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2012年9月

FIFA U-20女子ワールドカップ 3位決定戦 U-20ナイジェリア女子代表

2012/09/10(月)

ヤングなでしこ 2(1-0)1 U-20ナイジェリア女子代表


――しんどい試合でしたが、ヤングなでしこ耐え抜きました。3位を取りました。

賀川:ナイジェリアの女子のチームがものすごくがんばるのに敬服した。彼女たちが勝っても不思議ではない流れだった。

――日本にツキがあった

賀川:誰もが言うことだが、ツキも努力なしではやってこないから、日本の勝ちにはそれだけの値打ちがありますよ。ただ私はアメリカの女子社会でこのくらいのチームが(前大会2位だから)どんどん出てくるようになったことに女子サッカーの世界への浸透ぶりを感じましたよ。

――アフリカも地域によっての差はあるでしょうが、ナイジェリアは個のボールテクニックもパス交換のテクニックもしっかりしていた。

賀川:フィニッシュが今一息だった。それも日本のディフェンスがボールをまわされても、逆を取られても諦めずに体を付けていったからです。

――ドイツ戦の教訓が生きた

賀川:内実は違うけれど、1968年の杉山隆一や釜本邦茂たちの銅メダルと経過はすこし似ているでしょう。準決勝でハンガリーに5-0の完敗をし、そのショックから立ち直って3位決定戦でメキシコを破った。2点先行し、あと押しまくられたが、粘り抜いて防ぎきって無失点で勝った。

――あの時は試合途中からメキシコ人サポーターがメキシコチームにブーイングをするようになった

賀川:今度のヤングなでしこには2万9400人の声援があった。いまの日本は、いいサッカー国になろうとしていますよ。

――田中陽子の先制ゴールに驚きましたね

賀川:相手の守備ラインの外、25メートルからの左足シュートは彼女の気迫と技術がこもっていた。本田圭祐ばりのシュートだった。ドイツとの試合は途中でベンチに引っ込んだ。いいプレーができなかったことで、チームのために自分の何をどこで表現するかを考えていたのだろうね。試合後のインタビューは「蹴っちゃいました」だったが、心に思い、頭の中で組み立てていたことがあの瞬間に出たのだろうと思いますよ。

――2点目は柴田と西川のゴールでした

賀川:柴田が相手のDF網の外でどういうボールの受け方をしたのか、テレビの画面だけではわかりにくいのだが、彼女のドリブルのうまさと、右へかわして左へ流し込んだパスのうまさ、その柴田のドリブルの体勢を見て、マーク相手の裏を抜けてパスを受けた西川と、その後のシュートがよかった。

――韓国戦では1点目に西川がパスを出し、柴田が決めたが、今度は柴田がパスをして西川が決めた

賀川:西川は右回りで右足でシュートする方が得意らしいが、今度は左前へ出て左足のシュートを決めた。パスのタイミングがよくて、全くのノーマークで相手は前へ出てくるGKだけだった。こういう点の取り方は、彼女にもプラスになったでしょう。

――後半に2人を投入した監督の采配もよかった

賀川:そうですね。柴田は小柄であっても体の踏ん張りがきく点では、このチームでも右翼でしょう。彼女を登場させない手はないだろうと思っていたら、やはり使ってきた。

――小柄で知られていた賀川さんは小兵の利も知っているはずですね

賀川:彼女のボールコントロールは、男でいえば香川真司の感じですね。この試合でも後半に田中陽子や田中美南、あるいは西川といった選手が決定的と思われるチャンスで止めそこなった場面があったが、柴田にはそういう記憶はない。バルサのメッシやイニエスタをはじめ、何人かの選手を見るとき、サッカーはボールコントロール、ボールタッチの感覚がまず素質の重要部分ということが理解できるが、柴田のプレーを見ていると、その大切さを改めて思いますよ。もちろん素質があるといっても、常に練習していなければならないが…

