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1次リーグ初戦、対カメルーン(上)

2010/06/17(木)

2010FIFA ワールドカップ 南アフリカ大会
6月14日23時キックオフ(日本時間)
日本代表 1(1
-0、0-0)0 カメルーン代表
 得点 日本:本田圭佑(39)



――対カメルーンから3日経ちました。日本代表の勝利で日本中がずいぶん明るくなった感じですね。日本で見るワールドカップ(W杯)も、まんざらではないでしょう。

賀川:4回連続出場、3回目の2006年ドイツ大会は期待が大きかっただけに1次リーグ3敗はショックだった。イビチャ・オシム監督のもとでの新しい日本代表のスタートは彼の病でストップし、監督を引き受けた岡田武史監督のもとでアジア予選を突破した。それは素晴らしいことだが、予選突破の後のキリンチャレンジカップなどの強化試合で日本代表の調子が悪く、大会直前まで不安視されていた。

――それが、第1戦で強敵カメルーンを破った。これまでの大黒柱・中村俊輔を不調のためにメンバーから外すという思い切ったチーム編成でした。

賀川:多くのファンを心配させただけに、1-0の勝利の喜びも大きいネ。

――そういえば、大会前に岡田監督とお話したとか?

賀川:彼が日本を出る前に、電話で話したヨ。メンバー編成で色々考えていたようだ。ボクは、ともかくオシムの後を引き受けてアジア予選を突破したことでまずひと仕事をした、そのおかげで6月のW杯を日本のファンも楽しめるわけだから、自信を持って、自分で考えたことを実行すればいいんだ――と言っておいた。

――他にも色々、具体的な話もあったのでしょうけれど、まあ、ここでは聞かないことにします。また何年か経ったら……

賀川:対カメルーンは、故障で調子の上がらない中村俊輔を休ませ、対イングランドでテストした布陣を基礎にメンバーを組んだ。カメルーンにはこのメンバーで、このやり方でゆくのだという監督の意図と選手の気持ちが一つになって、ほぼチーム全員が描いていた結果になったのだと思う。

――本田圭佑の起用も当たりました。

賀川:本田は前残りのセンターフォワード(CF)的な役割に最適というわけじゃないが、少なくても、今の日本代表の攻撃メンバーの中で体が一番しっかりしていて、後方からのボールをカメルーン選手と競り合っても、そう簡単に負けない強さがあるし、ボールを受けてもすぐ潰されない技術と体がある。頑張り屋の大久保嘉人の速さと長いランへの意欲が加われば、相手には威力となるだろう。
 右に起用された松井大輔はドリブルができるから、DFからのパスを受けてもすぐは取られない。だから、そこからたとえ有効な攻めにゆけないときでも、彼のボールキープによってDF陣は攻めを跳ね返した後、ちょっと一息つき、マークの再確認する余裕ができる。

――当然、カメルーン相手に守勢が続いたときでも、そういう選手がいるということは守りにも大きく貢献します。

賀川:これまで高い位置からのプレッシングを強調し、そこで奪うと効果的な攻撃へ移ることができる――といってきた。そういう積極的な考えもいいが、押し込まれるときに何かちょっとした救いになるか――ということも大切なんですヨ。

――サッカーは走り回ることも大切だが、ボールキープも重要で、それは1930年代から誰もが知っていること――と、以前言っていましたよね。

賀川:1956年のメルボルン五輪予選の対韓国1回戦(日本2-0)のとき、圧倒的な韓国の攻め込みに耐えたのは、鴇田正憲がボールを受けるとタッチラインを背にして独特のフェイクでボールをキープした。その間にGK古川好男やDF小沢通宏は、マークを再確認し次の攻撃に備えたと言っている。

――最近の日本では、そういうサイドでのキープが攻撃だけでなく守りにも有効という考えはないようですね。

賀川:解説者やコーチはたいてい、このことは知っていますヨ。それをできるプレーヤーがいなかったのだと思う。

――今回は松井がいた。松井は守備面の効果だけでなく、得点となるクロスを送っていわゆるアシストをしました。

賀川:それが本来の彼の仕事ですヨ。あの先制点であり決勝点であった本田圭佑のシュートは、後方からのロングボールをまず本田が競って自分のものにし、後方中央の遠藤保仁に渡したところから始まっている。

――遠藤や長谷部誠がわりあい高い位置にいましたね。

賀川:これは阿部勇樹を2人のセントラルディフェンダー(CDF)田中マルクス闘莉王中澤佑二の前へ置く形にしたことで、それまでの4FBのときのボランチ(守備的MF)と違ってきたからね。とくにこの時間帯は、こちらも攻め、相手も攻めるという行ったり来たりの状態になって、やや中盤でのスペースが広がっていた。

――ボールを本田から受けた遠藤が小さなフェイクを入れておいて、右サイドの松井へ送りました。

賀川:速いグラウンダーで、松井には受けやすいボールだった。相手のアスエコットとは少し間合いがあった。松井が一つ持って右足でクロスを蹴るというジェスチャーをすると、相手はこれに引っかかって背を向けた。松井は右足で左へ切り返し、また一つ持って左足でクロスをゴール前へ送った。

――賀川さんがいつも言う、どの位置から蹴るかで効果が違うということですね。

賀川:NHKの解説で、山本昌邦・元日本代表コーチもよく言ってますヨ。たとえばバルサの攻撃でペナルティエリアぎりぎりからクロスがくると、近くからのクロスだから、タッチラインからのクロスと違ってボールがすぐにやってくる(時間が短い)。だから相手のDFの対抗が難しいとね。
 もう一つ、今回は松井のキック力でゆくと左のクロスだったらタッチラインからではファーポスト近くの目標へ正確に届けるのは難しいハズ。それで大きなフェイクで相手DFをかわして少し中へ持って蹴ったのだろう。


【つづく】

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