのときにロナウドがオーバーヘッドのキックにいって、空振りし、左半身で落下する場面があった。

――リードされて奮い立ったという感じになった

賀川:ロナウドのオーバーヘッドキック直後のカシージャスのキックから始まった
(1)右サイドの攻めが行き詰まって、ペペが長いバックパスをGKカシージャスに送った。ハーフウェイラインのレアル側には白いユニフォーム3人とバルサの赤が4人いた。
(2)ペナルティエリアの外10メートルあたりにボールを運んだカシージャスはそこから左足でロングボールを蹴った。
(3)ボールは相手のペナルティエリアとハーフウェイラインの中間、中央やや右寄りに落下し、そこでの奪い合いをレアルが制し、トップ下の位置にいたエジルにボールが渡った。彼の右前方にイグアイン、左前方ぬにロナウドがいた。
(4)ロナウドが右前方からバルサのDFの内へ走りこむタイミングをエジルは逃さずに左足でパスを送り込む。
(5)バルサのCDFラインの間を通ったパスはペナルティエリアへころがり
(6)PKマークのいすぐ手前でロナウドがこのボールを右足でシュート。GKバルデスの右を抜いた。

――低い位置でのカメラのリピートを見ると、ロナウドはオフサイドぎりぎりであってもオフサイドでないこと、そしてエジルは深い角度のキックで2人のCDFの間を通すスルーパスを出しているところを映し出しています。

賀川:昨シーズンの終盤のクラシコで右タッチ際からエジルが裏へ出して、中央を走ったロナウドが決勝ゴールしたのを覚えているでしょう。今度のホットラインもエジルの左足のパスのすごさと、それをゴールに結びつけるロナウドの実力を見せつけましたね。

――カシージャスはこういう場面を想定してロングボールを蹴ったのでしょうか

賀川:少なくとも、両チームの状態を考えれば、この場面ではつないで攻めるよりも、相手のゴールに近いところに高いボールを送ったほうが得だと考え、そのためにキックの位置を上げたのでしょう。後から思えば、メッシが2点目を決めたFKの位置に近かったのも面白い符号だったが…

そのカシージャスの意図を生かして、ボールの落下点での奪い合いを制したケディラたちの3人の強さ、競り合いの中で短いパスを、信頼するエジルに預けたところなどもやはりバルサと違った形のチームワークでしょう。

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驚きのカウンターゴール

2012/10/16(火)

――フランスに勝ちました。2012年10月12日午後9時(日本時間13日午前4時)キックオフ、パリ近郊のスタッド・ド・フランス競技場でした。

賀川:タイムアップ直前の後半42分26秒の相手のコーナーキックからのすごいカウンターで1点をもぎ取っての勝利です。CKの後、落下したボールを取って今野泰幸がドリブルを始めたのが42分27秒、香川真司のシュートがフランスゴールに飛び込んだのが42分37秒、つまり10秒の攻撃でそれまでの劣勢を覆して、ヨーロッパサッカー強国のひとつ、フランス代表に勝ったのですよ(このタイムは公式ではないが、テレビ画面の表示を書きとめたもの)

――1996年のオリンピック・アトランタ大会のブループリーグの初戦で日本代表がブラジルに1−0で勝ちました。U-23代表の公式戦、こちらはフル代表の親善試合という違いはありますが、強豪国代表に勝つという、日本のサッカー史上のマイルストーンをふとつ加えました。

賀川:テレビ放映のおかげで、その歴史的な一部始終を見ることが出来たのは、誠にありがたいこと。テレビ局の関係者にも、バックアップしてくれたキリンをはじめとするスポンサーさんにもお礼を言わないといけませんね。

――そのクライマックスを賀川流に反芻していただきましょう

賀川:後半40分をすぎて、フランスの攻勢はさらに強くなっていた。0−0で終わるわけにはゆかなかったのだろう。ストライカーのベンゼマは前半で退いたが、後半22分にはリベリーを投入してきた。ご存知バイエルン・ミュンヘンの左サイドのチャンスメーカー。この直前のブンデスリーガで、2得点を決めていた。その彼が入ってからフランスが再び勢いづいた。40分に日本の左CKを跳ね返した後、右サイドから攻め込み、ジルーがシュートした。ジルーに2人が寄せた日本側の守ろうという意欲に対して、長いリーチを活かしてシュートまで持っていった。192センチの長身ジルーもさすがといえた。その難しいシュートを川島がセーブして左CKとなった。