――ナイジェリアの攻撃を耐えての、いわば全力を尽くしての勝利といえるでしょう

賀川:選手や監督が6試合をここまで戦い勝ったことは、まさに銅メダルに値するチームであることを証明したが、ベスト4のひとつ、優勝したアメリカとは未戦、ドイツに負け、ナイジェリアと大接戦という結果をみれば、次に金メダルを目指すと言ってもそうやさしいものではないと言えます。韓国も追い上げるでしょうし、北朝鮮だって実際に試合すればどうなるか。世界の女子サッカーの進歩を考えれば、日本もここで安心してはおれないでしょう。しかし、何といってもホームで日本のメディアと観衆の前で彼女たちが6試合を立派に戦ってくれたことで、こうした世界の女子サッカーのこともサッカーファンが理解できたのですから。やはりヤングなでしこの今回のがんばりには敬意を払い感謝すべきですよ。だいいち、彼女たちは試合ごとに成長した。もちろん相手によって力を出せなかったこともあるが、そうした大きな経験をつんだことはすばらしいことです。

――個人技上達を強調するあまりにチームワークへのヒントや練習がおそろかになったのでは――という見方もありますが

賀川:そういう「根」の問題についても、これから折に触れ語り合いたいと思います。

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FIFA U-20女子ワールドカップ 準決勝 U-20ドイツ女子代表

2012/09/09(日)

ヤングなでしこ 0(0-3)3 U-20ドイツ女子代表


◆静かに闘志を燃やしていた?ドイツ

――完敗でした。ドイツ強しでした

賀川:不勉強でこれまでドイツのU-20代表を見たことがなかったが、リーグの運営も選手育成組織も世界で一番しっかりしているドイツのこと、まして女性だからドイツの今度のチームは強いだろうと勝手に想像していた。

――で、そのとおり

賀川:というより、最初彼女たちがピッチに散って、キックオフしボールを何人か触った時、いい選手たちだ、これこそヤングなでしこにとって全力で戦える相手だと思った。

――負けるとは?

賀川:というよりも、うれしかった。先制ゴールを取られた時もまだそういう気持ちだったが…

――いい相手どころか、いきなりガツンとやられて、こちらは縮んでしまった

賀川:そういえばキックオフ前にテレビがピッチに入場する直前の選手たちの表情を映していたでしょう。その時、ヤングなでしこたちは互いにおしゃべりし笑い合っていた。遠足にゆく感じに見えた。それを見ながら強敵を相手に彼女たちは気持ちを高めるのにこういう形をとるのかとか、あるいはこういうものを平常心と思っているのかな、などと思いました。

――というと

賀川:相手のドイツのU-20たちは皆黙っていた。互いに話もしていなかった。日本選手の笑いさざめくのにチラリと目をやるものもあったが、大半は知らぬ顔をしていた。その対比がとても面白く、また不思議だった。

賀川:準々決勝の韓国戦の時もやはりスタンド下の通路で日本選手たちはおしゃべりし、笑い合っていた。韓国もそれに対応するように、何やら互いにおしゃべりしていたのを思い出した。

――90分後のドイツは抱き合って喜びあい、日本は涙にくれた

賀川:そういう試合のあとさきの情景はともかく、試合はスタートからドイツ側の思い通りだったといえるだろう。

――なにしろ1分以内のゴールですから

賀川:このゴールの発端は、日本の左サイドでドイツ選手が3人がかりで猶本のボールを奪うところからですよ。ひとりが持ち出して、マロジャンにパスした。14番をつけた長身のストライカーです。彼女は後方からのボールを戻るようにして受け、藤田が奪いに来るのをかわして前方へいいタイミングでスルーパスを送った。ボールは日本のCDF土光の右側を通りDFラインの裏へ。それをロイポルツが後方から走り抜けて取り、右足シュートをゴール左下隅へ決めた。ロイポルツは自陣センターサークルにいたのだが、猶本のボールを仲間が奪うと、タイミングを計りながら前進し、ボールを注視していた土光の背後を走りあがったから土光は気づくのが遅かったと思う。

――先制されガクッときた日本はしばらく立ち直れなかった

賀川:事前にどれだけ情報を取り、それの対応策をどれだけ工夫したのかな。頭の中の工夫でなく、たとえば4日の間に接触プレーなどを実際にしたのかなということもある。

――たとえ付け焼刃でも

賀川:自分より大きい相手が早いぷレッシングに来る。予想より早い強い動きにとまどう、ボールを取られる、いつもなら取り返せることもあるが、相手はしっかりとキープしてしまう。いや、キープよりもどんどん突っかけてくるので混乱する――ということになる。

