フットウェアの保温効果に唐辛子入り繊維……よみがえる半世紀前の日韓戦の寒さの記憶
――朝晩がめっきり冷えるようになりました。
賀川:10月も下旬だから「つるべ落とし」といわれるくらいに日の沈むのが早くなり、暗くなると一気に気温が下がる。天気の良い日はそれが顕著だね。秋への嬉しさでもあり、淋しさでもある。冷え込みから10月27日のNHKの朝の番組でフットウェアの話が出ていた。
――朝のって、ごひいきの有働由美子さんが司会している番組ですね。
賀川:ストッキングやタイツといった、足をあたたかくする女性のフットウェアがとてもファッショナブルになっているということで、色んな色合いやデザインのものが次々に登場していた。
――足に関心があるといっても、賀川さんにはめずらしいことですね。
賀川:その最後のあたりで、保湿効果のあるストッキングだったかの素材に「唐辛子」を織り込んだものがあると聞いたので感心したんですヨ。
――唐辛子ねぇ
賀川:1954年のワールドカップの予選で、最初の日韓戦が東京で行なわれたのは知っているでしょう。
――第1戦が3月7日で、天候が前日に急変して雪が降り、明治神宮競技場(旧・国立競技場)のピッチは最悪の条件。いったん雪が溶けて、当日朝の寒さで薄氷が張っていたとか。
賀川:その第1戦は1-5で韓国に敗れ、第2戦(3月14日)は同じグラウンドで天気も良かったが、2-2で引き分け、韓国が東アジアの代表としてスイス大会に出場した。
――それが、唐辛子と……?
賀川:第1戦で、寒さに慣れない日本選手は参ってしまったのに、寒いソウルからやってきた韓国の選手は苦にしなかった。泥水の中でスライディングしたDF山路修は、そのあと上半身が痺れたようになったという。
――だいたい、こんな日に試合をするのも難しいですね。
賀川:英国人のレフェリーは中止を勧告したのだが……。
それは別として、今日のボクの話は、日本選手の常識に無かった寒い悪コンディションに、韓国側が元気なプレーをしているので、兄・太郎が彼らに尋ねたら……
――賀川太郎さんは第1戦も第2戦もフル出場でしたね。
賀川:韓国の選手はこういう日に、靴の中に「唐辛子」を入れておくと、とても温かいといっていたそうだ。
――なるほど、それが朝のテレビの話題と結びつくわけか。
賀川:いまなら常識になっているようで、「唐辛子」効果も57年前の日本サッカーではコーチも選手も知らなかった。
――そういえば、太郎さんは51年のニューデリーでもレモンの話を持って帰りましたね。
賀川:あれは寒さでなくて、インドの3月の乾燥期の暑さでの経験。水を飲むと喉が引っ付いてしまう感じになったそうで、インドの人たちはレモンの小片を口に入れるといいといっていたらしい。
――いろいろな経験を積んで、日本のサッカーは少しずつ積み上げてきたということですね。
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