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ドイツサッカーの力と精密 バルサ・スペイン流とは別の流儀の進化

2012/06/21(木)

――Bグループでドイツとポルトガルが1、2位となり、オランダとデンマークが敗退しました。強豪が集まり「死のグループ」などと言われたが、オランダは残念ですよ。

賀川:2010年ワールドカップの準優勝国ですからね。デンマークとの初戦を0-1で失ったのが痛い。こういう短期決戦では初戦が重要ですからね。

――ファンペルシーもロッベンも、スナイデルもいたのに、そのオランダを第2戦で破ったドイツはいいようですね。

賀川:そのオランダを相手に2ゴールを奪ったのがゴメス。189センチの長身ストライカーで、彼は対ポルトガルでも右からのクロスにあわせてヘディングを決めた。

――右からの攻めで、ボールが外へ動き、エジルがクロスを送ったのがDFにあたってボールが伸びてCDFペペの背後を狙っていたゴメスの上に来た。

賀川:ゴールエリアの外からだったが、ゴメスのヘディングシュートは右上隅へ飛んで、GKは防げなかった。右から攻め込んでから相手の抵抗にあって、いったん後ろの内側へ戻し、シュバインスタイガーがボールを取った。彼はひと呼吸置いて右外のエジルに渡し、エジルがダイレクトで強いクロスを送った。ゴメスという長身のストライカーに合わせることは当然ポルトガルのDFたちも読んでいたはずだが、ボールがDFの体に触れてちょっと高さが変わってゴメスのところへ飛んだ。

--エジルがダイレクトで蹴ったのがポイント?

賀川:それも強い球をね。クロスを防ぐには、そのキッカーに近いDFがコースに入ること、そして落下点で相手にヘディングさせないことだが、エジルが止めないで蹴ったためにコースに体を持ってゆく間もなくボールが来て体をかすめ、ボールのコースが変わったようにみえた。

--ポルトガルはついてなかった

賀川:クロスがはコースとともにキックのタイミングも大切ということでしょう。86年のワールドカップのフランス対ブラジルで右からのフランスのクロスがブラジルのCDFの体に当たって方向が変わってゴール前に流れ、プラティニが決めたゴールがあった。

--ああ、ブラジルがPKで負けた試合、ジーコもソクラテスもいた。

賀川:次のオランダ戦の2ゴールもパスのタイミングということで、ドイツの連係プレーのうまさに感心した。

--というと。

賀川:2ゴールとも右サイドから攻め込み、シュバインスタイガーがペナルティエリアの10〜15メートルあたりからエリアいっぱい、ゴメスにパスを送った。
(1)右タッチ際からミューラーが中へドリブルして
(2)ゴール正面25メートルあたりにいたシュバインスタイガーにパスを送り自分はそのまま中へ走り込む
(3)シュバインスタイガーの前方はゴールまで広く開いていた。彼はノーマークでボールを止め、右足のインサイドキックで自分の右斜め前方にいるゴメスにパスした
(4)DFの2人の間、ペナルティエリアいっぱいでボールを受けてゴメスは反転して右足でシュートした。
(5)オランダ側のDFはオフサイドトラップをかけそこなったのか、シュバインスタイガーのシュートと感じたのか…

--ゴメスはノーマークでシュートしましたね

賀川:名前のとおり、スペイン人の父とドイツ人の母との間に生まれたこのCFはバイエルンミュンヘンでは得点を重ねているが、代表ではもう一つのびないと言われていた。ベテランのクローゼと比較されるからね。彼はこれで自信をつけただろう。仲間の信頼も深まっただろう。

--シュバインスタイガーとは同じチームですね。

賀川:この日の先発の7人がバイエルンミュンヘンですよ。2点目は右サイドにゴールキーパーからロングボールが飛んで、ミュラーが競り合い前方へ落ちたのをゴメスがタッチ近くで拾ったところからです。
(1)ボール落下点で相手を背にしてボールを止めたゴメスは
(2)タッチライン際、後方にいるエジルにバックパスした
(3)エジルがボールを後方へ動かす間に
(4)ゴメスは内へ走り込み、マーク相手を置き去りにする
(5)エジルが左足で内側15メートル(ゴールラインから25メートル)にいるシュバインスタイガーにパスを送った
(6)シュバインスタイガーは今度はダイレクトでゴメスの前へパスを流し込む
(7)ゴメスは内側からつめてくるヴィレムスより早く右足でシュートをファーポストいっぱいに決めた。

--シュバインスタイガーのダイレクトのサイドキックの正確さですか

賀川:2ゴールともシュバインスタイガーのラストパスだが、この2本のパスを出す時の局面をスロービデオで見るとパスの丁寧なのが見えますよ。頑丈な体で動きの量もすごい。いわばがんばるドイツの代表格のタイプに見えるこの選手のこういう時のプレーやポジションどりの巧みさを見ると、ドイツサッカーのもうひとつの精密さ、技術を大切にするところが見えてきます。

--その意味、今年のドイツは期待できる。

賀川:ドイツ人の特徴である大きさ(190センチ級がチームの半数)とともに、バルサ、スペイン流と違ったサッカーを追求するドイツのこの後が楽しみです。もちろんスペインもイタリアも、そしてクリスチャーノ・ロナウドが調子を取り戻してくれるだろうし、イングランドはルーニーが戻ってくる…と考えれば、ますます楽しいですね、EURO2012は。

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