リベリーが蹴り、ファーポスト側の落下点で競り合った後のボールを小柄なバルブエナがボレーシュートした。空中のボールを上から叩き付けてのシュートで、やさしいボールではなかったが、これも川島がセーブして、また左CKとなった。今度のキッカーはバルブエナ。ボールはゴール正面に飛んで、フランス4人と日本5人が争う。その誰かに当たったボールがペナルティエリア外へ転がり出た
(1)誰よりも早く飛び出したのは、今野泰幸。エリア外10メートルでボールに追いつき、一気にドリブルで持ち上がる。
(2)ボールが落下し、ペナルティエリア外へ出たのは42分26秒、今野が拾ったのが27秒、ハーフウェイラインを越えたのが31秒だった。
(3)今野の前方には、CKの時からハーフウェイラインに残っていた中央の香川真司と左タッチ際の乾貴士がいた。それに対してフランス側は3人のDFがラインを引いていた。
(4)今野がハーフウェイラインの向こう側のセンターサークルを越えた時には、右手側に長友が上がって来て、その左に少し遅れて内田篤人も走り上がってきた。今野の後方から3人のフランス勢、長友の後をリベリーが追う。
(5)ドリブルを続ける今野に対して、フランスのCDFサコがエリア手前10メートルで応対しようとした。
(6)サコの4メートル手前で今野は左足で右前方へパスを送る。
(7)そのタイミングを待っていたかのように、香川真司が左斜め前方へ走る方向を変えた。
(8)今野からのパスはペナルティエリアへ。長友がエリア内右寄り12メートルあたりで右足でダイレクトパスを中へ。
(9)ニアサイドにいたCDFコシールニーが戻りながら右足を伸ばしてインターセプトしようとしたが届かず、ボールはそのすぐ左に走りこんできた香川の右足インサイドでゴールへ。GKロリスは前進していた。ボールは無人のゴールの真ん中へ勢いよく飛び込んだ。
(10)シュートの際に倒れた香川は右コーナーへ向かって走る殊勲者今野の後を追う。

彼らにとってはイメージそのままのゴールだったかもしれないが、5万余の観衆にも深夜テレビの前の日本サポーターにも想像を超えた瞬間だった。

――香川のフィニッシュをほめる人もありました

賀川:その前に右へ走り上がった長友にも目を向けましょう。左サイドで何度も長いランを繰り返して攻撃と守備に働いた彼が、このチャンスに右サイドへ飛び出したのだから、そのタフさと判断に拍手したい。

香川は長谷部と細貝、中村と乾が交代した後半17分からトップ下へ入っていた。このコーナーキックの時は、彼と乾がハーフウェイラインに残り、彼は中央やや右寄りにいた。今野のドリブル直進にあわせて、彼も前進し、今野のパスを出すタイミングを計って左へ移動した。ボールが右へ渡り、長友がパスを出すタイミングには、フランスのDFの眼はボールに注がれる。だから香川はニアサイドからファーサイドへ移ってCDFコシールニーの背後に入っていて、その視野から消え、あわせて自分の有利なシュート体勢に入っています。ドリブルする今野を見ながら、手で合図をしていたようにも見えた。右へパスを出してくれということだったのかな。

――交代出場の乾がよかった

賀川:長友とあわせて、ドリブル突破できる選手が左サイドに2人いることになって、攻めやすくなった。そうそう、いつだったか乾くんの夢を見ましたよ。彼が真司と同じように左足でうまいトラッピングをした。上手になったと思ったら目が覚めました。

