サッカー史:1930年
1930年第1回ワールドカップ・ウルグアイ大会の写真を追加しました!
初代チャンピオンのウルグアイ代表、初代得点王ギジェルモ・スタービレの写真はこちら
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サッカー史:1930年
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人物史:丸山義行に、1967年日本対CSKAモスクワの写真を追加
丸山さんは1970年W杯でペルー対ブルガリアなど2試合で線審を担当。
ワールドカップのピッチに初めて立った日本人です。
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2010FIFA ワールドカップ 南アフリカ大会
6月14日23時キックオフ(日本時間)
日本代表 1(1-0、0-0)0 カメルーン代表
得点 日本:本田圭佑(39)
――その間に、はじめ中央少し右寄りにいた本田圭佑が中央へ、そして松井大輔の切り返しからキックの間にファーポスト側へ移動しました。
賀川:はじめ外にいた大久保嘉人は、松井のキックのときには内にいた。その大久保よりボールに近いところにDFが2人いて、大久保にヘディングされないようジャンプヘディングを試みた。大久保もジャンプした。しかしボールは3人を越え、その外側にいた本田の足元へ落ちた。
――まさにクロスパスという感じでした。会場が高度1,400mにあったからボールが伸びたという解説もありましたが、実際はどうだったでしょう。松井はそれも計算したのかどうか……
賀川:それはとにかく、本田は左足でボールを止め、落ち着いて左足でシュートを決めた。
――テレビのリピートを見ると、立ち足(右足)にボールが当たりましたが、本田は慌てることなく落ち着いていました。
賀川:ボクが名古屋グランパスで最初に見たときの印象は、彼は突っ立ったまま左足で強いボールを蹴れる、またボールの下を叩いて浮かすボールも蹴れるということだった。当時、グランパスにいた長身の外国人選手に長いクロスを蹴って合わせていた。走り込んで蹴るというより、立ったまま蹴れることに強い印象を受けたのだから、本田選手にとってはこういう場面は、いわば十八番(おはこ)でしょう。だから、相手GKの姿勢を見て、左サイドキックで小さく浮かせてポストとGKの間――本田側からいえば左を、GKの右手側を抜いている。
――試合前に監督から何か指示されたか、という(試合後の)質問に、「点を取れ」だけだったと本人は言っています。
賀川:彼の体がしっかりしていて、こういうときにもバランスを保てること、キック(シュート)の強さ正確さを知っている監督の起用だからネ。
――中央から右への展開、右の松井のひと呼吸ののちのクロス、そのボールの飛ぶコース、落下点、シューターの位置とシュートそのもの、何度見てもいいゴールでしたね。
賀川:ビッグゲームでのゴールというのは、どんな泥臭い得点でもやはり美しいけれど、このゴールは組み立てからフィニッシュまで、ちょっとした交響曲のように選手の個性や技術が組み合わされて生まれた――という感じですネ。
――この1点がなければ勝てなかったのですが、これを守る戦いもまた大変でした。
賀川:誰もがひるむことなく、あるいはどこかで気を緩めるということもなくしっかり戦った。もちろんミスもあったけれど、それを互いにカバーした。
――カメルーンはエトオが十分に働けませんでした。
賀川:カメルーンの選手はフランスリーグにたくさんいる。フランスにいる友人によると、フランスの新聞もテレビも「カメルーンが良くなかった」と言っているようです。もちろん、アレクサンドル・ソングという中盤の要(かなめ)になる選手が欠場して彼らのベストメンバーではなかったが、フランステレビの解説者の言う「退屈」な試合になったのはカメルーン側にスペクタクルなプレーをさせなかった日本側の追い方、詰め方、囲み方などが良かったからだろう。それでも、何回かはヒヤリとした。
――GKの川島永嗣もいいセーブをしました。
賀川:調子のいいプレーヤーを試合に出すのは当然ではあっても、安定感のある楢崎正剛でなく川島を起用したのも監督の決断というか思い切りだネ。
――テレビのスポーツ番組だけでなく、ニュース・ショウをはじめ色々なところでこのゴールシーンを画面に出し、勝因を語っているのを見ると、とても嬉しいと同時に、勝てばこんなにも扱いが違うのかと思います。
賀川:それは当然ですヨ。どこかのニュース・ショウの司会者が「手のひらを返すようですネ」と言っていたくらいだから。
40年前に1970年のワールドカップ・メキシコ大会に取材にゆけなかったとき、日本で外電を読むのとテレビニュースを見るだけだった。この大会の予選に日本代表も出場したが、釜本邦茂が肝炎で試合に出られなくなり、68年のメキシコ・オリンピック代表チームも結局、彼なしではW杯アジア予選では敗れてしまった。もし出場して1勝していても、新聞に載る程度でテレビ報道もほとんどなかったでしょう。
テレビ東京のプロデューサーだった寺尾皖次さんの話だと、70年大会はカラーのVTRを940万円で購入して、大会後に1年かけて録画放送したそうですよ。
――いまはスカパーが全試合を、NHKが地上波で22試合(生中継)BSで44試合(録画含む)、民放でも22試合の生中継があります。そして先ほどの話にある、ニュース・ショウやら大会の企画番組などがあって、まさにテレビ花盛りのW杯です。
賀川:それだけに、1次リーグの日本の1勝の値打も上がるわけだ。監督、コーチ、選手にもとりあえずご苦労さんと言いたいが、彼らにとっての実際の試合はこれからだからネ。
――オランダのスナイダー選手が、「日本は手強い相手にになるだろう」と語っているそうですから。強い相手と戦い、自分たちの力をフルに発揮してもらいたいものですね。
【了】
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2010FIFA ワールドカップ 南アフリカ大会
6月14日23時キックオフ(日本時間)
日本代表 1(1-0、0-0)0 カメルーン代表
得点 日本:本田圭佑(39)
――対カメルーンから3日経ちました。日本代表の勝利で日本中がずいぶん明るくなった感じですね。日本で見るワールドカップ(W杯)も、まんざらではないでしょう。
賀川:4回連続出場、3回目の2006年ドイツ大会は期待が大きかっただけに1次リーグ3敗はショックだった。イビチャ・オシム監督のもとでの新しい日本代表のスタートは彼の病でストップし、監督を引き受けた岡田武史監督のもとでアジア予選を突破した。それは素晴らしいことだが、予選突破の後のキリンチャレンジカップなどの強化試合で日本代表の調子が悪く、大会直前まで不安視されていた。
――それが、第1戦で強敵カメルーンを破った。これまでの大黒柱・中村俊輔を不調のためにメンバーから外すという思い切ったチーム編成でした。
賀川:多くのファンを心配させただけに、1-0の勝利の喜びも大きいネ。
――そういえば、大会前に岡田監督とお話したとか?
