代表試合を見て(3)U-22代表[アウェー] (上)
ロンドン・オリンピック アジア2次予選・第2戦(クウェート)
日本代表 1-2 クウェート代表
(1-0、0-2)
――1-2で敗れましたが、豊田での試合の3-1とあわせて1勝1敗、得点4失点3で日本が最終予選に進出しました。
賀川:アウェーの39度という高い気温の中で負けはしたが、こちらが先に1点を取ったのが結果的に大きく響いたね。まあ、難しい試合に耐えて2次予選突破したのだから立派なものですヨ。
――テレビを見た多くのサポーターには、アウェーの試合って大変なんですね――と改めていう人もありました。
賀川:広大なアジアでの地域予選はいつもそれぞれの土地の気候、風土の違いの大きさが問題になる。それを、どのように克服するかがその国のサッカー全体の力、いわばサッカー力。日本は試合そのものについての勉強と同時に、その試合に出る選手のコンディションをどのようにつくり、どういうふうに維持してゆくかについてはレベルが高いハズなのだが……。
――今回はその日本のサポート力をもってしても難しかった?
賀川:まあ、チーム事情は色々あるから必ずしもいつも100%とは限らないでしょう。豊田での第1戦までは梅雨で、それほど照りつけていないハズ。それがクウェートへゆくと一気に気温が上がる。ケガで休んでいたから一番元気なハズの永井謙佑の調子が悪かったでしょう。
――経験したことのない暑さで自分のプレーができなかったという話もありました。
賀川:何でも予想したとおりにゆけば楽だが、実際は実地を踏んでみなくては分からないこともある。もちろん準備をおろそかにしてはいけない。しかし、もし準備がうまくゆかなくてもそこから踏ん張ることが大切なんです。(一人で戦う)テニスじゃないのだから、サッカーはそこでチーム全員が踏ん張る。
――まあ確かに早いうちに酒井宏樹の先制ゴールがあったのはよかったですね。
賀川:東慶悟が相手DFラインの裏へ出したボールを酒井が追って、GKが飛び出してきてボールに触れる前に空中のボールを蹴った。フワリと上がったボールはGKの上を越え、ゴールに吸い込まれた。
――GKが来るのは目に入ったでしょうから、勇気あるプレーですね。
賀川:彼はボールを蹴った後、GKにぶつかられて尻餅をつくように後方へ倒れた。そのときでも目はボールを追っていた。ゴール裏からのテレビのリピートを見て、「エライ!!」と叫んだヨ。
――彼はサイドの選手としては背が高く183センチあり、足はもちろん速い。
賀川:立ったままの感じから飛び出して走り出すときのスタートダッシュが速いね。ただし、いい素材なのだからその速さと右足のキックを生かすと同時にもう少し足らない技術も補ってほしいプレーヤーでもある。
彼のポジションは、前へ出て点を取り、攻めで効果を上げることも大切だが、守りも仕事のうち。そのためには、右足に体重を乗せ左足で蹴ること、左足を伸ばしてボールを取ることなど上達してほしい。
――クウェートの積極的なプレーが目立っていた22分にこの先制ゴールが生まれたのはとてもよかった。
賀川:クウェートの選手たちは積極的に攻撃をしようということと、日本選手とのボールの奪い合いでファウルをしてでも勝とうとした。自分たちの体勢が悪くても仕掛け、取れなければ大げさに倒れてレフェリーに日本側のファウルを訴えようとしていた。縦パスを追ってエリア内で日本の濱田水輝の後方から腕で引っ張ってファウルを取られる場面もあったし、日本のGK権田修一の方が明らかに先にボールを取ろうとしていても、そこへスライディングをしている。「弾みでいっているからイエローは出ないだろう」あるいは「イエローになってもレッドじゃないだろう」という考え方だろうね。
――ファウルぎりぎりということ
賀川:ファウルぎりぎりよりイエローカードぎりぎりというところだヨ。1回目はシミュレーションでイエローを取られても、そういう体の接触をペナルティエリア内で狙っておけばPKのチャンスも生まれる。
――後半の相手の2点目はそうでしょう。
賀川:あれはこちらのDFが取れるボールに後方から素早く走り込んで奪おうとした。DF濱田が右足を伸ばしたら、そこにユセフ・N・S・R・S・アルスレイマンの足があった。こちらが出した足に引っかかった格好になって倒れたから、レフェリーはPKの笛を吹いた。
この選手は背も高く(183センチ)クウェートのフル代表でも点を取っているという。スピードもありシュートも競り合いも上手い。相手やレフェリーを欺く狡猾さも持っている。
――私はあまり好きになれないタイプですね。
賀川:PKを蹴るときも面白かったね。助走がまっすぐだったのに、権田は自分の左と読んで先に動いたが右へ(キッカーから見て左へ)蹴った。私は彼は左へ(権田の右手側)のシュートと見たのだけれどね。
【つづく】
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