イングランド戦後半(上)
国際親善試合
5月30日14時15分キックオフ(現地時間)オーストリア・UPCアレナ
日本代表 1(1-0、0-2)2 イングランド代表
得点 日本:田中マルクス闘莉王(7)
イングランド:オウンゴール(72、83)
――少し間があきましたが、イングランド戦の続きを。
賀川:1-2で負けはしたが、ゴールをしたのが全て日本選手だったということで、イングランド代表についてのメディアの扱いが面白かったネ。
――現地からの報道にもありましたが、「闘莉王と中澤がベストストライカーだ。しかし彼らは日本選手だった」なんていうのも、点を取れないイングランドの裏返しの皮肉ですね。それから、右サイドのセオ・ウォルコットが代表メンバーから外されました。長友佑都に封じられたのが響いたという噂ですよ。
賀川:試合の後半の頭から、イングランドは5人を交代させた。GKをデービッド・ジェイムズからジョー・ハートに、右DFのグレン・ジョンソンをジェイミー・キャラガー、MFのハドルストンをスティーブン・ジェラードに。この下がったのは3人とも失点のときに関係したプレーヤーだ。
さらに、右サイドのMFウォルコットをショーン・ライトフィリップスに、FWのダレン・ベントに代わってジョー・コールが入った。
――ジェラードとフランク・ランパードの2人をMFで同時に起用するのがカペッロ監督のやり方。ケガで休ませていたジェラードが出てきたので、一気にベストメンバーとしてのイングランドの“格”が高くなりました。
賀川:「相手にとって不足はない」と日本選手は思ったろうね。
――後半はじめから、彼らもどんどん前掛かりになってきた。
賀川:こういうときは、押し込まれるけれどカウンターのチャンスは大きい。だから、逆に日本側にも勝機はあると考えるのが普通なのだが……。特にGK川島永嗣がこの日すごく好調だったからネ。
――それでは、やはり相手が強かった?
賀川:岡田監督はハーフタイムに、2点目を取りにゆこうと言ったという。
――だから前方の守備をしっかりし、高いところで奪おうとした。
賀川:押し込まれ、相手FKを本田が手を挙げて止めるハンドの反則をしてPKを取られた。そのランパードのPKを川島が防いだ。本来なら、このPKの成功で相手が勢いづくのだが、GKのファインセーブで日本はまだリードを保つことになった。
――この幸運を勝ちに結び付けたかったですね。
賀川:PKを川島が防いだのは読み勝ちだが、ランパードともあろう大選手としてはちょっとおかしなPKの蹴り方ですヨ。今は詳しくは言わないが、あのアプローチの角度で右サイドキックなら、相手のGKは読みますヨ。
イングランドの選手はワールドカップや欧州選手権のPK戦で負けが多いのに、どうもPKのキックについてあまり真剣じゃない感じがしましたネ。天下のランパードのキックを見てネ……。
――ランパードの不運あるいは不勉強は、日本の幸運。それを生かすには……
賀川:このあたりになると、疲れもたまってくる。しかも相手は新手(あらて)が5人。雨が降っていてピッチは滑りやすい。徐々に動きの範囲を小さくして、さあというピンチ、さあというチャンスのときに余力を残そうという考えになって当たり前でしょう。
――それでも、日本はかなり前からプレスにいきました。
賀川:日本流の考えは、攻めるためには人数をかけることにある。多数で攻めに出て、途中でボールを奪われればまた長い距離を走って帰らなくてはならない。だからどこかで休み、どこかで走るというプレーをしなければならないのです。
――相手に走り勝つといっても、もっと要領よく、というわけですか。
賀川:一度左サイドで3人でパスを回し、遠藤がファーポストへクロスを送ったシーンがあった。これは岡崎とは合わなかったが、サイドを使ってラストパスまで行った。その次に、今度は早いうちに中央で縦に送ってカットされて一気にカウンターを食らい、右からのクロスを中澤が懸命にヘディングでクリアする場面が続いた。
――21分に左サイドでパスをつないだあと、本田がキープして右へ、ファーポスト側へパスを送り、森本貴幸(大久保に代わって入った)がシュートしました。いい攻撃でしたが……
賀川:そして27分に闘莉王のオウンゴールが出た。右からのジョー・コールのクロスをダイビングヘッドで止めようとして、自分のゴールへ入れてしまった。GK川島がコースに構えていた。川島は声をかけていたハズだが、闘莉王に届いたかどうか――。
実はこの前に、ハーフライン近くの中央でライトフィリップスがキープしたのに長友、長谷部、阿部の3人がかわされている。そこから右の広大なオープンスペースにパスが送られ、ジョー・コールが取って右から速いクロスを送ったもの。ジョー・コールはノーマークでキープしたから、闘莉王は終始、彼を注視することになり、自分の背後、ゴール正面の様子が分からなかったかもしれない。彼のヘディングとともに、ここはハーフラインでの相手一人を拘束できなかった“囲み”の不手際を反省しなければなるまい。
【つづく】
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