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1次リーグ初戦、対カメルーン(下)

2010/06/18(金)

2010FIFA ワールドカップ 南アフリカ大会
6月14日23時キックオフ(日本時間)
日本代表 1(1-0、0-0)0 カメルーン代表
 得点 日本:本田圭佑(39)



――その間に、はじめ中央少し右寄りにいた本田圭佑が中央へ、そして松井大輔の切り返しからキックの間にファーポスト側へ移動しました。

賀川:はじめ外にいた大久保嘉人は、松井のキックのときには内にいた。その大久保よりボールに近いところにDFが2人いて、大久保にヘディングされないようジャンプヘディングを試みた。大久保もジャンプした。しかしボールは3人を越え、その外側にいた本田の足元へ落ちた。

――まさにクロスパスという感じでした。会場が高度1,400mにあったからボールが伸びたという解説もありましたが、実際はどうだったでしょう。松井はそれも計算したのかどうか……

賀川:それはとにかく、本田は左足でボールを止め、落ち着いて左足でシュートを決めた。

――テレビのリピートを見ると、立ち足(右足)にボールが当たりましたが、本田は慌てることなく落ち着いていました。

賀川:ボクが名古屋グランパスで最初に見たときの印象は、彼は突っ立ったまま左足で強いボールを蹴れる、またボールの下を叩いて浮かすボールも蹴れるということだった。当時、グランパスにいた長身の外国人選手に長いクロスを蹴って合わせていた。走り込んで蹴るというより、立ったまま蹴れることに強い印象を受けたのだから、本田選手にとってはこういう場面は、いわば十八番(おはこ)でしょう。だから、相手GKの姿勢を見て、左サイドキックで小さく浮かせてポストとGKの間――本田側からいえば左を、GKの右手側を抜いている。

――試合前に監督から何か指示されたか、という(試合後の)質問に、「点を取れ」だけだったと本人は言っています。

賀川:彼の体がしっかりしていて、こういうときにもバランスを保てること、キック(シュート)の強さ正確さを知っている監督の起用だからネ。

――中央から右への展開、右の松井のひと呼吸ののちのクロス、そのボールの飛ぶコース、落下点、シューターの位置とシュートそのもの、何度見てもいいゴールでしたね。

賀川:ビッグゲームでのゴールというのは、どんな泥臭い得点でもやはり美しいけれど、このゴールは組み立てからフィニッシュまで、ちょっとした交響曲のように選手の個性や技術が組み合わされて生まれた――という感じですネ。

――この1点がなければ勝てなかったのですが、これを守る戦いもまた大変でした。

賀川:誰もがひるむことなく、あるいはどこかで気を緩めるということもなくしっかり戦った。もちろんミスもあったけれど、それを互いにカバーした。

――カメルーンはエトオが十分に働けませんでした。

賀川:カメルーンの選手はフランスリーグにたくさんいる。フランスにいる友人によると、フランスの新聞もテレビも「カメルーンが良くなかった」と言っているようです。もちろん、アレクサンドル・ソングという中盤の要(かなめ)になる選手が欠場して彼らのベストメンバーではなかったが、フランステレビの解説者の言う「退屈」な試合になったのはカメルーン側にスペクタクルなプレーをさせなかった日本側の追い方、詰め方、囲み方などが良かったからだろう。それでも、何回かはヒヤリとした。

――GKの川島永嗣もいいセーブをしました。

賀川:調子のいいプレーヤーを試合に出すのは当然ではあっても、安定感のある楢崎正剛でなく川島を起用したのも監督の決断というか思い切りだネ。

――テレビのスポーツ番組だけでなく、ニュース・ショウをはじめ色々なところでこのゴールシーンを画面に出し、勝因を語っているのを見ると、とても嬉しいと同時に、勝てばこんなにも扱いが違うのかと思います。

賀川:それは当然ですヨ。どこかのニュース・ショウの司会者が「手のひらを返すようですネ」と言っていたくらいだから。
 40年前に1970年のワールドカップ・メキシコ大会に取材にゆけなかったとき、日本で外電を読むのとテレビニュースを見るだけだった。この大会の予選に日本代表も出場したが、釜本邦茂が肝炎で試合に出られなくなり、68年のメキシコ・オリンピック代表チームも結局、彼なしではW杯アジア予選では敗れてしまった。もし出場して1勝していても、新聞に載る程度でテレビ報道もほとんどなかったでしょう。
 テレビ東京のプロデューサーだった寺尾皖次さんの話だと、70年大会はカラーのVTRを940万円で購入して、大会後に1年かけて録画放送したそうですよ。

――いまはスカパーが全試合を、NHKが地上波で22試合(生中継)BSで44試合(録画含む)、民放でも22試合の生中継があります。そして先ほどの話にある、ニュース・ショウやら大会の企画番組などがあって、まさにテレビ花盛りのW杯です。

賀川:それだけに、1次リーグの日本の1勝の値打も上がるわけだ。監督、コーチ、選手にもとりあえずご苦労さんと言いたいが、彼らにとっての実際の試合はこれからだからネ。

――オランダのスナイダー選手が、「日本は手強い相手にになるだろう」と語っているそうですから。強い相手と戦い、自分たちの力をフルに発揮してもらいたいものですね。


【了】

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