賀川:彼が日本を出る前に、電話で話したヨ。メンバー編成で色々考えていたようだ。ボクは、ともかくオシムの後を引き受けてアジア予選を突破したことでまずひと仕事をした、そのおかげで6月のW杯を日本のファンも楽しめるわけだから、自信を持って、自分で考えたことを実行すればいいんだ――と言っておいた。
――他にも色々、具体的な話もあったのでしょうけれど、まあ、ここでは聞かないことにします。また何年か経ったら……
賀川:対カメルーンは、故障で調子の上がらない中村俊輔を休ませ、対イングランドでテストした布陣を基礎にメンバーを組んだ。カメルーンにはこのメンバーで、このやり方でゆくのだという監督の意図と選手の気持ちが一つになって、ほぼチーム全員が描いていた結果になったのだと思う。
――本田圭佑の起用も当たりました。
賀川:本田は前残りのセンターフォワード(CF)的な役割に最適というわけじゃないが、少なくても、今の日本代表の攻撃メンバーの中で体が一番しっかりしていて、後方からのボールをカメルーン選手と競り合っても、そう簡単に負けない強さがあるし、ボールを受けてもすぐ潰されない技術と体がある。頑張り屋の大久保嘉人の速さと長いランへの意欲が加われば、相手には威力となるだろう。
右に起用された松井大輔はドリブルができるから、DFからのパスを受けてもすぐは取られない。だから、そこからたとえ有効な攻めにゆけないときでも、彼のボールキープによってDF陣は攻めを跳ね返した後、ちょっと一息つき、マークの再確認する余裕ができる。
――当然、カメルーン相手に守勢が続いたときでも、そういう選手がいるということは守りにも大きく貢献します。
賀川:これまで高い位置からのプレッシングを強調し、そこで奪うと効果的な攻撃へ移ることができる――といってきた。そういう積極的な考えもいいが、押し込まれるときに何かちょっとした救いになるか――ということも大切なんですヨ。
――サッカーは走り回ることも大切だが、ボールキープも重要で、それは1930年代から誰もが知っていること――と、以前言っていましたよね。
賀川:1956年のメルボルン五輪予選の対韓国1回戦(日本2-0)のとき、圧倒的な韓国の攻め込みに耐えたのは、鴇田正憲がボールを受けるとタッチラインを背にして独特のフェイクでボールをキープした。その間にGK古川好男やDF小沢通宏は、マークを再確認し次の攻撃に備えたと言っている。
――最近の日本では、そういうサイドでのキープが攻撃だけでなく守りにも有効という考えはないようですね。
賀川:解説者やコーチはたいてい、このことは知っていますヨ。それをできるプレーヤーがいなかったのだと思う。
――今回は松井がいた。松井は守備面の効果だけでなく、得点となるクロスを送っていわゆるアシストをしました。
賀川:それが本来の彼の仕事ですヨ。あの先制点であり決勝点であった本田圭佑のシュートは、後方からのロングボールをまず本田が競って自分のものにし、後方中央の遠藤保仁に渡したところから始まっている。
――遠藤や長谷部誠がわりあい高い位置にいましたね。
賀川:これは阿部勇樹を2人のセントラルディフェンダー(CDF)田中マルクス闘莉王と中澤佑二の前へ置く形にしたことで、それまでの4FBのときのボランチ(守備的MF)と違ってきたからね。とくにこの時間帯は、こちらも攻め、相手も攻めるという行ったり来たりの状態になって、やや中盤でのスペースが広がっていた。
――ボールを本田から受けた遠藤が小さなフェイクを入れておいて、右サイドの松井へ送りました。
賀川:速いグラウンダーで、松井には受けやすいボールだった。相手のアスエコットとは少し間合いがあった。松井が一つ持って右足でクロスを蹴るというジェスチャーをすると、相手はこれに引っかかって背を向けた。松井は右足で左へ切り返し、また一つ持って左足でクロスをゴール前へ送った。
――賀川さんがいつも言う、どの位置から蹴るかで効果が違うということですね。
賀川:NHKの解説で、山本昌邦・元日本代表コーチもよく言ってますヨ。たとえばバルサの攻撃でペナルティエリアぎりぎりからクロスがくると、近くからのクロスだから、タッチラインからのクロスと違ってボールがすぐにやってくる(時間が短い)。だから相手のDFの対抗が難しいとね。
もう一つ、今回は松井のキック力でゆくと左のクロスだったらタッチラインからではファーポスト近くの目標へ正確に届けるのは難しいハズ。それで大きなフェイクで相手DFをかわして少し中へ持って蹴ったのだろう。
【つづく】
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――いよいよ、開幕です。第19回FIFAワールドカップ(W杯)2010 南アフリカ大会は11日の午後2時(現地時間)から開会式があり、午後4時(同、日本時間 同日午後11時)に南アフリカ対メキシコの開幕試合が行なわれます。
賀川:今日は、このヨハネスブルクの試合よりも4時間遅いキックオフで、同じグループAのウルグアイ対フランスがあり、7月11日までの全64試合の大会がスタートする。
日本代表の参加で現地からの報道は日本チームのことが主になるのは当然だが、開会式のセレモニーも、またショーも、南アフリカらしい楽しく見応えのあるものになるでしょう。
――ネルソン・マンデラさんも開会式には出席するそうですね。
賀川:そもそも、この南アフリカ大会は、アパルトヘイト(人種隔離政策)の撤廃に力を尽くし、新しい南アフリカの最初の黒人大統領になったネルソン・マンデラさんの強い希望に、FIFA(国際サッカー連盟)が同調したのだからね。
南アフリカへの招致プレゼンテーションをマンデラさんが行なったとき、その熱意と心のこもった言葉にFIFAの役員はすべて心を打たれた――と、FIFA理事の小倉純二さん(JFA副会長)が言っていた。
――大変革をしたあとの南アフリカが一つになるためにも、サッカーのW杯は必要――ということですね。
賀川:FIFAは南アフリカ開催を決意しただけでなく、さまざまな援助をして大会の準備がはかどるようにした。南アフリカだけでなくアフリカ全土、各国にトレーニングセンターをつくって、アフリカ・サッカーの向上をバックアップしている。
――すでにアフリカの優れたプレーヤーたちがヨーロッパで働いていますが……
賀川:普及を図るだけでなく、各国のクラブやリーグの基礎がしっかりしたものになってほしいと、様々なテを打っている。
――賀川さん自身の、アフリカへの興味は?