――気がついたら0-3になっていた

賀川:それほどでもないだろうが、何とかしようと思っても、これまでは自分たちが仕掛けて勝ってきたのが、受け身になってしまうと弱点が出てくる。こういう時にはそれが積み重なる。

――日本が少し攻める時間帯も出てきたが、12分過ぎに2点目を取られました

賀川:五分五分の攻め合いという流れのなかで、相手のマロジャンのシュートがあり、それを土光が体に当てて防いだ。そのリバウンドを左DFの浜田が前方へハイボールを蹴った。西川を狙ったのだろうが、相手ボールとなりタッチライン際からロングボールが返ってきた。このボールを木下がヘディングに失敗し、ワンバウンドしたボールをマロジャンが蹴って前進したGK池田の上を抜いた。長身の彼女に気を取られて木下がボールの落下点の目測を誤ったのだろうが、それまでハイボールを使っていなかったドイツが、日本が高いボールを蹴ったのに反応して後方からハイボールを蹴ったという感じだった。

――ハイボールの応酬がマロジャンのタナボタのようなゴールにつながった。

賀川:身長差がそのまま出る日本にとっては実に防ぐに難しく、相手にとっては誠にやさしい2点目だった。

――3点目はCKからのヘディングで、相手の得意の形でした。

賀川:先制ゴールの効き目もあるだろうが、自分たちの方が上手だと思っていた、その技術がなかなか通じないのは、選手たちの立ち直りを遅くしたのだろうね。


◆個人力アップとチームワーク向上の両方を

――後半は攻めたが、ゴールにはならなかった

賀川:ドイツは走力も落ちなかった。なでしこが勝つには技術と走力が相手以上でないと難しい。

――相手側に対する準備は

賀川:日本側もドイツの試合のビデオを見てはいたようだが、まず走り勝つという気構えが必要だったかも。

――もちろんそれを実行できるコンディション調整がどうだったか、ということになるが
賀川:こういう相手とほんとうに全力を出し切る試合をしてほしかったとも思うが、こういう負け方をして、その悔しさをバネに、もう一度自分たちの素質や技術を見直すチャンスを得たと思うこともできる。通用したプレーもあったのだから、個人力アップに努めてきたこれまでのキャリアの上に、チームゲームとしてのサッカー、個人技をチームでどれだけ役立たせるかを工夫すること、そしてこれまでと違って不得手なプレーの克服をもう少し考えることだろうね。

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FIFA U-20女子ワールドカップ 準々決勝
 U-20韓国女子代表 下

2012/09/03(月)

――3点目も右からの崩しでした。

賀川:この崩し方というか、右からの攻撃展開は相手のペナルティエリア内深くに侵入したもので、前回も話した3/4世紀も前の私の神戸一中のころから現代のサッカーのトップにあるバルセロナに至るまで古今東西のサッカー攻撃の典型的な形です。もちろん、それぞれのレベルでの速さやプレーの精度は違いますが、考え方としては最もゴールになりやすい、守備側からすれば最も嫌なところを突く攻めなのです。

――30分過ぎに日本側にもピンチがあった。右CKから相手のシュートを2度続けてGK池田が防いだ。ここで奪われていれば韓国は勢いづくのだが、、、

賀川:その後、日本にビッグチャンスが来た。右タッチ沿いで高木が後方からのパスを受けたところから攻撃が始まった。

――韓国側は30メートルあたりに4人のDFがラインを整え、その前10メートルに第2防御線の4人がいた。

賀川:(1)高木は自分の前のスペースへパスを流しこみ
(2)それを内側から外へ走って田中美南がキープした
(3)得意の右アウトサイドを使ってボールを止め、後方を向いて3人に囲まれながら右アウトサイドで内側の高木へ短いパスを送った
(4)誰もいない空白地帯で受けた高木は
(5)内側から奪いにくる一人をかわしてペナルティエリアに入り
(6)斜め中へドリブルしてゴールエリアいっぱい、ゴールライン1メートルから中へ強いパスを送った
(7)このパスに西川が相手のDFに絡まれながら飛び込み
(8)ゴールキーパーを含めた4人の前を通ったボールを
(9)ファーサイドのポストの前、ゴールエリアのライン上で田中陽子が右足インサイドで押し込んだ

