2014FIFAワールドカップブラジル アジア最終予選 オマーン代表戦
2014FIFAワールドカップブラジル アジア最終予選
日本代表 3-0(1-0) オマーン代表
――すばらしい試合でした。3-0
賀川:本番の6月シリーズの3試合をひかえた5月23日のキリンチャレンジカップ 対アゼルバイジャン戦でザッケローニ監督は選手のテストをした。長いケガの後(ロシアではリーグ戦に出ていたが)日本代表に久しぶりに復帰した本田圭佑の体調が回復していただけでなく、彼特有の進化を止めていなかったことにザックさんだけでなく、日本中が安心した
――本田のメドが立ったからザックさんはやりやすくなったでしょう。
賀川:この試合から本番第1戦までに10日というこれまでにない長い期間、合同合宿ができた。だからベストメンバーでの攻撃のパターンの反復練習もできたはずです。
――それが先制ゴールを生んだ左サイドのパス攻撃ですね。
賀川:右から攻め込んで防がれた後、今野がハーフウェイライン近くの左よりでボールをとり、そこから前田-香川-前田-長友とつながって、長友がゴールライン近くから中へクロスを送り、本田が左足ボレーで決めた。サイドを崩すパスの見本のようだった。
――試合を見ながら前田と香川のパス交換があったのがよい…と言っていましたね
賀川:ワンタッチの早いテンポのなかで、タテへ出すだけでなく、内へ(横へ)入れてそこで一呼吸、間(ま)を置いたのは、こういう早いテンポでボールを動かしながらタイミングをずらせる間を稼げるチームになったのか…と、とてもうれしかった。
――パスのテンポや間という点についての詳しい話は後に譲るとしてチーム全体の動きはよかったのですか?
賀川:とてもよかった。まだベストの調子でない選手もいたが、攻撃の核の本田が安定し、香川がドルトムントでの働きぶりそのままの好調だったね。いわば攻撃の2本の柱が実力を出し、前田が日ごろJでやっているとおりの前で張るプレーをしたからボールはスムースに動いた。
――岡崎は?
賀川:前半はいささか気合いが入りすぎたというシーンもあったが、パスの出し方などもうまくなっていた。ゴール前の大事なところへちゃんと詰めてところは相変わらずえらいものですよ。オマーンのゴールキーパーのような高い守備力を持つ相手にはボレーシュートのようにタイミングのつかみにくいプレーそしてリバウンドに反応するFWなどが大切になるんですよ。
――DF陣は?
賀川:左の長友の実力には驚きのほかはない。右の内田は相手のファウルに気を悪くしていた。交代で出た酒井は勢いはあったが、クロスのミスがあったね。中央の守りは吉田、今野ともにまずまずだった。吉田は高さの面でも力を出していた。
――ザックさんはサイドの攻めにこだわった?
賀川:相手は後退して厚い守りをひくことを予測し、サイドから崩すことを考えたのでしょうね。当然のことですよ。昔から攻めはサイドからだった。かつてのウイングプレーヤーのような特殊技能を持つサイドのアタッカーが少なくなっている(世界的にも)が、グループのボールキープパス交換でサイドを崩し、そこからチャンスボールを送るのが近頃のやり方になっている。今回は相当それに力を入れたのでしょう。
――前田が2点目、3点目は前田のシュートのこぼれ球を岡崎が決めた。香川のゴールはなかった。
賀川:前田がゴールし、3得点すべてにからんだという結果は、彼のためにもチームのためにもうれしいことですよ。長いこと国内で実績を重ねストライカーとしてのゴール数も多いのにちょっと地味な感じだったのが、本田、香川といったいい仲間との協調動作で結果を出したのだから…なんでもできるけれど、国際舞台ではどこか物足りないと思っている人たちにも彼の良さを示した試合だったね。
――で、香川は
賀川:点を自分で決めるシーンはなかったが、この日の香川を見て、私はつくづくサッカーを長く見てきてよかったと思った。ヤンマーやセレッソでメキシコ五輪得点王の釜本邦茂、そして小柄で試合の流れを変える森島寛晃たちの若いころから、引退までを見た。そして、いままた香川がぐんぐん伸びて欧州のトップチームで注目されるプレーヤーになるのを見続けている。試合中そう思ったらうれしくて一人で笑みがこみ上げて来ましたよ。
2点目の前田へ送ったパスは自分のドリブルの進路で、ドリブルシュートのコースでもあったのだが、相手にその意識を持たせておいてパスを送り、突如としてそのコースへ出てきた前田に通した。パスは低いライナーで、エリア内にいる相手のDFがスライディングしても取れない高さで、前田の足のところでちゃんと足元へ落ちたね。
そういう技術の丁寧さと周囲の情勢を把握する力がどんどん高くなっているのがすばらしい。相手ゴールに背を向けているときにも見えているという感じにみえる。マラドーナの若いころを思ったね。
――ターンがよいとか。
賀川:もともと小さなターンはうまいので、右へも左へも反転する。中盤からゴール前のプレーヤーではあの98年大会優勝のフランスのジダンのピボットターンが有名。彼のは足の裏を使うのだが、香川はそうではなく、抱え込むやり方でしかもジダンのように小さな反転でターンするところがすごい。
――そういえば相手の3人が置き去りにされましたね
賀川:まあ、3点目の前に左サイドで香川と長友がドリブルで突破するのかキープするのか、相手を困惑させた後で中央へボールを送った場面があった。それを見ながら日本サッカーもここまで来たかと思いました。
――第2戦も期待できる
賀川:サッカーは相手あってのもの。今度はオマーンよりも強いらしい。また日本を研究し、本田や香川対策も考えてくるから、それほどやさしくはないはずだが、それをどう崩すか。
だからサッカーは面白い。
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