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2014FIFAワールドカップブラジル アジア最終予選 オーストラリア代表戦 上

2012/06/15(金)

2014FIFAワールドカップブラジル アジア最終予選
日本代表 1-1(0-0) オーストラリア代表

◆アウェーでの1-1 いろいろな条件のもとでの勝ち点1は成功

――オマーン戦、ヨルダン戦とは全く違った相手との試合で、オーストラリアに退場者が出て有利になったと思うとPKをとられ、試合が終わるころにはどちらも10人になった。テレビ観戦も疲れましたね。

賀川:試合前のセレモニーを画面で見ながらたくさんの観衆がSOCCERROO(サッカールー)の文字の入ったマフラーを掲げて声援しているのを見 ながら、オーストラリアにもサッカーが根付いているのだなあ、などと感慨もあったがキックオフ直後からの彼らのロングボール攻撃と激しいプレッシングで見 る方も戦闘ムードになってしまった。

――凸凹のピッチやアウェーの雰囲気だけでなく、レフェリーの判断が試合の流れに大きく影響したのもこれまでとは違っていました。

賀川:レフェリーに関してはこの競技ではその裁定が最終のものとなっていて、両チームともそれぞれ不満・不服はあっても、それに従った。当然と言い ながら、まずはよかったと思う。現地で取材したベテラン記者の大住良之さんの話では、主審はずいぶん太っているように見えたそうです。経験のあるレフェ リーだが、運動量や速さがこれまでと違ったかも。

――ふーむ。ビデオで調べてみようかな。それにしてもオーストラリアは徹底的にロングボールできましたね。

賀川:第1に彼らの長所、フィジカルの強さを活かしリバウンドを含む空中戦で優位に立とうとしたのでしょう。第2に中盤でボールをつないでということになると日本特有のプレッシングを受けてボールを失う懸念もある。したがって中盤を省略した方が得策だと見たはずですよ。

――そこで第3列、あるいは第2列の深いところからでも高い、長いゴールを送りこんできた。いまどき流行らないさっかーじゃないですか。

賀川:プロフェッショナルになって技術レベルがアップすると、見て面白いサッカーとは何かを工夫し、見事なパスの展開を楽しませるチームも出てく る。技術的、芸術的そして戦闘的という言い方の当てはまるチームも出てくるが、一方では「パワフル」で売るところもある。ワールドカップの予選は、まず勝 つことだから、オーストラリアが自分たちの長所を全面的に押し出すのにロングボールを使うのはおかしいことではない。日本代表もザッケローニ監督も当然そ の対応を考えていたはずですよ。

――しかし前半はじめは押し込まれ、危ない場面もあった。

賀川:体と体のぶつかることもある。接触プレーの多いサッカーではその相手の体の強さ、重さ、粘り強さなどはまず現実に当たってみてわかるもの。頭で前もって理解していたつもりでも実際となるとね。

――ケーヒルはすごかったですね。

賀川:彼はその前のオマーン戦には出なかったそうだ。暑い土地での消耗を避けて、涼しい母国での大一番に備えたのだろう。

――なるほど。それで日本側はすこしたじたじとなった。

賀川:ケーヒルは2006年にも日本からゴールを奪っている。上背はそれほどでもないが、ガッチリしていてジャンプ力もあって、高いボールにも強い。強いだけでなく、その空中のボールに対する駆け引きも狡猾でもある。しかも足のシュートもうまいからね。

――15分までに相手のシュート6本、こちらは本田のシュートが2本、16分にはこちらのゴール前で「やられたか」という場面も。

賀川:内田と栗原がゴールカバーし、栗原が倒れたままボールを蹴りだした。ヒヤリとしたね。その後、日本もキープし攻勢に出ることもあって互角の形 となった。MFのベテラン、ブレシアーノという選手が故障でミリガンに代わったのは相手側には誤算だったかな。日本は自分たちのペースでボールを動かせる ようになりはしたが、相手のプレッシングはしっかりしていた。

