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AFCアジアカップ カタール2011 準々決勝 vsカタール(上)

2011/01/24(月)

◆10人での逆転勝ち。気力・体力と攻めへの意欲の強さが逆境を跳ね返した

――スゴイ試合でした。前半1-1、後半、日本側に退場者(吉田麻也、2枚のイエローカード)が出て10人となり、しかもその反則によるFKで2点目を失った。後半18分でした。その10人の日本が8分後に同点にし、44分に3点目を奪って勝った。

賀川:スリル満点。とても面白かったし見どころの多い試合だった。
 10人で逆転勝ちだから素晴らしいね。2失点については当然、反省・工夫の余地は大いにあるのだが、勝とうという意欲でゴールを奪いにゆく気持ちを全員が持ち続けたのは立派なものだ。

――香川真司が得点したのも、チーム全体の大きな活力になるでしょう。

賀川:この前の試合のときにも少しふれたが、テレビ画面で見るだけではあるが、動きの小さいのが気になっていた。だがこの試合ではそれがよくなっていた。

――サウジ戦でハットトリックした岡崎慎司が調子を上げているのも心強いですね。

賀川:まあテレビ画面からの想像にしか過ぎないが、サウジ戦の岡崎の飛び込みヘディングを香川が自分のパスで演出したときに、ボクは、彼が自分の一番得意な形のクロスパスが得点につながったことで少し自信を取り戻すだろうと思っていた。
 直接に話を聞いているわけではないが、初めてのヨーロッパのトップリーグで半年以上プレーを続け、日本に戻ってチームに合流し、また、コンディションの違うカタールへ出かける。普通の旅行者やボクたち取材する人にも、この時差と気候の変化は厄介なものだったし、コンディションの維持が難しかったのだと思う。

――真面目な彼はその調整についても真剣に考えたでしょうか。

賀川:特にヨーロッパでプレーする日本選手には、このコンディショニングの難しさがあると思う。あの中村俊輔のような大選手でも、2006年も2010年のワールドカップもベストの体調で迎えることができなかった。

――そういう点の、個々の選手へのバックアップ体制も大切ですね。


◆1点目に香川の復調を見た ~ドリブルかパスのチョイスと長い疾走~
 攻撃に見る連動と個々の得意技の組み合わせ

賀川:選手のことを考えると、つい話がそれてしまう。話を香川に戻すと、日本の1点目はその香川の“冴え”が戻ってきた証とみている。

――というと?

賀川:このゴールは香川が中央左寄り、ペナルティエリアの左角から10mほどハーフラインに寄ったところで
(1)香川がボールをキープしたことから始まる。その前に日本の攻めで、カタールはエリア付近に後退して7人が守っていた。
(2)長友佑都からパスを受けた香川は、いったん戻りながらターンして右足でボールをキックして前を向く。例の左肩を前にした得意の持ち方ですよ。
(3)ペナルティエリアより前にいた相手の3人が彼の突破を警戒して囲もうとした。
(4)このときの香川には選択肢が3つはあった。
   A:3人の隙間を見つけてドリブルするか
   B:右に開いている岡崎の動きに合わせたパスを出すか
   C:本田圭佑に渡すか

――エリアいっぱい、正面やや左に前田遼一がいました。長友はボールを渡してすぐ左サイドへ前進していた。

賀川:
(5)その3つの選択肢のなかで、香川のチョイスは本田の足元だった。
(6)スクエアパス――いわゆる横パスを送った。一番安全で取られないパスだった。
(7)そのパスが足元に来たとき、右サイドの岡崎がスタートした。本田はダイレクトで――近ごろはワンタッチというらしいが――左足で前方へ蹴った。
(8)本田は立ったままノーステップで左足を正確に使える選手で、これは彼が高校から名古屋グランパスに来た時以来、私が感心しているプレーの一つ。
(9)本田のパスは少し浮いて、右へカーブを描きながら落下した。相手のDFには取られずに岡崎の走る前へ落ち、
(10)そのリバウンドを岡崎が足を伸ばして捉え、飛び出したゴールキーパーの上を抜いた。
(11)ふわりと上がったボールがゴール左上隅近くへ落下してゆくところへ
(12)香川が走り込んでジャンプヘッドしてこれを押し込んだ。
(13)スロービデオのリピートを見ると、香川は本田にパスを出したあと一気に前方へスタートし、ゴールまでスピードを緩めなかった。相手DFの一人が気づいて追走したが、香川のスピードが勝っていた。

――香川は「岡ちゃん(岡崎)のゴールみたいなものです」と言っていましたが

賀川:これこそ、今の日本の攻撃陣の“あうん”の呼吸とそれぞれの持ち味の出たゴールだった。岡崎の飛び出しを生かす本田のワンタッチパス、香川の長いランが生きた。

――香川が本田にパスを出したとき、この展開を読んでいたのでしょうか。

賀川:そこのところは想像でなく本人に聞いてみたいネ。ただ、彼はパスを出してすぐ前方へスタートを切ったところがいい。そして途中で疾走を止めないところが素晴らしかった。もちろん、本田-岡崎ラインは見事に冴えていたけれど、香川にとってもこれに絡んだことで「ご馳走さま」のゴールではなかったといえる。

【つづく】

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