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2011年9月

第8回掲額者 牛木素吉郎を公開

2011/09/14(水)

日本サッカーアーカイブ

第8回掲額のジャーナリスト、牛木素吉郎先生のページを公開しました!

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【メディア掲載情報】 朝日新聞夕刊「ジャーナリズム列伝」

2011/09/13(火)

朝日新聞夕刊3面「ジャーナリズム列伝」に、賀川浩が取りあげられています。
9月12日~30日までの全12回、よろしくお願いいたします。

※夕刊(1部50円)は、新聞販売店の他、
 コンビニや駅の販売店などでお買い求めいただけます。

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アジア予選を勝ち抜くのは大変なこと、ロンドン五輪の権利を取ったのは立派 ~なでしこジャパン vs 北朝鮮代表~

2011/09/09(金)

女子サッカー ロンドン・オリンピック アジア最終予選
2011年9月8日15時30分 山東スポーツセンター
日本 1-1(0-0、1-1) 朝鮮民主主義人民共和国


――大苦戦でしたが引き分けました。そしてこのあとのオーストラリア対中国で中国が負けたので、4試合で勝点10の日本の2位以上が決まり、ロンドン五輪に行けることになりました。

賀川:永里優希が後半38分にいい動きで岩清水梓からのロングパスをシュートして、日本が先制した。彼女のシュートがゴールキーパーJO YUN MIに当たり、そのリバウンドがDFに当たってオウンゴールになったのだが、本当に、3分足らずの日本の時間帯のときに決めたゴールだった。

――いくら押されていても、ゴールを取れば勝てるんだと誰もが思いましたね。

賀川:そこからアディショナルタイムを含めて10分を持ち堪えられなかった。

――まあ、この試合は北朝鮮のペースでしたね。相手の方がずーっとよく動いていたし、体をぶつけてくるのに日本側はタジタジとなっていた。

賀川:これまでにも何度も言っているように、日本のサッカーは男女とも運動量が大切。組織プレーといっても走らなければならないからね。韓国や北朝鮮といった朝鮮半島のチームは運動量でまずこちらと互角、あるいはこちら以上となる。そして彼らは体の接触をいとわない――というより積極的にぶつかってくる。また、ボールキープのときに、手を使って相手の体の寄せを食い止めることもする。つまり1対1にも強い、そういう相手と戦うためには、今度の「なでしこ」のコンディションはいいとはいえなかった。

――男子の代表でも、フルメンバーが揃っていて、そのコンディションが良くないと、どこと戦ってもしんどいことになる。

賀川:なでしこには、いつもとは明らかに調子の落ちている選手もいた。女子チームでは調子が悪ければ代えるといったふうには出来ないのかもしれないし、選手起用については監督が一番よく見ているのだから、周囲がどうこういう問題でもないのだろうが、ちょっと気にはなったね。

――試合中に、テレビの前でバック同士のパスのことで叫んでいましたね。

賀川:韓国との試合で1点を奪われ相手を勢いづかせたのは、相手が詰めてきているのにその前でDF同士の短い横パスがあり、一人がスリップして姿勢を崩してボールを奪われ一気にピンチとなったのがきっかけだった。
 北朝鮮の同点ゴールも、近賀ゆかりのクリアし損ないからだが、そのミスの前に、相手が疾走してくる前でDF間の短いパスがあった。ボールを受ける側が、受ける体勢になっていなかったから、大ピンチでCKとなり、そのあと攻め続けられ近賀のミスが出たのですよ。

――自陣で短いパスを頻繁に使いますが、ときどきヒヤリとすることもあります。

賀川:ボールを動かすサッカーといっても、自分でクリアできるボールをわざわざ後方の仲間に短いパスを渡し、そこを狙われていることもときどきある。

――1998年のフランス・ワールドカップのクロアチア戦で賀川さんが書いてましたね。バックパスを奪われ、そこから相手の唯一のゴールが生まれたと。

賀川:そう、中盤のバックパスを取られてピンチとなり、いったん防いだが再度同じ左から攻められ、最後にダボール・シュケルのシュートで0-1となり負けてしまった。
 今回のなでしこ、最終予選の会場のピッチは芝が不揃いで凹凸もあるようだから、DF同士の短いパスのときでも、受け手の体勢を考えなければならないでしょう。

