イングランド戦後半(下)
――ここまでの日本の仕上がりはどうでしょうか
賀川:逆説的な言い方ですが、何といってもキリンチャレンジカップのセルビア、韓国戦で選手も監督もとてもいい経験をした。サポーターたちからの不評を買って、自分たちが何をすべきか分かった。同時に、私たちの大きな財産である中村俊輔の調子がとても良くなかったこと、そしてまた、遠藤保仁のような特異なタイミングを持つプレーヤーも調子がガタ落ちになっていたことを、はっきりと見ることができたのも大きい。だから、このイングランド戦は選手の配置を変えた。
――イングランドを相手にしたとき、それが上手くいったわけですね。
賀川:そう。もう一度上手くゆくかどうかは分からないが、これで少し士気は上がるだろう。同時に自分たちはまだチームとしてワールドカップ本番を戦うのにまだ未完成だということも分かった。
――それは大変じゃないですか
賀川:いやいや大会に向かっては、チームの調子が上がって臨むより、上向きでまだもう少しというときに大会に入る方がいい。これは、日本より上のクラスでも同じことですヨ。
――俊輔、遠藤たちの体調が心配……
賀川:そのために優秀なフィジカルスタッフがいる。岡田監督も、彼らの調子を慎重に見ているでしょう。彼らだけでなく、23人の選手一人ひとりがどのような状態にあるか、体調の維持管理が大切になる。南アフリカは冬で涼しいハズだから、ヨーロッパのチームも彼らの好きな気候で動きの量も落ちないハズ。ドイツ大会のときのように、試合のときに調子が落ちていたのでは困りますからネ。
――攻撃についてはどうでしょう
賀川:イングランド戦でも、長友がせっかく走ってゴールライン近くでクロスを蹴りながらボカーンと出してしまったのがあった。もう少し食い込んでエリア近くからクロスを出せるかどうかもあるだろう。
――イングランド戦は未完成の魅力がありましたが、コートジボワール戦は
賀川:45分を3回、頭の2回――つまり90分を試合の記録として残すらしい。変則練習試合の形を、お互いのチームが望んだのだろうネ。それによって控えの選手にも出番があって、テストもできる。今のチームは、私に言わせれば、選手たちはこれまでよくやってきた。確かに皆マジメでしっかり練習してきたと思う。
しかし、23人もいて、この中にスローインのときにロングスローを正確に強く投げる者がいるかといえばそうでもない――というふうにまだ不満もいっぱいあるチームだ。
――今野あたりが、ロングスローを隠し持っていないでしょうか…
賀川:何といっても日本のなかで優れた技術と体力と戦う気持ちを持ったプレーヤーの集団なのだから、いい相手に恵まれて、いい試合をすれば一気にそれぞれの力が上がり、個人もチームもステップアップできるのですヨ。私は、2002年の日韓大会で宮本ツネ(恒靖)が第2戦の対ロシアで一段レベルアップしたプレーをしたのを見てとても嬉しかったことがある。稲本潤一もそうだった。今度の大会では、故障だった俊輔も含めて皆がレベルアップを感じる大会にしてもらいたいと思っている。岡田監督と日本代表は45試合も戦ってきたのですよ(イングランド戦含む)。それだけの経験を積みつくりあげたチームなのだから、選手たちも、自分たちのこれまで蓄積してきたもの、潜在力に自信を持ってほしいと思います。
【了】
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