地方自治とサッカー(中)
賀川:実は、またまた石原慎太郎東京都知事の新党の話が出てきたでしょう。石原さんは私より少し若い、昔の湘南中学(現・湘南高校)のサッカー部だし、好きで尊敬もしている人だが、その人の新党の話が出てきたときに、メディア、特にテレビの司会者というのかアンカーというのか、そういう人たちがとても張り切って嬉しそうな顔をしているのを見たんですヨ。
――石原さんは新党云々よりも橋下さんの地方自治の方向に賛成で、東京と大阪から国の改革をしようといっているようです。
賀川:そうでしょう。大切なのは、地方のことは地方で決めるという新しい国のかたちを考えることなのだが、東京に本拠を置くメディアやそれに関わる人たちは全く、そのことがどれだけ重要か感じておらず、橋下さんのやり方が強引だとか方法論をあげつらうことが多かった。そこへ新党の話が出てきた。メディアにとってはニュースは“理念”より“人事”の方が面白い。とくに政治は誰が誰とくっつくか――がニュースになる。それを自民党時代も政治ニュースとして取り上げてきた。だから一斉に新党の話に飛び付いたんでしょう。
――そういえば司会者たちはこの話をするときに嬉しそうでしたね。解説者、評論家も。
賀川:誰かが仕掛けた話で、中軸になる西と東の大物の態度がしっかりしていたから、あまりその後の騒ぎは続いていないようですが、ともかく、こういうことの方が国の根底を変えるという理念よりも人に喜ばれると、メディアは思っているらしい。
――世界第3位の経済大国で1億人もいる国を、東京の中央政府が全部取り仕切って各省庁や市町村の仕事に金も出す、というのもおかしな話です。
賀川:地方自治というと、東京の評論家の多くは地方にそれほどの能力があるかと心配してくれるんですヨ。中央に既に優秀な官僚を集めていても今のように借金の多い国になってしまうのだから……。
――スウェーデンやデンマークといった北欧の福祉国家などの話が出ると、人口600万ぐらいまでだったらそういうこともできると言う人もいます。
賀川:だったら日本も道州制にして、600万~1,000万くらいの地域に分けて、それぞれの市民生活に関わる問題はその地域の首相と行政が責任を負う――いわゆる地方自治の形にする。国は国際外交や防衛などもっと大きなところを扱うことにすればいいのでしょう。
話のスケールは全く違うけれど、サッカーで少年への普及が進むようになると、県協会では細かい点までは及ばなくなるので、市のサッカー協会で行なうのです。東京都の場合は人口が多いから××区サッカー協会というのがあって、そこで審判や少年の育成に直接携わっていますよ。
――まあ、スポーツはまず自分たちの手で基盤をつくり、自分たちの手で子どもを指導して楽しむとともにレベルアップを図るもの。まず自分たちの手でというのが始まりですよね。
【つづく】
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