ロンドンオリンピック スペイン代表戦(前半)
U-23日本代表 1-0(1-0)スペイン代表
――すごい試合でした。U-23日本やりましたね。スペインに1-0。
賀川:選手と監督で考え、実行したゲーム運び通りになりましたね。これも日本でのキリンチャレンジカップにはじまった準備試合、英国に来てからの 対ベラルーシ、対メキシコと実にいい相手と戦った。第3試合のラストで力が上のメキシコを相手に2-1で勝つことができた。監督も選手も一体となって戦えばどことやっても負けないぞという気になっていたでしょう。
――NHKの試合直前にも山本昌邦さんが選手の気構えが顔にあらわれていると言い、相手チームの選手個々についての特徴も細かく説明し、強い相手 だがゆけますよ、という話でした。
賀川:山本さんが相手のことに詳しいということは日本代表チームのスタッフも十分に相手の研究を積んでいるということですよ。事前の偵察はこちらの方が進んでいたはずです。
――はじまってすぐニヤリとしていた
賀川:中盤で相手とのボールの奪い合いに勝って、左へ大きく振って、永井がボレーシュートした。シュートはうまくヒットできずにGKの正面にころ がったが、シュートはともかくボールの取り方がよかったからね。
――それでも5分にペナルティエリア左角の外からスペインのシュートがあった。
賀川:ああ、右ポストの外へ出た。やっぱりボールを止め、味方に渡す技術はしっかりしている。ディフェンスラインの外からのシュートだけでなくエリア内へのスルーパスも出始めた。うまいなあとは思ったが、日本の嫌いなロングボール攻撃でなく組織攻撃だから日本も対応できそうだった。なんといってもシャビやイニエスタがいるわけじゃないからね。
――そういう攻めに対する守りの安定が見られるうちにチャンスもあった
賀川:メキシコ戦で相手のミスもあって相手陣内のエリア近くでボールを奪って右へまわし、そのクロスを東が決めたでしょう。
――あれで高い位置からのプレッシングの効果を肌で感じた
賀川:どこの国の代表であっても深い位置でプレスにこられるといい気はしない。その効果はわかっているが、体力的にきついからプレッシングはもう少し後方からになっている。それをこの日はペナルティエリアにまでプレッシングに行った。
――スペインのサッカーはクライフのオランダ流でDF間のパスのやりとりもありますからね。
賀川:そこへプレスにゆく。永井の速さにまず相手は驚いたに違いない。
――永井は6月のグランパスの試合でも走り回る、という感じだった。
賀川:速いだけという感じから体が強くなって相手との接触プレーにも強くなってきた。
――縦の速さを攻撃に活かそうということだったが、その速さは守りにも効果があった?
賀川:そう、高い位置のプレスというのは守備的攻撃というのか、攻撃的守備というのか、奪った位置によって、すぐチャンスになるからね。永井自身もその面白さに気づいたのだろうね。
――ボールキープはスペインだが、シュートの数は日本という感じだった。
賀川:25分ごろにマタの左足シュートを権野がセービングでCKに逃げたのがあった。いいシュートだがマタの蹴るところも権野から見えていたから大ピンチというほどでもなかった。その前と2度のカウンターで永井が1本は左から、2本目は右からとチャンスを作った。前者は左からのクロスを防がれ、後者はエリア内で切り返しでかわそうとしたのを奪われた。
――ノーマークのチャンスのつくり方としては日本の方がうまいようにみえた。
賀川:ここまでくるとフィニッシャーとしての技術や経験がポイントになる。これまでは永井はフルタイムで使われていなかったでしょう。秘密兵器的存在で、後半になって相手が疲れた時にスピードで威力を見せようという程度でストライカーとしてのシュートの形や反転、スワーブあるいはスクリーニングやドリブルといった訓練をどれだけ積んでいたかということでしょうね。
――速いということが万能薬みたいになっていましたからね。
賀川:速さはすごい才能のひとつ。その速さで重大な場面に顔を出したとき、そこで何をするのか、何度できるのか、そのために本人の身にどの技術をつけるかが大切なのでしょう。
――グランパスでは点を取りました。
賀川:そのフィニッシュの力がこのオリンピックで通じるかどうか、この日は目一杯に動いたから、この後もたくさんのチャンスがありながら彼は無得点に終わった。
――視察したザッケローニさんがもう1、2点取ればと言ったと新聞にのっていた
賀川:誰もがそう思うでしょうし、そのことは彼が一番身にしみているはず。自分で上手になってゆきますよ。いや、大会中にもっと点をとるようになる可能性もある。ひとつ何かをつかみさえすればね。なにしろ彼ほど速くて強い選手は世界にもそういないのです。
――相手のパス攻撃も上手だが、日本のカウンターも効果ありそうとテレビの前で私たちが希望を持ちはじめたときに、右CKから待望のゴールが生まれた。CKはカウンターの産物でした。
賀川:33分にスペインが右サイドの深いところからファーポスト側へ高いクロスを送った。酒井が相手と競って再び高く上がった。落下したボールをスペインはオーバーヘッドでシュートを試みたがゴールへは飛ばずにエリア内の左へ落ちてきた。
(1)このボールを徳永があわてずに落ち着いて前方の清武へパスしたところからカウンターの攻撃がはじまった
(2)清武がヘディングで前へ送る(ヘディングした後、突き飛ばされて倒れる)
(3)それを東がとってドリブルで右斜めに進み
(4)ペナルティエリア15メートルのところから右へ振り
(5)リターンパスをもらって右からクロスを蹴り、相手に当たって右CKとなったのですよ。
――DFからボカーンと蹴るのではなく、徳永がパスをつないだのが、まずひとつのポイント。それをうしろへ戻すことなく前方へ運んでいった。
賀川:3人いた相手のDFは永井の突破が怖いものだから、ボールを奪いにこないで後退した。だから東が深いところでクロスを蹴ることになり、コーナーキックとなった。
――キッカーは扇原でした。
賀川:オーバーエイジの徳永がベテランの落ち着きでカウンターのチャンスをつくったのだが、このCKにはもう一人のオーバーエイジの吉田の長身が効果があった。
――扇原の左足のキックはゴール正面に落ちてきた
賀川:吉田の動きにDFが引き寄せられ、ポカリと空いたスペースにボールが落下し、そこへ大津が走り込んできた。DFとの絡み合いを振り切ってのダッシュで足下に来たボールを押し込んだという感じだった。GKも飛び出せなくて大津のシュートに足を出したが防げなかった。
――大津はアジア予選でも大事なところで得点してきた。ドイツでは試合に出る回数は少ないのに、それでもフィジカルの強いところでの接触プレーにに強さが出たのですかね
賀川:なにより、ゴールへの意欲が強いという印象ですね。これで試合は一気に有利になった。
――そして40分のカウンター攻撃で永井の突破をファウルで止めたマルティネスが退場になってスペインは10人になってしまった。
続く
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