イングランド戦後半(中)
――左サイドから攻められた2点目もオウンゴールでした。
賀川:速いクロスを蹴ったアシュリー・コールに対して、今野が間合いを詰められなかった。これはこちらのゴールキックが相手側の深くに飛び、相手のGKからプレーが再開されたのだが、ハーフラインから10m入ったところでまず本田がDFにアプローチしたが自由にパスを出され、ノーマークの相手が左のアシュリー・コールにパスを出す。広いスペースにいるA.コールは、接近しようとする今野に対して、まず、縦に動いて自らのスピードで脅しをかけ、いったん切り返すと見せてストップ、再び縦に持ち出して強く速いクロスを送った。今野の間合いでは足で止めることはできず、狙い通りのコースへボールが飛ぶ。ゴール正面にルーニーともう一人いた。中澤がインターセプトしようとしたが、中澤の前で落下し小さくバウンドしたボールが足に当たって方向が変わりゴールへ。
――惜しい失点、残念な場面でしたが……
賀川:引いて守れ、というと日本ではすぐ守りの姿勢になるのか――というふうに決めつける。全体の流れの中で、しばらくは手厚く、狭いスペースで守って力を温存した方がいいということも試合中にはある。相手が勢いづいているときに、それをひっくり返す動きができることもあるが、そのときにしばらく耐えることも必要なんですヨ。
相手ボールでディフェンダーが安定してキープ(近ごろはボールポゼッションという)しているときに、ハーフラインから向こう10mあたりで取りに行くと、ペナルティエリア――いわゆる相手のシュートレンジ近く――まで縦50mほどのスペースが生まれる。そこをバンバン走られれば、守る側は消耗してしまう。奪いにゆくのをハーフライン手前からにすれば、そのスペースが小さくなる。
――日本も、アジアの試合で相手に引かれてゴールを奪うのに苦労しました。
賀川:先日の韓国戦でも、韓国はリードした後半には攻めて出てきたあとサーッと引き上げハーフラインから抵抗線(防御ライン)を引いていたでしょう。
――そういうのは守りの姿勢とかいう根本理念の問題ではなくて……
賀川:単なる試合中の戦術ですヨ。走り回ることは日本サッカーの特徴だが、ムダに消耗するのは損だ。
――そうすれば、攻めのときにも力を発揮できる。
賀川:攻めに関しては森本の出番を考えるべきだろうし、彼も、この大会でもう一段上のクラスに上がるためにはもう少し身につけなければいけないこともある。相手を背にしたときのプレーがある程度できるのだから、それをもっと高めること。シュートのコース(型)をもう一つ増やすことだろうね。それを大試合で掴めば将来のプラスになりますヨ。
本田も、このところゴールしていないのは何故か自分で考えているでしょう。
【つづく】
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