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アジア予選を勝ち抜くのは大変なこと、ロンドン五輪の権利を取ったのは立派 ~なでしこジャパン vs 北朝鮮代表~

2011/09/09(金)

女子サッカー ロンドン・オリンピック アジア最終予選
2011年9月8日15時30分 山東スポーツセンター
日本 1-1(0-0、1-1) 朝鮮民主主義人民共和国


――大苦戦でしたが引き分けました。そしてこのあとのオーストラリア対中国で中国が負けたので、4試合で勝点10の日本の2位以上が決まり、ロンドン五輪に行けることになりました。

賀川:永里優希が後半38分にいい動きで岩清水梓からのロングパスをシュートして、日本が先制した。彼女のシュートがゴールキーパーJO YUN MIに当たり、そのリバウンドがDFに当たってオウンゴールになったのだが、本当に、3分足らずの日本の時間帯のときに決めたゴールだった。

――いくら押されていても、ゴールを取れば勝てるんだと誰もが思いましたね。

賀川:そこからアディショナルタイムを含めて10分を持ち堪えられなかった。

――まあ、この試合は北朝鮮のペースでしたね。相手の方がずーっとよく動いていたし、体をぶつけてくるのに日本側はタジタジとなっていた。

賀川:これまでにも何度も言っているように、日本のサッカーは男女とも運動量が大切。組織プレーといっても走らなければならないからね。韓国や北朝鮮といった朝鮮半島のチームは運動量でまずこちらと互角、あるいはこちら以上となる。そして彼らは体の接触をいとわない――というより積極的にぶつかってくる。また、ボールキープのときに、手を使って相手の体の寄せを食い止めることもする。つまり1対1にも強い、そういう相手と戦うためには、今度の「なでしこ」のコンディションはいいとはいえなかった。

――男子の代表でも、フルメンバーが揃っていて、そのコンディションが良くないと、どこと戦ってもしんどいことになる。

賀川:なでしこには、いつもとは明らかに調子の落ちている選手もいた。女子チームでは調子が悪ければ代えるといったふうには出来ないのかもしれないし、選手起用については監督が一番よく見ているのだから、周囲がどうこういう問題でもないのだろうが、ちょっと気にはなったね。

――試合中に、テレビの前でバック同士のパスのことで叫んでいましたね。

賀川:韓国との試合で1点を奪われ相手を勢いづかせたのは、相手が詰めてきているのにその前でDF同士の短い横パスがあり、一人がスリップして姿勢を崩してボールを奪われ一気にピンチとなったのがきっかけだった。
 北朝鮮の同点ゴールも、近賀ゆかりのクリアし損ないからだが、そのミスの前に、相手が疾走してくる前でDF間の短いパスがあった。ボールを受ける側が、受ける体勢になっていなかったから、大ピンチでCKとなり、そのあと攻め続けられ近賀のミスが出たのですよ。

――自陣で短いパスを頻繁に使いますが、ときどきヒヤリとすることもあります。

賀川:ボールを動かすサッカーといっても、自分でクリアできるボールをわざわざ後方の仲間に短いパスを渡し、そこを狙われていることもときどきある。

――1998年のフランス・ワールドカップのクロアチア戦で賀川さんが書いてましたね。バックパスを奪われ、そこから相手の唯一のゴールが生まれたと。

賀川:そう、中盤のバックパスを取られてピンチとなり、いったん防いだが再度同じ左から攻められ、最後にダボール・シュケルのシュートで0-1となり負けてしまった。
 今回のなでしこ、最終予選の会場のピッチは芝が不揃いで凹凸もあるようだから、DF同士の短いパスのときでも、受け手の体勢を考えなければならないでしょう。

――それにしても、レギュラーが5人欠け若手主体の北朝鮮の一人ひとりのスピードや体力、技術には感心しました。

賀川:まあ、この国はサッカーに力を入れている。女子サッカーで国の威信を高めようとなると、練習環境なども整えるだろうし、指導者たちも頑張るだろう。韓国の台頭もあり、オーストラリアというヨーロッパ系のチームもあり、老舗のハズの中国もいるので、アジアの予選を勝ち抜くのは大変なのですよ。

――ワールドカップに勝ったからといってアジアではそう簡単に勝てないだろう、という話は現実でした。その厳しいなかで勝ったのだから……

賀川:負けなかったというべきかナ。立派なものですよ。澤穂希キャプテンは相変わらずしっかりしたプレーをしていたからね。チームとしては、これまでの問題を洗い直す意味でも、中国との試合はしっかりやってほしいね。若いプレーヤーもたくさんいることだし、ロンドン五輪進出を決めたあともここでまだ1試合できるのはとても大きいことですよ。


【了】

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