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いいパスも展開もすべてゴールを奪うため(上) ~AFCアジアカップ カタール2011 vsヨルダン~

2011/01/11(火)


◆あのスペインでも南ア大会でスイスに敗れた例もある。だからいいとは言わないが…

――アジアカップの第1戦、対ヨルダンは1-1の引き分けでした。楽しみにしていたのに、ちょっと当て外れというところでしょうか。

賀川:そう感じる人も多いだろうね。ワールドカップ2010で16強へ進んで、そのあとのアルゼンチン戦をはじめとする国際親善試合でも南アフリカでの蓄積に香川真司の進歩が加わって、日本代表に一種の充実感のようなものがあったからね。

――ヨルダンは守りを厚くして、局面の競り合いでも非常に激しく、足や体にぶつかるのは当然という感じでやってきましたから、日本代表もやりにくかったでしょう。

賀川:だからこそ、サッカーは面白い。ワールドカップの1次リーグで日本と戦った相手・カメルーンオランダデンマークは国際的にも名の通った選手もいたし、全体的にレベルが高い。したがって、ボールポゼッションは相手が上で、こちらはまずそのボールを奪うこと、危険地域で潰すことに力を注ぎ、チャンスに攻めに出ることになる。
 それがアジアカップのような大会の1次リーグでの戦いはその逆の立場になるからね。

――そういうことは、分かっていても難しいものなんですかね。

賀川:南アフリカのワールドカップの1次リーグで、あのスペインが初戦でスイスに負けたでしょう(0-1)。もちろん、フェルナンド・トーレスの調子が悪かったこともあったが、彼らだってほぼベストに近いメンバーでスイスにしてやられたのだから……

――ふーむ。だからといって、日本がヨルダンと引き分けていいというわけじゃないでしょう。

賀川:もちろんそうだ。今度の代表のスターティングラインナップにヨーロッパ組が8人いた。フィールドプレーヤー10人のうち7人が欧州組ですヨ。

――レベルの高いところにいるのだから、ヨルダンぐらいなら……と考えたくなります。

賀川:ヨルダンの選手は意気込みがまず強かった。モチベーションの高め方が良かったのだろうね。日本はそれを始めに叩いておくことができなかった。

――というと

賀川:キックオフからすぐ、本田圭佑がドリブルで右コーナーまで持ってゆき、2人に絡まれ、また持ち直して内へ上がってきた内田篤人にパスをした。内田はペナルティエリアすぐそばから中へパスして、そのパスが仲間に渡らずに奪われてしまった。ボクはあのときテレビの前で失望した。内田がシュートをするかシュートの構えに入るかと期待したのだが。

――本田が個人的な強さを見せつけたのだから、そのあとのプレーも強気でゆけというわけですか。

賀川:もちろん試合中は選手はそういう風に理論的に考えるわけではないが、あの勢いに乗った本田の動きのあと、内田にも勢いに乗りシュートしてほしかった。走り込んだときに彼にはシュートのつもりがあったのかどうか。

――日本選手ならあの位置で仲間を探しますよ。

賀川:「兵は勢いなり」と昔からいうが、ボクはあそこでシュートの気を起してほしい。もし前が詰まっていてパスを選択するとしても、シュートの気配を見せることでコースも開け、タイミングも違ってくる。

――なるほど

賀川:得点になってもならなくても、本田の突破とそれに続く内田のシュートでヨルダン側から見れば「お主(ぬし)やるナ」という感じになるハズ。


◆気候風土がすっかり変わる西アジアでの試合の経験はザッケローニ監督にとってもいい経験になる

――前田遼一がワントップでしたね。

賀川:10分までに相手ゴール前でヘディングシュートをしたのと、本田からのパスを受けて左足でシュートした。ヘディングは弱くてDFに胸でカットされ最後はGKにキャッチされ、左足シュートは右ポストの外へ出た。彼らしいプレーだと思ったヨ。

――Jでの2年連続得点王ですからね。

賀川:このプレーヤーはストライカーとして上背も(日本人の中では)あるし、色々な技術もあって相手を背にしたプレーもできる。ただし今のJリーグでは、CDFはほとんどが日本選手で外国人プレーヤー独特の大きさとか重さとか、あるいは速さ、イヤらしさといったものに出会うことが少ない。彼にとっては、こういうチームは格下だが、結構激しくて強い西アジアの選手を相手に良い経験を積んでゆくだろう。

――後半には李忠成が交代で入りました。

賀川:ザッケローニ監督は色々試したいのだろう。何といっても、攻撃での大事なところだからね。

――しかし、テレビを見ていて、ヨルダンもなかなかやるなと思いました。

賀川:日本の方が技術は上だという声もあるけれど、それはチームプレーを構成するという点では日本の方が統制されているが、今ここでシュート、とか、ここで相手をかわすといった局面での個人プレー、つまり試合の流れで役に立つプレーについてはヨルダンの方が日本より下手とはいえない。
 前半終了間際に奪われた得点はパスの成功からでなく、当たったリバウンドを奪われ、そこから間合いが遠かった遠藤がスライディングに行ったのをハサン・アブデルファタにかわされ、そのアブデルファタの左足シュートに足を出した吉田麻也に当たってコースが変わりゴールへ飛び込んだ。

――吉田選手は気の毒でした。

賀川:ヨルダンは偶発的にも見えるチャンスをモノにしたわけだが、それでも、その一つひとつのプレーはしっかりしたものですヨ。

【つづく】

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