ロンドンオリンピック エジプト代表戦
2012/08/06(月)
U-23日本代表 3-0(1-0) U-23エジプト代表
◆スペインでもエジプトでも同じ挑戦者として戦いベスト4に
――永井がすばらしいゴールを決めて1-0とリード。その彼が足を痛めて去るといういう波乱のスタートとなったが、3-0でエジプトを破ってベスト4へ進みました。
賀川:なでしこのブラジル戦とはまた違った難しい試合でもあったが、日本は自分たちのプレーを続けて勝ちました。退場者が出て10人となったエジプトがあきらめずに後半も攻めたので、緊張感のあるいい試合でしたよ。私には、というより日本のサポーターには永井の負傷が気がかりです。
――ゴールは清武が相手ボールを奪ってすぐに出した見事なパスからでした。
賀川:前半14分だった。清武と永井の呼吸は見事に合っていて、飛び出したゴールキーパーの前で永井がワンバウンドのボールを胸に当てて前へ走り抜け、右へ流れて無人のゴールへボールを流し込んだ。その時飛び出したゴールキーパーと永井を追ったDFが衝突して2人は倒れたままだった。永井もシュートした直後に戻ってきた大型の選手に後ろからぶつかられて倒れた。起きてゴールを喜んでからまた倒れた。太ももに相手の足が当たった打撲という話だったが、相手の大きさや重量を考えると心配ですよ。ここのところ、体が強くなってきた永井であってもね。
――エジプトは相当激しいプレーも多かった。それが10人になる原因になったかも。
賀川:この1点目の清武のボール奪取にあるとおり、U-23は相手がスペインでもモロッコでもエジプトでも、まず守備をしっかりする。FWは相手DFのボールを奪いに行くというやり方を続けてきた。オーバーエイジの吉田と徳永が入って守りの安定を図った監督は、それまでの実績をもとに体の強い戦えるプレーヤーを選び、オリンピック本番では前から相手ボールを奪取に行く攻撃的守備を徹底した。
――初戦のスペイン戦でそれが成功した。
賀川:相手が変わってもこのやり方を変えずに続けたから、全員にそれが浸透した。
――前から奪いに行く労力には感心しますね。清武のようなテクニシャンタイプはこういうことは好きでないものもいるが…
賀川:ドリブルやパスのうまい彼が奪うことにも面白みや工夫のあることを知った。とすれば、本人にも大きなプラスですよ。現代のサッカーは攻撃も守備もできるのがトップクラスのプレーヤーの条件です。
――少し前はセレッソの森島寛晃が目立っていました。
賀川:ヨーロッパでは80年代からそういう傾向が出ていた。マルコ・ファンバステンがACミランにいたときに話を聞いたら「ライカールトはすごい。攻めも守りもできるから」と言っていた。当時のストライカー第1人者のファンバステンがそういうのですよ。またフランス代表のアラン・ジレスも「相手のボールを奪う能力のあるジャン・ティガナを同じMFとして尊敬している」と言っていましたよ。
――ボールを奪うという地味な仕事を重要だと華やかなプレイメーカーやストライカーたちも80年代から感じていた。
賀川:これはいまのサッカーの常識だが、このためには体力が必要となる。また逆の見方をすれば、取った後、取り返しにくる相手をかわす技術もすぐに相手にパスする技術も、ドリブルもより高いものを身につけなければならなくなっている。
――柔道でも返し技、そのまた返し技がこの大会で目立ちました。
賀川:だから視野の広いキックの正確なプレイメーカーである清武が奪えるようになれば、一気に攻めに転じてゴールを生むことになる。
――その前からのプレッシングでも足の速い永井の存在はとても大きい。ボールを持つ相手に寄せる速さがすごいからディフェンダーやゴールキーパーでも処理にもたつくと危険になる。
賀川:彼がいるといないとでは攻守に大きく影響するがこの日は永井の後に斉藤を投入し、やはりプレッシングを続けた。その斉藤の裏への走り込みから相手のファウルがあり退場者が出た。前半41分だった。
――清武が奪って高く上がったボールをダイレクトで東に渡す。東はこれをすぐにDFラインの裏へ流し込んだ。奪ってから2人ともワンタッチのパスだった。このボールを斉藤がペナルティエリアで取る直前にエジプトのサードが斉藤を背後から押し倒した。
賀川:後半10人で戦ったエジプトは攻めようとしたが、シュートは1本だけ。数の上でも優位に立っている日本だが、あくまで慎重。東に代えて酒井高徳、清武に代えて宇佐美も投入して次に備えるところも挑戦の姿勢を崩さないU-23らしい試合ぶりだった。
――男女ともに次はウェンブリーです。
賀川:U-23はすでにグラスゴーのハムデンパークやニューカッスルのセントジェームスパークといったスコットランドサッカーの故郷やイングランド東北の要所、そして中部のコベントリーで戦い、4試合目で世界的人気クラブで香川真司の新しいホームの芝を踏んだ。移動続きで大変だがその中で無失点の記録を続け、ベスト4までやってきた。いわば日本サッカーの先輩たちの多くが夢見た総本家での巡礼を成功させた最高の果報者の集団といえる。彼らがその喜びをさらに大きくするためにまず聖地での1勝を記録してほしい。さすれば、次の扉は自ら開くことになる。