賀川:子どものときにはアフリカを題材にした冒険物語をよく読みましたヨ。ライオンやゴリラの話も好きだった。
サハラ砂漠を越えて南下してゆくアフリカ探検史なども熟読した。80年の欧州選手権(EURO)のあとで、パリからワシントンへ飛ぶときに、隣の席の人が、マリ共和国のトウンブクトウに実家があると聞いてとても嬉しかった。そこは西アフリカの大河ニジェールの上流にあって、古くからの交易の地だったからネ。
――アフリカのサッカーのことも、色々書いてきましたよね。
賀川:記者になるずいぶん前、神戸一中の4~5年のころに、アルベルト・シュバイツァー博士(1875-1965年)に傾倒した。この人の著書『水と原生林のはざまで』は、私にはバイブルだったヨ。
19世紀に、宣教師でありアフリカで探検家でもあったディビッド・リビングストン博士の捜索をテーマにした『スタンレー探索記』という映画が同じ頃にあった。スペンサー・トレイシーという俳優がリビングストンを発見するスタンレー記者役、つまり主役だった。東アフリカのタンザニア湖畔での2人の劇的な会見の場面は心に焼きついたものです。
――そんな映画もあったのですか。
賀川:南アフリカについては『リーダーズ・ダイジェスト』か何かで、あのウィンストン・チャーチル首相(1874-1965年)が若いころ、従軍記者としてボーア戦争(1899-1902年)の取材にあたった話を読んだのだが、それが興味を持つきっかけとなった。
東京オリンピックの大会直前にFIFAの総会が初めて日本(東京)で開催された。このときに70年W杯の開催地がメキシコに決まった。立候補のライバル・アルゼンチンを投票で破ったのだが、このときの総会のもう一つの決議で、当時アパルトヘイト政策をとっていた南アフリカはFIFA参加資格停止処分となった。IOC(国際オリンピック委員会)の資格停止はもっと後のハズです。
象やライオンといったアフリカのイメージにサッカーが重なってきたのは、66年W杯のエウゼビオあたりからですヨ。
――サッカーマガジンではなくサッカーダイジェスト誌でしたか、国のことを連載したのは
賀川:1988年から93年まで足かけ6年。ダイジェストに「サッカー くに(国)ひと(人)あゆみ(歩)を連載させてもらった。
74回まであって、40ヶ国ばかり紹介した。例によって年表もつけ、スペースも使ってもらったから、面白いかどうかはともかく、しっかりしたものだったと思ってます。そのなかで、カメルーン、モロッコ、ガーナ、南アフリカ、コートジボワールとアフリカの5ヶ国を紹介した。
南アフリカを取り上げたのは、1990年にマンデラさんが27年の獄中生活から解放され、南アフリカはアパルトヘイト撤廃に向かい、92年にはFIFAは南アの資格停止解除を検討した。こうした世界の動きがあるので、ダイジェスト誌の編集担当と相談して、5月号に南アフリカを掲載したのですヨ。
――いま読んでも、よく書けていると思います。
賀川:ありがとう。アフリカの現代史は、遠く離れた私たちには実感がなく、いまの西アフリカのサッカー強国、カメルーン、コートジボワール、ナイジェリアなども、それぞれかつてフランス領であったり英国領であったりして事情も違う。南アフリカにも複雑な歴史がある。そういう流れを理解しておかないと、サッカーという大衆の競技について話すのは難しいのですヨ。
南アフリカについては、この項のために東京の駐日大使館まで出かけて話を聞いた。そのとき広報官に、景色も気候も良く、動物もたくさんいて、パラダイスのようなところだと説明された。金やダイヤモンドが産出するというだけでなく、全てにとても豊かなのだと語られて、ヘェーと思ったものだ。
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――それで賀川さん、今回の大会は……
賀川:フリーランス記者として、まずJFAの許可をもらい、FIFAのOKをもらい、例によって全期間取材に出かけるつもりで準備した。僕の級友の故・岩谷俊夫の次男の砂田純二クンが旅行の専門家なので、2006年のときと同様、旅程を組んでくれて、6月7日、関西空港発の航空機に乗ればいいことになっていたのだが……
――腰の具合ですか
賀川:生田ドクターのおかげでリハビリにも精を出すようにしていたが、調子は良くない。今年は寒さが長かったのかもしれない。他にも不調のところが出てきて、これでは現地で仲間の足手まといになる恐れもあると考えて取りやめにした。
ボクは1974年以来、9回のW杯は全て現地へ出かけていた。2002年は日韓共催だから、日本にもいたけれどほとんど毎日のように飛び回っていた。だから、日本が参加するようになって、日本にいて、テレビや新聞の放送を通じて大会の模様を見るというのは実は初めての経験なんですよ。今回、周囲の皆さんのおかげで進めた現地取材を取りやめるのはまことに残念だったが……。
サッカーマガジンの連載は、これまでの『ワールドカップの旅』でなく、大会中は『日本で見るワールドカップ』ということにさせてもらい、このブログで十分書き込みたいと思っている。どんなものになるか――これまでとは取材のやり方がまったく違うけれど、また異なる面が出ればいいと思っていますよ。
――1970年のメキシコ大会も、FIFAのアクレディテーションを取りながら結局行かなかったのですよね。
賀川:あのときは、当時のサンケイスポーツの編集局長さんに「運動部長のキミがいなくては新聞を作れないじゃないか」と1ヶ月間留守をしたいという願いを却下された。今度は誰も止めないのに、自分の体の声「やめなさい。何かあったときに周囲に迷惑をかけることになる……」が出発を押しとどめた。
――この大会で、賀川さんは何が見たいですか?