――フランス戦というと、これまで一度も勝っていない。サンドニでは0−5という大敗もありました

賀川:2001年3月24日、日韓ワールドカップを目指す代表の強化試合でした。

――フランスにはジダンやトレゼゲがいました。

賀川:相手も強かったが、こちらのコンディションもよくなかった。滑りやすいピッチ状態も加わって完敗だった。

――それとよく比較されますが

賀川:10年経って、日本全体のレベルが上がっているのは確かでしょう。

サンドニの滑りやすいのは変わっていないが、前半に相手が14本のシュートを1本も決められなかったのは川島のファインセーブもあるが、滑りやすいピッチとフランス代表のシュートも原因でしょう。

先述した、1996年のマイアミでのブラジル戦は全く一方的なブラジルの攻撃に耐えて、一本のロングボールからミスもあって1ゴールを奪ったのだった。その時唯一のゴールを決めた伊東輝悦は、日本代表でも活躍しこのフランス戦0−5でもプレーしています。

その伊東が、この間J2からJ1に昇格を決めた甲府でプレーしていましたよ。彼のように経験ある選手とともにプレーすることで、若い選手の進歩も早くなります。今度の対フランス初勝利のゴールは、マイアミのような僥倖(ぎょうこう)ではなく、選手たちの技術・体力・戦術の結果で奪い取ったものです。ここに16年間の日本の進歩があるといえます。マイアミの功労者伊東輝がいまもプレーを続けていることも、その進歩を支える日本サッカーの厚みといえるでしょう。

――さて、その進歩がブラジル相手にも見られるかどうかですね

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バルサ・レアルのクラシコから

2012/10/12(金)

最近のテレビでは、マンチェスター・ユナイテッド対ニューカッスルでの香川真司のいささか見ていて気の毒になるようなプレーもありました。その香川くんの話は、日本代表のフランス戦、ブラジル戦などにも出てくるでしょうから、少し古くなりましたが、スペインリーグでのバルサ対レアルについて話し合うことにしました。お付き合いください。

――バルサとレアルのクラシコいかがでした?

賀川:ノウカンプ全体がバルサ、バルサの歌声に包まれる中にバルセロナとレアル・マドリードのイレブンが入場するところから見られるのだから、誠にありがたい時代になりましたよ。テレビのおかげですね。

――バルサのホーム、ノウカンプでもちろん取材経験はあるのでしょう

賀川:残念ながらリーガ・エスパニョールではなく、82年のワールドカップスペイン大会の時に、開幕試合をはじめ、何試合か取材しましたよ。レアルの本拠地サンチアゴ・ベルナベウと同様に、風格のあるスタジアムですよ。そしてちょっと開放的かな。もちろんカタルーニャという土地柄もあるのでしょうが。

――カタルーニャはスペインの単なるひとつの州というより、国のようだと言いますね

賀川:「カタルーニャはカタルーニャであって、スペインではない」という言葉はヨハン・クライフに教えてもらった。1980年、彼がワシントン・ディプロマッツという北米リーグのチームとともに来日した時のインタビューです。それから、カタルーニャそしてスペインへの私の興味も大きくなったのです。

――それまでは

賀川:外国のスターを集めてスペインリーグでも欧州チャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)でも断然強かったレアル・マドリードのことは知っていた。

――ディ・ステファーノやプスカシュなどのいた1956-60年の5連覇時代ですね。オランダのアヤックスにいたクライフがバルサに移ったのは1973年で、彼は選手としてバルサにリーグ優勝をもたらし、80年代後半には監督となって92年には欧州チャンピオンズカップ優勝を果たした

賀川:その年のトヨタカップで来日したバルサのプレーを見た。「クライフはとうとうスペインにオランダ流の現代サッカーを植え付けた」と思ったものです。

――カタルーニャとカスティーリアというバルセロナ、マドリードのそれぞれの地域の強い対抗意識もあって、両チームの試合はエル・グラン・クラシコと呼ばれるようになった

賀川:スペイン語のクラシコは英語のクラシック、つまり古典、あるいは古典的ということから伝統あるビッグゲームを指すことに――アメリカの野球では日本も参加するWBCはワールド・ベースボール・クラシックです。

――今年のクラシコはリーグ第7節、バルセロナがホームでした

賀川:ここのところバルサのサッカーが世界のトップということになっていた。それを昨シーズンはレアルマドリードがリーグの優勝を取り戻し、終盤のクラシコにも勝った――といういきさつもあり、2012-23シーズンの第1戦はずいぶん注目された。