◆スペインでもエジプトでも同じ挑戦者として戦いベスト4に
――永井がすばらしいゴールを決めて1-0とリード。その彼が足を痛めて去るといういう波乱のスタートとなったが、3-0でエジプトを破ってベスト4へ進みました。
賀川:なでしこのブラジル戦とはまた違った難しい試合でもあったが、日本は自分たちのプレーを続けて勝ちました。退場者が出て10人となったエジプトがあきらめずに後半も攻めたので、緊張感のあるいい試合でしたよ。私には、というより日本のサポーターには永井の負傷が気がかりです。
――ゴールは清武が相手ボールを奪ってすぐに出した見事なパスからでした。
賀川:前半14分だった。清武と永井の呼吸は見事に合っていて、飛び出したゴールキーパーの前で永井がワンバウンドのボールを胸に当てて前へ走り抜け、右へ流れて無人のゴールへボールを流し込んだ。その時飛び出したゴールキーパーと永井を追ったDFが衝突して2人は倒れたままだった。永井もシュートした直後に戻ってきた大型の選手に後ろからぶつかられて倒れた。起きてゴールを喜んでからまた倒れた。太ももに相手の足が当たった打撲という話だったが、相手の大きさや重量を考えると心配ですよ。ここのところ、体が強くなってきた永井であってもね。
――エジプトは相当激しいプレーも多かった。それが10人になる原因になったかも。
賀川:この1点目の清武のボール奪取にあるとおり、U-23は相手がスペインでもモロッコでもエジプトでも、まず守備をしっかりする。FWは相手DFのボールを奪いに行くというやり方を続けてきた。オーバーエイジの吉田と徳永が入って守りの安定を図った監督は、それまでの実績をもとに体の強い戦えるプレーヤーを選び、オリンピック本番では前から相手ボールを奪取に行く攻撃的守備を徹底した。
――初戦のスペイン戦でそれが成功した。
賀川:相手が変わってもこのやり方を変えずに続けたから、全員にそれが浸透した。
――前から奪いに行く労力には感心しますね。清武のようなテクニシャンタイプはこういうことは好きでないものもいるが…
賀川:ドリブルやパスのうまい彼が奪うことにも面白みや工夫のあることを知った。とすれば、本人にも大きなプラスですよ。現代のサッカーは攻撃も守備もできるのがトップクラスのプレーヤーの条件です。
――少し前はセレッソの森島寛晃が目立っていました。
賀川:ヨーロッパでは80年代からそういう傾向が出ていた。マルコ・ファンバステンがACミランにいたときに話を聞いたら「ライカールトはすごい。攻めも守りもできるから」と言っていた。当時のストライカー第1人者のファンバステンがそういうのですよ。またフランス代表のアラン・ジレスも「相手のボールを奪う能力のあるジャン・ティガナを同じMFとして尊敬している」と言っていましたよ。
――ボールを奪うという地味な仕事を重要だと華やかなプレイメーカーやストライカーたちも80年代から感じていた。
賀川:これはいまのサッカーの常識だが、このためには体力が必要となる。また逆の見方をすれば、取った後、取り返しにくる相手をかわす技術もすぐに相手にパスする技術も、ドリブルもより高いものを身につけなければならなくなっている。
――柔道でも返し技、そのまた返し技がこの大会で目立ちました。
賀川:だから視野の広いキックの正確なプレイメーカーである清武が奪えるようになれば、一気に攻めに転じてゴールを生むことになる。
――その前からのプレッシングでも足の速い永井の存在はとても大きい。ボールを持つ相手に寄せる速さがすごいからディフェンダーやゴールキーパーでも処理にもたつくと危険になる。
賀川:彼がいるといないとでは攻守に大きく影響するがこの日は永井の後に斉藤を投入し、やはりプレッシングを続けた。その斉藤の裏への走り込みから相手のファウルがあり退場者が出た。前半41分だった。
――清武が奪って高く上がったボールをダイレクトで東に渡す。東はこれをすぐにDFラインの裏へ流し込んだ。奪ってから2人ともワンタッチのパスだった。このボールを斉藤がペナルティエリアで取る直前にエジプトのサードが斉藤を背後から押し倒した。
賀川:後半10人で戦ったエジプトは攻めようとしたが、シュートは1本だけ。数の上でも優位に立っている日本だが、あくまで慎重。東に代えて酒井高徳、清武に代えて宇佐美も投入して次に備えるところも挑戦の姿勢を崩さないU-23らしい試合ぶりだった。
――男女ともに次はウェンブリーです。
賀川:U-23はすでにグラスゴーのハムデンパークやニューカッスルのセントジェームスパークといったスコットランドサッカーの故郷やイングランド東北の要所、そして中部のコベントリーで戦い、4試合目で世界的人気クラブで香川真司の新しいホームの芝を踏んだ。移動続きで大変だがその中で無失点の記録を続け、ベスト4までやってきた。いわば日本サッカーの先輩たちの多くが夢見た総本家での巡礼を成功させた最高の果報者の集団といえる。彼らがその喜びをさらに大きくするためにまず聖地での1勝を記録してほしい。さすれば、次の扉は自ら開くことになる。
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