賀川:大会の全てですヨ。
しかし、まず見たいのは……今年の大会はいいストライカーが多い。クリスチアーノ・ロナウド(ポルトガル)リオネル・メッシ(アルゼンチン)ディディエ・ドログバ(コートジボワール)ウェイン・ルーニー(イングランド)フェルナンド・トーレス(スペイン)ルイス・ファビアーノ(ブラジル)などなどサッカー好きならすぐ10人程度の名前が出てくるでしょう。
守備の戦術や技術が高くなり、ゴールキーパーという「専守」のポジションの選手の体格が良くなり能力が上がってきた現代の一流の試合では、手を使わないでゴールへボールを叩き込むのはなかなかのことだ。その仕事で、日頃のリーグや欧州チャンピオンズリーグあるいは国際試合で実績を積んでいるプレーヤーの活躍を予想し、実際に、あるいはテレビ画面で見るのは、舞台が大きいだけにとても面白いものです。
――どこが優勝するかは
賀川:大いに興味はありますが、ヨーロッパのブックメーカー、つまり「賭け屋」の予想を見るのはとても参考になりますヨ。
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◆ゴールを背にした選手が簡単にバックパスを選ぶ。なんともったいないことだろう
賀川:前回は本番への気持ちの問題について申し上げたが、もう少し、サッカーの細かい技術についても。この話があるいは参考になるかもしれない。
――コートジボワール戦のどこかの場面についてですか?
賀川:0-1となってから23分頃だったか、右サイドで阿部と本田でボールを奪い、本田が突っかけた。そこからしばらく攻勢が続いた。ペナルティエリア左外で、遠藤がボールを受けて中央左寄りの大久保に渡し、大久保はシュートできるとみて中央の阿部に渡した。
――阿部も相手に詰められました。
賀川:それでもシュートして、正面のDFに当たった。そのリバウンドがエリア内で左へ転がった。そこに日本選手がいた。相手側の5人、ペナルティエリア中央から右(日本側から見て)の方へ偏っていて、ボールが転がったところには日本側一人だけ。走り込んでいた長友だった。彼はゴールを背にした姿勢で、このボールを後方の大久保にバックパス。大久保はキープして左サイドに開いていた長谷部へ送り、長谷部がクロスを中へ入れたが、仲間に合わなかった。
――それで、
賀川:僕が不思議だったのは、ゴールを背にしてボールにタッチした長友が、ためらうことなくバックパスしたことだ。大久保もフリーでゴールの方に体が向いていたから正解のようだが、僕はバックパスでなく、何故このボールを受けて反転してシュートへ持ってゆかなかったのだと思った。
自分がチームの一番先端にいる。周囲に敵もない(いても、少し距離がある)となれば、ターンしてゴールの方を向けばノーマークシュートになったハズ。もしターンが遅くて相手が潰しに来たとしても、相手側をギクリとさせることになったハズだ。とてももったいない瞬間に見えた。
もちろん、テレビの画面で見る互いの距離感覚は実際のピッチ上とは違う場合もあるから、私の見方が合っているかは現地にいた人たちに聞いてみなくては分からないが、少なくとも私のように古い世代のサッカーをやった者は、せっかくペナルティエリアの中にいて、偶発的にボールが自分の足元に転がってくれば、体がどちらを向いていようとまずシュートする方に気がゆくのだが……。
サッカーは複雑な競技でもあるが、きわめてシンプルなスポーツでゴール近くでボールをもらえばまずシュートだろうと思っている。
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◆全力をつくせば、これまで蓄積してきたプレーのいいところが自然に出てくるもの
――それにしても、対セルビア0-4、対韓国0-2、対イングランド1-2、対コートジボワール0-2と、4試合で1得点ですからね。
賀川:今の日本代表は、全員がベストの体調でしっかりと気合が入る試合をしなければ、どこと戦っても簡単にゴールを奪うことはできない。点を取るというのは、どうして取るかという前に、誰が取るかというのがあるわけ。それを確立しなければね。
――岡崎慎司が一番多く取っています。
賀川:ほとんどが相手の裏へ走り込む、外からあるいは後方からのボールへのダイビングが一つの型ではあるが、一つの型だけだから相手には読まれてしまう。成功するためには、その前の仕掛けに意外性がなければならない。
――高い位置でのボール奪取というのもその一つなんですね。
賀川:まあそうでしょう。そういう条件がそろったときに、日本のゴールが生まれる。
――“誰が”といえるほどのストライカーがいれば、その選手の能力というかプレーの幅というか、そういうもののアローワンスで、完璧のパスワークでなくても点を取る可能性がある。
賀川:そう、そういう国際舞台で通用するストライカーが出てこない。あるいは育ててこなかった10数年の影響が出ているのだから、いまさらそれを悔やんでも仕方がない。
――ということは、この大会は絶望的?