――それにしても、レギュラーが5人欠け若手主体の北朝鮮の一人ひとりのスピードや体力、技術には感心しました。

賀川:まあ、この国はサッカーに力を入れている。女子サッカーで国の威信を高めようとなると、練習環境なども整えるだろうし、指導者たちも頑張るだろう。韓国の台頭もあり、オーストラリアというヨーロッパ系のチームもあり、老舗のハズの中国もいるので、アジアの予選を勝ち抜くのは大変なのですよ。

――ワールドカップに勝ったからといってアジアではそう簡単に勝てないだろう、という話は現実でした。その厳しいなかで勝ったのだから……

賀川:負けなかったというべきかナ。立派なものですよ。澤穂希キャプテンは相変わらずしっかりしたプレーをしていたからね。チームとしては、これまでの問題を洗い直す意味でも、中国との試合はしっかりやってほしいね。若いプレーヤーもたくさんいることだし、ロンドン五輪進出を決めたあともここでまだ1試合できるのはとても大きいことですよ。


【了】

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ハーフナー・マイク起用の効果 W杯アジア3次予選 vs北朝鮮(下)

2011/09/06(火)

●2014FIFAワールドカップブラジル アジア3次予選 GroupC
 第1節 2011年9月2日19時キックオフ
 日本 1-0 朝鮮民主主義人民共和国
   (0-0、1-0)



~右CKからの決勝ゴール。時間の迫っているなかでの冷静なショートコーナーに代表の進化を見る~



――その空中戦の決勝ゴールに、賀川さんは日本代表の進化を見たとか?

賀川:ハーフナー・マイクを後半25分に入れ(李忠成と交代)、明らかにロングボールもあるぞ――とか、空中戦もあるぞ――とかいう意思表示をした。相手もそれを警戒することになる。
 日本のMFたちにとっても、スペースがなければハーフナーの頭上へというチョイスができる。後半の終わりごろの攻撃は凄まじいものだった。

――ハーフナーを投入する前に柏木陽介に代えて清武弘嗣を入れました。このとき、岡崎慎司を左に回し、香川真司を中央トップ下の位置に、そして清武を右サイドにしています。

賀川:この配置変更は効果があったね。29分のハーフナーの右足シュートがバーを叩いたのをはじめ、いまにも“ゴール”というシーンが再三生まれた。48分には今野泰幸の左足ボレーがまたバーを叩いた。今野はヒーローになり損ねた。一般にこういうときにも、日本選手のシュートは素直だからね。
 49分にGKのファインセーブ(遠藤保仁の左CKを香川がバックヘッドで合わせたものを止めた)で右CKとなった。14回目のCKですヨ。

――この右CKを清武が後方へ、いわゆるショートコーナーにしました。

賀川:ここから決勝ゴールへのプレーが始まった。アディショナル・タイム(ロスタイム)残り少ないのにショートコーナー――つまりパスを一つ余計に入れる――を選択した。
(1)ボールを受けた長谷部誠がタテにドリブル。ペナルティエリア外側、ゴールライン近くまで行って反転し、後方へパスをした
(2)そこにコーナーから戻っていた清武がいた
(3)ノーマークの彼は、ペナルティエリアの少し外から狙ってゴール前の中央部へクロスを送った
(4)ボールは吉田麻也の前に落下、吉田が強いヘディングシュートを打ってGKを抜いた

――どこかのテレビで北澤豪(元日本代表)が、あの残り時間少ないときにショートコーナーにしてタイミングをずらしたのが良かった――といっていました。

賀川:そうだね。このときファーポスト(左ポスト側)に目立つノッポのハーフナーがいた。ニアサイドに岡崎たち、そして中央に吉田がいた。
 ショートコーナーにして、長谷部がそこからクロスを送るのでなく、ドリブルで突っかけたのがポイント【1】。長谷部はそれまで再三ドリブル突破して、エリア内に入り込んだり、ゴールラインからクロスを送ったりしていた。相手DFの目は彼のドリブルに注がれ、複数のDFが妨害に行く。そこで長谷部はターンをして後方を向き、今度はもう一度バックパスを清武に送ったから、清武はノーマークで落ち着いて狙ったところへクロスを送った。

