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イングランド戦前半、アンカー・阿部の成功(下)

2010/06/02(水)

国際親善試合
5月30日14時15分キックオフ(現地時間)オーストリア・UPCアレナ
日本代表 1(1-0、0-2)2 イングランド代表
 得点 日本:田中マルクス闘莉王(7)
     イングランド:オウンゴール(72、83)



賀川:前半5分40秒に、最後列の中澤佑二が前方の岡崎慎司の足元へボールを送った。相手DFを背にして戻り気味に受けた岡崎から、前進してきた阿部にボールが渡り、阿部がダイレクトで前方へ高いパスを送った。そこへ左サイドにいた大久保嘉人が走り込んでいた。彼を追走したグレン・ジョンソン(182cm)が、このボールをヘディングしてCKに逃げた。
 この、中澤から岡崎に当てるパスと、岡崎が残して阿部がダイレクトで前へ送る――大久保が突進する、相手DFがコーナーキックへ逃げる、という一連のパス攻撃が、シンプルだが非常にリズミカルだったから、それまでウェイン・ルーニーの大きなランからのゴール前へのパスや、フランク・ランパードの強いシュート(闘莉王が体で止めた)、あるいは右サイドのセオ・ウォルコットの力強いドリブルなどに押し込まれる感のあった日本側は、この歯切れの良い3本のワンタッチパスの攻めで、おそらく気分が盛り上がったのだと思う。

――それが遠藤の右CK、グラウンダーの闘莉王へのパスとなる。

賀川:遠藤のキックも素晴らしかったし、キックの前に阿部がニアサイドで受けようとスタートした。相手DFの一人が阿部の手を掴んで追走した。そのあとのスペースへ遠藤のボールが入ってきた。カーブキックで理想的なコースへ来た。闘莉王は少し膨らむように走って、グレン・ジョンソンよりもわずかに早くこのボールを右足で蹴った。シュートも見事だった。

――闘莉王の強い気持ちと得点力が、仲間との連動でゴールを生んだわけですね。

賀川:その前に、余計なようだがもう一つ加えておきましょう。実はこの、中澤→岡崎のいわゆる「トップへ当てる」パスの前に、長谷部が本田圭佑からパスを受けて小さく外へターンしたプレーがあった。長谷部はこのターンを時々するのだが、どちらかというと前へ前へ出る彼としては珍しいプレーの一つ。今回はその小さなターンでボールが一度右寄りに小さく動いたことで、彼から中澤に渡ったとき、中澤から岡崎への間に誰もおらず“当てる”パスが出しやすかったのだと思う。

――連動が上手くゆくときは、一つひとつの動作がそれぞれ効いているわけですね。

賀川:そう、阿部のことを少し長めに話したのは、左外からの大久保の突進を感じて岡崎からのボールをダイレクトで彼が前へ送ったこと、それも相手の危険地帯へのボールだったから、ジョンソンはためらいなくコーナーキックへ逃げて、こちらの最初のチャンスとなったのですヨ。こういうところで必要な技術を発揮することが何よりなんですヨ。

――いつも賀川さんが言っているポジションプレーですね。

賀川:各クラブから選んで日本代表をつくりあげるときに、それぞれのポジションで必要な技術がある。その基礎ができていれば、防ぐのも攻めるのも協調や連動をしやすくなるのだが、各位置で必要なキックや必要な動きができなければ、いくらたくさん走っても効果は薄い……。テレビの解説でも、コメンテイターは元代表MFだけあって「阿部が良く利いている」と注目していた。

――俊輔のケガで、いつもと違う代表チームのシステムになり、それが守りだけでなく攻撃にも上手く結びついたのを見たわけですが、こういういいゴールを取ったけれど、イングランド相手に勝つことはできませんでした。

賀川:こういう展開になれば、勝ちにつなげたいし、悪くても引き分けでゆきたいところだが、そうはゆかなかった。もちろん、南アフリカ大会の優勝候補といわれるイングランドに勝つのは難しいこと。実力は向こうが上だが、サッカーの面白さは、力の上の相手にも勝つところだからネ。それについては後にお話しましょう。
 1点取ったからこそ、昨日は日本全体が、負けても多少はいい気分でおれたハズです。その1点の意味ということで、阿部の起用が守りだけでなく先制ゴールにも結び付いたというところをまず申し上げたのです。


【了】

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