ロンドンオリンピック 南アフリカ女子代表戦
なでしこジャパン 0-0(0-0)南アフリカ女子代表
◆控えに経験を積ませ主力は休養
――F組の最終試合は引分けでした
賀川:いろいろな話があったがともかく、1勝2分、勝点5、得失点差2でスウェーデンに次いでF組2位になった。
――F組3位は1勝1分1敗のカナダ、4位は南アフリカになりました。日本は2位でよかったのですか
賀川:この試合に控え選手を送って経験を積ませたこと。レギュラー組に休みが取れたこと。そして会場の移動がないことなど、最良の結果と言えるでしょう。
――GKに海堀あゆみ、DFがいつもの近賀、岩清水、熊谷に左は鮫島ではなく、矢野喬子が出場。MFは宮間と田中明日菜、そして高瀬愛美と岩渕真奈。田中と岩渕はすでに出場はしているが、ツートップに安藤梢と丸山桂里奈を持ってきた。丸山は故障後はじめての登場で、安藤は誰もが知っているベテランだが、この大会でスターティングラインナップははじめてだった。
賀川:控えのメンバーに大会の雰囲気やピッチの状態をプレーさせて肌で知ってもらうのは大切なこと。また試合の感覚をつかむためでもある。もちろん監督が実戦の場での彼女たちの調子を把握できたのは大きなことでしょう。
――賀川さんの目には?
賀川:丸山が相手ペナルティエリアのゴールライン付近でうまいターンをを見せた時には会場で歓声があがったでしょう。昨年のドイツ戦の得点者の回復も監督の目にはまずまずと映ったはずです。それぞれのプレーに特徴が出ていたから、彼女たちのファンも安心したのじゃないかな。僅かな時間しか出場のチャンスがなかった安藤が長い時間ピッチに立ったのは彼女のためにもチーム全体にもよかった。
――ノックアウト戦に入って、いよいよ総力戦ですからね。
賀川:これからの試合は、90分で終わらない場合もある。延長もあればPK戦もある。体力を消耗するだけでなくケガやカードのこともあって、18人の総力戦となる。98年ワールドカップで開催国フランスが優勝した時も、1次リーグ2勝で16強への進出が決まった時にフランスは第3戦でがらりとメンバーを替えた。このデンマーク戦にも勝ったがエミール・ジャケ監督は1次リーグ終了時で登録22人のうちGKの控え以外の20人すべてに出場経験を積ませた。
※賀川サッカーライブラリー
フランスが3戦3勝20人が大会の経験積む
◆移動なしで試合できるF組2位の魅力
賀川:優勝チームにはそういう周到さも必要な時代になっている。この第3戦はまた、各グループの順位が決定し、それによって準々決勝の組み合わせが決まる日でもある。
――順位が決まるのは、同じ組のもうひとつの試合の結果にもよりますね。
賀川:そう。監督さんはおそらく、まずF組2位になろうと考えたはずだ。
――というのは
賀川:F組2位は準々決勝(8月3日)でE組2位とカーディフで対戦する。
――同じ試合会場ですね
賀川:F組1位なら遠いグラスゴーまで動く。相手はG組2位でおそらくフランスです。フランスには大会前に手合わせして負けている。私はフランスにも欠点があって、アメリカほど強いとは思わないが、グラスゴーへの移動はずいぶん時間がかかる。それよりも居座った方がはるかに体は休まる。もしここで勝つと次の試合はロンドンで、カーディフからの移動もグラスゴーからよりはずっといい。
――まず会場の問題からですね。E組の順位は同じ日の英国-ふら汁戦で決まる。日本の試合が終わる時にはまだ決まっていない。
賀川:開催国イギリスと当たる場合もあるが、そうした相手のことよりまず自分たちがいいコンディションで試合できる方を優先したのでしょう。Fの2位になると言ってもスウェーデンとカナダの試合の結果はどうなるのか、カナダがもしスウェーデンに勝てば2勝1敗、日本が南アフリカに負ければ3位になってしまう。だから引分けがいいとなる。引分けと思っても何かのはずみで南アフリカのロングシュートが決まったりすることもある。だからそれをいつ決めて、いつ選手に伝えるかが難しいところでした。
――サッカーは何が起こるかわかりませんからね。
◆監督の苦心の判断
賀川:テレビを見ていたら後半5分ぐらいにチームは監督の近くに集まっているとアナウンサーが伝えた。その後ですぐ2-1だったスウェーデン-カナダが2-2となった。試合が再開されると、日本をボールをキープするだけで攻め込まなくなった。佐々木監督が0-0の引分けを指示したのだなと思いました。
――川澄が投入され、阪口が宮間と代わった。それぞれ点を取らないようにという意向を伝えたのだろうと想像しました
賀川:さあ、決定的なことでなく、ニュアンスを伝えたかもね。
――となると前半に得点がなかったのがよかったことになりますね
賀川:まあ、こういう試合の難しさはそこにありますね。監督にとっては本来の勝負でなく、引分けて2位にするという難しいテーマをともかくも成功したのはなかなかの仕事ですよ。
――メキシコ五輪の釜本さんたちの銅メダルも1次リーグは1勝のあと2引分でした。第2戦でブラジルはリードされたのを、準々決勝の相手が開催国のメキシコよりフランスを選んだ。幸いなことにその順位は前日に決まっていた。それでも当日のもうひとつの同じ組のブラジル-ナイジェリアの得点をにらみながら、まず無失点の引分けを考え、後半25分に引分けにしようと長沼監督は決断し、交代に送った湯口を通して「引分けに持ち込む」ことを全員に伝えたのだった。そしてフランスに快勝した後、ずーっとアステカに居座って試合できる条件に恵まれた。
――日本のシュートがポストを叩いて、長沼監督がヒヤリとしたという話も残っています。
賀川:湯口の指示が必ずしも全員に理解できなかったらしい。
――つまり引分け狙いと簡単に言ってもやさしいものではないということ
賀川:メダルへ勝ち上がっていくためにあらゆる条件を考え、最良の道をとるのが監督、コーチの仕事だが、こういう大会では、その時々に苦心するものですよ。
――もちろんテレビで深夜に見る人たちはゴールを奪うシーンを見たいし、その放送を計画した関係者ならなおさら点を取るために賢明にプレーする姿を見せたいでしょう。しかしこれもサッカーのひとつということでしょうか。
賀川:こういうのを面白いと思うか、好きじゃないかと言うかは見る人それぞれでしょうが、こうした監督と選手が自分で描いたプランを足場に次のブラジル戦でいい試合をしてくれることが何よりと思っています。
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なでしこには期待です。
投稿: 頭痛対処の★吉野 | 2012年8月 3日 (金) 23時41分