――ファウルをともなう激しいタックルもあったが…

賀川:深い鋭いスライディングタックルをしてきたね。内田のノーマークのシュートチャンスもスライディングで防がれた。日本代表はこの6月シリー ズでサイドからの攻めを習熟するかと期待したが、この試合では少なかったね。ひとつには第1、2戦ほどには長友、内田を前に出せなかったかもしれ ない。

――あるいは出さなかったのかも…

◆日本代表の進化は続く


賀川:それでもこちらの1点は右CKをショートコーナーにして本田が右からエリア内に侵入し、ニアポスト近くからのクロスを入れて、ファーポストの栗原が決めた。サイド攻めの一つで本田のアイデア、その本田からボールを受け、本田へもう一度戻した長谷部のうまさなどが重なった。

――相手のゴールキーパーはそう簡単に崩せない名手ですが、ゴールラインに沿ってドリブルする本田に対しては難しい守りとなった。

賀川:これまでも語っている通りパスで崩してゴールを奪うやり方のなかで、昔も今も変わらないものに、ペナルティエリア周辺あるいはエリア内に入ってからのラストパスがある。そのなかでもエリアのラインとゴールラインの交わるところ…私はエリアラインの根っこと呼んでいるが、そこへ持ち込んでからのパスが効果ありとされてきた。

――というと

賀川:ゴールライン近く、それもペナルティエリアぎりぎりだから、相手の守りの目はそこに注がれる。

――いつも言う、外に目がいく

賀川:だからゴール前にいる攻撃側はボールに目を注いでいる守備者の視野から消えやすい。いったん消えてニアサイドに現れると効果は大きい。あるいは、またファーポスト側にいても、相手はニアポスト側を見ていて見えなくなっている。

――ただし、攻撃側も工夫をしないと、エリア内にいる守備陣にパスがひっかかってしまう。

賀川:したがって、エリアの根っこに持ち込んだときは、
(1)斜め後方へのパスをして仲間にシュートさせる
(2)フワリと浮かせたクロスをファーポストへ上げてヘディングを打たせる
(3)ゴールラインと平行に強い球を送りこみ、ワンタッチでのゴールを狙う。
というのが、ここへはいってきたものの常識というのか、基本的なパスコースとなっている

――なるほど

賀川:こういうサイドからの攻めの常識は、1930年代もいまもあまり変わっていない。もちろんディフェンダーの能力、ボールテクニックや身のこなし、組織での守り方など進化はしている。攻める側の技術も高くなっているはずだが、いまでもこの3つのコースをきちんと蹴れない場面をよく見ますよ。

――本田選手はその平行の短くて速いパスを選んだ?

賀川:それも、うんとニアポストに接近するということで相手の意表をついた。だから速いグラウンダーは相手DFの足の間を通り、GKも手で止めることができなかった。このペナルティエリア内に入ってからのパスの効果について、NHKの解説者で元日本代表のコーチをしていた山本昌邦さんが折に触れて言っているはずです。パス(クロス)の距離が短いために守る側は対応しにくい(遠くからのクロスであればそれだけ時間があって守る側も対応しやすい)とね。

――その意味で、本田圭佑はサイドからの攻めについて自らのアイデアを表現した

賀川:本田の右CK、ショートコーナーからの攻めの棋譜のひとつとなるでしょう。香川真司は6月シリーズの第1戦で左のエリア根っこに入って来て、斜め後方へのパスとフワリのクロスを見せた。フワリの方は本田のヘッドの後、岡崎のゴールになったのはご存じのとおり。彼は不得手なはずの左足でこれをやっている。(本田のこの試合も右足サイドキックだった)

余談だが、こういうところで原則的、あるいは常識的であっても、そのうちのコースをその時々に応じて選択でき成功させる選手がヨーロッパで評価されるということになるのでしょう。

続く

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