大型日本代表FWハーフナー・マイクのゴール。長い記者生活での初体験、194センチの豪快ヘディング(下)
●2014FIFAワールドカップブラジル アジア3次予選 GroupC
第1節 2011年10月11日19時45分キックオフ
日本 8-0 タジキスタン
(4-0、4-0)
――中村憲剛のトップ下も良かった。
賀川:1点目は右サイドでのパス交換のキープのあとのクロスをハーフナー・マイクが叩き込んだが、これは
(1)長谷部誠からのパスを受けた駒野友一が、
(2)前へ出た中村にスルーパスを送り、
(3)ペナルティエリア外、ゴールライン近くの中村が駒野に戻す。
(4)それを駒野がダイレクトで右足でクロスを蹴り、ファーポストに走ってジャンプしたマイクが力強くヘディングした
――憲剛の得意の飛び出しですね。
賀川:このとき、相手側はエリア内でゴールを守るために5人いた。日本は岡崎慎司とマイクの2人だけだった。憲剛の深い位置からのクロスではまだマイクの体勢ができていなかったから、中村は後ろへ戻した。このスルーパスのあとのバックパスで、タジクのDFの目はボールに注がれる。後方からジャンプヘッドの体勢に入ってくるマイクは気付かれないうちにいいポジションで踏切に入れたのですよ。
――身長差があるうえに、“消えた”位置から出て来たマイクに相手のDFは勝てなかったというわけですね。
賀川:ヘディングをしたときのマイクは首一つどころか胸から上が出ていたくらい相手より高かったからね。
――ザックさんも自分の狙いが当たって喜んだでしょうね。
賀川:ハーフナー・マイクが自らのゴールで代表チームの中での自信をつけたハズ。そのことが何よりだね。
――小さいのが“売り”のようでもあった日本代表に、194センチのノッポが加わった。オランダからの帰化人という点に抵抗はありませんか?
賀川:ボクのような古い日本人にとっては、60年来見続けた代表で初めてこれほどの長身FWが日本にできたことはとても嬉しいことですヨ。日本にも、1968年メキシコ五輪銅メダルチームには釜本邦茂という当時の大型ストライカーがいた。彼は身長182センチで日本代表の中ではズバ抜けた体格だった。GK横山謙三が175センチの頃ですヨ。世界的に見ても、74年ワールドカップ優勝チームの西ドイツ代表GKゼップ・マイヤーが182センチだった。ということは、大型化された今の世界のサッカーで各国のトップ級GKは187~188センチから190センチが普通でしょう。となると大型FWといえばやはり190センチクラスとなる。
1988年のオランダのマルコ・ファンバステンやルート・フリットの登場以来、大型化が進み、2006年ワールドカップ優勝のイタリアチームには3人の190センチクラスがいた。一人はFW、一人はサイド、一人は中央のDFだった。
――バルセロナのような小兵の攻撃陣が活躍するチームも出てきていますが……
賀川:そう、そこがサッカーの面白いところですよ。しかし日本は、自分たちが平均して欧米人より背が低いからといって大型選手を諦めてはいけない。かつての釜本の例もあり、この1億2,000万の人口、長い日本列島の中には大型の優秀プレーヤーになる素材が少なくないハズです。
――バレーボールを見ても大型のいい選手はいますね。
賀川:今度はたまたまハーフナー・マイクというオランダ系のプレーヤーが代表に加わった。これは日本サッカーがこういうオランダの家族をも魅きつける力を持った、日本全体のサッカーが大きくなったといえるでしょう。こういう例を見れば、日本人で大柄な少年がサッカーへの興味を増してくれるだろうし、また、家族のバックアップも違ってくると思いますヨ。
――その意味で、賀川さんはこの試合が歴史的だというのですね。
【了】
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