89年の歴史の歩みに乾杯! 殿堂入り表彰式と9月10日、JFA創設の日を思う(下)
賀川:そして盛んにしてゆく過程で、スポーツ本来の姿である地域に根をおろしたクラブというものを基盤と考え、プロフェッショナルのクラブもそうあるべきと考えた。だから鹿島アントラーズというクラブはもともと住友金属という企業のサッカー部が前身であって、住金をはじめ多くの企業がバックアップしてくれても、鹿島という地域を基盤にした独立したスポーツクラブということになる。
私が駆け出し記者でプロ野球を取材していたとき、近鉄バファローズの選手の宿舎をたずねたらその建物に「近畿日本鉄道野球部」という表札が出ていた。プロであっても近鉄という大企業の一部という形だった。
そしてまた、協会の登録をヨーロッパと同様に年齢に切り替えた。プロのクラブと同じようにここでもあくまでスポーツが主体で、スポーツをするのに社会的身分は関係ないということです。高校生は高等学校で学ぶ学生ではあるけれど、その同じ高校生という社会的な身分の者たちが高校大会を行なうのは決して不思議ではない。
しかし高校生でなく中学校を出て職業についている人がサッカーをしたいときに高校大会だけしかなければ、公式の試合をする場所がないわけです。だから、スポーツをするのにそういうカテゴリーでなく年齢別のカテゴリーにすれば誰もが同じ世代同士で試合できることになる。プロ化より15年近く早い頃、1979年にJFAは登録制度を年齢別に変えていた。このことの意味が、まだ日本の他の競技団体ではほとんど理解されていない。
――Jのクラブに下部組織として年齢別の育成組織もつくられました。
賀川:プロ化で代表を強くし、また外国から上手なプロを招いて観客動員のプラスをはかるといった表面だけのことでなく、スポーツの在り方を、これまでの日本の常識を根本から変えたところがJFA、Jリーグの関係者のいいところなんですヨ。
――そういえますね。
賀川:いつもいうとおり、この自分たちの好きなスポーツを、それぞれの生活している地域で、自分たちの手でクラブをつくり、少年や大人の健康と楽しみの増設をはかるというのは、いわば民主主義の根幹と通じるものがあると思っています。明治以来、富国強兵のために中央集権でやってきた日本が戦争で負けて、さあ今度は民主主義だといい始めたけれど、身についた中央集権的発想はなかなか抜けない。大阪府の橋下知事たちは、自分が知事になってみて地方の自主性ということに気がついて、いま地方主権を唱えているけれどネ。
――サッカーはすでに新しくいい方向に向かっている、と。
賀川:少なくとも、ここまで来ていることは誇りにしていいと思っていますヨ。
――その大演説は、会場では話さなかったのですね。
賀川:うーん、そういう話をする気がなくなってしまった。まあ、表彰される側としては、いかにも「私もその一人だ」といっているように聞こえても――などと思ったのかもしれないし、今日は大人しくしておこうと胸にしまいこんでしまった。
――89年前に創設されたJFAの誕生日の9月10日のお祝いと、90年にわたって歩み続けてきたサッカーファミリーとともに、このブログでお互いおめでとう――ということにして、賀川さんの表彰のお祝いにしましょう。
賀川:ありがとう、みなさん。
【了】
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