――リーグでも欧州チャンピオンズリーグでも、バルサはタイトルを取れなかったが、バルサ主体のスペイン代表はEURO2012に優勝して、依然として彼らのサッカーが最高であることを示した。

賀川:ひとりひとりの高い個人技と、巧みなパスワークでボールポゼッションでまず圧倒的な優位に立ち、変幻自在の攻撃でゴールを奪うやり方は日本でもとても人気がある。

――レアルはパスワークやボールポゼッションで一歩譲っても、個人的な強さを生かすスケールの大きな展開と、バルサのメッシと並ぶ当代のストライカー、クリスチアーノ・ロナウドを生かす攻撃でバルサに勝とうという考えでしょう。

賀川:長い歴史的な背景と、両チームの個人的なレベルの高さ、チーム戦術など、興味一杯の対戦として世界中が注目していた。

――賀川さん流にシンプルに言えば、スコアは2-2、メッシとロナウドが2点ずつ取りました

賀川:試合はともかく面白かった。バルサははじめのうち、少し動きが硬い、あるいは鈍いとみる人もあったが、レアルが先制し、それを追う形のバルサが中ごろから調子が上がったので、とても面白かった。と同時に、こういう最高級のチームの試合を見ながら、日本代表やJリーグのレベルあるいは女子、高校サッカーのレベルとも比べることのできるサッカーという競技の面白さを改めて感じました。

――というと

賀川:たとえば、私の古くからの友人で尊敬すべき指導者である近江達ドクターは、80歳のいまもプレーをしている。CFをして点を取って楽しんでいる。その老ドクターのゴールを奪う戦術も、こういうトップのゴール奪取も、体の強さ、プレーの速さといった違いはあっても、根本的にはボールの動かし方や、シュートへ持っていくパスのやり取りなどはたいてい同じ原型からできていることに気がつくでしょう。

――クラシコのゴールも、賀川さんの中学生だった時のゴールも全く違ったレベルであっても基本的には同じところにあるということですか。

賀川:そんなことも、ふと考えましたよ。

――ではクラシコのゴールを眺めてみましょう

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秋の日本サッカー 香川真司はWORLD SOCCERの表紙に

2012/10/04(木)

――日本代表のワールドカップブラジル大会予選は9月の対イラク戦1-0で、まず5チームリーグの前半を終わり3勝1分でBグループの首位に立ちました。なでしこジャパン、U-23代表と、そしてU-20ヤングなでしこのメダルという夏の好成績の後、いよいよJリーグの終盤の決戦が続き、代表は10月中旬のヨーロッパでの対フランス、対ブラジルが注目されます。

同時にまた、ヨーロッパでは2012-2013シーズンに入って、イングランド、イタリア、ドイツでの日本選手の働きも気になるところです。

賀川:しばらくごぶさたになってしまいました。ヨーロッパでの日本選手のプレーぶりはそのまま代表チームにつながることもあって、Jリーグと同様にメディアの扱いも大きくなりました。

――テレビ欄で、香川真司という文字が頻繁に出てくるようになりました

賀川:マンチェスター・ユナイテッドでは、ウェイン・ルーニーが復帰してきたので、いよいよこれからが香川真司の働きの見せ所でしょう。ファンペルシーとルーニーというストライカーと真司の組み合わせはワクワクしますね。

――取材に行きたいところですね

賀川:体がきいて、時間に余裕があればね。私の今の夢のひとつは、オールドトラフォードでボビー・チャールトンやデニス・ローとともに、真司のプレーを眺めることです。

――真司にとっての2人のユナイテッドの大先輩と並んでですか

賀川:かつて訪れた時に、ここのスタンドにはボビー・チャールトン用の席があると当時の会長から聞きました。試合を見ながら、彼らの真司に対する意見を聞かせてもらえば、と想像するだけでも楽しくなります。

――ドイツにはずいぶん多くの日本選手が移っていった。それがまた、開幕早々から評価が高いようです

賀川:ヨーロッパでのプレーはなかなか大変でしょう。スタートで評価が上がるとは、とてもいいことだが、問題は試合を重ねるごとに、いいプレーを続けてゆけるかどうかでしょう。

