FIFA U-20女子ワールドカップ 準々決勝 U-20韓国女子代表 上
FIFA U-20女子ワールドカップ 準々決勝 ヤングなでしこ(U-20日本女子代表)vs U-20韓国女子代表
ヤングなでしこ 3 (3-1) 1 U-20韓国女子代表
◆典型的で高レベルの女子日韓戦を制してベスト4へ
――ヤングなでしこが、この大会で初めてベスト4に進みました。それもライバルの韓国を倒してのことです。
賀川:試合としても、とてもいい試合だった。両国代表の特徴がよく出ていてまさに「日韓戦」だった。
――早いうちに先制ゴールを取りました。
賀川:すばらしい速攻で、すばらしい個人技の組合わせで生まれたゴールだった。少し固い感じのあったヤングなでしこだったから、この早いうちのゴールは効き目があった。
――ハーフウェイラインあたりから左サイドの田中陽子から足下へのパスを西川が受けるところからですね攻撃は
賀川:(1)後方からのパスをCDFのキムを背にして受けた西川は
(2)少し戻り気味にトラップしつつ半身になり
(3)右足で相手のDFラインの裏へスルーパスを送った
(4)ボールはもう一人のCDFシンの裏へ出て、彼女が懸命に伸ばした足の前を通り過ぎる
(5)シンの右側、つまり中央にいた柴田がいいスタートを切っていて、ゴールへ転がっていくボールを追う
(6)飛び出してきたゴールキーパーがボールを蹴ろうと右足を振るより一瞬早く柴田が右足のトーでこのボールを突いた。ゴールキーパーの右足は空振りとなり、ボールはそのままゴールへ吸い込まれていった。
――西川がパスを受けて、相手DFを背にボールを止めてターンしつつ、スルーパスを出したのが第1の山。第2はゴールキーパーよりも一瞬早く柴田がボールに触れたこと。賀川さん流に言えばこうなりますね。
賀川:この日のラインアップは、ワントップがこれまでの道上ではなく西川だったでしょう。この人はスイスとの第3戦で途中から交代出場して、チームの3点目を決めた。田中陽子の右足と左足のFKで2−0とした後だったからメディアではそう大きな扱いにならなかったが、CKだったかのリバウンドを後方へ戻りながら振り向きざまにニアポストぎわに右足でピシャリと決めたのが印象に残っていた。
――というと
賀川:この時、この選手は反転して右でボールを蹴るのが形になっているという感じだったのです。もどって左肩を前にしてのターン、円弧を描くのは香川真司の何年か前からの持ち芸のひとつだが、西川も似ているかなという感じだった。対韓国の重要な先制ゴールも、彼女の得意の形のキック(つまりパス)が生んだといえる。柴田選手のスタートの早さを合わせ考えると仲間内では理解していたのだろう。そして、もちろん監督さんも2人の組合わせでこうした局面をイメージしていたかも知れない。(これほどうまくゆくと思ったかどうかは別として)
――このゴールはそういう解釈になりますね
賀川:これまでのグループリーグ3試合では個人力を見せつけようという感じが強かった。はじめは少し偏り過ぎのようにも見えたが、対韓国戦をひかえてのデモンストレーションという気もした。
――日本流組織サッカーを封印していたと?
賀川:封印とまではゆかなくても、サッカー特有の1+1が3になるような組合わせみせていなかった。グループリーグを見て、このチームは多くの選手がゴールに向かって蹴る、つまりシュートについて一般的な日本チームの選手(男女ともに)よりは自信を持っている、言い換えればシュートの練習回数が多いようにみえた。自分から仕掛けて突破、あるいは相手をかわしてのシュートというシーンが多かったでしょう。
――そのかわり、ヒザを叩くようなパスワークはあまり見なかった。それがいきなり先制ゴールにあらわれた。しかし韓国はすぐに同点にしました。
賀川:左サイドをドリブルで破られたゴールラインぎりぎりでイが左足で見事なクロスをあげ、チョンがフリーでヘッドした。韓国側は自信を持ったと思う。その前にも右から何回か突破しているからね。ぼくのメモに韓国の監督はサイドを走らせれば何とかなると思っているだろうと書いていますよ。
――3人で囲みにいってクロスをあげられましたからね
賀川:まあこのあたりが日韓サッカーの面白いところですよ。ヨーロッパ人から見れば韓国選手は決して大きいとは言えないが、ヤングなでしこより平均してひと回り体が大きい。ヤングなでしこは今の女子サッカーでは体格はいい方だが、それでも韓国の方が丈夫そうにみえる。もちろん逆に言えば日本側は敏捷で軽快ということになる。
――その動きの量のハンデになる条件は、韓国は気力でカバーしてきます。
賀川:だから日本側はいつも先行し、点差を開けておくことが大切で、それは私が神戸一中の蹴球部にいた75年前、当時の朝鮮半島の普成中学、培材中学などと全国優勝を争っていたころから日韓戦の歴史でまず変わらないことなのですよ。
――で、ヤングなでしこは同点から4分で2−1にした。
賀川:これは右サイドから攻めて田中美南が中央のペナルティエリア外にいた柴田へ速い横パスを送り、柴田が左へドリブルして左足のシュートを左隅に決めたもの。インターセプトされないようにスピードのあるパスを送った田中美南の判断と技術と、柴田のドリブルからシュートへの動作といい、パーフェクトだった。
――相手DFは人数はいたが、つぶせなかった。
賀川:柴田選手のシュートの構えへ持ってゆく速さと、スムースな動きとシュートそのもので勝負ありでした。
(続く)
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