――高木、田中美南の変形ワンツーパスから高木の突進、そしてポスト近くからのクロス、それを一人がニアに飛び込み、もう一人でファーに詰めるという、まさに原則通りの形でした。

賀川:最初に高木がボールを受けた位置もよかったし、厚くみえる守りを外側から崩していく手順もスピードもタイミングも理想的に運んだ。

――3−1となったが、日本の選手たちは油断はしなかった

賀川:私と同様選手たちは韓国選手たちの粘りとファイトをよく知っている。試合の前に友人から訪ねられた時に私は、両方の「がんばり合いになる」と話した。どういう形になるにせよ、1対1のボールの奪い合いは激しくなる。その時に韓国側は気迫がこもるとともに、ファウルも増える。ホールディング(腕で抱きかかえる)、プッシング(手で押す)、もちろんトリッピング(足をかける)なども増えるだろう。特に手を使う反則を普通にビシビシととるかどうかで、ずいぶん試合の流れに影響すると言っておいた。

――レフェリーはどうでした

賀川:きちんと処理していたようにみえました。

――それでも後半は彼女たちの勢いに日本側はタジタジとなった

賀川:これは日本側の弱点などというのではなく、こういうときの韓国との試合は押し込まれて当たり前なのです。それが韓国の強みなのですよ。しかし押し込まれてもこちらも粘り強くマークをしっかりし、その局面での対応をしっかりすれば、それほど崩されることはないのです。

――こちらの士気を維持し、疲れた体を動かせるのは?

賀川:そういう時に3−1の2点のリードが大きくプラスになります。だから私は昔から2点のリードを奪うための得点力が第一だと言い続けているのです。私たちは少年期からそういう戦いをして、勝ってきたのですから。

――今度の準々決勝はうまくいくと

賀川:U-17のときの悔しい体験をしたものが何人もいるということが、いい体験として生きていると思います。もちろん監督、スタッフもそうでしょう。しかし大会で勝つには相手は韓国だけではありません。

――ベスト4以上となれば、さらに高いレベルの相手となるかもしれません。

賀川:選手たちは運動量とともに、さらに一段上のレベルのプレーをすることになります。ここでホッとすることなく、彼女たちが培ってきた技術、体力、精神力を結集する準備が必要でしょう。準決勝で日本のファンは新しい女子サッカーの魅力を知ることになるだろうし、プレーする彼女たちも新境地へ踏み込んでゆけると思います。

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FIFA U-20女子ワールドカップ 準々決勝
 U-20韓国女子代表 上

2012/09/02(日)

FIFA U-20女子ワールドカップ 準々決勝
ヤングなでしこ(U-20日本女子代表)vs U-20韓国女子代表

ヤングなでしこ 3 (3-1) 1 U-20韓国女子代表

◆典型的で高レベルの女子日韓戦を制してベスト4へ


――ヤングなでしこが、この大会で初めてベスト4に進みました。それもライバルの韓国を倒してのことです。

賀川:試合としても、とてもいい試合だった。両国代表の特徴がよく出ていてまさに「日韓戦」だった。

――早いうちに先制ゴールを取りました。

賀川:すばらしい速攻で、すばらしい個人技の組合わせで生まれたゴールだった。少し固い感じのあったヤングなでしこだったから、この早いうちのゴールは効き目があった。

――ハーフウェイラインあたりから左サイドの田中陽子から足下へのパスを西川が受けるところからですね攻撃は

賀川:(1)後方からのパスをCDFのキムを背にして受けた西川は
(2)少し戻り気味にトラップしつつ半身になり
(3)右足で相手のDFラインの裏へスルーパスを送った
(4)ボールはもう一人のCDFシンの裏へ出て、彼女が懸命に伸ばした足の前を通り過ぎる
(5)シンの右側、つまり中央にいた柴田がいいスタートを切っていて、ゴールへ転がっていくボールを追う
(6)飛び出してきたゴールキーパーがボールを蹴ろうと右足を振るより一瞬早く柴田が右足のトーでこのボールを突いた。ゴールキーパーの右足は空振りとなり、ボールはそのままゴールへ吸い込まれていった。

