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サッカー75年、メディア60年。蹴って見て書いて、アッという間の人生85年。殿堂に入りただ恐縮(上)

2010/08/20(金)

――殿堂入り、おめでとうございます。

賀川:ありがとう。JFA(日本サッカー協会)のプレスリリースが17日にあり、明朝の新聞のいくつかに掲載されたのですが、発表当日に、JFAのウェブサイトを見たとお祝いの電話がかかってきたのには驚きました。電報や電話をたくさん頂戴して恐縮しています。

――長い記者生活でサッカーの楽しさを多くの人に伝えたこと、色々なプレーヤーや監督とのおつきあいの中で日本のサッカーに貢献したこと、また、サッカーの興隆に直接関わる様々な事業を興したこと――などはよく知られています。

賀川:さあ、どうでしょうネ。少年のころからサッカーに関わってきたから、ざっと75年。メディアでは足かけ60年ですが、それほど仕事をしたわけでもありません。スポーツが好きで、書くことが好きで、それを長くやってきただけ。日本の生んだ素晴らしいプレーヤーや監督、あるいはJFAの発展に直接関わり立派な業績を残された人たちと同じところにレリーフを掲げてもらう――となると、いささか忸怩(じくじ)たる思いもしますヨ。

――そんな先輩や後輩たちのことをたくさんの人に知らせて来たのだから、私たちは当然だと思っています。
 一昨年に亡くなった長沼健・元JFA会長もよく、賀川さんにサッカーを教えてもらったと言っていましたよ。セルジオ越後さんも、賀川さんにお世話になったとどこかの会で話しているのを聞いたことがある。そうそう、岡田武史・前日本代表監督は、取材に来た記者に賀川さんとの話をするそうです。

賀川:長く記者の仕事をしていれば、色んな人との出会いもありますよ。

――話を膨らませるのもどうかと言われるでしょうけれど、様々なアドバイスをしてきた中で良かったと思う、一番いい例を一つ教えて下さい。

賀川:いや、一番いい例ではなくてネ……。ボクがスポーツ記者稼業で一番残念だったのは、東京オリンピックのマラソンで銅メダルを獲得した円谷幸吉選手が、メキシコ大会の前に自殺したことですヨ。色々な事情があっただろうに誰も気づかなかったのか、地味な人柄のようだったが、東京の3位といえば大ヒーローです。その彼の悩みを誰も気づかなかったとは――。しばらく暗然とした気持ちでした。

――大器・釜本邦茂さんは順調に伸びてメキシコ五輪で活躍できたのに……

賀川:これはまあ、本人の運の強さ、日本サッカー界、関西サッカー界をあげて彼をバックアップしたからでしょう。

――「自分はこれをした」というのは言いたくないようですから話を変えましょう。85年の人生の前半部のハイライトは?

賀川:のちのサッカー人生のためには、神戸一中(旧制中学)の蹴球部にいたことでしょうね。ここで素晴らしい先輩たちに恵まれた。
 そういえばボクは、小学校でもいい先生に出会った。5年のときに成績が良くなかったのが6年になって、当時「別勉強」という言い方だった今の家庭教師に、別の学校のベテランの先生に来てもらうようになってから一気に力がついた。自分でも、どの科目でも理解が進むのを自覚したほどです。すごい先生だったと今でも思っている。

――それで、夏期試験で全校1位、翌年神戸一中へ、というわけですね。

賀川:ボクの性格を見抜いた授業だったのだろうネ。これは21歳で陸軍の飛行機の操縦訓練を受けているときに、上手な教官に同乗してもらって、その日一日で編隊飛行のコツをのみこんだときとよく似ている。

――いいコーチの素晴らしさを、そういうところで感得したと。

賀川:小学校の担任の先生と、この別勉強の先生のおかげで神戸一中に入り、その蹴球部で過ごしたこと。

――部には兄・太郎さんもいたのですよね。

賀川:兄を含めて、いい先輩に恵まれた。軍隊でも先の教官のように、操縦技術の訓練でも地上教育でもいい人に巡り会えた。当時25~26歳の教官たちがボクたちの教育に精魂を傾けてくれたからね。


【つづく】

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