賀川:いや、そうでもない。先に言ったように、全員のコンディションが整って、日本らしく、これまで追求してきたランプレーを気迫を込めて戦えば、このチームはいいチャンスも作れるし、ピンチにも頑張れる。サッカーというのはバルサのように一試合に何度も何度もエリア内に侵入してチャンスをつくるようなチームはそうたくさん世界にない。試合中に3~4回、何人かのプレーヤーの呼吸が合って、パスとドリブルなどの組み合わせが上手くゆくとチャンスになる。そしてそういうときに、シューターがいい位置に入れたり、いい形でボールを蹴ると、ゴールが生まれる。ときには相手側がミスすることもあって、そこがサッカーの面白いところですヨ。
――そんなものですか
賀川:そのためには、そのゴールに至る経路やゴール前へのシューターの入り方などを反復し、また夢にまで見るように体に染み込ませれば、先に言ったバルサやメッシほどでなくても一試合に1点や2点取ることができる。
◆せっかくのチャンスに悔いのない試合をすること。その気迫が勝ちを生む
――今も覚えているのは2002年のとき、次がいよいよトルコ戦という日に、デットマール・クラマーさんにどちらが勝つかと聞いたら「勝利への執念が強い方だ」と言われました。
賀川:今度も同じですヨ。1936年のベルリン・オリンピックで日本代表は優勝候補のスウェーデンに逆転勝ちした。このとき、本番前の練習試合で1勝もできなかった。それで、試合の日は皆、全力を出して勝とうと誓った。リードされて迎えたハーフタイムでも、イレブンは開き直って清々しい気分だったそうだ。今の日本代表にも、カメルーンといういい相手に対して生涯悔いのない試合をしてほしいと思っている。
【了】
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国際親善試合
6月4日12時25分キックオフ(現地時間)スイス・シオン
日本代表 0(0-1、0-1)2 コートジボワール代表
得点 コートジボワール:オウンゴール(13)コロ・トゥーレ(80)
――コートジボワール戦、2失点はともにFKからでした。1点目はペナルティエリア外のFKをディディエ・ドログバが蹴り、壁に入った岡崎慎司に当たった。そのボールがエリアの中央近くにいた田中マルクス闘莉王の足に当たって方向が変わり、オウンゴールとなった。
2点目は後半35分だったか、ペナルティエリア右角外10m辺り、右寄りのコートジボワールのFKをシアカ・ティエネが左足でゴールに向かう速いカーブボールを蹴って、ファーポストのゴールエリア内に落下し、コロ・トゥーレが決めた。
賀川:1点目はリバウンドを止めようとした闘莉王に当たったわけだから、彼がそこにいたポジションはほぼ当たっていた。ただし、ボールが予想より速かったのかもしれない。2点目は相手の蹴ったボールのコースの読み違いでしょう。GK川島永嗣の仕事になるだろうが、一般論でいえば、左サイドでプレーしている左利きのティエネが右サイド(相手側の)へ行って蹴るのだから、いわゆるフックボール(カーブ)で曲げてくることは予想しなければいけないハズです。
カメルーンと戦うための準備試合なのに、コートジボワールの個々の選手についての情報の集め方ももう一息のように見えた。
――コートジボワールとは2年前、2008年のキリンカップで南米のパラグアイと日本代表とともに3チームのグループリーグに参加して、日本代表は1-0で勝っています。
賀川:このあとのパラグアイ戦を0-0で引き分けて、キリンカップ優勝ということになった。イビチャ・オシムの病で岡田武史監督となってから8戦目だった。
このとき、コートジボワールは主力の7人が来日しなかった。そのときと今度の対戦に出場していたのは5人だね。ドログバやカルー、ヤヤ・トゥーレといった有名選手はいなかったが強いチームだった。
――今度はそれが本番前で顔をそろえてきました。プレッシングもしっかりやってきた。
賀川:今回、日本側は高地対策をはじめフィジカルトレーニングをしっかり行なった後だから、全員の調子はまだ高まっていない。そのこともあって、前半の早いうちはボールを持たせてもらえなかった。
コートジボワールがFKでゴールし、すぐその後にドログバが負傷退場して一息つく恰好になり、日本側がキープできるようになった。先制されたゴールのFKも、こちらの横パスが相手のプレッシングで奪われ、そのあと後手後手(ごてごて)に回って起きたファウルからだった。
◆本番に向けて選手それぞれの調子も把握できた
――中村俊輔が後半に出場しました。
賀川:実のところ、今の日本代表の一番の問題は彼の調子がどうか――ということだろう。足の故障が完全に回復しているのか、故障の足だけでなく彼の体全体に疲れがたまっているのではないか――と心配する向きは多い。岡田監督にとっても、俊輔中心でこれまでやってきたチームを彼ナシで本番を戦うのかどうかということになる。
――岡田監督は98年にも三浦知良、カズの難問がありました。
賀川:そういうこともあったネ。遠藤も決していい状態とはいえない。休めば回復するのかどうか――。
――大変ですよね。
賀川:しかし、大会直前であるとしても、本番前に主力選手の調子がいいにしろ悪いにしろ、監督コーチがそれをしっかり把握するのはとても大事なこと。その点では、今年に入ってキリンチャレンジカップなどで日本選手のコンディションを見ることができたのはチームのスタッフにはとてもいいことだ。選手の調子を掴めば、今度はチーム構成、選手の組み合わせを変え、守りや攻めの方策を立て直すことになる。充分ではないが、そのテストもコートジボワールを相手に試すこともできたでしょう。
――だから、負けても決して悪いばかりではないと……
賀川:監督にすれば、選手たち一人一人の状態を掴めたと思う。
――しかし、中村俊輔をもし不調で試合に出さない方がいいと判断するようなことになれば、すごいことですね。
賀川:あらゆる点を考慮して決定するだろう。もう1週間あれば完全回復ということもあるかもしれないしネ。そこは監督の決心でしょう。
【つづく】
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――ここまでの日本の仕上がりはどうでしょうか
賀川:逆説的な言い方ですが、何といってもキリンチャレンジカップのセルビア、韓国戦で選手も監督もとてもいい経験をした。サポーターたちからの不評を買って、自分たちが何をすべきか分かった。同時に、私たちの大きな財産である中村俊輔の調子がとても良くなかったこと、そしてまた、遠藤保仁のような特異なタイミングを持つプレーヤーも調子がガタ落ちになっていたことを、はっきりと見ることができたのも大きい。だから、このイングランド戦は選手の配置を変えた。
――イングランドを相手にしたとき、それが上手くいったわけですね。
賀川:そう。もう一度上手くゆくかどうかは分からないが、これで少し士気は上がるだろう。同時に自分たちはまだチームとしてワールドカップ本番を戦うのにまだ未完成だということも分かった。
――それは大変じゃないですか