――西川がパスを受けて、相手DFを背にボールを止めてターンしつつ、スルーパスを出したのが第1の山。第2はゴールキーパーよりも一瞬早く柴田がボールに触れたこと。賀川さん流に言えばこうなりますね。

賀川:この日のラインアップは、ワントップがこれまでの道上ではなく西川だったでしょう。この人はスイスとの第3戦で途中から交代出場して、チームの3点目を決めた。田中陽子の右足と左足のFKで2−0とした後だったからメディアではそう大きな扱いにならなかったが、CKだったかのリバウンドを後方へ戻りながら振り向きざまにニアポストぎわに右足でピシャリと決めたのが印象に残っていた。

――というと

賀川:この時、この選手は反転して右でボールを蹴るのが形になっているという感じだったのです。もどって左肩を前にしてのターン、円弧を描くのは香川真司の何年か前からの持ち芸のひとつだが、西川も似ているかなという感じだった。対韓国の重要な先制ゴールも、彼女の得意の形のキック(つまりパス)が生んだといえる。柴田選手のスタートの早さを合わせ考えると仲間内では理解していたのだろう。そして、もちろん監督さんも2人の組合わせでこうした局面をイメージしていたかも知れない。(これほどうまくゆくと思ったかどうかは別として)

――このゴールはそういう解釈になりますね

賀川:これまでのグループリーグ3試合では個人力を見せつけようという感じが強かった。はじめは少し偏り過ぎのようにも見えたが、対韓国戦をひかえてのデモンストレーションという気もした。

――日本流組織サッカーを封印していたと?

賀川:封印とまではゆかなくても、サッカー特有の1+1が3になるような組合わせみせていなかった。グループリーグを見て、このチームは多くの選手がゴールに向かって蹴る、つまりシュートについて一般的な日本チームの選手(男女ともに)よりは自信を持っている、言い換えればシュートの練習回数が多いようにみえた。自分から仕掛けて突破、あるいは相手をかわしてのシュートというシーンが多かったでしょう。

――そのかわり、ヒザを叩くようなパスワークはあまり見なかった。それがいきなり先制ゴールにあらわれた。しかし韓国はすぐに同点にしました。

賀川:左サイドをドリブルで破られたゴールラインぎりぎりでイが左足で見事なクロスをあげ、チョンがフリーでヘッドした。韓国側は自信を持ったと思う。その前にも右から何回か突破しているからね。ぼくのメモに韓国の監督はサイドを走らせれば何とかなると思っているだろうと書いていますよ。

――3人で囲みにいってクロスをあげられましたからね

賀川:まあこのあたりが日韓サッカーの面白いところですよ。ヨーロッパ人から見れば韓国選手は決して大きいとは言えないが、ヤングなでしこより平均してひと回り体が大きい。ヤングなでしこは今の女子サッカーでは体格はいい方だが、それでも韓国の方が丈夫そうにみえる。もちろん逆に言えば日本側は敏捷で軽快ということになる。

――その動きの量のハンデになる条件は、韓国は気力でカバーしてきます。

賀川:だから日本側はいつも先行し、点差を開けておくことが大切で、それは私が神戸一中の蹴球部にいた75年前、当時の朝鮮半島の普成中学、培材中学などと全国優勝を争っていたころから日韓戦の歴史でまず変わらないことなのですよ。

――で、ヤングなでしこは同点から4分で2−1にした。

賀川:これは右サイドから攻めて田中美南が中央のペナルティエリア外にいた柴田へ速い横パスを送り、柴田が左へドリブルして左足のシュートを左隅に決めたもの。インターセプトされないようにスピードのあるパスを送った田中美南の判断と技術と、柴田のドリブルからシュートへの動作といい、パーフェクトだった。

――相手DFは人数はいたが、つぶせなかった。

賀川:柴田選手のシュートの構えへ持ってゆく速さと、スムースな動きとシュートそのもので勝負ありでした。

(続く)

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