ワールドカップ・南アフリカ大会の前に
――いよいよ、開幕です。第19回FIFAワールドカップ(W杯)2010 南アフリカ大会は11日の午後2時(現地時間)から開会式があり、午後4時(同、日本時間 同日午後11時)に南アフリカ対メキシコの開幕試合が行なわれます。
賀川:今日は、このヨハネスブルクの試合よりも4時間遅いキックオフで、同じグループAのウルグアイ対フランスがあり、7月11日までの全64試合の大会がスタートする。
日本代表の参加で現地からの報道は日本チームのことが主になるのは当然だが、開会式のセレモニーも、またショーも、南アフリカらしい楽しく見応えのあるものになるでしょう。
――ネルソン・マンデラさんも開会式には出席するそうですね。
賀川:そもそも、この南アフリカ大会は、アパルトヘイト(人種隔離政策)の撤廃に力を尽くし、新しい南アフリカの最初の黒人大統領になったネルソン・マンデラさんの強い希望に、FIFA(国際サッカー連盟)が同調したのだからね。
南アフリカへの招致プレゼンテーションをマンデラさんが行なったとき、その熱意と心のこもった言葉にFIFAの役員はすべて心を打たれた――と、FIFA理事の小倉純二さん(JFA副会長)が言っていた。
――大変革をしたあとの南アフリカが一つになるためにも、サッカーのW杯は必要――ということですね。
賀川:FIFAは南アフリカ開催を決意しただけでなく、さまざまな援助をして大会の準備がはかどるようにした。南アフリカだけでなくアフリカ全土、各国にトレーニングセンターをつくって、アフリカ・サッカーの向上をバックアップしている。
――すでにアフリカの優れたプレーヤーたちがヨーロッパで働いていますが……
賀川:普及を図るだけでなく、各国のクラブやリーグの基礎がしっかりしたものになってほしいと、様々なテを打っている。
――賀川さん自身の、アフリカへの興味は?
賀川:子どものときにはアフリカを題材にした冒険物語をよく読みましたヨ。ライオンやゴリラの話も好きだった。
サハラ砂漠を越えて南下してゆくアフリカ探検史なども熟読した。80年の欧州選手権(EURO)のあとで、パリからワシントンへ飛ぶときに、隣の席の人が、マリ共和国のトウンブクトウに実家があると聞いてとても嬉しかった。そこは西アフリカの大河ニジェールの上流にあって、古くからの交易の地だったからネ。
――アフリカのサッカーのことも、色々書いてきましたよね。
賀川:記者になるずいぶん前、神戸一中の4~5年のころに、アルベルト・シュバイツァー博士(1875-1965年)に傾倒した。この人の著書『水と原生林のはざまで』は、私にはバイブルだったヨ。
19世紀に、宣教師でありアフリカで探検家でもあったディビッド・リビングストン博士の捜索をテーマにした『スタンレー探索記』という映画が同じ頃にあった。スペンサー・トレイシーという俳優がリビングストンを発見するスタンレー記者役、つまり主役だった。東アフリカのタンザニア湖畔での2人の劇的な会見の場面は心に焼きついたものです。
――そんな映画もあったのですか。
賀川:南アフリカについては『リーダーズ・ダイジェスト』か何かで、あのウィンストン・チャーチル首相(1874-1965年)が若いころ、従軍記者としてボーア戦争(1899-1902年)の取材にあたった話を読んだのだが、それが興味を持つきっかけとなった。
東京オリンピックの大会直前にFIFAの総会が初めて日本(東京)で開催された。このときに70年W杯の開催地がメキシコに決まった。立候補のライバル・アルゼンチンを投票で破ったのだが、このときの総会のもう一つの決議で、当時アパルトヘイト政策をとっていた南アフリカはFIFA参加資格停止処分となった。IOC(国際オリンピック委員会)の資格停止はもっと後のハズです。
象やライオンといったアフリカのイメージにサッカーが重なってきたのは、66年W杯のエウゼビオあたりからですヨ。
――サッカーマガジンではなくサッカーダイジェスト誌でしたか、国のことを連載したのは
賀川:1988年から93年まで足かけ6年。ダイジェストに「サッカー くに(国)ひと(人)あゆみ(歩)を連載させてもらった。
74回まであって、40ヶ国ばかり紹介した。例によって年表もつけ、スペースも使ってもらったから、面白いかどうかはともかく、しっかりしたものだったと思ってます。そのなかで、カメルーン、モロッコ、ガーナ、南アフリカ、コートジボワールとアフリカの5ヶ国を紹介した。
南アフリカを取り上げたのは、1990年にマンデラさんが27年の獄中生活から解放され、南アフリカはアパルトヘイト撤廃に向かい、92年にはFIFAは南アの資格停止解除を検討した。こうした世界の動きがあるので、ダイジェスト誌の編集担当と相談して、5月号に南アフリカを掲載したのですヨ。
――いま読んでも、よく書けていると思います。
賀川:ありがとう。アフリカの現代史は、遠く離れた私たちには実感がなく、いまの西アフリカのサッカー強国、カメルーン、コートジボワール、ナイジェリアなども、それぞれかつてフランス領であったり英国領であったりして事情も違う。南アフリカにも複雑な歴史がある。そういう流れを理解しておかないと、サッカーという大衆の競技について話すのは難しいのですヨ。
南アフリカについては、この項のために東京の駐日大使館まで出かけて話を聞いた。そのとき広報官に、景色も気候も良く、動物もたくさんいて、パラダイスのようなところだと説明された。金やダイヤモンドが産出するというだけでなく、全てにとても豊かなのだと語られて、ヘェーと思ったものだ。
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» ワールドカップ開幕! [にたろうの退屈な日々]
さていよいよワールドカップ開幕です。日本の試合は恥ずかしくて見る気がまったくしませんが、ワールドクラスの試合がタダでしかも生で見られるというのは幸せです。特にスカパー!の中継は楽しみ。オシム語録をじっくり楽しもう!っと、いまスカパー!にチャンネルを合わせるとオシムとトルシエの歴代日本監督のツーショットw否が応でも盛り上がりますな。辛口コメント期待してまっせ。それにしてもアジアのレベルは・・・このままじゃアジア枠はなくなってしまうんじゃ・・・応援するのはイヤだが韓国が頑張らな...... [続きを読む]
受信: 2010年6月11日 (金) 22時46分
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