――これまでも遠藤と中村俊輔のコンビでのショートコーナーの成功を見ましたね。

賀川:日本選手のキック力(長蹴力)ということになると、まずCKのときにコーナーから蹴ると、ニアポスト際からゴール中央まではコントロールキックできるが、ファーポストへは距離的に難しい。そこでショートコーナーにしてタッチラインからかなり内側、ペナルティエリアに近づいてクロスを上げればコントロールキックで中央部あるいはファーポストへも届く。

――前のオリンピック・チーム監督の山本昌邦さんは解説のとき、「ペナルティエリアからのクロスは短い、短いから時間も少なく相手方の対応もしにくい」とテレビでよくいっています。

賀川:まさにその通り。パスの距離が短いのは、相手に対応する時間を少なくすることですヨ。今度も清武はタッチラインからでなくエリアのラインに少し近づいたところからクロスを蹴った。それも速いボールをね。

――吉田は「キヨ(清武)からいいボールが来たので、合わせるだけだった」といっています。

賀川:いいヘディングでした。彼は前にも代表でヘディングのゴールをしている。キリンカップの対チェコ戦では惜しい場面があった。CKのヘディングは彼の主戦場になってくるでしょう。

――CKからのヘディングといっても単に蹴って合わせるだけでなく、クロスまでにいろいろな仕掛けがあり、タイミングを遅らせ、距離を近づけ、相手が守りにくくしていたということですね。

賀川:そう、相手選手の目がボールに注がれているときに、こちらは相手のマークを外す、いわゆる“消える”動きもできる。そういう攻めの面白さを、この決勝ゴールで見せてくれたわけです。

――ジーコ監督のときのアジア予選で同じような、対北朝鮮、ホームの試合であわや引き分けというのを強引にもぎ取って2-1にした試合がありました。

賀川:会場も同じ埼玉だったハズですヨ。相手に当たったリバウンドを大黒将志が決めた試合でしょう。あれもスリリングだった。※編集注:2005年2月9日/日本2-1北朝鮮
 今度のゴールには選手たちの気迫とともに技術や読みが入っていて、それだけ代表が進化したといえると思っているんです。

――今日はここまでにしましょう。

【了】

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ハーフナー・マイク起用の効果 W杯アジア3次予選 vs北朝鮮(上)

2011/09/05(月)

●2014FIFAワールドカップブラジル アジア3次予選 GroupC
 第1節 2011年9月2日19時キックオフ
 日本 1-0 朝鮮民主主義人民共和国
   (0-0、1-0)

●ロンドン・オリンピック アジア最終予選
 日本 3-0 タイ(2011年9月1日15時30分 山東スポーツセンター)
 日本 2-1 韓国(2011年9月3日19時 済南オリンピックスポーツセンター)



~右CKからの決勝ゴール。時間の迫っているなかでの冷静なショートコーナーに代表の進化を見る~



――90分を過ぎて得点なし、5分のアディショナル・タイムでの、それもあと1分というところで吉田麻也のヘディングで1点を取り1-0で勝ちました。

賀川:ボール・ポゼッション(支配率)が66.1%、シュートは20本、CKも14回もあった。その14回目のCK(右)からの20本目のシュートが決まった。スリル満点の試合だった。

――9月1日から始まったなでしこジャパンのロンドン五輪予選でも、第1戦の対タイ(3-0)はともかく、韓国との第2戦は大接戦でした。2-1で勝ちはしましたが……。やっと――というべきか、テレビ解説の岡田武史前監督のようにすごく盛り上がった――というべきかですね。

賀川:なでしこジャパンと韓国代表のチーム全体の力を比べると、日本の方が少し上だろう。しかし、その差は当日のコンディションや試合のどこかの局面のちょっとした狂いなどがあれば、勝敗どころを変える――ということになる。まあ、それくらいの差ですヨ。
 もちろん韓国がいまのままの個人力アップの上にちょっとした試合の工夫をつけ加えれば(いまのままのなでしこと)対等になるだろうし、体に力があるから追い抜くことも可能だね。

――なでしこは、必ずしも万全の状態で中国の済南に乗り込んでいったわけではなさそうですからね。

賀川:ワールドカップ優勝のあとのいろんな行事があって、充分に練習したとはいえないだろう。また、ドイツの大会で力を尽くして、身体的あるいは精神的疲労はそう簡単に取れているかどうか――。
 1974年のワールドカップに優勝した西ドイツの主力6人のいたバイエルン・ミュンヘンが半年後に来日して国立でプレーをしたとき、ゲルト・ミュラーをはじめとする代表選手たちのコンディションはひどかったからね。

