ロンドンオリンピック準決勝 フランス女子代表戦(後半)
賀川:前半を終わってフランスのシュートは8本(日本は1本)だったのが、後半中ごろには合計20本を超えた。そのうち7割はペナルティエリアの外からだったからあまり脅威ではなかった。
――シュートはうまいはずだが
賀川:ネシブをはじめ、いいキックを持っている選手は多いが、何と言っても女性だからね。それが少しずつペナルティエリアのなかでのシュートチャンスが出てきた。
――少しヤバいと?
賀川:それでも福元のファインセーブや選手たちの体を楯にするなどして防いでいた。
――とうとう後半23分に1点を取られました。
賀川:フランスがメンバーを代え、中盤でのプレッシングを強めたことも日本が奪ってもキープやカウンターにつながらず、すぐまた押し返されるようになった。
――相手のパスがペナルティエリア内でネシブに渡ってシュートされる場面もあった。うまいトラッピングで岩清水を交わしてシュートした。ボールは右ポスト際に飛んだが、福元が左手で止めた。
賀川:大野に代えて安藤を投入した直後に、こちらの左サイドでボールを奪われ、そこからのフランス右サイドの攻めで崩された。中央右寄りでボールを受けたデリが右へドリブルし、ペナルティエリア内へパスを送り、トミがペナルティエリア右の根っこより内側で取って、中へ速いクロスを送り、ルソメル(56分にティネと交代)が強いシュートを決めた。その前にトミの長いドリブルで日本の守備網が破られたのが響いたかもしれない。日本選手たちの足は止まり、ボールをはじき返すのがやっとという状態になっていた時だった。
――その2分後にPKを取られた。
賀川:左サイドからペナルティエリアにドリブルで入ってくるルソメルを止めようとして阪口が体を止めてしまった。誰もが2-2だと思っただろうが、PKのキッカー、ブサグリアのキックは右ポストをかすめて外れてしまった。
――何か問題が?
賀川:右足のサイドキックで右ポスト近くを狙う。そのキックに入ってゆく角度としてはちょっと浅かったかな。福元の読みが外れて左へ動いているのだからポスト一杯を狙わなくてもよかったのだが、そこへ蹴るには角度が浅く、したがって足首を強く使いすぎたかもね。
――メキシコと似てきました
賀川:68年の釜本邦茂たちの銅メダルは2-0のリードの後押しまくられて後半にPKを取られた。1点をとられたらガタガタと崩れそうな時だったが、GK横山謙三がコースを読んで防いだ。キッカーの方が重圧でキックを失敗したのですよ。
――そのことをテレビの前でも
賀川:これはこちらのツキかな…と思ったよ
――その後もフランスは攻めました
賀川:ああいうことがあると、ガクンと来るものだが、フランスも頑張った。しかし勢いは少し落ちた。ここであの大儀見のドリブルシュートが決まっていれば文句なしの3-1だがね。
――まあそれではフランスに残酷すぎるかもしれません
賀川:アディショナルタイムにネシブのエリア左外からのシュートを福元がしっかりキャッチし、笛の直前にあった危険な場面も福元が防いで1点差を守った。
――サッカーの聖地ウェンブリーでの歴史に、女子のすばらしい記録と記憶を加えました
賀川:サッカーは体力や技術、頭脳とハートの戦いということを両チームが見せました。その双方の努力に対して、今回はサッカーの神様が日本に勝ちをプレゼントしてくれたのかもしれない。
――もうひとつの準決勝も大激戦でアメリカが延長で4-3でカナダを破りました。
賀川:そのアメリカと戦うために、まずは選手たちはゆっくり休んで調子を整えてほしいですね。
ヨーロッパへ来てから強敵フランスと対戦したのをはじめ、ここまでの準備のひとつひとつが生きている。それを積み重ねるために努力した関係者、バックアップしたスポンサー、選手を後押ししたサポーターたち、このチームを支えてくれたすべての人たちと自分たちのためにいい試合をしてほしい。そうすれば、神様ももう一度微笑んでくださるかも知れません。
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