賀川:いやいや大会に向かっては、チームの調子が上がって臨むより、上向きでまだもう少しというときに大会に入る方がいい。これは、日本より上のクラスでも同じことですヨ。
――俊輔、遠藤たちの体調が心配……
賀川:そのために優秀なフィジカルスタッフがいる。岡田監督も、彼らの調子を慎重に見ているでしょう。彼らだけでなく、23人の選手一人ひとりがどのような状態にあるか、体調の維持管理が大切になる。南アフリカは冬で涼しいハズだから、ヨーロッパのチームも彼らの好きな気候で動きの量も落ちないハズ。ドイツ大会のときのように、試合のときに調子が落ちていたのでは困りますからネ。
――攻撃についてはどうでしょう
賀川:イングランド戦でも、長友がせっかく走ってゴールライン近くでクロスを蹴りながらボカーンと出してしまったのがあった。もう少し食い込んでエリア近くからクロスを出せるかどうかもあるだろう。
――イングランド戦は未完成の魅力がありましたが、コートジボワール戦は
賀川:45分を3回、頭の2回――つまり90分を試合の記録として残すらしい。変則練習試合の形を、お互いのチームが望んだのだろうネ。それによって控えの選手にも出番があって、テストもできる。今のチームは、私に言わせれば、選手たちはこれまでよくやってきた。確かに皆マジメでしっかり練習してきたと思う。
しかし、23人もいて、この中にスローインのときにロングスローを正確に強く投げる者がいるかといえばそうでもない――というふうにまだ不満もいっぱいあるチームだ。
――今野あたりが、ロングスローを隠し持っていないでしょうか…
賀川:何といっても日本のなかで優れた技術と体力と戦う気持ちを持ったプレーヤーの集団なのだから、いい相手に恵まれて、いい試合をすれば一気にそれぞれの力が上がり、個人もチームもステップアップできるのですヨ。私は、2002年の日韓大会で宮本ツネ(恒靖)が第2戦の対ロシアで一段レベルアップしたプレーをしたのを見てとても嬉しかったことがある。稲本潤一もそうだった。今度の大会では、故障だった俊輔も含めて皆がレベルアップを感じる大会にしてもらいたいと思っている。岡田監督と日本代表は45試合も戦ってきたのですよ(イングランド戦含む)。それだけの経験を積みつくりあげたチームなのだから、選手たちも、自分たちのこれまで蓄積してきたもの、潜在力に自信を持ってほしいと思います。
【了】
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――左サイドから攻められた2点目もオウンゴールでした。
賀川:速いクロスを蹴ったアシュリー・コールに対して、今野が間合いを詰められなかった。これはこちらのゴールキックが相手側の深くに飛び、相手のGKからプレーが再開されたのだが、ハーフラインから10m入ったところでまず本田がDFにアプローチしたが自由にパスを出され、ノーマークの相手が左のアシュリー・コールにパスを出す。広いスペースにいるA.コールは、接近しようとする今野に対して、まず、縦に動いて自らのスピードで脅しをかけ、いったん切り返すと見せてストップ、再び縦に持ち出して強く速いクロスを送った。今野の間合いでは足で止めることはできず、狙い通りのコースへボールが飛ぶ。ゴール正面にルーニーともう一人いた。中澤がインターセプトしようとしたが、中澤の前で落下し小さくバウンドしたボールが足に当たって方向が変わりゴールへ。
――惜しい失点、残念な場面でしたが……
賀川:引いて守れ、というと日本ではすぐ守りの姿勢になるのか――というふうに決めつける。全体の流れの中で、しばらくは手厚く、狭いスペースで守って力を温存した方がいいということも試合中にはある。相手が勢いづいているときに、それをひっくり返す動きができることもあるが、そのときにしばらく耐えることも必要なんですヨ。
相手ボールでディフェンダーが安定してキープ(近ごろはボールポゼッションという)しているときに、ハーフラインから向こう10mあたりで取りに行くと、ペナルティエリア――いわゆる相手のシュートレンジ近く――まで縦50mほどのスペースが生まれる。そこをバンバン走られれば、守る側は消耗してしまう。奪いにゆくのをハーフライン手前からにすれば、そのスペースが小さくなる。
――日本も、アジアの試合で相手に引かれてゴールを奪うのに苦労しました。
賀川:先日の韓国戦でも、韓国はリードした後半には攻めて出てきたあとサーッと引き上げハーフラインから抵抗線(防御ライン)を引いていたでしょう。
――そういうのは守りの姿勢とかいう根本理念の問題ではなくて……
賀川:単なる試合中の戦術ですヨ。走り回ることは日本サッカーの特徴だが、ムダに消耗するのは損だ。
――そうすれば、攻めのときにも力を発揮できる。
賀川:攻めに関しては森本の出番を考えるべきだろうし、彼も、この大会でもう一段上のクラスに上がるためにはもう少し身につけなければいけないこともある。相手を背にしたときのプレーがある程度できるのだから、それをもっと高めること。シュートのコース(型)をもう一つ増やすことだろうね。それを大試合で掴めば将来のプラスになりますヨ。
本田も、このところゴールしていないのは何故か自分で考えているでしょう。
【つづく】
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国際親善試合
5月30日14時15分キックオフ(現地時間)オーストリア・UPCアレナ
日本代表 1(1-0、0-2)2 イングランド代表
得点 日本:田中マルクス闘莉王(7)
イングランド:オウンゴール(72、83)
――少し間があきましたが、イングランド戦の続きを。
賀川:1-2で負けはしたが、ゴールをしたのが全て日本選手だったということで、イングランド代表についてのメディアの扱いが面白かったネ。
――現地からの報道にもありましたが、「闘莉王と中澤がベストストライカーだ。しかし彼らは日本選手だった」なんていうのも、点を取れないイングランドの裏返しの皮肉ですね。それから、右サイドのセオ・ウォルコットが代表メンバーから外されました。長友佑都に封じられたのが響いたという噂ですよ。
賀川:試合の後半の頭から、イングランドは5人を交代させた。GKをデービッド・ジェイムズからジョー・ハートに、右DFのグレン・ジョンソンをジェイミー・キャラガー、MFのハドルストンをスティーブン・ジェラードに。この下がったのは3人とも失点のときに関係したプレーヤーだ。
さらに、右サイドのMFウォルコットをショーン・ライトフィリップスに、FWのダレン・ベントに代わってジョー・コールが入った。
――ジェラードとフランク・ランパードの2人をMFで同時に起用するのがカペッロ監督のやり方。ケガで休ませていたジェラードが出てきたので、一気にベストメンバーとしてのイングランドの“格”が高くなりました。
賀川:「相手にとって不足はない」と日本選手は思ったろうね。
――後半はじめから、彼らもどんどん前掛かりになってきた。
賀川:こういうときは、押し込まれるけれどカウンターのチャンスは大きい。だから、逆に日本側にも勝機はあると考えるのが普通なのだが……。特にGK川島永嗣がこの日すごく好調だったからネ。
――それでは、やはり相手が強かった?