――そうそう、この年のバイエルン・ミュンヘンはブンデスリーガでもなかなか勝てなかったことを覚えています。

賀川:なでしこが今度のアジア最終予選を切り抜けてロンドンへの権利を取れば、それだけでもすごいと思いますよ。

――彼女たちについては、あとで聞かせてもらうとして、まず「サムライ(SAMURAI BLUE)」の方から――。

賀川:2010年のワールドカップのベスト16はまさに全員の頑張りだが、やはり本田圭佑という新しい攻撃の核ができたことがプラスになった。以来、代表で欠かせぬ攻撃の柱だった本田が故障のために戦列を離れた。攻撃が武器の日本代表で、こういう中心選手が抜ける影響はとても大きい。そうしたなかで、最初の試合で北朝鮮に勝ったのだから、それだけでバンザイですネ。

――といっても、ハーフナー・マイクを投入し空中戦を挑んだやり方で、日本らしくないという声も出ているのじゃないですか?

賀川:本田が出られないという報道があったとき、ハーフナー・マイクを加えたという発表を見て、ボクは、ザッケローニさんはこの手も考えていたかと思いましたよ。

――そういえば賀川さんは長い間、大型FW必要論を唱え、平山相太に執着していましたね。

賀川:いまの多くのファンは、日本人の大型ストライカー・釜本邦茂を見ていないから無理もないが、当時182センチだった彼は右足左足のシュートとヘディング能力が素晴らしかった。もちろん、大きいだけでなくボールの高さを見極める目の確かさ、落下点へ入る速さとうまさ、そして滞空時間の長いジャンプなどが組み合わされ、さらにボールを叩くときのインパクトのうまさもあるのだが、基本的には長身が武器の基礎だった。
 74年ワールドカップ優勝チームの西ドイツ代表GKゼップ・マイヤーが182センチだから、釜本は当時のワールドクラスのGKと同じ大きさだったといえるだろう。今はGKは188センチ以上が普通だから、長身のストライカーといえばそれくらいの大きさが欲しいと私は思っている。だからこそ、平山の成長に期待したんですヨ。

――ザックさんはハーフナーに目を留めた。彼は190センチ以上ありますからね。

賀川:ヘディングもシュートも釜本には及ばないとしても、ここのところ上手になりJ2でゴールも増えていた(甲府で昨季J2リーグ戦20得点、今季J1リーグ7得点)。ザックさんが目をつけて当然でしょう。

――ふーむ、2006年ワールドカップイタリア代表が優勝したとき、賀川さんは190センチが3人いたのがミソだといっていましたね。もともと体の小さい選手の多い神戸一中のショートパス育ちの賀川さんが空中戦好きとは――と、あのとき驚きました。

賀川:ボクのような小さい選手でもヘディングで点を取ったこともあるのですヨ。一つ、この際いっておきたいのは、エリア内にはじめ4人で守り、相手が攻めてくれば6人にも7人にもなる。そしてCKやFKとなると狭いところに双方の10数人がひしめいている、といった現代サッカーで、地上のボールをシュートしても誰かの体に当たって弾き返される。もちろん、誰かの体に当たってGKの意表をついて入ることもあるが、統計上は跳ね返る方が多いハズです。足でシュートするときには、人が混み合っているからスペースも小さく、シュートにかかる動作もスムースにゆかないこともある。
 ヘディングというのは、第1に足でいえばダイレクトシュートで、相手GKは予測しにくい。第2に、頭で叩くだけだから頭を振るスペースは地上のボールを蹴るときのスペースより小さくて良い。したがって、キッカーのボールが狙っているところ――高さ、位置――へ落ちてくれば、ジャンプヘディングは理論的にはゴールを奪いやすい有効な手段なのですヨ。

――日本も空中戦を攻めの武器の一つにすればいい、と。

賀川:攻め手は色々ある方がいい。近頃ではFCバルセロナの小柄な攻撃陣の魅力が人気を集めているが、彼らについてはまた別に機会にお話しするとして……

――その空中戦の決勝ゴールに、賀川さんは日本代表の進化を見たとか?

【つづく】

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