――宇佐美がドリブル突破でゴールを決めたとか

賀川:自分の持ち味を見せられるようになったのはとてもうれしいことです。彼の速さは相手によくわからないところがあるのだが、まあこれからです。ドリブルだけでなく、清武や香川と同じようにボールをしっかり蹴れるところが有望視されるのだが、体力をつけ、守備で働くことがそれほど苦にならなくなれば、周囲からも信頼されるでしょう。

――清武は

賀川:パスのセンスと言う点では、ドイツの選手の水準を超えているでしょう。自分でゴールを決める意欲がつけば、真司と同じように人気が高まるでしょう。中距離パスや高く上げて落とすといった、チームメートにあわせた長い球、高い球も蹴ることができるので、評価はもっと高まっても不思議ではないでしょう。

ヨーロッパで成功するためには強い体が大切ですが、キックの技術をその時、その場で使い分け発揮できることが何よりです。もちろん、キープ力、ドリブル力も大切だが…

――乾がゴールを連発しています

賀川:テレビでドリブルシュートの場面を見ながら、長居でのプレーを思い出しました。直線的で、間合いの取り方がとてもいい。体が強くなって、急によくなったと思ったら、ドイツに移りましたね。縦に抜いて出る鋭さは別格です。その後のシュートの時に、冷静さがつけばという感じのドリブラーでした。右足のシュートは小さな振りでも蹴るし、変化がありますよ。ドイツの各チームのディフェンダーが彼の得意の形を知って、片側を抑えにかかった時にどうするかでしょう。自分の工夫で切り抜けてくれるでしょうがね…

――真司がここまで評価されるとみていましたか?

賀川:8月にロンドンで発売されたワールドサッカーの9月号の表紙はSHINJI KAGAWAでした。彼のプロフィールに6ページを使っていますよ。2007年のセレッソ大阪がJ2の時代からの得点記録や、ドルトムント時代、そして代表を含めてきちんと表示されています。立派な内容ですよ。

――そういうヨーロッパ組のためにも今度のフランス戦、ブラジル戦は値打ちがありますね。

賀川:ザッケローニ監督は、これまで作ってきた代表チームについて、ある程度の自信を持っているだろうが、アジアではボールポゼッションで優位に立てても、ヨーロッパの上のクラスを相手にするとどうなるかです。もちろんどこと戦うにも日本チームの敏捷さを生かすための動きの量や、個々の技術の組み合わせを高めるのは当然です。まず、大づかみにヨーロッパ組を含めて日本代表が世界のどの位置にいるのかを見てみたいと考えているはずです。

――もちろん当日の調子にもよりますが

賀川:相手をふくめて、サッカーはそういうものですが、それでも代表がフランス、ブラジルとの試合を経験することで、選手もチーム全体も監督やスタッフも多くを会得することができるでしょう。

――勉強ではなく勝つ気でね

賀川:試合する以上、当然です。私が今サッカーマガジンで連載中の日本とサッカーの90年で、ちょうど68年メキシコ五輪が終わったところですが、そのころの選手たちは今よりも国際経験も少なく、技術も低かったが、ブラジルのパルメイラスであっても、イングランドのアーセナルであっても、とにかく勝とうという意欲で試合していた。大抵は負けはしたが、技術や経験が上の相手にも何とかして勝ちたいと挑んでいた。それを横から眺めながら、分不相応と思うこともないではなかったが、その努力がやはり上達につながり、いまだに男子オリンピックで破られない記録になっているのですよ。

――いまや、こちらもプロフェッショナルですからね

賀川:そういう意味でも、ヨーロッパでの2試合のテレビはとてもサッカーファンの楽しみになるでしょう。もちろん週末のJリーグの激戦も見逃すわけにはいきません。

――浦和、柏の激戦をはじめ、エキサイティングな試合も続いています。これからはそちらの面白さも語ってもらうことにしましょう。そうそう、女子リーグも上向きになったと言っていましたね。これについても機会を見て聞かせてもらいます。

Sep2012cover


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