賀川:岡田監督はハーフタイムに、2点目を取りにゆこうと言ったという。
――だから前方の守備をしっかりし、高いところで奪おうとした。
賀川:押し込まれ、相手FKを本田が手を挙げて止めるハンドの反則をしてPKを取られた。そのランパードのPKを川島が防いだ。本来なら、このPKの成功で相手が勢いづくのだが、GKのファインセーブで日本はまだリードを保つことになった。
――この幸運を勝ちに結び付けたかったですね。
賀川:PKを川島が防いだのは読み勝ちだが、ランパードともあろう大選手としてはちょっとおかしなPKの蹴り方ですヨ。今は詳しくは言わないが、あのアプローチの角度で右サイドキックなら、相手のGKは読みますヨ。
イングランドの選手はワールドカップや欧州選手権のPK戦で負けが多いのに、どうもPKのキックについてあまり真剣じゃない感じがしましたネ。天下のランパードのキックを見てネ……。
――ランパードの不運あるいは不勉強は、日本の幸運。それを生かすには……
賀川:このあたりになると、疲れもたまってくる。しかも相手は新手(あらて)が5人。雨が降っていてピッチは滑りやすい。徐々に動きの範囲を小さくして、さあというピンチ、さあというチャンスのときに余力を残そうという考えになって当たり前でしょう。
――それでも、日本はかなり前からプレスにいきました。
賀川:日本流の考えは、攻めるためには人数をかけることにある。多数で攻めに出て、途中でボールを奪われればまた長い距離を走って帰らなくてはならない。だからどこかで休み、どこかで走るというプレーをしなければならないのです。
――相手に走り勝つといっても、もっと要領よく、というわけですか。
賀川:一度左サイドで3人でパスを回し、遠藤がファーポストへクロスを送ったシーンがあった。これは岡崎とは合わなかったが、サイドを使ってラストパスまで行った。その次に、今度は早いうちに中央で縦に送ってカットされて一気にカウンターを食らい、右からのクロスを中澤が懸命にヘディングでクリアする場面が続いた。
――21分に左サイドでパスをつないだあと、本田がキープして右へ、ファーポスト側へパスを送り、森本貴幸(大久保に代わって入った)がシュートしました。いい攻撃でしたが……
賀川:そして27分に闘莉王のオウンゴールが出た。右からのジョー・コールのクロスをダイビングヘッドで止めようとして、自分のゴールへ入れてしまった。GK川島がコースに構えていた。川島は声をかけていたハズだが、闘莉王に届いたかどうか――。
実はこの前に、ハーフライン近くの中央でライトフィリップスがキープしたのに長友、長谷部、阿部の3人がかわされている。そこから右の広大なオープンスペースにパスが送られ、ジョー・コールが取って右から速いクロスを送ったもの。ジョー・コールはノーマークでキープしたから、闘莉王は終始、彼を注視することになり、自分の背後、ゴール正面の様子が分からなかったかもしれない。彼のヘディングとともに、ここはハーフラインでの相手一人を拘束できなかった“囲み”の不手際を反省しなければなるまい。
【つづく】
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国際親善試合
5月30日14時15分キックオフ(現地時間)オーストリア・UPCアレナ
日本代表 1(1-0、0-2)2 イングランド代表
得点 日本:田中マルクス闘莉王(7)
イングランド:オウンゴール(72、83)
賀川:前半5分40秒に、最後列の中澤佑二が前方の岡崎慎司の足元へボールを送った。相手DFを背にして戻り気味に受けた岡崎から、前進してきた阿部にボールが渡り、阿部がダイレクトで前方へ高いパスを送った。そこへ左サイドにいた大久保嘉人が走り込んでいた。彼を追走したグレン・ジョンソン(182cm)が、このボールをヘディングしてCKに逃げた。
この、中澤から岡崎に当てるパスと、岡崎が残して阿部がダイレクトで前へ送る――大久保が突進する、相手DFがコーナーキックへ逃げる、という一連のパス攻撃が、シンプルだが非常にリズミカルだったから、それまでウェイン・ルーニーの大きなランからのゴール前へのパスや、フランク・ランパードの強いシュート(闘莉王が体で止めた)、あるいは右サイドのセオ・ウォルコットの力強いドリブルなどに押し込まれる感のあった日本側は、この歯切れの良い3本のワンタッチパスの攻めで、おそらく気分が盛り上がったのだと思う。
――それが遠藤の右CK、グラウンダーの闘莉王へのパスとなる。
賀川:遠藤のキックも素晴らしかったし、キックの前に阿部がニアサイドで受けようとスタートした。相手DFの一人が阿部の手を掴んで追走した。そのあとのスペースへ遠藤のボールが入ってきた。カーブキックで理想的なコースへ来た。闘莉王は少し膨らむように走って、グレン・ジョンソンよりもわずかに早くこのボールを右足で蹴った。シュートも見事だった。
――闘莉王の強い気持ちと得点力が、仲間との連動でゴールを生んだわけですね。
賀川:その前に、余計なようだがもう一つ加えておきましょう。実はこの、中澤→岡崎のいわゆる「トップへ当てる」パスの前に、長谷部が本田圭佑からパスを受けて小さく外へターンしたプレーがあった。長谷部はこのターンを時々するのだが、どちらかというと前へ前へ出る彼としては珍しいプレーの一つ。今回はその小さなターンでボールが一度右寄りに小さく動いたことで、彼から中澤に渡ったとき、中澤から岡崎への間に誰もおらず“当てる”パスが出しやすかったのだと思う。
――連動が上手くゆくときは、一つひとつの動作がそれぞれ効いているわけですね。
賀川:そう、阿部のことを少し長めに話したのは、左外からの大久保の突進を感じて岡崎からのボールをダイレクトで彼が前へ送ったこと、それも相手の危険地帯へのボールだったから、ジョンソンはためらいなくコーナーキックへ逃げて、こちらの最初のチャンスとなったのですヨ。こういうところで必要な技術を発揮することが何よりなんですヨ。
――いつも賀川さんが言っているポジションプレーですね。
賀川:各クラブから選んで日本代表をつくりあげるときに、それぞれのポジションで必要な技術がある。その基礎ができていれば、防ぐのも攻めるのも協調や連動をしやすくなるのだが、各位置で必要なキックや必要な動きができなければ、いくらたくさん走っても効果は薄い……。テレビの解説でも、コメンテイターは元代表MFだけあって「阿部が良く利いている」と注目していた。
――俊輔のケガで、いつもと違う代表チームのシステムになり、それが守りだけでなく攻撃にも上手く結びついたのを見たわけですが、こういういいゴールを取ったけれど、イングランド相手に勝つことはできませんでした。
賀川:こういう展開になれば、勝ちにつなげたいし、悪くても引き分けでゆきたいところだが、そうはゆかなかった。もちろん、南アフリカ大会の優勝候補といわれるイングランドに勝つのは難しいこと。実力は向こうが上だが、サッカーの面白さは、力の上の相手にも勝つところだからネ。それについては後にお話しましょう。
1点取ったからこそ、昨日は日本全体が、負けても多少はいい気分でおれたハズです。その1点の意味ということで、阿部の起用が守りだけでなく先制ゴールにも結び付いたというところをまず申し上げたのです。
【了】
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国際親善試合
5月30日14時15分キックオフ(現地時間)オーストリア・UPCアレナ
日本代表 1(1-0、0-2)2 イングランド代表
得点 日本:田中マルクス闘莉王(7)
イングランド:オウンゴール(72、83)
――日本代表、やりましたね。イングランド相手に先制し、2-1で敗れはしましたが最後まで気迫のこもったいい試合をしました。
賀川:韓国戦が悪かっただけに、代表チームはどうなるんだという心配が高まっていたが、田中マルクス闘莉王が戻ってきて、中澤佑二とのCDF(セントラル・ディフェンダー)のところがしっかりしたからチーム全体が良くなった。もちろん、闘莉王の闘志を表に見せる試合ぶりや彼の持つ明るさなどがチーム全体に与えるいい影響もあっただろうしネ。
――岡田武史監督がアンカーに阿部勇樹を置いたのも、効果があったように見えます。
賀川:阿部はこのポジションの適役ですヨ。もともと彼は中盤の、古い言い方でゆけば守備的MF役が本業のハズだが、どこでもこなせるという賢さのために最後のDFラインにまわったりしている。
彼は若い頃から、日本のプレーヤーとしては珍しく長いボールを正確に蹴れるのだから、ボールを拾ったときには大きな威力となる。その個性を生かさないテはないと、リーグでも代表でもボクは不満に思っていた。彼自身ももう少し自分の良さを仲間にアピールした方がいいのだが、日本の代表になろうかという選手なら、彼の「得意ワザ」を他の選手も理解すべきだと思うネ。
――というと、例えば
賀川:韓国戦のタイムアップ直前に、カウンターからPKになって2点目を奪われたことがあったでしょう。
――確か、こちらが攻め込んで中央左寄りのFKのチャンスがあって、そのボールが相手に渡ってのカウンターでした。
賀川:そう。確か森本貴幸がゴールラインから25~30m辺りの左寄りの位置でファウルされたFKを、長谷部誠がボールをプレースする前に日本のDFに上がれ上がれと声をかけた。
――ラストのチャンスと見たのでしょうね。
賀川:それはいい。だから、中澤佑二と阿部勇樹も上がってきた。こういうときのためにと投入していた矢野貴章もいたハズだ。そのFKを長谷部が蹴った。低いボールで、一番近い相手側に当たって再び長谷部が拾い、もう一度蹴った。ボールはゴール前へ届いたが、中澤はヘディングできずにボールは流れ、相手の左サイドからの攻めに転じそこからFWに渡って中央を突破され、楢崎が止めたときにファウルとなって、PKで2点目を失った。
――そこで、
賀川:ラストチャンスの攻めだと思ったのなら、阿部に蹴らすべきではなかったか。長谷部はもちろん、ドイツのボルフスブルクで試合をしているレベルの高いプレーヤーではあるが、阿部のプレースキックを選択する気はなかったか――と思ったネ。
――近ごろ阿部は、自分のチームでもFKを蹴っていないのじゃないですか
賀川:若いころ、ジェフユナイテッドでは蹴っていた。コーナーキックをファーポストへコントロールキックできた選手ですヨ。浦和では近ごろ少し攻撃的な役柄もしているけれど、もっともっとクラブも代表も生かせる場所があると思っていた。
――それが、今度のアンカー役だった?
賀川:中村俊輔を休ませて、イングランドという強敵と戦うために岡田監督が考えたのだろう。前半の先取点は闘莉王と遠藤保仁の素晴らしい合作だが、それに阿部が一役加わっていることを知っておいてほしい。
――ふーむ、阿部ですか。
【つづく】
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